日本健康医学会雑誌
Online ISSN : 2423-9828
Print ISSN : 1343-0025
31 巻, 3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著
  • 村山 久美子, 鈴木 英子, 氏家 陽子
    2022 年 31 巻 3 号 p. 347-358
    発行日: 2022/10/07
    公開日: 2023/02/01
    ジャーナル フリー

    看護師の看護実践の卓越性の関連要因を明らかにする目的で,東北・関東地方の公立病院に勤務する看護師661名を対象に,看護実践の卓越性自己評価尺度・キャリアコミットメント尺度・情緒的組織コミットメント尺度・個人要因・職場環境要因で構成する自記式質問紙調査を行った。年齢,性別,看護実践の卓越性尺度に欠損や重複がない453名から回答が得られた(有効回答率68.5%)。有効回答者の平均年齢は38.0±9.5歳,看護師経験年数の平均は16.2±9.1年であった。看護実践の卓越性総合得点の平均は121.3±19.2点,キャリアコミットメントの平均点は2.74±0.8点,情緒的組織コミットメント平均点は3.01±0.7点であった。重回帰分析の結果,調整済みR2は0.495であり有意義な結果であった。患者に対する思い入れがある者(β=0.221),看護実践を省察する者(β=0.179),臨床判断に自信がある者(β=0.136),研究成果の活用を検討している者(β=0.129),同僚からの承認がある者(β=0.128),学会や研修に参加し最新の情報を得ている者(β=0.115),新卒看護師を1年間指導した経験のある者(β=0.100)は,看護実践の卓越性が高いことが明らかとなった。看護実践の質の向上のため,これらの結果をふまえサポートしていく必要性がある。

  • 矢野 貴恵, 白井 文恵
    2022 年 31 巻 3 号 p. 359-368
    発行日: 2022/10/07
    公開日: 2023/02/01
    ジャーナル フリー

    2020年9月10日現在,日本では10の精神科単科病院で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)クラスターの発生が公表されていた。 2020年7月段階の精神科単科病院での感染症対策の状況把握のために,大阪府下の精神科単科病院に限定し,感染源対策,感染経路対策,宿主対策,COVID-19に特化した感染予防対策の4項目に関する質問紙調査を行った。その結果,感染源対策では70%の施設が十分な対策をしていることを意味する「あてはまる」と回答しており,精神科病院の構造上の特徴から換気については施設ごとの工夫が必要であった。感染経路対策では62%が「あてはまる」と回答したが,職員の行動制限については要請のみであった。クラスターの発生した前述の10施設のうち,6施設でCOVID-19の初発患者は医療職員であった。患者の行動制限や面会制限と同様に,精神科病院の医療従事者の行動制限もクラスター発生の予防には重要な対処方法になることが示唆された。

  • ─東日本大震災の避難所を経験した成熟期女性の語りから─
    及川 裕子, 常盤 洋子
    2022 年 31 巻 3 号 p. 369-379
    発行日: 2022/10/07
    公開日: 2023/02/01
    ジャーナル フリー

    災害発生時の避難所におけるウィメンズヘルスの課題について明らかにすることを目的として,2014年7月~11月(震災後3年)に成熟期女性10名を対象として,避難所の暮らしにおいて女性が健康を維持するのに苦慮した体験全般を尋ねる半構成的面接調査を行った。成熟期の女性の避難所におけるウィメンズヘルスの課題が身体的,心理的,社会的側面の割合を明確に分析するために,ベレルソンの内容分析を用いた。その結果,【月経の手当など女性特有な状況に対する困難や安堵】という身体面の課題,【女性としての身だしなみが整えられないことによる苦痛】,【安心とは言えない避難所で暮らすしかない圧迫感と苦痛】という心理面の課題,【娘の性被害のリスクにおびえる暮らし】,【震災を経験したことによる娘の健康面への影響の危惧】【震災で生活基盤を失っても娘には日常の暮らしを保障したい思い】,【母親役割を果たそうとした努力と葛藤】という社会面の課題の7カテゴリを抽出した。避難所における成熟期女性のウィメンズヘルスの課題として,月経時の対応に関する看護,女性としての自尊心を維持できるための環境を整える看護が必要であることが示唆された。また避難所における社会的要因からのウィメンズヘルスへの支援として,母親役割の葛藤への支援や娘を持つ場合の性被害のリスクへの憂慮をふまえ,日常から性被害のリスクに対する健康教育の必要性が示唆された。

  • 村上 由希, 今村 行雄, 三谷 智子
    2022 年 31 巻 3 号 p. 380-389
    発行日: 2022/10/07
    公開日: 2023/02/01
    ジャーナル フリー

    The Depression Anxiety Stress Scales(DASS)-21は抑うつ,不安,ストレスといったネガティブな感情を測定するために開発された英語の尺度である。フランス語やドイツ語をはじめ,55か国語に翻訳されているが,日本語版が日本人を対象とする集団において,精度が適正に保たれているのか,すなわち信頼性と妥当性の検証は十分になされていない。

    本研究の目的は,我々が翻訳を行ったDASS-21の信頼性と内容的妥当性および基準関連妥当性を検証することである。尺度翻訳に関する基本指針に従い,英語版DASS-21の翻訳作業を行い,日本語版を完成させた。無作為に集められた健康な女子大生を対象に質問紙調査を実施し,141名,平均年齢21.9±7.08歳から有効な回答を得た。同時に,基準関連妥当性を検証するため,すでに確立している心理尺度として,Beckうつ病評価尺度(Beck Depression Inventory-I;BDI-I),State-Trait Anxiety Inventory(STAI)状態・特性不安尺度,ストレス反応を測定する尺度(Public Health Research Foundationストレスチェックリスト・ショートフォーム;PHRF-SCL)を用いた。

    DASS-21日本語版の各下位因子の内的整合性は信頼性解析によりCronbach α係数が高値を示した。また項目尺度得点相関(Item-Total相関)の結果もそれぞれの下位因子と尺度得点で有意な相関が示されたことから,高い信頼性が示された。さらに妥当性を調べた結果,抑うつ尺度はBDI-Iと有意に正の相関関係を示し,ストレス尺度はPHRF-SCLと相関を示した。さらに不安尺度はSTAIの特性不安と弱いが有意な相関関係を示したが,状態不安とは相関しなかった。探索的因子分析を行ったところ,固有値1.0以上の3因子解が得られたが,我々が翻訳したDASS-21は海外の先行研究とは異なる因子構造を示した。

    本研究により,日本語版DASS-21の信頼性と妥当性が示された。しかし,探索的因子分析の結果から,3因子モデルよる解釈は妥当であるが,海外の先行研究とは異なる構造を示すことが明らかになった。今後,本尺度の再構成が必要であると考える。

  • ─内容妥当性と表面妥当性の検討─
    大賀 知津子, 吾妻 知美
    2022 年 31 巻 3 号 p. 390-397
    発行日: 2022/10/07
    公開日: 2023/02/01
    ジャーナル フリー

    先行研究にもとづいて作成した104項目からなる中堅看護師のキャリア・プラトー測定尺度原案の内容妥当性と表面妥当性を検討し,必要となる項目を選定した。内容妥当性の検討のため,看護管理者5名を対象に自記式質問紙調査を行った。104項目中91項目において,内容妥当性指数(I-CVI)が0.8以上を示した。I-CVIと自由記載の意見をもとに,削除,統合,修正を行い40項目とした。次に,表面妥当性の検討のために中堅看護師5名を対象に自記式質問紙調査を実施した。自由記載の意見をもとに,この40項目から1項目を削除し,表現を修正することによって,内容妥当性と表面妥当性が確保された中堅看護師のキャリア・プラトー測定尺度39項目が選定された。

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