近年のAIの進化により,ChatGPTのような生成AIは自然言語で対話が可能となり,教育現場での利用が増加している。しかし,この進展に伴い,クリティカルシンキング(以下CT)の低下が懸念されている。本研究の興味は,理科の授業で,AIを使いつつ,より良くCTを発揮するための要件を見出すことである。CTを誘導する学習活動モデルであるGenerative Critical Thinking(以下GCT)モデルを用いて,活動時の相互討論の相手としてAIを活用することができるかを,小学校第5学年1組と2組,2つの学級において3回の実験を通じて実践的に試した。1,2回目の実験ではAIを用いず,3回目の実験では実験方法の検討にAIとの対話を設けた。1組では2回目の実験後に実験結果のバラツキについて学級全体で討論し,2組では討論はせずに結論を出した。3回目の実験のAIとの対話では,1組の児童は,AIの回答に対して,疑問点を見つけては,さらに尋ねる姿勢を示していた。以上の実践により,生成AIがGCTモデルに基づく活動で他者の役割を果たし得ることが見出された。また学級での討論を通じて,実験のイメージをより明確に持つことで,AIを活用する際にCTをよりよく発揮できることが示唆された。
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