目的:食後高血糖の管理が種々の疾患を視野に置いた予防,治療で重視されている。食後血糖値を抑制する食事内容や成分の効果が検証され報告されているが,それらを相互に比較検討した例は,ほとんど知られていない。本研究では,健常な若年女性を対象として,指頭血を用いた自己血糖測定法を採用し,種々の食事方法・内容で食後血糖値を調べ,相互に比較することで有効性をAUC順位で明らかにすることを目的とした。方法:対象:女子大学学生(21歳〜23歳)41名の空腹時血糖値を測定し,血糖値上位9名(85mg/dL)を対象に,5種類の介入および血糖値測定を行った。介入内容:前日午後9時より絶食し,朝9時より開始した。1.グルコース摂取(75g OGTT) 2.基本食(米飯,ゆでタマゴ,ソーセージ,野菜サラダ,わかめスープ) 3.咀嚼増(30回) 4.野菜サラダから摂取 5.高繊維主食(米飯をライ麦パン) 血糖測定:0分(摂取前,空腹時),摂取開始より30分,60分,90分,120分に,各参加者自身で,測定を行った。各血糖値より血糖値変動曲線を作成するとともに,血糖上昇曲線下面積(AUC)を算出した。結果:41名の空腹時血糖値は,80.4±9.1mg/dL(最小値58mg/dL,最大値105mg/dL,最頻値,中央値とも79mg/dL)であった。OGTTを除く介入後の各時間における血糖値は,分散分析で30分(P=0.0043)と60分(P=0.0413)で有意差を認めた。平均のAUCでは,OGTTが最も高く,次いで基本食,咀嚼増,サラダ先の順で,高繊維主食が最も低くなった。統計学的な有意差は,OGTTとサラダ先(P=0.0091),OGTTと高繊維主食(P=0.0015),基本食と高繊維主食(P=0.0092)の間に認めた。個人ごとの介入AUC順位には違いがあり,平均AUCの順位と同じ順位になった者は8名中1名であった。考察:食事方法や内容の異なる介入は,それぞれの予測した食後血糖値の抑制効果を認めたが,個人差が大きく,血糖管理には指頭血などによるモニターを利用した個別の食事介入が効果的であると考えられた。
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