コンピュータ&エデュケーション
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特集「学習環境とゲーム」
  • 藤本 徹
    2024 年 56 巻 p. 12-17
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2024/12/04
    ジャーナル フリー

     学習環境とゲームの関係への関心は,パーソナルコンピューターの普及以前からその時代の技術とともにさまざまな研究や実践の原動力となってきた。教材としてのゲームの導入,ゲームの遊びの中の学びの理解,ゲーム要素を教育に取り入れるゲーミフィケーションの取り組みなど,ゲームと学習の関係を捉える視座や目的に応じた研究が行われ,様々な知見が蓄積されてきた。ゲーム開発技術やゲームデザイン手法の発展により,以前の枠組では収まらないゲームの遊びの進化も見られる。本稿では,教育・学習へのゲームの導入に関する主要な研究分野であるゲーム学習(Game-based learning)のこれまでの研究動向や社会への普及状況を概観する。そして,以前から指摘されてきた主要な課題であるゲームの学習への影響に関する理論的な枠組の研究と,学習効果の評価手法に焦点を当てて,研究の進展状況と今後の研究課題を検討する。

  • ―アナログゲーム・脱出ゲーム・クロスリアリティの観点から―
    福山 佑樹
    2024 年 56 巻 p. 18-23
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2024/12/04
    ジャーナル フリー

     シリアスゲームなどの普及によってゲームを教育・学習に取り入れるという考えは広く受け入れられるようになり,また過去の研究からゲーム学習には学習効果やモチベーションの向上に一定の効果があることも明らかになっている。本論文ではゲーム学習の中で注目すべきテーマとしてアナログゲーム,脱出ゲーム,クロスリアリティを利用したゲームの3つを設定し,それぞれのテーマの現状と展望を述べることでゲーム学習の新しい潮流を紹介する。

  • ―シリアスゲーム,新たな可能性を切り拓く―
    シン ジュヒョン
    2024 年 56 巻 p. 24-30
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2024/12/04
    ジャーナル フリー

     本稿は,シリアスゲームの登場とその展開を踏まえ,教育分野における新たなシリアスゲームの可能性とそれに対する人文社会学的な研究の可能性を探求することを目的とする。シリアスゲームは1970年にアメリカで初めて登場して以来,2000年代前半から欧米やヨーロッパを中心として展開されてきた。東アジア諸国でもCOVID-19の影響で教育分野のデジタル化が急速に進んだことで,日本と韓国で再びシリアスゲームの開発と活用への関心が高まっている。また,この動向により,シリアスゲームを取り巻く社会文化的な文脈や受容に関する研究も求められている。そこで本稿では,まずシリアスゲームの展開とその背景にある要因を整理する。次に,教育分野における新しいシリアスゲームの動向に焦点を当て,それらのシリアスゲームの課題とそれに対する開発者側の工夫について検討する。それを通じて学際的なシリアスゲーム研究による課題解決の論点を提示する。

  • 標葉 靖子, 長瀨 瑞季, 手塚 若菜, 武井 菜織子
    2024 年 56 巻 p. 31-36
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2024/12/04
    ジャーナル フリー

     近年,人工知能の活用をはじめとするデジタル化や脱炭素化といった社会変革の実現が喫緊の課題とされるなか,科学者・技術者だけでなく,一般市民を含む多様なステークホルダーが「科学技術と社会の関係深化」のために対話・協働して科学技術イノベーションを推進することが重要だと考えられている。本稿では,文系女子大学生を対象とした「科学技術と社会をつなぐシリアスゲームデザイン」授業について紹介するとともに,科学技術に関わることに関心を持ち,その協働プロセスに積極的に関与しうる文系人材を育成することを目的とした教育実践でのシリアスゲームの可能性について考察する。

実践論文
  • ―精神看護学教育における初学者を対象とした教材の有効性―
    小村 晃子, 髙見 美樹, 石垣 恭子
    2024 年 56 巻 p. 37-42
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2024/12/04
    ジャーナル フリー

     精神看護学における実習では,学生が緊張や不安から患者との関係形成に戸惑い,ケアの視点が不十分になるケースがある。今回,精神看護学初学者が精神科患者の心情に触れるためのアバター患者の語り動画教材を作成し,文字教材との比較をもって検証した。表情や話し方の変化が表現可能なアバター動画教材では,臨場感についての記述量が文字教材よりも約9倍多く,感情に関する多くの情報を得ていた。また,アバター動画教材と文字教材共に,学生の精神科患者のイメージを変化させた。アバター動画教材は,精神看護学の初学者が患者感情を理解するための一つの教材となり,またそれが無料アプリで作成可能ならば,多様な教材開発の礎となり得る。

  • 遠藤 直弥, 室伏 春樹
    2024 年 56 巻 p. 43-49
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2024/12/04
    ジャーナル フリー

     本研究では,平成29年告示の中学校技術・家庭科(技術分野)の内容「D情報の技術」の指導項目であるD(2)双方向性のあるコンテンツのプログラミングとD(3)計測・制御のプログラミングを複合した問題解決学習に向けて開発したスマートハウス教材を利用した学習カリキュラムを提案し,授業実践を行い事前事後アンケートによって教材の効果を検証した。授業実践を通して,本教材での学習は生徒のプログラミングに対する学習意欲の向上に寄与し,特に「実践的価値」「挑戦志向」「承認志向」の項目が顕著に高まった。また,生徒の制作例から,生活上の不便から課題を設定し,プログラムの制作ができており,解決策を構想し解決する学習が展開できたと考えられる。さらに,事後アンケートより,D(2)と(3)の技術の普及や有効性に関する項目で高い結果が得られた。これらのことから,本教材は「D情報の技術」を対象とした問題解決学習に適用できると示唆される。

  • 小林 博典, 新垣 敬子
    2024 年 56 巻 p. 50-55
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2024/12/04
    ジャーナル フリー

     本研究では,小学校のプログラミング教育に焦点を当て,プログラミング学習用のIoT教材を活用し,原理や仕組みの理解とともに,実生活との関連への認識を高めるための体験活動をベースにした授業パッケージを開発した。本研究は,この授業パッケージを用いた授業実践が,児童の動機づけに与えた教育効果について検証するとともに,参加した大学生ボランティア自身にもたらされた学びについて明らかにすることを目的とした。結果,児童は,学習した知識・技能を社会的文脈に適用できないか検討するなど,尺度として用いたARCS動機づけモデルの関連性の項目が有意に向上するとともに,自信を高め,やりがいを実感できるようになるといった効果が示された。さらに,実践に参加した学生は,児童や教師との相互作用を介した実践的な学びや,教育手法及び教材の開発に関する多角的な視点からの学びを,包括的に修得できるようになる可能性が示唆された。

  • 三井 一希, 高井 桃子
    2024 年 56 巻 p. 56-61
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2024/12/04
    ジャーナル フリー

     本研究では,教職大学院の院生を対象にICT環境を活用して海外の大学生との遠隔交流を行うプログラムを開発し,開発したプログラムが院生の国際教育に関する意識にどのように影響するか,また院生はどのように交流するのかといった交流の実相を調査することを目的とした。その結果,開発したプログラムは概ね好意的に院生に評価され,遠隔交流への自信,児童生徒に遠隔交流学習を実施させたいという意欲等が高まる可能性が示唆された。また,非同期での交流を委ねると院生は日常的に使っているツールを用いて交流を行うこと,高頻度で交流する群とほとんど交流を行わない群に二極化する傾向があることが示された。

  • 下﨑 高, 谷塚 光典, 森下 孟
    2024 年 56 巻 p. 62-67
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2024/12/04
    ジャーナル フリー

     動画教材では学習者の興味・関心を引き出すことが重要視されており様々な方法が模索されてきた。本研究ではかねてより模索されてきた動画教材による興味・関心を引き出す方法が長期的に有効なものなのか,くわえて学習者の動画教材の活用法やその要因について,約7か月の教員養成学部生の課題図書のレポート作成時における実践から検討した。その結果,96.3%の学生が任意の動画教材を活用しており,78.4%の学生が動画教材と書籍を併用して学習していることがわかった。また動画教材と書籍を併用する要因として,動画教材で学習内容の概要や重要な点を把握・理解するためや,書籍で詳しい内容に触れ自身の考えを深めるため等が挙げられた。よって,授業者は本研究で作成したような興味・関心を引き出す動画教材を活用する際に,一歩踏み込んだ学習ができるような詳細な情報が掲載された書籍や資料を同時に提示することが望ましいといえる。また,学習者の記述回答から動画教材による興味・関心の高まりが見受けられ,以前より模索されてきた興味・関心を引き出す方法は長期的に有効である可能性が高いことが示唆された。

  • ―教育現場におけるChatGPT の応用と影響に関する研究―
    後藤 勝洋, 松浦 執
    2024 年 56 巻 p. 68-74
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2024/12/04
    ジャーナル フリー

     近年のAIの進化により,ChatGPTのような生成AIは自然言語で対話が可能となり,教育現場での利用が増加している。しかし,この進展に伴い,クリティカルシンキング(以下CT)の低下が懸念されている。本研究の興味は,理科の授業で,AIを使いつつ,より良くCTを発揮するための要件を見出すことである。CTを誘導する学習活動モデルであるGenerative Critical Thinking(以下GCT)モデルを用いて,活動時の相互討論の相手としてAIを活用することができるかを,小学校第5学年1組と2組,2つの学級において3回の実験を通じて実践的に試した。1,2回目の実験ではAIを用いず,3回目の実験では実験方法の検討にAIとの対話を設けた。1組では2回目の実験後に実験結果のバラツキについて学級全体で討論し,2組では討論はせずに結論を出した。3回目の実験のAIとの対話では,1組の児童は,AIの回答に対して,疑問点を見つけては,さらに尋ねる姿勢を示していた。以上の実践により,生成AIがGCTモデルに基づく活動で他者の役割を果たし得ることが見出された。また学級での討論を通じて,実験のイメージをより明確に持つことで,AIを活用する際にCTをよりよく発揮できることが示唆された。

実践報告
編集後記
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