Fe-C
sat-Ti系溶融合金でのTiとCの溶解度を,それぞれに適した測定方法を考案し,アルゴン雰囲気下で測定した.以下にその結果を総括する.
(1) 静置拡散法を用いたアルゴン雰囲気下でのFe-C
sat-Ti系のTi溶解度は,1304℃で0.46%,1348℃で0.66%,1391℃で0.82%,1450℃で1.09%,1501℃で1.43%であり,温度依存性は次式で表される.
log[%Ti]=(-6760/
T)+3.965
なお,本測定値の妥当性は逆方向からの反応を用いた実験結果とよく一致することから裏付けられた.
(2) 静置拡散法でるつぼごと水中急冷した試料のメタル断面に見られる析出TiC粒子の生成原因を,顕微鏡観察とEPMAによるライン分析から詳細に検討した結果,これらの粒子は冷却時の凝固過程で析出したと断定した.また,黒鉛るつぼ壁面近傍に認められた粒子は平衡到達後に析出,成長したものであると判断したが,この場合,低温ほど結晶粒子の成長が大きく,高炉炉底でのTi(N,C)成長を検討する上での手掛りになると考えられる.
(3) 急速吸引急冷法を用いたアルゴン雰囲気下でのFe-C
sat-Ti系のC溶解度は,1350℃で4.81+0.178[%Ti],1400℃で4.90+0.186[%Ti],1450℃で5.03+0.181[%Ti],1500℃で5.15+0.171[%Ti]である.
(4) メタル中Ti濃度とC溶解度の関係より,C飽和状態下での相互作用助係数
eCTiを計算すると,1350℃で-0.205,1400℃で-0.209,1450℃で-0.200,1500℃で-0.195となり,その温度依存性は次式で表される.
eCTi=(-221/
T)-0.072
(5) 本測定実験より得られた熱力学的数値を用いて,Ti+C
sat=TiC(s)反応の標準自由エネルギ変化Δ
G°を計算し,-30500+13.3
Tcalを得た.
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