山階鳥類研究所研究報告
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34 巻 , 1 号
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  • 伊藤 正則, 中村 司
    2002 年 34 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    性ステロイドホルモンの生殖腺からの分泌は光周期による影響を受けることは数多くの鳥類において知られている(Wolfson 1945,Farner et al.,1983, Wingfield 1983)。また,排泄物中の性ステロイドホルモンを定量することによって,血液中の性ステロイドホルモンレベルを推定することが可能である(Bishop and Hall 1991)。光周期を徐々に変化させた条件下で渡り鳥であるオオジュリンEmberiza schoeniclusと留鳥であるホオジロEmberiza cioidesを飼育し,雌において性ステロイドホルモンの1つであるエストラジオールの排泄物中含量がどのような変化をするのかを調べた。
    オオジュリンとホオジロを山梨県甲府市郊外で捕獲した後,各々を1羽ずつケージに入れ,実験室で飼育した。飼育条件は気温22°C,湿度50%でほぼ一定にし,光周期のみを10時間明期,14時間暗期(LD 10:14)から:LD 15:9まで,1週間に30分ずつ明期を長く,暗期を短く変化させた。そして飼育期間中に両種の雌,3~6個体の排泄物を定期的に採取した。これらの排泄物に一定量の蒸留水を加え,ホモジェナイズし,これを遠心した後,上清をジエチルエーテルで抽出し,この抽出物中のエストラジオールをラジオイムノアッセイにより定量した。
    その結果,雌のオオジュリンにおける排泄物中のエストラジオール含量はLD 10:14とLD 11:13では低いレベルであったが,LD 12:12で急激に増加し、高レベルはLD 13:11でも観察された。その後,LD 14:10で急激に減少し,LD 15:9でも低いレベルであった。
    ほぼ同様の排泄物中エストラジオール含量の変化が雌のホオジロでも観察された。したがって,オオジュリンとホオジロの両種の雌では,他の鳥類と同様に,卵巣からのエストラジオールの分泌は光周期を短日から長日へ変化することによって上昇することと,長期間の長日処理は生殖腺からのエストラジオールの分泌を低下させることが示唆される。ミヤマシトドZonotrichia leucophrys gambeliiを用いた研究結果(Schwabl & Farner 1989)から示唆されているように,オオジュリンにおいてもエストラジオールは春の渡りに関与していないと考えられる。
  • 藤原 宏子, 渡辺 愛子, 木村 武二
    2002 年 34 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    セキセイインコは学習によってさえずりを発達させる。本研究では,正常個体が音声学習によって獲得する音響的構造の重要性を検討した。まず,正常個体と幼鳥時に蝸牛管除去された個体(聴覚遮断個体)からさえずりを録音し,音声解析を行った。聴覚遮断個体のさえずりは,各構成要素の音響的構造に異常が見られた。次に,録音されたさえずりを雄セキセイインコに聞かせて反応を比較した。聴覚遮断個体よりも正常個体のさえずりの方が有意に強い発声反応を誘発した。学習によって得られた音響的構造がセキセイインコ雄間のコミュニケーションにおいて果たす役割に関して,本研究の結果を議論する。
  • 江口 和洋, 山岸 哲
    2002 年 34 巻 1 号 p. 16-29
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    マダガスカル固有種アカオオハシモズの抱卵行動の特徴と卵の孵化パターンを明らかにし,その適応的意義について考察した。調査は1994年~1997年の繁殖期(9月~1月)にマダガスカル西部のアンピジュルア研究林の落葉広葉樹林で行った。調査地は6ヵ月毎の雨期と乾期がはっきりと分かれ,本格的降雨は11月後半に始まり,日最高気温は35度を超え,日最低気温は20度付近まで下がる。
    アカオオハシモズは一夫一妻で繁殖するが,1歳以上の雄がつがいの繁殖を手助けする協同繁殖種として知られている。2歳以上の付加雄には繁殖能力があり,繁殖雌との交尾も観察されている。繁殖は年1回のみで,失敗した場合にはやり直し繁殖を行う。産卵数は大部分が4卵で,半数以上の巣で1~3卵の未孵化卵が生じた。
    抱卵は第1卵産卵後に始まり,巣毎の平均抱卵時間は観察時間の60%以上を占めた。第1卵産卵直後は雄の分担割合が大きく,雌の分担割合は第3卵産卵後から増加し,全卵産卵終了後には雌雄の分担割合はほぼ等しくなった。産卵期における雌雄の抱卵分担は,2歳以上の付加雄のいるつがいでも,いないつがいでも同様の傾向を示した。造巣期や産卵期には,繁殖雄は2歳以上の付加雄に対して攻撃的であるが,産卵期に雌につきまとって,付加雄の接近を未然に防ぐなどの行動は見られなかった。
    孵化のパターンは巣により大きく異なり,全卵が単一日に孵化する完全同時孵化と,各卵が毎日順次孵化する完全非同時孵化と,両者の中間的なパターンが同程度に生じていた。巣立ちに際しては,1日でヒナ全部が巣を離れることが多く,このため,若いヒナは兄弟に比べて未成長の状態で巣立っていた。
    従来提唱されている仮説(Clark & Wilson 1981, Magrath 1990)では,早い抱卵開始は非同時孵化を生じ,非同時孵化は捕食回避やヒナの成長段階の階層化による餌不足への対処などの適応的意義を持つとされている。しかし,アカオオハシモズの場合は,早い抱卵開始によっても,非同時的な孵化パターンは必ずしも期待できず,非同時孵化よりも,早い抱卵開始そのものに適応的な意義があると考えられた。調査地では最高気温が高く,気温の日較差が大きい。このため,抱卵なしでも発育ゼロ点を超え胚の成長を開始させる可能性が高く,親は抱卵温度を一定に保つために第1卵から抱卵する必要があると考えられる。また,直射日光により,卵が異常高温にさらされることを防いだり,他の動物による巣への干渉を防ぐなど,卵を保護するためにも第1卵からの抱卵は有用であると考えられる。
    アカオオハシモズの抱卵のもう一つの特徴は,抱卵開始時の雄による分担割合が大きいことである。協同繁殖つがいの場合は,雄は付加雄による繁殖雌のつがい外交尾の危険があるにも関わらず,第1卵から長時間抱卵し,積極的なメイトガードを行わない。未孵化卵を含む巣が多いことから,卵の死亡が多いことが示唆される。早い抱卵開始によって卵の死亡の多くが未然に防げるのであれば,雌雄どちらかによる早い時期の抱卵は選択的な意義がある。雌は卵生産のために採餌に多くの時間を必要とするならば,雄が産卵期に抱卵の多くを担うことになる。付加雄のほとんどは繁殖雄の仔であり,たとえ付加雄と継母の繁殖雌との間でつがい外交尾が生じても,繁殖雄にとっては間接的な利益を享受できると考えることができる。
  • 高木 昌興
    2002 年 34 巻 1 号 p. 30-38
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    アカモズの一亜種(Lanius cristatus superciliosus)は,北海道において過去30年間に急激に減少した。1992年から1996年までの5-7月の繁殖期に北海道で得られたアカモズの繁殖成績と雛の成長について報告する。調査期間中に合計41巣から情報を得た。平均巣立ち成功率は53.7%,平均一腹卵数は5.3卵,平均孵化雛数は5.1雛であった。巣立ちに成功した巣あたりの平均巣立ち雛数は4.4雛で,その巣立ち率は90.3%であった。繁殖失敗の主要因は卵,もしくは雛の捕食であった。カッコウによる托卵率は低く,アカモズは托卵されたカッコウの卵を選択的に除去するか,巣を放棄することで托卵を受け入れなかった。15巣75雛の体重とふ蹠長の成長をロジスティック曲線で近似させ,漸近体重27.1g,日あたり体重増加率0.4,体重増加の変曲点5.7日目,漸近ふ蹠長は24.9mm,日あたり伸長率は0.3,ふ蹠伸長の変曲点4.4日目の結果を得た。
  • 岡 奈理子, 杉野目 斉, 治田 則男, 丸山 直樹
    2002 年 34 巻 1 号 p. 39-59
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    伊豆諸島御蔵島(北緯33°52',東経139°14')のオオミズナギドリ繁殖地で,1985年と1990年の2繁殖期,計89羽の雛の成長と巣立ち成績を調査した。2繁殖期の平均孵化日は,共に8月中旬(13日,17日)で,親鳥は孵化後平均4日間,在巣した。孵化時の平均体重は73g,59gで,成鳥の平均体重(552g)の11~13%に,露出嘴峰,〓蹠,翼長は,成鳥の平均長(各49mm,51mm,310mm)の42%,38%,8%に相当した。雛は共に9月中旬,約40日齢で成鳥の体重に達し,10月中旬の,約70日齢で最も重く,平均で734g,739gとなり,成鳥を33~34%上回った。その後は約3週間にわたり体重は減少し,ピーク時から共に約30%減の,平均519~522gで巣立った。この巣立ち体重は,秋の成鳥•亜成鳥の平均体重508gと有意差はなかった。1羽ずつの雛の体重はほぼ全期間,数日から1週間間隔でジグザグに増減を繰り返しながら成長した。体重と骨部位(嘴峰と〓蹠)長は初期成長が著しく9~22日齢で最大成長(各13.8g/日,1.0mm/日,0.6mm/日)を示した。翼と,39平均日齢で羽軸が伸び始あた尾羽では,後半に成長がずれ,それぞれ75,62日齢で最大成長(各4.3mm/日,3.0mm/日)を示した。巣立つまでの全期間を通じた成長率Kは,やや高い尾羽を除き,露出嘴峰長,翼長で低く0.05となり,〓蹠長も0.08であった。親の給餌停止前までの増加•平衡期の体重成長率も0.05と低く,外洋性で亜晩成性鳥種の特徴を示した。親鳥は孵化後,平均82日目,平均暦日で11月7日に最後の給餌をし,繁殖地を離れた。雛は,親鳥の最終給餌後,平均9日目に巣立った。2繁殖期の巣立ち日数は,平均で,90日(11月13日),91日(11月17日)であった。巣立ち成功率(孵化数に対する巣立ち数割合)は,里部落のごみ捨て場から1km離れたコロニーで最も低く,わずかに21%となり,人の影響の比較的少なかった他2調査地では,各68%,72%であった。失敗の過半がノネコとネズミの捕食に因った。
  • 橘川 次郎, ウィルソン ジャニスM
    2002 年 34 巻 1 号 p. 60-65
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    餌場におけるハイムネメジロの闘争戦略がコスト•ベネフィットの法則に従うものかどうかを密度の高いヘロン島で調査した。込み合った餌場で起る反発行動で攻撃を仕掛ける個体が使う行動の要素には,威嚇に使われるものの方が攻撃に使われるものより多かった。これは闘争の相手を無差別に仕掛ける時の戦略で,群れのなかで順位が高いものも低いものも同じように使っていた。禽舎のなかで相手を識別して仕掛ける反発行動では,相手によって戦略を換え一般に威嚇より攻撃の要素がよく使われるが,今回の結果はそれと対照的であった。すなわちハイムネメジロは攻撃する相手が区別できない時は,群れのなかで順位が高いものに対して仕掛ける時のように威嚇の要素を使う傾向があり,それはコスト•ベネフィットの法則にしたがっていると考えられる。
  • 岩佐 真宏, クリュコフ アレクセイ, 柿澤 亮三, 鈴木 仁
    2002 年 34 巻 1 号 p. 66-72
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    アジア(ロシア•日本•ラオス)産ハシブトガラスの種内変異(地域変異)について,ミトコンドリア遺伝子チトクロームb(336塩基対)を用いて調査した。塩基配列を基に作成した近隣結合系統樹では,主に4つの地域変異グループ,1)ロシア極東地域-沿海州およびサハリン北部,2)サハリン南部および九州までの日本列島,3)奄美大島,4)ラオス,が得られた。この4つの遺伝子型によるグループは,既報の形態変異によるグループ(亜種分類)とほぼ一致していた。ハシブトガラスにおいては,海峡などによる地理的隔離•島嶼形成が遺伝子流入の妨げにはなっておらず,特に陸続きであるはずのサハリン北部•南部間で明瞭な異なる遺伝子型グループが観察されたことは,両者の個体群形成の歴史が,同じ島でありながら異なることを示唆するものであった。
  • 藤巻 裕蔵
    2002 年 34 巻 1 号 p. 73-79
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    北海道のエゾライチョウBonasa bonasiaの食性について,237例のそ嚢内容物にもとづいて調べた。得られたそ嚢数は,狩猟期の1994/95年と1995/96年の10月~1月の216例,非狩猟期の1996年2~9月の21例である。そ嚢内容物の湿重量を計測した後,各食物項目に区分して乾燥し,各食物項目ごとに乾重量を計測した。各食物項目について月ごとに出現頻度と乾重量で示した。調べたそ嚢内容物237例のうち,35例(15%)は空であった。そ嚢内容物の湿重量は0~49.4g,平均(±標準偏差,以下同様)5.3±6.7g(n=237),乾重量は0~22.5g,平均1.88±3.02gであった。例数の多かった10月~1月についてみると,湿重量,乾重量とも10,11月より12,1月で有意に大きかった。出現頻度の高かった食物は,6,7月には草本類の葉,種子,節足動物,8,9月には葉,種子,果実,節足動物,10月には落葉広葉樹の冬芽,ヤマブドウとサルナシの果実,11,12月には冬芽,葉,果実,1,2月には冬芽であった。これらのうち,同定できたのは,冬芽では,ヤナギ類,カンバ類,ハンノキ類,ホオノキ,サクラ類,ナナカマド類,イヌエンジュ,ニシキギ類カエデ類,ツツジ類,トネリコ類であった。葉では,イチイ,トドマツ,カタバミ類,シロツメクサであった。種子では,ウルシ,トウヒ類,トドマツ,カンバ類,ハンノキ類,キイチゴ類,シソ類,カタバミ類,スゲ類,スミレ類であった。果実では,7,8月にはニワトコ,10月以降にはヤマブドウ,サルナシ,マタタビ,フッキソウ,ツルウメモドキ,ナナカマドであった。動物では,カタツムリ類,クモ類,カゲロウ類,カワゲラ類ハサミムシ類,バッタ類,カメムシ類,アワフキムシ類,鱗翅類,甲虫類,アリ類であった。乾重量でみた主要な食物は,6,7月には種子,8~9月には葉,種子,果実,10~12月には冬芽,葉,種子,果実,1~2月には冬芽と果実であった。北海道における食性をヨーロッパと比べると,どちらも植物食である点では基本的に同じであるが,北海道では樹種の多さを反映して多くの落葉広葉樹の冬芽を利用し,ヤマブドウやサルナシといった蔓植物の果実を秋から地表が雪で覆われる厳冬期までよく食べていた。
  • 川路 則友, 山口 恭弘, 矢野 幸弘
    2002 年 34 巻 1 号 p. 80-88
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    栃木県において,野外個体群の回復のために放鳥されたヤマドリ養殖個体の運命について,狩猟者からの足環の回収報告結果およびラジオトラッキング調査から調べた。1989年から1997年にかけて放鳥されたオスのヤマドリのうち,放鳥時に装着された足環が狩猟者により回収されたのは1.3%であった。また,回収された個体のうちのほとんどが,放鳥されたのと同じ狩猟期に得られたものであり,2年以上生存した個体は,わずか0.3%に過ぎなかった。栃木県県民の森で行った放鳥ヤマドリに対するラジオトラッキング調査の結果,短い寿命(平均11.4日)であることがわかった。栃木県で放鳥した場所と足環が回収された場所との間の直線距離を算出したところ,それほど大きな値は得られなかったが(平均で14.6km),40km以上移動したと思われる個体が複数個体存在し,最高で87km移動した個体もあった。今回の結果から,現在の放鳥方法では放鳥の所期の目的を達成することは困難と思われる。そこで,オスの放鳥場所をこれまでの鳥獣保護区から可猟区にすることやメスを繁殖期直前に放鳥するなどの改善策を提言する。
  • ローベン ヨセフ, ピオトル テュリヤノウスキー
    2002 年 34 巻 1 号 p. 89-95
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    観察種数は,保護すべきある場所の価値を知る上で,他所と比較しうる相対的な指標の一つである。従来,種の多様度に関連したほとんどの分析は,繁殖個体数と繁殖地に集中して行われている。しかし,鳥類の渡りが集中する所は,保護と管理を実施すべき場所として繁殖地と同様に重要である。この例として,重要な渡りが集中するイスラエルのエイラットで1984~2000年に行われた鳥類標識調査結果を提出する。筆者らは,イスラエルは3つの大陸の連結地点に位置するので,毎年,新記録種を得やすいと仮定した。17年間に268種139,354個体が標識放鳥され,このうち,205(76.5%)種が通過種,41(15.3%)種が繁殖種22(8.2%)種が迷鳥であった。年捕獲種数と調査日数には高い正の相関(r2=0.857,P=0.014)が認あられ,年記録種数と捕獲個体数との間にも有意な相関があり,累積記録種数は全調査期間を通じて対数的に増加した。年記録種数の最大の増加は,初年度と次年度間で記録された。全調査期間を通じ新記録種数の変動は,有意ではなかったが,減少傾向にあった。さらに,初年度と次年度の間の相違を除けば,この関係は有意ではない。これはエイラットでは新記録種を捕獲する機会が常に同じなのを意味している。結論として,1つの鳥類標識ステーションでは最初の3年以内に最大種数を捕獲でき,以後は毎年,2,3種の新記録種が捕獲できることが期待される。そのため,エイラットでは来たる10年間に20種の新記録種が捕獲できると期待してよいであろう。
  • 米田 重玄, 上木 泰男
    2002 年 34 巻 1 号 p. 96-111
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    福井県丹生郡織田町笈松にある環境庁織田山1級鳥類観測ステーションでは,山地性の小鳥類の渡り状況を把握するために標識調査を1973年から,毎年10月中旬から11月上旬までの期間に継続的な調査を行なってきた。調査は,毎年ほぼ一定の枚数のカスミ網を場所を定めて設置し,状況に応じて最大の捕獲効果が得られるように,テープレコーダーで鳥を誘引し,捕獲される鳥の捕獲数•捕獲時期や種構成の年毎の変化を調査してきた。1973年から1996年までの24年間の秋の標識調査では,総放鳥数は合計75種71,416羽であった。もっとも多いのはカシラダカとアオジの2種で総放鳥数の約53%になった。上位10種は,上記の種の他,メジロ,シロハラ,メボソムシクイ,マミチャジナイ,ウグイス,シジュウカラ,ツグミ,アトリであり,合計放鳥数は総放鳥数の90%を占めた。75種のうち毎年放鳥記録があったのは,16種あった。年毎の標識放鳥種数は,21~54種で平均40.0種であった。各年の調査期間が異なるため,ほぼ毎年調査を行なった17日間について,1日の平均捕獲数を年毎に比較した。この期間の放鳥数の多かった上位25種について,種ごとに1日の平均捕獲数を年度別に増減を見て,1970年代から1980年までと,伐採によって環境の変わった後の1983年から1996年との間で比較した。その結果,種による個体数の増減は,(1)有意に減少傾向が見られる種(カシラダカ,メジロ,アトリ等9種),(2)有意に増加傾向が見られる種(アオジ,クロツグミ),(3)放鳥数に有意差がない種(メボソムシクイ,エナガ,ムギマキ等14種),(4)(3)の種のうち年変動が激しい種(ウソ,ルリビタキ,キビタキ等4種),に分けられた。増減の変化が特に大きかったカシラダカとアオジの放鳥数の変動は,他の調査地との比較によって,大規模伐採の影響が示唆された。1970年代と1990年代とを比較すると,1970年代に比べて1990年代では種数で9種減少し,放鳥数では約半分となった。特に,カシラダカ,アトリ,ツグミについては,1990年代には1970年代に比べて100分の1から10分の1の放鳥数であった。いっぽう,アオジ,シロハラについては1970年代よりも1990年代の方が多かった。1970年代に織田山1級観測ステーション周辺で行われた大規模な伐採が,環境を大きく変化させ,標識鳥の種構成や,個体数を変化させたと考えられるが,鳥種によって変化の仕方が様々であった。しかし,全体的に言って種の多様性が少なくなったと考えられた。
  • 紀宮 清子, 鹿野谷 幸栄, 安藤 達彦, 柿澤 亮三
    2002 年 34 巻 1 号 p. 112-125
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    1990~2001年にかけて,東京都千代田区皇居及び港区赤坂御用地でカワセミの延べ44回の繁殖例(繁殖試行を含む)を観察した。1繁殖期間中の繁殖回数は1~3回(平均1.82回)で,2回以上の場合,ほとんどのつがいが同一巣穴を使用した。1992年から実施した繁殖個体,巣立ち雛への標識調査より,繁殖期間中,皇居では2つがい,赤坂御用地では1つがいが生息し,同つがいで2年以上,個々の繁殖個体については3~4年繁殖活動を行ったと推定される事例があった。皇居内では,直線距離100~180mの異なる2営巣地間で4回の同時期繁殖が行われたが,この最短距離値がヨーロッパや国内の値と比しても非常に短距離であり,また,皇居•赤坂御用地両地区とも,繁殖時の営巣地で時々余剰個体と思われる個体が観察されたことより,更なる営巣地の増設による調査地内の繁殖個体数が増加する可能性は高いと思われる。
    繁殖期間中に雄個体が,皇居から赤坂御用地へ移動し,両地区で繁殖を行った例が1例。両地区での平均産卵数は6.44卵,平均巣立ち雛数は6.23羽で,ヨーロッパや国内の平均値とほぼ同値であり,また産卵数,巣立ち雛数に大差がないことより巣内における卵や雛の損失は少ないと推定される。両地区で著者らが標識したと判断された個体が,調査地外で繁殖活動を行っていたことが確認された例は2例あり,1例は1996~97年皇居で繁殖した雄が,約24km離れた清瀬市金山緑地公園で3回繁殖し,もう1例は,皇居または赤坂御用地で繁殖もしくは巣立ったと思われる個体が西に約2kmの明治神宮内苑で求愛給餌を行っていたことが観察されている。
  • 吉安 京子, 尾崎 清明
    2002 年 34 巻 1 号 p. 126-135
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    1975年1月~1976年2月と1976年8月~1977年1月に小櫃川前浜干潟においてシロチドリの採餌生態を解明するために,個体数調査,行動観察,糞の分析,底生動物から検討を加えた。個体数の季節変動をみると1~2月と7月中旬~9月中旬に2回のピークが見られ,後者は期間•個体数ともに前者より大きかった。また,12月には大きな個体数の出入りはなかったと推察される。1975~1976年と1976~1977年を比較してもほぼ同様の傾向が見られた。行動観察からは昼間の干潮時において採餌に費やす時間の割合が,調査期間を通じて平均86.4%であり,12月中旬以降にはさらに採餌の割合が増加し,それに対応して主に休息の割合が減った。この事から本種は本調査地では主に採餌に費やしていることが示唆された。カニ類の割合は直接観察と糞の分析では39.8~66.3%であるのに対して底生動物では7.2~10.8%であり,ゴカイ類の割合は13.3~68.9%に対して64.8~85.8%となった。このことはシロチドリがカニ類を選択して採餌していることを示唆している。もしくはシロチドリは泥表面上の餌を採るため,餌動物の泥表面上での活動状況を反映しているとも考えられる。また,カニ類の内コメツキガニの割合は直接観察,糞の分析,底生動物のいずれも88%以上を占め,調査期間中シロチドリは餌動物として主にコメツキガニとゴカイ類を餌として食べていたと考えられる。
  • 尾崎 清明, 馬場 孝雄, 米田 重玄, 金城 道男, 渡久地 豊, 原戸 鉄二郎
    2002 年 34 巻 1 号 p. 136-144
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    沖縄本島北部のやんばる地域において,ヤンバルクイナの分布を,音声プレイバック法を用いて調査し,結果を過去の調査結果と比較した。その結果1996~1999年は,調査した95メッシュのうち49メッシュでヤンバルクイナの生息が確認され,確認できたメッシュの割合は51.6%であった。2000~2001年にヤンバルクイナの生息が確認されたのは,調査した255メッシュのうち116メッシュでその割合は45.5%であった。生息域の南限が,1985~1986年からの15年間に約10km北上し,生息域の面積は約25%減少したものと考えられた。一方沖縄県によってマングースの駆除が実施されたが,捕獲された地域はヤンバルクイナが見られなくなった地域と一致することがわかった。このことから,ヤンバルクイナの生息域の減少には,マングースが関与していることが強く示唆された。
  • 清田 雅史
    2002 年 34 巻 1 号 p. 145-161
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    延縄漁業は浮魚や底魚を漁獲する一般的な漁法である。近年延縄漁業における海鳥類の偶発的捕獲が世界的な問題になっている。海鳥の偶発捕獲が発生するのは,大部分が延縄を投入中の漁船の近くであり,投入直後の釣餌を海面付近で食べようとして海鳥が釣針に掛かる。表層で拾い食い(scavenging)型の採食を行うアホウドリ類•大型ミズナギドリ類が捕獲されることが多く,これら表層採食性大型海鳥類が多数分布する各大洋の温帯から極域にかけて問題が発生している。1980年代から1990年代に南極の海洋生物資源の保存に関する条約(CCAMLR)やみなみまぐろの保存のための条約(CCSBT)などに基づく地域漁業委員会において海鳥の偶発捕獲問題が取り上げられ,軽減法が導入されるようになった。現在考案されている軽減法は,偶発捕獲が投縄中の漁船付近の海面表層で発生すること,アホウドリ類が飛行中の巧みな方向転換や潜水を苦手とすること,などの特徴を利用したもので,1)船尾からのヒモの曳航や爆音,放水を用いて鳥を近づけないようにする,2)釣針の沈降速度を改善し早く餌を沈める,3)水中投縄装置,4)夜間投縄,5)視認性•誘引性の低い餌の使用,6)魚屑の投棄の制限,などがある。偶発捕獲の軽減は,海鳥による釣餌の損失を減らし漁獲効率の向上に役立つため,漁業者が受け入れる素地が十分ある。各国は軽減法の技術開発と並行して啓蒙普及や指導に力を入れ普及に努めている。FAOは,責任ある漁業の行動規範に則り各国が偶発捕獲の削減へ向けて努力するよう求めており,延縄漁業によって偶発的に混獲される海鳥の削減に関する国際行動計画を1999年に決議し,関係各国へ国内行動計画の策定を促した。さらに便宜置籍船のように国際的な取り決めを遵守しない漁業体を排除するための国際協力も必要とされている。
  • ブラジル マークA, シャーガリン イェフゲニ
    2002 年 34 巻 1 号 p. 162-199
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    オオハクチョウ(Cygnus cygnus)の生息域の大半は,ロシアおよびその周辺の旧ソ連邦共和国の境界内に含まれている。従来,本種に関する研究の多くは,ヨーロッパと日本で行なわれてきたが,1980年以降,ロシアでもかなりの量の研究が行なわれるようになった。これらの研究の大半はロシア国内の論文誌,それも地方の論文誌で発表されることが多いため,ロシア以外の研究者がこれらの文献に接したり,入手したりする機会は非常に限られている。このたび私たちは,本種を対象とした,ロシア国内の4地域における文献を整理,検討した。
    そして,これら4地域:1)ロシア西部(ウラル山脈の西側)2)シベリア西部(ウラル山脈東側からエニセイ川まで)3)シベリア中東部(エニセイ川からレナ川まで)4)ロシア極東部(レナ川からベーリング海まで)における本種の個体数,繁殖生態,越冬地の範囲,渡り,換羽行動についても,おおよその全体像を求めてみた。この4地域の面積はいずれも,ヨーロッパ個体群が占有する面積とほぼ同じ,あるいははるかに上回っているかである。また,現在,個体群の大きさに関する正確な情報が入手できるのは,この4地域のみである。なお,本号ではロシア西部とシベリア西部,次号ではシベリア中東部とロシア極東部を報告する。
    ロシアのオオハクチョウ個体群は大きく,おおむね安定している。また,北に向かって生息域を拡大しつつあると推定される。これらの個体群は,生息環境の撹乱や悪化,生息地の消失,狩猟などさまざまな人為的影響に悩まされているが,場所によっては,先に述べたような否定的影響が減少して,繁殖地を取り戻しつつあるところもある。ロシアのオオハクチョウは,北西部のコラ半島から東部のチュコト半島のアナディル渓谷とカムチャツカにかけて分布している。繁殖域の北限は通常,北緯67~68度付近であるが,場合によっては北緯70度まで,まれに北緯72度まで北上して繁殖した例があり,繁殖域の北限が徐々に北上しつつあるという状況証拠にもなっている。ヨーロッパロシア西部におけるオオハクチョウの繁殖域の南限は北緯62度であるが,サハリンやカムチャツカでは北緯50~55度まで南下する。西部のオオハクチョウは北緯47~50度付近まで南下して越冬するが,最も南の越冬地は日本にある。これは気候的な理由によるもので,日本では北緯35~40度にかけての低緯度地域に多数の個体が越冬しているのが観察される。ロシアではオオハクチョウは,タイガ北部と森林ツンドラおよびツンドラの一部で繁殖する鳥である。オオハクチョウの個体数と生息域は,20世紀半ばに生じた人為的影響により,一部の地域,特に西部で,19世紀から20世紀初頭のレベルにまで減少した。しかしながら,20世紀後半になるとオオハクチョウはかつての分布域を取り戻し始めた。
    推定個体数は同一地域でも報告によって大幅に異なる.例えば,ロシア西部とシベリア西部の地域での個体数は1万羽程度から10万羽以上と推定されている(Ravkin 1991, Rees et al.1997)。このため,全個体数を推定することは事実上不可能である。最大のオオハクチョウ生息地であるこの地には,かなりの研究の余地がある。カムチャツカ,日本,朝鮮半島および中国における越冬個体数から推定すると,ロシア極東部には約6万羽が生息していると考えられる。世界のオオハクチョウの大多数はロシア国内で繁殖を行なうが,そのほとんどはロシア国境を越え,バルト海,カスピ海,日本海周辺などの近隣の国々で越冬する。渡りの時期は地方によって異なるが,少なくとも秋の渡りは,急激な気温の降下,特に日中の気温が5°Cから0°Cに降下することが引き金になっているらしい。ロシア各地で得られた記録からは,春と秋の渡りにいくつかの波があることがわかる。春の渡りでは,前半はつがいや家族が優勢で,後半は非繁殖個体が多くなる。秋には非繁殖個体のほうが繁殖個体より早めに渡り始める。これは,初期の渡りの群れには幼鳥が少なく,後半になるとつがいや家族,ヒナ連れの群れが多くなることからもわかる。生息域の西側では,オオハクチョウが,コブハクチョウ(Cygnus olor)やコハクチョウ(Cygnus columbianus bewickii)と一緒に渡りをしているのが観察されることもある。また東側では,コハクチョウと同じ中継地点を利用することが多い。
    現在のロシア国境内におけるオオハクチョウ繁殖地は広く,在住のハクチョウ研究者は少ない。そのうえ,交通の便の悪い地域が大半という条件下では,最低限の基礎情報すら得られない地域があっても驚くに値しない。それにもかかわらずここ数十年の間にロシア国内で多数の論文が発表されていることは,素晴らしいことである。
  • 浅川 満彦, 中村 茂, ブラジル マークA
    2002 年 34 巻 1 号 p. 200-221
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    本総説では,まず緒論で感染症と非感染症の性質の違いについて述べ病原生物は人工的な中毒物質とは異なり,自然界で増殖することが可能なため,根本的な解決がより難しいことを指摘した。また,アヒルペスト,ニューカッスル病,鳥コレラなどが北米で発生し,非常に多数の野生のガン•カモ類やハクチョウ,ウを死滅させたが,その遠因として環境の人為的改変であることも指摘した。日本の自然環境は,明治維新以降,著しい改変が進行しており,飛来する水鳥類や野鳥の個体数は急減したが,最近,増加傾向に転じている。しかし,同時に,日本の飛来地において多数個体の一極集中化,高密度化を引き起こしている。これは,感染症の発生という点からみると,非常に危険な状態にある。東アジアを主分布域にしているガンカモ類やツル類では,その個体群の大部分が日本で越冬する種も少なくないことから,種の保全活動において,日本での対策が希求される。よって,日本およびその周辺地域で報告されている,あるいは発生するであろう野生鳥類の感染症と寄生虫症の発生状況把握と病原体の生態などは保護活動において重要な知見である。そこでこの総説では,これまでに日本で発生した,あるいは将来,発生が懸念される鳥類の感染症あるいは寄生虫症について,病原生物(ウイルス,細菌,真菌,原虫,蠕虫および節足動物)別に分け,概要を述べることにした。
    第2節では,日本産鳥類相の変化について概略を紹介した。ここ半世紀ほどで,約50種の鳥類が,新たな日本における分布種として追加されたが,今後,同様に東アジア,太平洋地域,北米などからの種の流入が予想される。また,地球温暖化現象やアジア地域における急激な経済活動活性化に伴う人為的な環境改変などが作用して,個々の種の地理的分布なども変化していくことも考えられる。このような鳥類相の変化は新たな病原生物の日本への侵入も引き起こすことも考えられるので,警戒が必要である。
    第3節以降では,病原生物の分類群ごとに総説を展開した。まずウイルスは,DNAウイルスとRNAウイルスとに大別され,前者にはガンカモ類に病原性の高いヘルペスウイルス科のアヒルペストウイルスが知られる。日本では未報告であるが,北米,アジア,ヨーロッパなどのカモ類(家禽含む)からの感染が懸念される。このほかのヘルペスウイルス科としては,マレック病ウイルスやツル類の封入体病ウイルスなどが含まれ,いずれも日本での発生が知られる。特に,前者は養鶏業に多大な被害を与える感染症として知られるが,その感染により腫瘍を形成し死亡したマガンが2001年10月,北海道宮島沼で発見された。日本でもある種の病原体が野鳥から検出されることは稀ではないが,その死亡例が確認されることは少なく,貴重な症例となった。RNAウイルスでは,ニューカッスル病ウイルスとインフルエンザAウイルス(鳥ペストウイルス)が重要である。特に前者により北米では,1990年代,数万のオーダーの水鳥類が死滅した。日本では,野鳥の大規模な死亡例はないが,動物園飼育種や野外のドバトなどで散見されている。この他のウイルスについては,Appendix 1に分類群ごとに列挙した。なお,最近,北米を中心に問題となっている西ナイルウイルス(Flaviviridae: Appendix 1の「RNA virus(3)ssRNA+virus参照」)の我が国における疫学調査は,空港における蚊の調査を厚生労働省が,またカラスなどの鳥類の調査を国立感染症研究所や東京都が主体となり実施中である。
    細菌性疾患としては,まず,2000年10月に韓国で発生した鳥コレラ(あるいは家禽コレラ)によるトモエガモ11,000羽以上の死亡例が注目される。この種は絶滅が危惧される種の一つであり,今後の個体数の回復が懸念されるが,日本との地理的近接性を考慮した場合,無視できない事例であった。ボツリヌス菌による中毒死亡例は,東京や埼玉などのカモ類で知られているものの,多くは野鳥が何らかの細菌の媒介者であることを前提に調査される例が多い(Appendix 2)。中には,人で問題となるオウム病クラミジアやサルモネラ菌などが不顕性感染しているので注意が必要である。最近,我が国で悪性水腫菌の一種Clostridium感染と考えられる急性出血性腸炎によるカラスの複数の死亡例が報告されている。真菌性疾患としては,アスペルギルス症が良く知られるが,ほかの属としてはCandida, Cryptococcus, Microsporum, Trichophyton, Fusarium, Ochroconis, Absidiaなどが鳥類に疾患を起こすものとして報告されている。
    原虫性疾患としては,鞭毛虫やアメーバのグループ(肉質鞭毛虫門)であるTrypanosoma, Hexamita, Histomonas, Parahistomonas, Monocercomonas, Trychomonas, Tetratrichomonas, Chilomastix, Entamoeba, Endolimaxの各属が知られ,日本では(家禽•ペットを除けば)飼育下のライチョウでヒストモナス症やトリコモナス症による死亡例が知られる。
  • 黒田 長久
    2002 年 34 巻 1 号 p. 222-227
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    ハゴロモヅルAnthropoides paradisea(上野動物園で落鳥)の筋肉写生図(1976)を整理,分析した。大胸筋には深部(profundus)(帆翔鳥類に見る)はなかった。闊背筋(latissimus dorsi)は板状で白色筋の前部と赤色筋の後部からなり,中間の膜状帯で連なる。肩先と頸基部を結ぶ小筋を肩頸筋m. collumiscapularisと名付けた(これは文献に見当たらない。前報(2002)では闊背筋前部としたので訂正しておく)。また,大腿骨基端と腰骨を結ぶ小筋を大腿転子筋m.fermor-otrochantericusと名付けた(これはハトでは膜状である)。脚筋では半膜筋m.semimembranosusと半腱筋m.semitendinosusの複雑な連繁と宇回筋m.ambiensの腱の第II,III,IV趾屈筋群への連結を図示した。なお前頸筋m.tibialis anteriorの腱は骨化している。
  • 今西 貞夫
    2002 年 34 巻 1 号 p. 228-231
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    日本では最近夏鳥の数が減少し,この夏鳥の一種のアカモズの一亜種Lanius cristatus superciliosusも北海道やその他の地域で減少している。長野県の野辺山高原の調査地で繁殖するこの亜種の1992年から2002年の11年間の繁殖個体数の変化のデータを得た。繁殖個体数は1993年に最も多く,その後1997年までは50~60羽であった。しかし,1998年にはそれまでの約1/3の20羽に激減し,その翌年から2002年までは10羽以下に減少した。調査地でのアカモズの生息環境は徐々に悪くなっているが,1997年以降特に激変していない。アカモズのこの亜種の主な越冬地の1つはインドネシアである。インドネシアでは人為的な火入れが1997年8月より大火災になり,この火災は1998年には一時下火になったが,その後も火災は続いている。この大火災の発生時期とアカモズの激減の時期が一致しているため,アカモズの1998年の激減の原因は越冬地であるインドネシアの大火災であると考えられ,その後の減少もこの火災の影響によると考えられる。
  • 浅井 芝樹, 水田 拓, 江口 和洋, 山岸 哲
    2002 年 34 巻 1 号 p. 232-239
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    最近の研究成果によって,熱帯域に生息する鳥類でも温帯域の鳥類と同様に光周期によって生殖巣の発達を制御していることが分かってきた。しかし,生理学的な繁殖準備とは別に,降雨量などによって巣作りや産卵などの繁殖行動の開始時期を調整することも知られている。本研究ではマダガスカルの落葉乾燥林に生息するアカオオハシモズがどのようなタイミングで産卵を開始するか調べた。調杏地は季節性があって雨季と乾季に分かれる。1996年から2000年の10月から12月について,一日の最高気温,最低気温,降雨量と,やり直し営巣を除いたクラッチの初卵日を調べた。また,海上保安庁の計算サービスを利用して調査地の日長を計算した。産卵が始まる直前の1週間の平均気温は年によってばらつき,その変動は年内の変動より大きい。一方,1997年を除いて,雨期の始まりである最初の降雨のあった日以降に全ての産卵が始まっていた。1997年の場合でも2番目のペアが初卵日を迎えた日に最初の雨が降っていた。また,初期降雨量の多い年ほど,同調して産卵が見られた。しかし,最初の降雨から各ペアの初卵日が観察される日数は一定しない。全体の80%のペアが初卵日を迎える日の日長と,再営巣を含むその繁殖期で最後の産卵日の日長は毎年非常に安定している。これらのことから,(1)気温の変化は産卵開始の合図とするには変化が小さすぎる,(2)日長の変化がアカオオハシモズの繁殖活動に影響を与えている,(3)雨期の最初の降雨が産卵開始のきっかけとなっており,そのときの降雨量も産卵開始に影響することが示唆された。アカオオハシモズの繁殖行動,特にその産卵に関しては,日長に基づいたスケジュールがあり,雨期の最初の降雨とその降雨量によって産卵開始日の微調整を行っているものと考えられた。
  • 茂田 良光, 平岡 考, ゴンザレス JCT
    2002 年 34 巻 1 号 p. 240-244
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    オオジシギは南西ウスリー地方,サハリン南部,千島列島南部,北海道,本州,九州で繁殖し,北半球の冬はニューギニア,オーストラリア,ニュージーランドに渡る。本種は,琉球列島,台湾,フィリピンなどからの記録がほとんどないことから,繁殖地からこれらの島嶼を経由せず太平洋を縦断して直接越冬地に渡るとされてきた。フィリピンでは1960年代後半に約70例の標識記録があるが,写真などの証拠がないこと,識別の難しいこと等を理由にフィリピン産鳥類として認められていない。我々は,ルソン島中部のカンダバ湿地でおこなった標識調査で,1994年12月20日に2羽の本種を捕獲し,それぞれ環境庁足環5A-20001と6A-12113を装着して放鳥した。これらの2羽は,測定値および外部形態,ことに尾羽の枚数(18枚)と形状から確実にオオジシギであり,フィリピンからの本種の証拠写真を伴う確実な初記録となった。この記録により1960年代の約70例の標識記録もすべてが誤認ではない可能性が出てきた。そして,琉球列島•台湾などでの捕獲記録があることを考えあわせると,従来主張されてきた太平洋をノンストップで渡るという説も見直しの必要がある。捕獲時期が12月と遅いことから,本種の個体群の一部がフィリピンで越冬している可能性もある。
  • 綿貫 豊
    2002 年 34 巻 1 号 p. 245-249
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    ウミツバメ科鳥類は一般に繁殖地で夜行性を示し,その月明かりを避ける習性は昼行性捕食者を避ける効果があるとされている。大黒島で月夜と闇夜にかすみ網でコシジロウミツバメを捕獲し,抱卵斑の特徴から繁殖個体と非繁殖個体をわけ,さらに胃内容物を採取した。月明かりのもとで捕獲数が減少したが,非繁殖鳥の比率は月明かりの日と暗闇の日で差はなかった。したがって,繁殖活動の強い要求がない非繁殖個体だけが月明かりを避ける,という仮説は必ずしも支持されなかった。胃内容物を持っていた個体の比率は月明かりの効果も時刻の効果も受けなかったが,遅い時刻に捕獲した個体ほど消化が進んだオレンジ色のオイルだけもっていることが多かった。これは,本種が夜間遅い時刻に頻繁に採食するわけではないことを示唆する。
  • 鶴見 みや古, 川端 寛樹, 佐藤 文男
    2002 年 34 巻 1 号 p. 250-256
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    Ticks often carry infectious pathogens, and ticks infected with pathogens can be transmitted to seabirds. In May 1999, a project team member contracted a fever after being bitten by a tick during a field survey of albatrosses on Tori-shima. The researcher was bitten while in the main part of the Black-footed Albatross D. nigripes colony. Serodiagnosis indicated that the patient had been affected with borreliosis. The tick species involved was collected on Tori-shima and identified (based on its morphology) as the soft tick Carios (Ornithodoros) capensis.
    A survey was carried out on Tori-shima in March and May 2000 in order to isolate the spirochete from the soft tick C. (O.) capensis, the host albatross D. nigripes and the Roof Rat Rattus rattus. We were unable to isolate Borrelia from either C. (O.) capensis, from blood or from the skin of the underside of the feet of D. nigripes, or from the ears or bladder of R. rattus. Nevertheless, ticks can be a negative factor affecting seabird reproduction. We report on the ecological status of C. (O.) capensis on Tori-shima, describe the relationship between this tick species and the various host animals on the island, and propose that surveys for ticks in seabird breeding colonies are very importance.
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