ガスタービンの高効率化に伴い入口ガス温度が飛躍的に上昇してきた.一方地球環境の問題から低NO
x化を図った燃焼器の開発が行われ,これに伴って燃焼器用耐熱合金の材質に厳しい要求がなされるようになってきた.そこで,この要求を満足する優れた新しい合金を統計的手法による合金設計により開発し次の結果を得た.
(1)従来から公表されている文献データなどを用い,化学組成(Ni, Cr, Co, Mo, W, Nb, Ti, Al, Fe)を独立変数,クリープ破断強さや引張性質などの機械的性質並びに比重,熱膨張係数,熱伝導率,ヤング率,比熱などの物理的性質を従属変数にとり,重回帰分析を行った.その結果,寄与率は十分に大きく,F値も高度に有意であり,化学組成より機械的性質や物理的性質を予測できる式を設定した.
(2)これらの予測式を用い構造設計に必要な材料特性を満足する化学組成を選定するための統計的手法による合金設計プログラムを作成した.このプログラムにより燃焼器用耐熱合金に最適の化学組成は22mass% Cr-8 mass% Co-9mass% Mo-3mass% W-1mass% Al-0.3 mass% Ti-Ni基であると判断された.
(3)この化学組成の耐熱合金板材を2000kg真空高周波溶解後再溶解法により製作し,その材質を調査した.その結果,クリープ破断強さや引張性質などの機械的性質,比重,熱伝導率や熱膨張係数などの物理的性質の実測値と合金設計による予測値とはよく一致することが明らかとなった.
これから本合金設計法は実用耐熱合金の開発に有効であると判断された.
(4)また,開発された耐熱合金は均一なミクロ組織を呈し加工性に優れ,燃焼器用耐熱合金として良好な性状を有していることが認められた.また,本耐熱合金は実機ガスタービン燃焼器尾筒材として多数のプラントに最長7.2×10
7s以上の長期にわたり実用されて,良好な結果を得ている.
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