(1)出土鉄滓の化学成分と製鉄工程の分類
出十鉄滓の製鉄工程上の分類は,鉄滓の化学成分の分析結果によりT.FeとTiO
2との関係図,および造滓成分(Slag Component SC=SiO
2+Al
2O
3+CaO+MgO)とT.Feとの関係図から,砂鉄系製錬滓,鉄鉱石系製錬滓,砂鉄系精錬鍛冶滓,砂鉄系鍛錬鍛冶滓および付着滓に判別が可能であり,FeO-TiO
2-SiO2
2状態図に基づいて検討した結果,以下の成分範囲に分類された。
砂鉄系製錬滓は,20%≦TFe≦55%で1%≦TiO
2≦40%の範囲にあって,SC≒30%である。また鉱石系製錬滓は,30%≦T,Fe≦50%でTiO
2≦1%の範囲にあって,30%≦SC≦56%の範囲にある。
砂鉄系精錬鍛冶滓は,45%≦TFe≦65%で,05%≦TiO
2≦15%の範囲にあって,20%≦SC≦30%の範囲にある。
砂鉄系鍛錬鍛冶滓は50%≦TFe≦70%で,TiO
2≦15%の範囲にあって,SC≦20%の範囲にある。
付着滓は,T.Fe≦20%で,60%≦SC≦90%の範囲にある。
TiO
2≦0.5%では,砂鉄系と鉱石系の鍛冶滓の判別は難しいが,成分比MnO/TiO
2のグラフから判別ができる場合がある。半還元砂鉄(含鉄滓),金属鉄と鉄滓が共存している鉄塊系遺物や銃化鉄を含む不均質な鉄津の判別では,化学成分の分析結果のみでは鉄滓の分類は難しい。X線回折や顕微鏡組織観察の結果も加え,さらに資料の考古学的検討の結果も配慮する必要がある。
(2)砂鉄製錬の特徴
造滓成分をSC=SiO
2+Al
2O
3+CaO+MgOで代表し,T.Feとの関係を図示し,得られた分析データ群から平衡状態図において特定できる組成の特異点や外挿点との関係を解析した。砂鉄系製錬津のSCは,鉱石系製錬滓のSCより低くなるが,TiO
2=0%から40%に増加しても,シリカ成分は40%から30%に減少するだけで鉄滓の融体化反応が維持されていたと推定された。すなわち,砂鉄中の二酸化チタン含有量が高い始発原料であっても,融体化反応は類似の造滓成分(SC≒30%一定)と同じような温度条件(約1250℃)で可能であるという砂鉄製錬の特徴が,平衡状態図の液相線と分析データの解析から得られた。
抄録全体を表示