妊娠に伴う体重増加と子宮の増大による腹部の前方突出で椎間関節へのストレスが大きくなり,facet painが生じている可能性が推察される。そこで今回,模擬的に妊婦の状況を作り,腰椎・骨盤アライメントについての検討を健常女性37名(平均年齢21.8±7.0歳,平均身長159.0±4.6 cm, 平均体重55.2±9.3㎏)を対象として行った。腰椎前弯は左肩峰と左大転子を結んだ直線,および左外果2 cm前方と左大転子を結んだ直線の交わった角度で,骨盤前傾は左上前腸骨棘と左上後腸骨棘を結ぶ線分と,左上前腸骨棘と水平面を結ぶ線分とのなす角度で評価した。腰椎前弯角度の平均値は,妊婦体験ジャケット非装着で5.7±3.5°,妊婦体験ジャケット装着で10.7±5.0° であり,妊婦体験ジャケット装着が妊婦体験ジャケット非装着に比べ腰椎前弯角度の平均値が有意に大きかった(p<0.0001)。骨盤前傾角度の平均値は,妊婦体験ジャケット非装着で11.8±3.0°,妊婦体験ジャケットで24.2±5.0° であり,妊婦体験ジャケット装着が妊婦体験ジャケット非装着に比べ,骨盤前傾角度の平均値が有意に大きかった(p<0.0001)。腰椎前弯増強,骨盤前傾増大の状態が持続すると,椎間関節の重なりが強くなるために椎間関節の炎症が発生し,椎間関節性腰痛症を発症する可能性があることが示唆された。
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