日本健康医学会雑誌
Online ISSN : 2423-9828
Print ISSN : 1343-0025
27 巻, 2 号
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巻頭言
第27回日本健康医学会総会における特別講演のまとめ
原著
  • 小野瀬 淳一, 吉岡 泰淳, 本橋 寛子, 飯田 恭兵, 菅谷 紘一, 阿部 尚樹
    2018 年 27 巻 2 号 p. 98-104
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー

    Vialinin Aの抗アレルギー活性についてヒト骨髄性好塩基球性白血病細胞株KU812細胞からのヒスタミンおよびTNF-α放出への影響を調べたところ,抗原抗体反応誘導時においてvialinin AはヒスタミンおよびTNF-αの放出を抑制し,50%抑制率(IC50)の平均値および標準偏差は,それぞれ30.0±2.8nMおよび0.04±0.01nMを与えた。Vialinin Aの細胞内標的分子を探索するため,vialinin Aの活性アナログである5’,6’-dimethyl-1,1’,4’,1”-terphenyl-2’,3’,4,4”-tetraol(DMT)のビオチン誘導体をバイオプローブとして用いることにより分子量100kDa付近に単一のバンドを示すタンパク質が得られた。マススペクトルを用いたpeptide mass fingerprinting法により,KU812におけるvialinin Aの標的分子の一つとして脱ユビキチン化酵素の一種であるubiquitin-specific peptidase 5(USP5)を同定した。

  • 方波見 柳子, 石塚 英弘
    2018 年 27 巻 2 号 p. 105-117
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー

    目的:過重労働状態の病棟看護師はミスを犯す率が高まるとの論文報告がある。患者数が想定以上に増えた場合には過重労働が生じやすい。従って,事前に対応策を検討できれば,有用である。そこで,看護師の労働時間心臓カテーテル検査(CAG)定時検査5件に緊急検査1件が追加された場合を想定して,本著者が考案したシミュレーション手法により,病棟看護師の労働時間を1分単位で推定し,次いで無理の無い労働に改善した案を得る。

    方法:定時検査5件に緊急検査1件が加わるケースの6つのシナリオを対象に,看護師の労働を平準化するため,1)クリニカルパスが許す範囲で医療行為・ケアの実施時刻を移動,2)投入するリリーフ看護師の人数・時間数・時間帯を明確化する。また,リリーフ看護師の任務と機能として,担当看護師と同等と限定の2種類を設定し,それぞれに任務分担実施フローを作成し,医療行為・ケアが無理なく実施可能なことを確認して,改善案とする。

    結果:担当看護師と同等あるいは限定のリリーフ看護師を日勤帯の13時30分~17時30分に1名,15時30分~16時30分に同等のリリーフ看護師1名,準夜勤では16時30分~20時30分に同等あるいは限定のリリーフ看護師1名を投入する案を検討した結果,時間当り必要労働時間数が無理のない範囲に治まる改善案が得られた。また,任務分担実施フローの作成により,役割分担や待ち時間を含む詳細な情報が得られ,役割分担,待ち時間を含めて超過勤務はほぼ無い改善案であることが明らかになった。

  • 塩満 智子, 鶴田 来美
    2018 年 27 巻 2 号 p. 118-124
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,重心計測機器の労働者の健康管理や保健指導への活用を目指し,両足立位姿勢での左右バランスと体力,ロコモ度との関連を明らかにすることを目的とした。

    対象は宮崎県内のA社の労働者で,平成26年12月に実施したロコモ検診を受診した者とした。姿勢重心計測機器を用いて,立位姿勢での左右バランスと閉眼片足立ち時間を測定した。ロコモ検診では,問診,体力測定,ロコモ度テストを実施した。

    対象は27歳から63歳までの78名,平均年齢±標準偏差は46.3±9.4歳であった。性別は男性54名(69.2%),女性24名(30.8%)であった。膝や腰,股関節等の運動器に痛みがある者は23名(29.5%),1年以内に転倒した経験がある者は6名(7.7%)であった。ロコモ度については,「ロコモ度1」6名(7.7%),「ロコモ度2」1名(1.3%),「非該当」71名(91.0%)であった。

    体力測定において,長座体前屈は38名(48.6%),上体起こしは28名(37.9%),Timed Up and Goは8名(10.2%)が標準よりやや劣っていた。開眼片足立ち時間は標準より劣っている者はいなかった。左右バランスとロコモ検診との関連で,左右の足底部にかかる体重比の差(%)の絶対値である左右バランスが大きかったのは年代別で50歳代以上,転倒経験の有無では転倒経験ありの者でいずれも8%を超えていた。運動器の痛みの有無,転倒経験の有無,ロコモに該当するかどうかに関しては,有意差はみられなかったが,運動器の痛みなし,転倒経験あり,ロコモ非該当の群がそれぞれそうでない群に比べて,左右バランスが大きかった。左右バランスと体力との相関ではいずれも有意差がみられなかった。

    今回,20歳代後半から60歳代前半の労働者において,柔軟性,筋持久力の低下がみられた。姿勢重心計測機器で測定した立位姿勢での左右バランスと体力,ロコモ度との間に有意な関連はみられなかったが,左右バランスの差が大きい者の特徴として,50歳代以上であることや転倒経験があることが示された。また,ロコモ非該当,運動器の痛みはなく,移動能力に問題はなくても左右バランスの差が大きければ,将来の転倒リスクは高いことが示唆された。

    平衡性,筋持久力,柔軟性は,将来の転倒やロコモティブシンドローム予防のために必要な体力の指標である。ロコモや運動器の痛みがなく,移動能力に問題のない若い時期に,将来の転倒予防やロコモ予防の必要性を認識させるためには,姿勢を評価に加えることを検討する必要がある。労働者にはアンバランスな姿勢への気づきをきっかけに,生活を見つめ直すことの必要性を認識させ,日常生活の中で立っている時の姿勢や左右バランスを意識した身体づくりができるような保健指導が必要と考える。

  • 関根 志奈子, 土肥 眞奈, 廣瀬 幸美, 叶谷 由佳
    2018 年 27 巻 2 号 p. 125-136
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー

    目的:日本の高等学校を対象に,性教育の実態を明らかにするとともに,学校体制との関連について検討することを目的とした。

    方法:無作為抽出した10都道府県全938校を対象とし,郵送法による質問紙調査を実施した。

    結果:回収された326校の内320校(有効回答率98.1%)を分析対象とした。性教育における学校体制では管理職の支援あり,他教員の協力が得られていると回答したのは37.2~42.5%であった。年間指導計画の作成,実態調査,教員の研修を実施している割合は4割程度であった。性教育の内容では,心理・生理的側面,性行為に関連する側面の項目で37項目中18項目が8割以上の学校で実施されていた。性教育内容には管理職の支援や他教員の協力,養護教員が性教育を担当,相談可能な専門家の存在,研修の実施,保護者への説明といった学校体制が有意に関連していた。

    結論:性教育内容を充実させるには教員の性教育に関する研修への参加や,保護者説明会の機会の確保,専門家,養護教員,保健体育教員を含む教員間で連携を取ることの必要性が示唆された。

  • 本多 容子, 田丸 朋子, 米澤 知恵, 岩佐 美香, 笹谷 真由美, 河原 史倫
    2018 年 27 巻 2 号 p. 137-143
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー

    認知症患者の転倒を予防する病室環境を検討する目的で,色彩に着目した。基礎研究で視認性が高いことが確認されたピンク色のベッド柵(着色群)と,通常のベッド柵(通常群)を使用した時の姿勢の違いを,認知症で入院している高齢者10名を被験者として検討した。測定には動画解析システムを用い,歩行時の矢状面と,ベッドへの着座時の矢状面と前額面から各関節角度解析を行った。その結果,通常群より着色群の方が,矢状面から測定した歩行時と着座第2相時の,頸部の屈曲角度が有意に小さいことが明らかになった。その他のすべての関節角度には有意差はなかった。ベッド柵に着色を施すと,視認性が向上するため,ベッドの位置関係の確認が容易となり,頸部の屈曲角度が小さくなると推測された。

  • 水野 恵理子, 坂井 郁恵, 高田谷 久美子, 岩崎 みすず
    2018 年 27 巻 2 号 p. 144-150
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,知的障害を伴うダウン症候群の子どもをもつ母親が,精神疾患・精神障害者をどのように捉えているのかを明らかにすることである。ダウン症の子の親の会の会員である母親9名に対して半構成的面接を行い質的に分析した。その結果,対象者の精神障害者像はネガティブなものであった。障害をもつ者の親であっても,一般の人々と大きく変わらない捉え方をしていたことから,精神障害者を理解すること,親密さをもてないこと,偏見の払拭は容易ではないことを確認した。また,母親同士や子ども同士の繋がりをそれぞれ形成し,ピア・サポートに支えられながら養育する中で障害を有する子に向き合っていた。さらに,精神疾患を有する子の母親に比して,わが子を隠さない対象者の態度は,ダウン症候群と精神疾患に併存する障害の質や養育方向の違いによるものと考えられた。

短報
  • 中島 富有子, 窪田 惠子, 町島 希美絵
    2018 年 27 巻 2 号 p. 151-158
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,「口腔ケアの他職種連携」に対する精神科看護師の自己評価を明らかにすることである。他職種である医師,歯科医師,歯科衛生士,作業療法士との連携について,研究者が作成した尺度を使用し調査した。精神科看護師121名の有効回答のデータから,尺度の信頼性・妥当性を確認した。その後,「口腔ケアの他職種連携」に対する精神科看護師の自己評価について分析した。

    精神科看護師の多くは,口腔ケアの重要性を感じているが,実施している口腔ケアは不十分であるという自己評価を行っていた。「口腔ケアの他職種連携」に対する精神科看護師の自己評価は,医師と連携ができていない27.3%,歯科医師と連携ができていない43.0%,作業療法士と連携ができていない57.0%,歯科衛生士と連携ができていない77.7%であることが明らかになった。精神科看護師が口腔ケアを実施する上で連携している職種は多い順に,医師,歯科医師,作業療法士,歯科衛生士であった。他職種連携において,精神科看護師は1つの職種と連携すると,その他の職種とも連携する傾向があった。以上のことから,精神科看護師が他職種と連携し口腔ケアの質向上ができる取組みの必要性が明らかになった。

資料
  • 土肥 眞奈, 林 夏希, 春名 朝美, 本田 美和子, 伊東 美緒, 佐々木 晶世, 叶谷 由佳
    2018 年 27 巻 2 号 p. 159-165
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,認知症高齢者を在宅で介護している家族にユマニチュードの基本技術を伝えることで,行動心理症状,認知症高齢者の理解,介護への肯定的感情がどのように変化するのかを明らかにすることである。家族介護者1名を対象に,パイロットスタディとして半構造化面接によるインタビューを実施した。その結果,ユマニチュードトレーニング実施後に【介護の拒否がなくなり協力的な態度を実感】【認知症の視線に対する新たな気づき】【介護や将来に対する不安減少を実感】【介護に対する技術と自信の向上を実感】等7個のカテゴリーが導き出された。このことより,在宅で介護する家族にユマニチュードの基礎技術を伝えることは,対象者が捉える行動心理症状が軽減し,認知症高齢者に対する理解が深まり,介護への肯定的感情が高まり,家族介護者が抱える認知症への対応困難感の軽減に有効である可能性が示唆された。

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