日本健康医学会雑誌
Online ISSN : 2423-9828
Print ISSN : 1343-0025
32 巻, 1 号
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原著
  • 原田 小夜, 西垣 里志
    2023 年 32 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル フリー

    精神科入院患者の高齢化する中,高齢精神障害者の地域包括ケアの推進が重要である。本研究では,高齢精神障害者の支援において,精神保健医療福祉関係者と介護関係者が事例の情報を確認共有するための情報確認シートを作成するため,情報確認の必要な項目を検討し,精神科医,精神科訪問看護師,精神保健福祉士,保健師,主任介護専門員の合計13名に評価を依頼した。情報確認シートの項目は,基本情報項目(22項目)と陽性症状や陰性症状等などの具体的な症状・生活面での課題に関する項目(32項目)で構成した。13名には,項目ごとに,必要度を5件法(必ず必要5~必要ない1)で評価し,判断根拠を自由記載するよう依頼した。13名の平均値が4.5以上の項目を「必ず確認が必要な項目」,4.5~3を「確認が必要な項目」,3.0以下を「不要な項目」と判定した。全項目の平均値は4.37(SD=0.32)であり,基本情報22項目の平均値は4.59,陽性症状や陰性症状等などの具体的な症状・生活面での課題に関する32項目の平均値は4.20であり,すべての項目が平均値3.0以上を示した。個々の項目中,基本情報項目では[本人の生活・ケアの希望],[精神疾患以外の疾患の有無],[新しいサービスを導入する時に注意すること],[現在の主な症状]が4.92という最も高い平均値を示し,具体的な症状・生活面での課題に関する項目では,[本人は自分でできると思っているが,ケアの必要のある内容]4.69,[近所とのトラブルの内容・注意事項]4.62,[社会的な逸脱行動]4.57が高い平均値であった。平均点が低かった項目は,高齢精神障害者は環境による生活機能の変化が大きいことから,関係者からの情報確認だけでなく,実際の生活場面で観察する重要性が判断根拠に記述されていた。高齢精神障害者の地域包括ケアにおいては,支援者間で確実に情報確認を行う必要がある必須項目と生活場面での観察を通じてケアの必要度を判断する項目の設定が必要であることが示唆された。

  • ─過剰適応傾向とストレス関連個人特性が過剰適応状態に及ぼす影響過程─
    岩永 誠, 大山 真貴子
    2023 年 32 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル フリー

    過剰適応は職場といった外的環境へ過度に適応した状態であり,上司や同僚から仲間外れにされないようにするために過剰労働に陥る危険性がある。これまで過剰適応は個人特性の観点から検討されてきたが,外的環境へ過度に適応した状態でもあることから,過剰適応の傾向と状態に分けた検討が必要である。本研究は,過剰適応を傾向と状態に分けて測定し,過剰適応傾向やストレス関連個人特性が過剰適応状態やストレス反応に及ぼす影響過程を検討することを目的とした。調査は会社員759名を対象として実施した。その結果,過剰適応傾向が過剰適応状態やストレス反応を高めるとともに職務満足を低下させること,また承認欲求が過剰適応状態を直接高めるとともに,過剰適応傾向を媒介して過剰適応状態を高めることがわかった。一方,タイプA行動はストレス反応のみを高めることがわかった。労働負荷は直接的,かつストレス関連個人特性を媒介して間接的に過剰適応状態やストレス反応を高めることがわかった。過剰適応状態とストレス反応では影響過程に違いのあることが明らかになった。

  • 大堀 美樹, 鈴木 英子, 髙山 裕子
    2023 年 32 巻 1 号 p. 18-27
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル フリー

    発達障害児の支援者の困難を明らかにすることを目的に,医学中央雑誌およびCiNii Articlesを用いて,「発達障害児」と「困難」をキーワードにして,13文献を収集し,困難に関する記述を類似性と相違性にもとづいて分類した。キーワードに該当する研究は2008年以降に増加しており,対象13文献中12件は10年以内に公表された文献だった。13文献における研究対象者は,保育士,教員,理学療法士,看護師など多岐に及んでいた。発達障害児支援に携わる支援者の困難は,14サブカテゴリ,6カテゴリに分類され,さらに6カテゴリは,【手探りな援助展開のプロセス】,【社会性の獲得に向けた支援】,【普段と違う状況にある児への対応】,【家族への対応】の「直接的な支援の難しさ」と,【手探りな連携】,【発展途上な組織体制】の「支援体制の未成熟さ」に関するものに大別された。発達障害児支援が急速に広まるなかで,【手探りな連携】や【発展途上な組織体制】が職種を超えた支援者共通の困難として示されており,支援体制の整備は重要な課題である。発達障害児支援の法整備が進む中,支援者の困難に対するサポートは十分でないと考えられ,支援者の困難緩和の具体策を検討する必要性が示唆された。

  • 金田 明子, 叶谷 由佳
    2023 年 32 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル フリー

    サービス付き高齢者向け住宅の職員が入居者におこなっている支援内容を明らかにすることを目的に,サービス付き高齢者向け住宅の職員を対象とした半構造的面接を実施し,入居者に対する支援内容を質的帰納的に分析した。6名の語りから,支援内容として【地域住民との関係構築に向けた支援】,【家族への支援】,【よりよく生きることに向けた支援】,【アドバンスド・ケア・プランニングを促進することに向けた支援】,【介護・医療職と連携した健康面での支援】,【自立から介護状態を支えられる環境づくり】の6カテゴリを得た。本研究で得られた支援内容と先行研究で得られた支援内容をもとに,今後は,入居者が自立から重度の介護を要する状態でも居住を継続できることに向けて,サービス付き高齢者向け住宅の職員が使用できる支援指標を開発する必要がある。

  • 大重 育美, 新田 祥子, 坂本 仁美, 山口 多恵
    2023 年 32 巻 1 号 p. 34-41
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル フリー

    青年期の大学生は,6割が慢性的な疲労を自覚している。また運動習慣のない学生がいることもあり,活動量低下に伴う姿勢の安定性低下が危惧される。大学生は,普段から荷重のかかる鞄を保持することで立位バランスが不安定になりやすく,それは足部の状況が影響しやすいと考えられた。本研究では,青年期の大学生を対象に足部トラブルが疲労にどのように影響を与えているのかを主観的な疲労評価と足部測定により明らかにすることを目的とした。なお,足部トラブルとは,爪部も含む足部の異常を訴えることを指している。

    対象は,看護学生で,平均年齢19.9歳,女性78名,男性7名,BMIの平均は20.5であった。調査項目は,対象者の年齢,BMI,足部トラブル,青年用疲労自覚症状尺度(Subjective Fatigue Scale for Young adults:SFS-Y)で自記式質問紙で実施した。調査方法は,自記式質問紙の内容をGoogle Formsを用いて留め置き法で行い,足部測定はフットルック社のフットルックを用いた。フットルックでは,浮き趾,母趾角度と小趾角度を測定し,外反母趾の有無を評価した。主観的な足部トラブルの有無によって2群に分け,各項目を比較した。その結果,対象者の平均年齢19.9歳,BMIの平均20.5であった。足部トラブルのある者は45名(53%),トラブルのない者は40名(47%)であった。足部トラブルのある者45名(53%)中,爪部トラブルを有する者が14名(17%),爪部以外の足部トラブルを有する者が31名(36%)であった。主観的な疲労では,SFS-Y の6つの下位尺度の中,だるさ,活力低下,ねむけ,身体違和感の4つの下位尺度が足部トラブルのある方が有意に高かった(p<0.05)。足部測定では,外反母趾(右)および内反小趾(右)で足部トラブル有群に多い傾向であった。したがって,足部トラブルを有する青年期の看護学生は,身体違和感,ねむけ,活力低下,だるさの疲労特性を感じやすく,足部の形態上,外反母趾を有しやすく姿勢の不安定さにつながる可能性が示唆された。

  • 坂本 仁美
    2023 年 32 巻 1 号 p. 42-51
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル フリー

    Competency-based Educationの実践に向けて地域包括ケアにおける看護の役割を明確化することを目的として,医学中央雑誌web版から「地域包括ケア」,「看護の役割」を検索語として51文献を収集した。得られた文献から「地域包括ケアにおける看護の役割とは何か」,および「地域包括ケアにおける看護師はどのような職務の場にいるか」をリサーチクエスチョンとして209コードを抽出し,それらを[多職種連携と他職種支援],[地域のエンパワメント支援],[在宅療養者の健康増進と疾病・介護予防],[看護師の質の向上],[看護体制を整備し看護の継続を目指した看々連携],[在宅療養者に必要なサービスのマネジメント],[在宅療養者の人権を尊重した自己決定支援],[在宅療養者とその家族のニーズを把握し必要な看護を提供],[生活に基軸を置いた包括的な視点からの療養生活における自立支援],[在宅療養が継続できるように診療の補助行為も含めた看護ケアを提供]という10個のカテゴリに集約した。以上より,地域包括ケアにおける看護の役割とは,「多職種と連携したうえで,生活に基軸を置いた包括的な視点からの療養支援と看護体制の構築」であると結論した。今後は,本研究で明らかとなった10のカテゴリを基に「地域包括ケアにおいて看護の役割を発揮する能力」となるキー・コンピテンシーとミニマム・コンピテンシーを同定し,コンピテンシーに基づいた学修成果を設定,教育課程の編成につなげていく。

短報
  • ─高齢者ボランティア活動意欲による影響─
    杉本 萌, 山本 美由紀
    2023 年 32 巻 1 号 p. 52-59
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル フリー

    看護系1大学の2~4年生の学生242名を対象に,高齢者ボランティア活動意欲がエイジズムと認知的ソーシャル・キャピタルとにどのような関連があるのかをWeb上アンケートを用いて検討した。有効回答数は90名(有効回答率37.2%)であり,高齢者ボランティア活動に意欲有るとみなした群(意欲有り群)は19名(21.1%),意欲無しとみなした群(意欲無し群)は71名(78.8%)であった。エイジズム尺度短縮版(FSA)の「回避」における「個人的には,高齢者と長い時間を過ごしたくない」と逆転処理後の「高齢者とのつきあいは結構楽しい」とは,意欲有り群が無し群に比べて有意(p<0.01)に値が低かった。また,FSA「回避」全体の比較においても意欲有群が無し群において有意(p<0.01)に値が低かった。認知的SCとFSA「回避」との間に,やや弱めの有意な負の相関がみられた(rs=-0.394,p<0.001)。

    高齢者ボランティア参加意欲は,信頼・規範とFSA「回避」に影響することが示唆された。今後,高齢者ボランティア意欲が有る人たちが,高齢者のポジティブ面に着目した発信を行い,社会全体で高齢者を前向きな視点で捉える志向を高める必要がある。

症例・事例報告
  • ─SCAT(Steps for Coding and Theorization)を用いた語りの分析を通して─
    桧山 美恵子, 徳重 あつ子, 岩﨑 幸恵
    2023 年 32 巻 1 号 p. 60-71
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル フリー

    閉じこもり傾向にある高齢者の身体・心理・社会的側面の特性を明らかにし,看護支援を検討することを目的として,閉じこもり傾向にある高齢者2名に半構造化面接を行い,SCATの手法を用いて質的記述的に分析した。その結果,閉じこもるきっかけ,閉じこもりでの生活の実態,閉じこもりの影響などのストーリーライン,理論記述を導き出した。これらの内容から閉じこもりによって身体的な衰えの自覚や体調不調,認知機能低下の自覚,抑うつ状態が出現することや,他者との対面での直接的な交流が図れていなかったことが明らかとなった。さらに,閉じこもるきっかけとして生活に対する不安や新型コロナウイルス感染症に罹患する不安があり,不安による防衛機制から他者との接触がない閉じこもりという行動に至ったと考察した。また,数回にわたるインタビューにより閉じこもり解消に向けた行動変容が認められたため,閉じこもりでの生活を自らの言葉で語ることは行動変容につながる可能性が示唆された。これらをふまえた看護支援として①身体・心理・社会的な機能の低下を防ぐために,閉じこもりが解消できるように介入すること②閉じこもっている生活を自らの言葉で語る機会を作り,自己の現状を振り返り将来像をイメージできるように介入すること③早期に個々が持つ不安の内容を明らかにし,身体機能が維持できるよう介入することが効果的であると考えた。

資料
  • 松坂 朋佳, 齋藤 深雪
    2023 年 32 巻 1 号 p. 72-79
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル フリー

    精神科看護師の関係性のなかでの自立の実態について明らかにする目的で,東北地方の5施設の精神科病院に勤務する看護師235名を対象として,属性,関係性のなかでの自立尺度(18項目),日本版精神健康調査票12項目版(GHQ-12)などから構成した無記名自記式質問紙調査を行い,189名(有効回答率80.4%)から有効な回答を得た。関係性のなかでの自立度得点は66.9±9.4点で,一般看護師を対象にした調査とほぼ同じ得点であった。看護師のGHQ得点は3.8±2.9点で,抑うつ状態と判断される4点以上は89名(47.1%)であった。仕事を負担に感じている看護師は142名(75.2%),仕事以外の負担を感じている看護師は106名(56.1%)であった。看護師の属性と関係性のなかでの自立度得点との比較では,性別,上司の相談相手の有無で有意差が見られた。看護師の属性と関係性のなかでの自立度得点との関連では仕事の負担感,仕事以外の負担感,GHQ得点で相関が見られた。

  • 外間 直樹
    2023 年 32 巻 1 号 p. 80-88
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル フリー

    本研究は精神科入院患者の自殺に遭遇をした看護師に対する支援を行った看護師長(以下,「師長」とする)のかかわりの現状と課題を明らかにすることである。師長6名を対象に半構成的面接調査を行い質的記述的に分析した結果,自殺に遭遇した看護師に対する師長の支援は,【十分な配慮の上での確実な事実確認】,【事故にはあえて触れない気遣いと配慮】,【実施したケアの保障】,【事故後の休息の保障と負担のない業務の再開】,【継続した支援の推奨と周囲の支援へのフォロー】の5つの最終カテゴリが得られた。精神科入院患者の自殺に遭遇をした看護師に対する支援を行った師長の課題は,自殺に遭遇した看護師の苦悩へのいたわりの視点と,事故発生時における対応や再発防止のための視点が混在し,葛藤状況に置かれていたことである。また師長が自殺に遭遇した際の看護師の対応を評価することができず,どのように判断すればよいのかわからず,師長自身が行う事故発生時や再発防止に向けた対応に確信がもてない状況に置かれていたと考える。そのため事故後の対応は,医療安全管理者や精神看護専門看護師との十分な連携による,組織的で丁寧な対応が重要であると考える。

  • 井筒 深紅, 小川 夏佳, 雲 杉, 結城 美智子
    2023 年 32 巻 1 号 p. 89-96
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル フリー

    COVID-19流行下における地域在住高齢者に対して,フレイル予防プログラムを実施し,その効果を明らかにすることを目的とした。調査は2022年5月から7月の間に,1回90分のプログラムを月に1回,合計3回実施した。65歳以上の地域在住高齢者34名のうち,全てのプログラムに参加した27名を分析対象とした。各回のプログラムにおいて自記式質問紙調査(基本属性,体重自己測定頻度,栄養状態,フレイル評価)と身体測定(身長,体重,BMI, 筋肉量,体脂肪率)を行った。プログラム1回目を介入前,3回目を介入後とし,介入前後の2時点における比較検討を行った。体重自己測定の頻度は,ほぼ毎日測定する者の割合が介入前より介入後の方が有意に高かった。栄養状態の有意な変化は介入前後でみられなかったが,BMIは,対象者全体と後期高齢者において介入前より介入後の方が有意に低下した。また,体脂肪率は,対象者全体と男女および後期高齢者において,介入後の方が有意に低下した。さらに,フレイルのおそれがある状態から健常への改善がみられた者がいた。したがって,本プログラムは,客観的な体重増減と健康状態との関連を意識づけることに繋がり,栄養状態の維持・改善やフレイル予防に寄与する可能性が示唆された。

  • 齋藤 深雪, 吾妻 知美
    2023 年 32 巻 1 号 p. 97-104
    発行日: 2023/04/28
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル フリー

    スマートフォンの普及によるコミュニケーションの変化や家族形態の変化などから,看護学生の生活技術や対人関係能力の低下が指摘されて久しい。看護教育では,看護技術教育と並行して適切な生活習慣の獲得や対人関係技術の向上などを促す支援が必要となっている。そのため,看護学生の社会で生活する能力を把握する必要がある。

    本研究では,社会で生活する能力をICF(国際生活機能分類)に基づき参加と活動の両面からとらえ,肯定的な視点から生活や人生場面に関わる能力を測定する「看護学生用生活機能評価尺度(参加面)」を作成して,その妥当性と信頼性を検討した。看護系大学1年生138名を対象に,年齢などの背景を問う設問と看護学生用生活機能評価尺度(参加面)によって構成される自己記入式質問票を用いた調査を2回実施した。第2回目の調査は,第1回目の調査の1週間後に実施した。調査期間は2013年6月から7月であった。信頼性は再テスト法,折半法,内的整合性を検討し,妥当性では因子的妥当性を検討した。その結果,看護学生用生活機能評価尺度(参加面19 項目)の信頼性と妥当性を確認した。本尺度は看護学生の社会での生活や人生場面に関わる能力を測定することに有用であった。

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