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秋江 靖樹, 坂口 靖江, 楯 美樹, 石山 芳則, 杉山 賢, 藤野 明治, 杉山 篤
セッションID: O-15
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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目的:安全性薬理試験ガイドラインが通達されて3年が経過し,現在コアバッテリー試験は各機関でほぼ定型化され実施している.一方,致死性不整脈(Torsades de Pointes:TdP)の発生を予知する為のQT延長評価試験は,ICHトピック(S7B)での審議が続いており,今だ,取捨選択の段階にある.我々は,QT延長評価モデルの有用性を検討する為,無麻酔のサル・イヌ・慢性房室ブロックイヌ(AV-Bイヌ),イソフルラン麻酔イヌ,ウレタン及びハロセン麻酔モルモットにdl-sotalolを投与し,QT延長作用を比較した.方法:動物はカニクイザル,ビーグル及びハートレイモルモットを用いた(n=3∼4).麻酔はウレタンの静脈内投与またはハロセン,イソフルランの吸入により維持した.dl-Sotalolは無麻酔実験では経口投与,麻酔実験では静脈内投与とした.心電図は無麻酔実験ではホルター心電計(QR2100型),麻酔実験では長時間心電図解析装置 (QS-2200型)を用いて記録した.結果:dl-Sotalol(3 mg/kg)投与後,QTc(F)の最大延長の程度は,無麻酔AV-Bイヌ(p.o.)+55%>イソフルラン麻酔イヌ(i.v.)+30%=ハロセン麻酔モルモット(i.v.)+30%>ウレタン麻酔モルモット(i.v.)+25%の順であった.5 mg/kgを経口投与した無麻酔サル及び10 mg/kgを経口投与した無麻酔イヌのQTc(B)及びQTc(F)の最大延長はいずれも+10∼+15%程度にすぎなかった.一方,無麻酔AV-Bイヌに10 mg/kgを経口投与したところ,約+40%のQT延長を認めた時点でTdPが発生し死亡した.結論:薬物によるQT延長を検出するためには,AV-Bイヌ,イソフルラン麻酔イヌ及びハロセン麻酔モルモットが特に有用であると考えられた.
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大山 直樹, 石井 俊一郎, 柴田 博, 岡田 味世子, 井上 芳已, 杉本 次郎, 新宅 芳久, 杉山 明男, 務台 衛
セッションID: O-16
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【目的】エダラボンはフリーラジカル消去作用を有する急性期脳梗塞の治療薬である.第31回本学会において,高用量のエダラボンは,ラットにセファロチン及びグリセロールと併用投与した場合,腎障害発生に対して促進的に働くことを報告した.今回,セファロチン・グリセロール投与の前後にエダラボンをずらして投与した場合のラット腎障害に及ぼす影響について検討した.【方法】Crj:CD(SD)IGS雄ラット(10-11週齢)に,エダラボン(200 mg/kg, bid, iv)と,セファロチン(2000 mg/kg, iv)及びグリセロール(1 g/kg, sc)を絶水条件下で同時あるいは時間をずらして併用投与した.投与翌日に剖検し,腎臓の病理組織学的検査を実施した.【結果】エダラボンはセファロチン・グリセロールと同時に併用投与すると,セファロチン・グリセロールによる腎障害(近位尿細管上皮の変性/壊死)を悪化させた.セファロチン・グリセロール投与の1, 2あるいは4時間前にエダラボンの初回投与を行うと,その腎障害はセファロチン・グリセロールのみを投与した群と比較してほぼ同程度(エダラボン1時間前投与群)ないしは軽度(エダラボン2及び4時間前投与群)であり,同時に併用投与した群の病変より明らかに弱いものであった.一方,セファロチン・グリセロール投与の1あるいは2時間後にエダラボンの初回投与を行うと,同時に併用投与した場合とほぼ同程度の障害が認められた.したがって,セファロチン・グリセロールを投与する前にエダラボンをずらして投与することにより,同時併用投与によるラット腎障害の増幅作用は,軽減することが明らかになった.
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清水 俊敦, 桝富 直哉, 石井 俊一郎, 大山 直樹, 岡田 味世子, 杉本 次郎, 中山 光二, 関島 勝, 務台 衛
セッションID: O-17
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【目的】エダラボンはフリーラジカル消去作用を有する急性期脳梗塞の治療薬である.第31回の本学会において,高用量のエダラボンは,セファロチン及びグリセロールと同時にラットへ投与した場合,腎障害発生に対して促進的に働くことを報告した.そこで本実験ではエダラボンの腎障害に及ぼす作用を明らかにするために,セファロチン及びグリセロールを併用投与したラット腎についてDNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行った.
【方法】セファロチン 2000 mg/kg, iv 及びグリセロール 1 g/kg, sc を単回,エダラボン 200 mg/kg, iv を1日2回投与したCrj:CD(SD)IGS雄ラットの初回投与後24時間までの腎皮質部を経時的に採材し,Rat Expression Array 230A (Affymetrix)を用いて遺伝子発現解析を行うとともに,腎の病理組織学的検査を行った.エダラボン単独投与の場合についても同様の解析を行った.
【結果】病理組織学的にはセファロチン・グリセロール投与群で近位尿細管上皮の変性/壊死が認められた.エダラボンを併用投与した場合に病変は悪化したが,エダラボン単独投与では病理変化は観察されなかった.遺伝子発現解析においてはセファロチン・グリセロール投与群で初回投与後3時間から主としてストレス応答・細胞障害関連遺伝子群の発現上昇が認められ,エダラボンを併用投与した場合に変動幅が増大した.エダラボンとセファロチン・グリセロールとの併用投与で起こる遺伝子発現変動はエダラボン単独投与時には観察されず,腎毒性の最も強いセフェム系抗生剤であるセファロリジン単独投与時の変動に類似していたことから,エダラボンは,併用したセファロチン・グリセロールの作用を間接的に強めることで腎毒性を増悪させていることが示唆された.
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渡瀬 広崇, 堀 弥, 宮田 昌明, 永田 清, フランク ゴンザレス, 山添 康
セッションID: O-18
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【目的】2次胆汁酸lithocholic acid ( LCA ) をマウスに投与すると、肝障害が誘発される。この肝障害は、pregnenolone 16alpha-carbonitrile ( PCN ) を併用することで軽減される。また、核内受容体farnesoid X receptor ( FXR ) 欠損型雌性マウスは、肝のSt2a含量が高く、LCA誘発肝障害に抵抗性を示す。本研究では、LCAにより誘発される肝障害に対する防御因子として、Cyp3aとhydroxysteroid sulfotransferase ( St2a ) を中心に解析した。
【方法】8-12週齢の野性型、及びFXR欠損型雌性マウスに1%LCAを混餌投与し、野性型には100 mg/kgのPCNをcorn oilに懸濁させて腹腔内に投与した。肝障害は、血清AST活性を指標として評価した。胆汁酸含量をHPLCにより、薬物代謝酵素の肝含量をWestern blot 法により解析した。
【結果】血清AST活性、肝内LCA含量は、野性型に比べFXR欠損型でそれぞれ1/9、1/6の値を示し、野性型ではPCN併用により1/13、1/15に減少した。肝内St2a含量、糞中の硫酸抱合型胆汁酸含量は、野性型に比べFXR欠損型でそれぞれ50、30倍以上高く、野性型ではPCN併用により15、10倍の値を示した。肝内Cyp3a含量、肝臓のLCA 6alpha位水酸化活性は、野性型に比べFXR欠損型でそれぞれ4、3倍高く、野性型ではPCN併用により8、7倍増加した。
【考察】肝内LCA含量の減少が肝障害の軽減に寄与することが示唆された。さらに、肝内St2a含量の増加に伴い胆汁酸の硫酸抱合が亢進し、糞中へ排泄されることにより、LCA誘発肝障害が軽減されることが示唆された。また、肝内Cyp3a含量の増加により肝障害が軽減する可能性が考えられ、今後これらの機序についても検討する。
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宮田 昌明, 松田 良樹, 土屋 広行, 永田 清, フランク ゴンザレス, 山添 康
セッションID: O-19
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【目的】Lithocholic acid (LCA) により誘発される胆汁うっ帯型肝障害に抵抗性を示す核内受容体farnesoid X receptor (FXR)欠損マウスはLCAの硫酸抱合を触媒するhydroxysteroid sulfotransferase (ST2A)の発現が亢進している。この欠損マウスを用いてSt2aはLCAにより誘発される肝障害の軽減に関与することを明らかにした。LCAによる肝障害抑制は核内受容体pregnane X receptor (PXR)の特異的アゴニストであるpregnenolone 16α-carbonitrile (PCN)を野性型マウスに投与しても認められ、同時にSt2aの発現の亢進も観察される。そこで本研究では肝障害の防御因子であるST2Aの発現調節におけるFXR、PXRシグナルの関与を明らかにすることを目的とした。
【方法】雌性FXR欠損マウスと野性型マウスにFXRのアゴニストであるchenodeoxycholic acid (CDCA)を混餌 (1%) で5日間摂取させた。あるいはPCN (25 mg/kg)を3日間腹腔内投与した。ヒト肝ガン由来のHepG2細胞にCDCA を48時間処理した。マウス肝臓、HepG2 細胞のST2A mRNA、タンパクレベルをそれぞれRT-PCR, Western blot法により解析した。
【結果】CDCA処理により野性型マウスのSt2a mRNA, タンパクレベル共に有意に減少したが、欠損マウスにおいてはSt2a mRNAレベルの変動は認められず、タンパクレベルはむしろ増加した。FXRにより誘導され種々の転写因子を抑制することが知られているsmall heterodimer partner (SHP)のmRNAレベルは野性型マウスで有意に増加し、欠損型マウスでは減少が認められ、St2a タンパクとSHP mRNAレベルの間に負の相関性が認められた。HepG2 細胞にCDCAを処理すると、CDCA濃度依存的にST2A3 mRNA 及びタンパクレベルの減少が認められ、SHPのmRNAレベルは反対に増加した。一方PCN処理により野性型マウスのSt2a mRNA, タンパクレベル共に増加し、SHP mRNAレベルは減少した。CDCA処理と同様に両者の間に負の相関性が認められた。
【考察】ST2Aの発現はFXRシグナルにより抑制的に、PXRシグナルにより促進的に調節されており、肝ST2Aは一次胆汁酸のCDCA等により平常は低く抑えられているがPXRのシグナルにより誘導され肝障害の防御因子として機能することが示唆された。現在このFXR、PXRシグナルによるST2Aの調節にSHPがどのように関与するのか検討中である。
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堀 弥, 水木 朋宏, 宮田 昌明, 永田 清, フランク ゴンザレス, 山添 康
セッションID: O-20
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【目的】Farnesoid X receptor (FXR) 欠損マウスでは、Bsepトランスポーター機能が低下しているにも関わらず、St2aの発現が亢進することによって1%リトコール酸( LCA)摂取時にも肝障害マーカーの上昇は認められない。一方、血清中硫酸抱合体(SBAs)濃度の上昇は肝疾患との関連が示唆されている。そこで、SBAsとSt2a活性の関連性について検討した。
【方法】雌性のマウスに0.5%あるいは1% LCAを混餌で9日間摂取させ、血液生化学検査、血清、肝臓および糞中の 3α-OH 胆汁酸およびSBAs濃度と肝臓の各種トランスポーターmRNAを測定した。
【結果】野性型マウスに1%リトコール酸を9日間摂取させたところ血清中ALT活性の上昇が認められ、ALT活性と血清SBAs 濃度は良好な相関(r
2=0.88, n=43)を示した。一方、St2a活性の高いFXR欠損マウスに1%LCAを処置したところ、糞中のSBAs排泄量が1%LCA処置の野性型に比べて約8倍増加しているにもかかわらず、血清中SBAs濃度は増加しなかった。次に肝障害マーカーおよびSBAs濃度の経時的変化を解析したところ、C57BL/6マウスにおいてALT活性の上昇に先行してSBAs濃度の有意な上昇が認められた。
【考察】血清中SBAs濃度は肝St2a発現レベルと相関しなかった。SBAsはALT活性より先行して上昇することから肝障害の初期において増加し、血清中SBAsは鋭敏な肝障害のearly markerとなることが示唆された。SBAsの上昇の機序については肝トランスポーターとの関連性を含めて解析を進めている。
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宇野 茂之, 槙島 誠, Timothy P. Dalton, Daniel W. Nebert
セッションID: O-21
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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ベンゾ[a]ピレン(BaP)などの多環芳香族炭化水素(PAHs)は、肺ガンなどの悪性腫瘍や動脈硬化性疾患などの発症に関与している。PAHsは、多環芳香族受容体(Arylhydrocarbon receptor; AhR)を介して誘導される生体異物代謝系酵素群(CYP1ファミリー: CYP1A1、CYP1A2、CYP1B1)による代謝活性化が毒性発現に重要であると考えられているが、代謝活性化に直接関与する酵素、毒性を有する化学物質の代謝産物、その化学物質による毒性発現分子機構などは、まだ十分には解明されていない。本研究では、BaPが誘導する毒性発現分子機構へのCYP1ファミリーの役割を解明するために、
Cyp1ファミリー遺伝子欠損マウスにおけるBaP誘導毒性について解析した。BaPを経口投与したところ
Cyp1a1欠損マウスは30日以内に致死に至った。一方、野生型マウス、
Cyp1a2、
Cyp1b1欠損マウスには肉眼的な毒性所見を認めなかった。BaPの経口投与における
Cyp1a1欠損マウスに胸腺、脾臓の萎縮、組織学的検討から骨髄の毒性がみられ、免疫毒性が致死の原因であることを示唆している。興味深いことに、野生型マウスに比較して
Cyp1a1欠損マウスの肝臓、小腸、脾臓、骨髄においてBaP誘導性DNA adductsが劇的に増加した。このことは、CYP1A1がBaP誘導性DNA adducts形成の主要な酵素であるという今までの説と明らかに相反しており、他のメカニズムの関与が推察された。
Cyp1a1欠損マウスで観察された免疫毒性は
Cyp1a1/1b1ダブル欠損マウスで抑制された。これらの結果はBaPの経口投与が誘発した免疫毒性において、導誘されたCYP1A1がBaP毒性ではなく、むしろ毒性の抑制や解毒において極めて重要であることを示唆している。
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江尻 紀子, 清沢 直樹, 片山 圭一, 上塚 浩司, 中山 裕之, 土井 邦雄
セッションID: O-22
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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これまでに我々は、妊娠ラット胎盤ではCYP3A1タンパクが常在的に発現していることを示した。続いて、妊娠ラットにCYP3A1タンパクの誘導剤であるDexamethasone (DEX) およびPregnenolone-16α-carbonitrile (PCN) を投与し、母体肝、胎盤および胎児肝におけるCYP3A1タンパクの誘導について明らかにした。今回は、Phenobarbital (PB) を妊娠ラットに投与し、母体肝、胎盤および胎児肝におけるCYPの発現動態を検索した。 F344妊娠ラットを用い、妊娠13日目から16日目までの連続4日間、処置群にPBを80mg/ml/kg (PB群)、対照群に生理食塩液を0.1ml/kg (Sa群) 、それぞれ腹腔内投与し妊娠17日目に剖検を行った。母体肝、胎盤および胎児肝を採材し、9種類のCYP抗体 (CYP1A1、CYP2B1、CYP2C6、CYP2C12、CYP2D1、CYP2D4、CYP2E1、CYP3A1およびCYP4A1) を用いてWestern blot 解析と免疫組織化学的検索を行った。母体肝では、Western blot 解析でCYP3A1タンパクの有意な誘導が観察された。CYP2B1タンパクは対照群では発現が観察されなかったが、投与群では顕著な誘導が認められた。CYP2D1タンパクは有意な発現の減少が観察された。胎盤では、Western blot 解析でCYP3A1タンパクの発現のみが観察されたが、対照群と処置群の間に有意差は認められなかった。免疫組織化学的検索の結果は、母体肝および胎盤ともにWestern blot 解析の結果と概ね一致した。胎児肝では、Western blot 解析でCYP3A1およびCYP2C6の有意な誘導が観察されたが、免疫組織化学的検索では明瞭な変化は認められなかった。
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平尾 潤, 荒川 真悟, 渡辺 恭子, 伊藤 和美, 古川 忠司
セッションID: O-23
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【目的】雄ラットの肝P450酸化系酵素活性は,暗期に高く明期に低い明瞭な日周リズムを示す.この日周リズムはリズム中枢である視交叉上核(SCN)により制御されており,SCNの破壊により消失する.時計発振遺伝子の周期的発現に関して,SCNでは光が最も強力な同調因子として作用するが,肝臓では光よりも摂食がより優位な同調因子として作用することが報告されている.今回,SCNと肝臓を支配する末梢の計時機構のどちらが肝P450酸化系酵素活性の日周リズムをより優位に調律しているのかを調べるために,制限給餌条件下での肝P450酸化系酵素活性を測定した.
【材料および方法】7週齢の雄性F344/DuCrjラットを購入し,12時間-12時間の明暗条件下で個別飼育した.制限給餌する動物には点灯後2時間から8時間だけ餌を与える一方,対照用動物には餌を自由摂取させた.8日間の制限給餌の後,明期および暗期の中間の時点で動物を解剖して肝臓を採材した.得られた肝臓よりミクロソーム画分を調製し,肝P450酸化系酵素活性およびP450含量を測定した.
【結果および考察】肝P450酸化系酵素活性に関して,飽食条件下では明期と比べて暗期で有意な高値が認められた.逆に,制限給餌条件下では明期と比べて暗期で有意な低値が認められた.P450含量に関しては,両実験条件下とも明期と暗期で変化が認められなかった.これらの結果より,SCNではなく肝臓を支配する末梢の計時機構が雄ラットの肝P450酸化系酵素活性の日周リズムをより優位に調律していると考える.
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松島 裕子, 菅野 純
セッションID: O-24
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【目的】高杉らが、周産期のマウスへのエストロゲン処置が後に膣や子宮頸部の癌の発生を誘発することを見出し、その後、ヒトの母親が妊娠初期3ヵ月に比較的大量のdiethylstilbestrol(DES)に暴露された際に生まれてきた女児の膣や子宮頸部に20歳前後で明細胞癌が発生する事象のモデルとして、周産期マウス暴露系が確立している。しかし、DES daughter自体が薬用量に於ける事象であることもあり、従来の周産期におけるエストロゲン様化学物質の影響を検討した実験の多くが、大量投与による明瞭な影響を対象としており、実際のヒトの生活環境から暴露可能量な低用量域での研究は少ない。 我々は、周産期における比較的低用量の外来性エストロゲン暴露が遅発性に雌性生殖器に及ぼす影響を検討することを目的とし、DESの新生児期投与の影響を、思春期エストロゲン投与により増幅するプロトコールの開発を試み、検討した。
【材料及び方法】動物は、妊娠14日目のCD-1マウスを購入した。分娩後、雌性児8匹/母に分け、保育させた。投与は、PND(postnatal)1?5の5日間DESを0(corn oil)、0.001、0.01、0.1、1、10μg/kg皮下投与し、更に、PND18?20の3日間DESを0(corn oil)、1、10μg/kg皮下投与した。最終投与24時間後に頸椎脱臼にて屠殺し、体重、子宮重量を測定した。卵巣、子宮、膣を中性ホルマリンで固定し、パラフィン包埋、HE染色を施し、病理組織学的検査を行った。
【結果及び考察】子宮重量は、PND1?5(0.1μg/kg以上)+PND18?20(10μg/kg)において有意に減少した。病理組織学的検査では、PND1?5(10μg/kg)による多卵性卵胞、PND1?5とPND18?20との複合効果による子宮内膜reserve cell hyperplasitaが観察された。 これらの結果から、比較的低用量のDESの新生児期暴露が、性成熟過程の雌性生殖器のエストロゲン感受性に変化を及ぼし、器質的反応性にも影響を及ぼすことが示された。
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美谷島 克宏, 竹腰 進, 柿本 恒知, 小泉 治子, 正田 俊之, 岩坂 俊基, 高橋 明美, 内藤 勝, 益崎 泰宏, 宮川 義史, 長 ...
セッションID: O-25
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【はじめに】妊娠中に母親がDiethylstilbestrol (DES)を服用した場合,その女児に膣癌が発生することは広く知られている。我々はDES周産期曝露がラットの乳腺上皮の発達,細胞増殖の調節機構及び腫瘍発生に及ぼす影響について検索した。
【方法】DESの10及び100μg/kg(低及び高用量)を,妊娠12日目から出産後の分娩21日目まで母ラットに経口投与した。その雌仔ラット(F1)が7週齢に達した時点で7,12-Dimethylbenz(a)anthracene (DMBA) 100mg/kgを単回経口投与し,その4週間後にF1の乳腺を採取し検索に用いた。対照群として周産期に母獣に溶媒を投与し,F1へのDMBA処置なしの正常対照群及びDMBAを処置したDMBA単独群を設定した。F1の乳腺は病理組織学的検査に加え,免疫組織化学染色(IHC)で細胞増殖活性(ki-67及びCdk2)及びApoptosis発現について検索した。さらにTerminal End Bud (TEB)の上皮細胞をLaser Capture Microdissection法により採取し増殖因子やシグナル伝達関連因子のmRNA発現について検討した。
【結果】高用量のF1のみで性周期の異常,剖検時の下垂体重量増加及び子宮重量低下が認められた。F1の乳腺の病理組織学的検査では,高用量のみで腺房形成,乳汁分泌及び乳管の拡張が認められた。また腫瘍性小結節はDMBA処置を施した全群で認められたが,発現状況には群間で差はみられなかった。IHCによる乳腺上皮の細胞増殖活性は,DMBA単独群に対し低用量ではTEB及び導管上皮で陽性細胞が高率に確認され,高用量では腺房上皮で多数の陽性細胞が認められた。
【まとめ】DES周産期曝露はF1の乳腺上皮の分化に影響することが明らかとなった。特に低用量ではDMBA発癌の標的組織であるTEBで高率な細胞増殖活性を示し腫瘍化促進への可能性が示唆された。
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山田 智也, 坂東 清子, 井澤 保則, 斎藤 幸一, 奥野 泰由, 関 高樹
セッションID: O-26
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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M6P/IGF2RはTGFβの活性化およびIGF2の分解に関与することから、細胞増殖抑制因子として機能する。雄ラットを去勢すると、前立腺はアポトーシスが進み萎縮する。この時、TGFβが増加することが知られている。今回、アンドロゲンによる前立腺細胞の増殖制御におけるM6P/IGF2Rの関与を知るため、前立腺におけるM6P/IGF2R mRNA発現への去勢による影響を調べた。更に、(抗)アンドロゲン剤のスクリーニング法のひとつであるHershberger試験において、M6P/IGF2R mRNA解析の有用性を検討した。[方法](実験1)雄のCrj:CD(SD)IGSラットの前立腺および肝臓において、去勢前および去勢10日後までの器官重量およびM6P/IGF2R mRNA 発現量を測定した。また、去勢後4日間testosterone propionate(TP, 1mg/kg/day, sc)を投与し、非投与時と比較した。(実験2)OECD案のHershberger試験を実施した。抗アンドロゲン剤(flutamide、
p,p'-DDE)、抗アンドロゲン作用を有さない有糸分裂阻害剤(benomyl、colchicine)を10日間強制経口投与し、前立腺の重量とM6P/IGF2R mRNA の発現量を調べた。尚、いずれの実験においてもM6P/IGF2R mRNA の発現量はReal-time PCR法にて測定した。[結果] (実験1)前立腺において、M6P/IGF2R mRNA発現量は、重量の低下に先行して去勢翌日から8-10倍に増加した。これらの変化はTP投与により拮抗された。一方、肝臓ではいずれも去勢による影響はなかった。(実験2)flutamide、
p,p'-DDE 投与により、前立腺の重量は低下し、M6P/IGF2R mRNA 発現量は増加した。一方、benomyl、colchicineの投与では、前立腺重量は低下したものの、M6P/IGF2R mRNA 発現量は変化しなかった。[考察] 以上の結果から、前立腺において、M6P/IGF2R mRNA発現は、アンドロゲンにより負の制御を受けており、去勢後の前立腺萎縮に関与している可能性が示唆された。また、Hershberger試験において、器官重量のみの評価では、いわゆるアンドロゲン受容体を介する内分泌攪乱化学物質と区別できない有糸分裂阻害剤も、必要に応じM6P/IGF2R mRNA発現量を精査することにより識別が可能となり、内分泌攪乱化学物質のスクリーニングがより正確に行えるものと考えられる。
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福山 朋季, 林 宏一, 田島 由香里, 藤江 秀彰, 松本 力, 林 豊, 桑原 真紀, 榎本 秋子, 上田 英夫, 首藤 康文, 小坂 ...
セッションID: O-27
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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子宮肥大反応試験は化学物質エストロゲン様作用のスクリーニングに用いられ,経済協力開発機構主導で試験方法の開発が進められている。今回我々は,幼若および卵巣摘出ラットを用いて経口および皮下投与における子宮肥大反応試験を実施し,有用な結果を得たので報告する。
試験にはエストロゲン様作用を示唆する文献や試験成績が報告されている,メトキシクロール(MXC),2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸およびケポン(KP)の農薬3種類を使用した。動物はWistar系ラットを使用し,幼若ラットでは8週齢時に,卵巣摘出ラットでは20日齢時に3日間,経口および皮下系路とも農薬3種類と陽性対照物質(17α-エチニルエストラジオール)の投与を行った。続く4日目にBrdUを投与した2時間後に剖検および採材を行い,子宮の湿重量および内容物除去後の重量測定,子宮の病理組織学的検査,子宮上皮細胞の細胞増殖活性検査としてBrdU標識率の算出を行った。
結果,幼若および卵巣摘出ラットにおける経口投与では,MXC投与群およびKP投与群において子宮重量および子宮内膜上皮の厚さが対照群と比較して有意に増加し,用量依存性が認められた。MXC投与群およびKP投与群のBrdU標識率においても対照群と比較して増加が認められたが,分散が大きく用量依存性は認められなかった。経口投与では肝臓における薬物代謝のため,皮下投与と比較して毒性の検出感度が劣ることが少なくない。しかしながら,経口投与は農薬の主たる暴露経路と一致し,代謝産物が内分泌攪乱作用を有する化学物質の場合には特に有効な投与経路である。今回の結果では,MXCおよびKPの経口投与群において皮下投与群と比較して有意な子宮肥大反応が認められ,経口投与による試験実施の有用性が示唆された。また,幼若ラットの子宮肥大反応試験は卵巣摘出ラットと同等の成績が得られることが確認された。
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平林 容子, 川崎 靖, 淀井 淳司, 李 光勲, 尹 秉一, 金子 豊蔵, 黒川 雄二, 長尾 拓, 菅野 純, 井上 達
セッションID: O-28
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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背景: Benzene(Bz)はヒトでの白血病原性が知られている。マウスにおける白血病誘発は多年の苦心の末成功した。しかし、Bzもその代謝物もAmes試験陰性が知られ、それはこれらの疎水性に基づくとされる。そこで注目される点が、Bzの代謝過程での活性酸素種(ROS)生成であり、Bzやhydroquinone(HQ)、catechol、trans-trans muconic acidなどの代謝物に認められる顕著な染色体破砕性(clastogenesis)もこれによるものと信じられ、Bzのgenotoxicityの根拠と考えられている。ところがBzの白血病は低用量では観察されず、先のBz以外のclastogenではBzと異なり少なくともマウスでの白血病原性は認められない(但し、HQのみラットで自然発生単核白血病の頻度が上昇する)。従って、Bzの白血病のユニークな酸化的ストレス説も不明にとどまり、その白血病原性がgenotoxicityとepigenetic carcinogenicityのいずれによるかさえ明らかとはいえない。そこで行ったthioredoxin(Trx)の過剰発現(Tg)マウスを用いたBz白血病誘発実験は、その機構として酸化的ストレス原性を初めて明らかにする結果となった。
結果: 即ち、野生型(Wt)群では、Bzを300ppm間歇吸入暴露(1日6時間/週5日/26週間)することで、暴露開始後348日までに30%の胸腺リンパ腫を発症し、Trx-Tgではこれが完全に抑制される(第30回学術年会)。この分子背景として、1)Trx-TgではROS産生量が少ない:ROS量を反映するとされる2',7'-dichloro-dihydro-fluorescein diacetateの蛍光強度は、Wtではベンゼンの暴露直後から経時的に上昇するが、Trx-Tgでは全く上昇しない。2)Trx-Tgではp53の機能が亢進する:Trx-TgではWtに比べて定常状態でp21が1.36倍の過剰発現状態にある。個体レベルでの造血幹細胞動態解析を行うと、倍加時間を反映すると考えられるBrdUrd取込速度がWtより遅延し、全体のdormant分画の拡大が観察され、p53の関与する幹細胞動態の抑制が見いだされた。
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大町 康, 桑原 義和, 辻 さつき, 辻 秀雄, 伴 信彦, 柿沼 志津子, 石田 有香, 荻生 俊昭, 相沢 志郎, 島田 義也
セッションID: O-29
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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【目的】マウスの骨髄性白血病(ML)では片方の2番染色体の共通領域が高頻度に欠損していることから、同領域にがん抑制遺伝子がある可能性が示唆され、これまで、特に放射線誘発マウスMLモデルを用いたがん抑制遺伝子探索が精力的になされてきたが同定されるに至っていない。PU.1はマウスでは2番染色体共通欠損領域にコードされている造血分化の基本転写因子であるが、近年、転座により起こるMLで
PU.1の発現量が低下する、
PU.1の発現量を80%低下させたマウスではMLが起こること、X線で誘発したCBAxSLJマウスのMLでは
PU.1に点突然変異が高率に認められる(Cookら、2004)ことが報告された。今回、異なる系統であるC3Hマウスにおいてガンマ線および中性子線で誘発したMLに、
PU.1点突然変異が同様に認められるか否か調べた。【材料と方法】8週齢の雄C3H/HeNrsマウスにガンマ線あるいは速中性子線を照射し誘発したML(ガンマ線13例、中性子線10例)を用いた。解剖時に脾細胞を調整しコルヒチン添加培養メディウムで37℃1時間インキュベート後メタノールカルノア固定染色体標本を作製し、FISH法により2番染色体共通欠損領域を調べた。また、脾サンプルよりDNAを調整し、
PU.1のDNA結合ドメインを含む領域をPCRで増幅した産物のシークエンスを解析した。【結果と考察】2番染色体片側欠損はガンマ線11/13例、中性子線9/10例と何れも高頻度に認められ、さらに、
PU.1のDNA結合領域における点突然変異は中性子線、ガンマ線いずれでも2番染色体欠損例の約半数に認められた。点突然変異の多くはCookらの報告と同じホットスポットであった。今回の結果から、マウスML発生の一つの共通原因として点突然変異と野生アリルの欠失による
PU.1遺伝子機能異常があることが示唆された。
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高橋 統一, 正田 俊之, 鈴木 優典, 阿部 卓也, 大信田 慎一, 山崎 裕次, 小林 章男, 菅井 象一郎, 宮川 義史
セッションID: O-30
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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[目的]心筋トロポニンT(cTnT)は臨床試験において心筋傷害のバイオマーカーとして用いられ,非臨床試験においても心毒性評価の新規バイオマーカーとして注目されている。今回,薬物誘発性のラット心筋障害のバイオマーカーとしてのcTnTの有用性を,検出感度を指標として他の心筋傷害バイオマーカー(CK-MB,LDH
1, 2)と比較した。
[方法]6週齢の雄性F344ラットに,isoproterenolを0.1,0.2,0.6及び2mg/kgの用量で単回静脈内投与した。投与後1時間(Group 1)及び投与後24時間(Group 2)に解剖し,心臓の病理組織学的検査を行った。Group 1では投与後1時間に試験紙を用いた全血中のcTnT,血漿中のCK-MB及びLDH
1, 2を測定した。Group 2では投与後1,4及び24時間にcTnT,投与後24時間にCK-MB及びLDH
1, 2を同様に測定した。
[結果]Group 1:投与後1時間に最低用量の0.1mg/kgからcTnTが陽性反応を示した。0.6mg/kg以上でCK-MB 及びLDH
2がいずれも軽度ながら上昇した。最高用量の2mg/kgまで心臓に病理組織学的変化は認められなかった。Group 2:投与後1時間に最低用量の0.1mg/kgから,投与後4時間に0.6mg/kg以上で,投与後24時間では2mg/kgでcTnTが陽性反応を示した。投与後24時間に0.2mg/kg以上でCK-MBが,2mg/kgでLDH
1, 2がいずれも軽度ながら上昇した。0.2mg/kg以上で炎症性細胞浸潤を伴う心筋の変性/壊死が認められた。
[考察]ラットにisoproterenolを単回投与した結果,cTnTは他の心毒性バイオマーカーの変化,あるいは心臓の組織学的変化に比較し,低用量あるいは早期に陽性反応を示した。以上の結果から,全血中のcTnT試験紙測定は,心筋傷害の検出感度の観点から,非臨床試験の心毒性評価において有用であると考えられた。
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倉田 昌明, 山崎 尚子, 笹山 由紀子, 飯高 健, 福島 民雄, 崎村 雅憲, 白井 紀充
セッションID: O-31
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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(目的)Isoproterenol処置ラットを用いて,血液中の心筋障害マーカーについて検討を行なった。(実験材料と方法)IGSラット(7週齢,雄)にisoproterenol(0 [saline],0.04,0.4,4 mg/kg)を単回皮下投与し,4時間後にイソフルラン麻酔下で後大静脈より採血した。血液中のマーカーとして,LDH-2活性とCK-MB活性(血漿中総活性とアイソザイム比率から算出)に加え,血清トロポニンI量(Bayer社Centaur,DPC社Immulyze,Life Diagnostics社ELISAキットの3方法)および血中トロポニンT(Roche社 試験紙法)を測定した。また,心筋障害のステージを確認するため,心臓の病理組織学的検査と心筋再構築遺伝子(alpha- および beta-myosin heavy chain,atrial natriuretic factor)のRT-PCR測定を行なった。(結果)低用量(0.04 mg/kg)から変化を捉えたのはLDH-2,CK-MB,トロポニンI(Centaur),トロポニンTであった。測定間では,LDH-2,トロポニンI(Centaur),トロポニンTの3者間で良好な相関がみられた。他のトロポニンI測定については,Immulyzeでは検出感度が低く,ELISA法では他法との間に良好な相関がみられなかった。一方,組織学的には0.04 mg/kg以上で軽度な筋原線維変性が認められたのみであり,心筋再構築遺伝子の発現量にも変化はなく,過去の知見もあわせると,本実験条件で誘発された心筋障害は比較的初期の軽度なものと考えられた。(結論)本成績は,従来のLDH-2やCK-MBに加え,トロポニンIおよびトロポニンTが,ラットにおいて初期の心筋障害を検出できる血液中マーカーとなり得ることを示している。
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別府 奈美恵, 佐々木 篤志, 大保 真由美, 片山 誠一, 安東 賢太郎
セッションID: O-32
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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【目的】心筋の活動電位を持続的に計測する方法として,単相性活動電位(monophasic action potential 以下MAP)が知られている.また,試験動物として多く用いられている麻酔下におけるイヌのMAP測定は,テレメトリー試験などで測定する心電図波形(QT間隔)と比較すると詳細な解析が可能である.しかし,創薬の初期段階においては,多くの薬物量が必要となるためイヌを用いたMAPの測定は簡便ではない.そこで少量の薬物量で評価可能な,モルモットのMAP持続時間(monophasic action potential duration以下MAPD)を指標として,薬物のQT延長作用を検討した.【実験方法】雄性モルモット(Slc:Hartley系,5-7週齢,350-500g)を使用した.Pentobarbital 35 mg/kgの腹腔内投与により動物を麻酔し背位で固定した.人工呼吸下にて(room air,5 mL/kg,90 strokes/min)胸部左側を開胸し,吸引式MAP電極を右心室外壁に当てることによりMAP波形を測定した.測定したMAP波形の第2相から90%再分極時(MAPD
90)を評価対象とした.体表面心電図は四肢第2誘導により測定した.頸動脈にカニューレを挿入し,血圧および血圧の脈波より心拍数を測定した.また,薬物投与用として頸静脈にカニューレを挿入した.評価する薬物としてClass III抗不整脈薬である
dl-ソタロール,フェノチアジン系抗精神病薬である塩酸チオリダジンおよびbeta-受容体遮断薬である塩酸プロプラノロールをそれぞれ3用量設定し,1群4例とした.MAP波形が安定して記録できることを確認し,各パラメータの投与前値を測定した後,薬物を静脈内投与した.なお,薬物は単回投与とし,投与後5および10分に得られたデータを評価に使用した.【結果および考察】モルモットの体表面心電図ではT波の終末の特定が難しく,QTcの解析ができない例があった. 一方,QTc解析が不可能な例においてもMAPD
90の測定は可能であった.QTcの解析が可能であった個体において,MAPD
90と比較を行ったところ,臨床でQT延長作用が報告されている
dl-ソタロールおよびチオリダジンはMAPD
90およびQTcを有意に延長し,血圧および心拍数を低下させた.一方,塩酸プロプラノロールは,高用量においてMAPD
90を僅かに延長したが,ソタロールおよびチオリダジンに比べてその作用は弱かった.以上のことから麻酔モルモットの単相性活動電位の測定はイヌを用いた試験系と比較して,少量の薬物量でQT延長を評価する系として,創薬初期段階において特に有効であると考えられる.
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高原 章, 杉山 篤, 坂口 靖江, 中村 裕二, 橋本 敬太郎
セッションID: O-33
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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【目的】モルモットを用いた薬物評価におけるQT間隔補正式(Bazett、Fridericia、Van de WaterおよびMatsunagaの式)の有用性を評価した。【方法】モルモットを1%ハロセンで麻酔し、体表面心電図を記録した(n=6)。心室筋再分極相終末部を高精度に評価するため、開胸下で左心室心外膜より単相性活動電位(MAP)を記録した。洞調律および心室電気刺激(400 ms間隔)の両条件下でMAP持続時間を測定し(それぞれMAP
90およびMAP
90(CL400))、これら指標に対する遅延整流Kチャネル阻害薬d-sotalol(0.3および3 mg/kg, i.v.)の作用を評価した。各補正式におけるQTにMAP
90を代入することで補正値を算出し、心室筋再分極過程に対する直接効果を反映するMAP
90(CL400)との相関を個体毎に評価した。【結果】d-Sotalolは0.3 mg/kg より用量依存的に心拍数を減少させ、QT間隔、MAP
90およびMAP
90(CL400)を延長させた。Bazett、Fridericia、Van de WaterおよびMatsunagaの式を適用した際の相関係数は0.96以上といずれの補正式でも高い値が得られた。しかし、その中でBazettの式を適用した際の相関係数は他の式に比べて有意に低い値であった。【結論】遅延整流Kチャネル阻害作用を有する薬物をハロセン麻酔モルモットで評価する際には、Fridericia、Van de WaterあるいはMatsunagaの式を用いることが望ましいと考えられた。
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塩谷 元宏, 原田 拓真, 阿部 純子, 浜田 悦昌, 堀井 郁夫
セッションID: O-34
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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【目的】我々は既にテレメトリー送信機を埋設したモルモットを用いて,ヒトでQT延長作用が知られている薬物によるバリデーション試験を実施してきた(第31回日本トキシコロジー学会発表)。一方,一般にヒトや他の実験動物モデルにおいて,QT間隔は心拍数以外にも加齢,概日リズム等に影響を受けることが確認されている。今回我々はモルモットのQT間隔の特性をさらに明らかにする目的で,加齢がQT間隔に及ぼす影響を検討した。【方法】6週齢(若齢群,n=6)および23カ月齢(老齢群,n=4)のHartley系雌モルモットを用い,テレメトリーシステムで記録した心電図からRRおよびQT間隔を計測し,1.QT間隔の正常値,2.QT間隔の概日リズム,3.最適QT補正式(QTc算出式)について加齢の影響を検討した。さらに,E-4031(0.1 mg/kg)またはterfenadine(4 mg/kg)を静脈内投与し,QTcへの影響を比較した。【結果および考察】若齢群ではQT間隔の正常値が114±3 msecであったのに対し,老齢群では135±9 msecと,モルモットでもヒトと同様に加齢に伴うQT間隔延長が認められた。しかしながら,両群ともに明瞭な概日リズムは観察されなかった。QT補正式は,両群ともにQTc = k x QT/RR
1/2が最適であったが,係数(k)はQT間隔延長と連動して増加した。E-4031投与では両群ともほぼ同程度のQTc延長を示したのに対し,terfenadine投与では23ヶ月齢でより明らかなQTc延長が認められ,薬物に対する反応性が加齢とともに変化する可能性が示唆された。
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原 俊子, 曽根 祥子, 宍戸 信之, 蔵本 詩乃, 中野 康之亮, 田保 充康, 木村 和哉, 小林 和子
セッションID: O-35
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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【目的】近年、非循環薬のQT間隔延長作用が問題視されることが多く、創薬早期においても
in vivoでのQT評価の必要性が高まってきている。我々は、小型サルで、カニクイザルやヒトに類似した心電図が認められるコモンマーモセットの、telemetry systemによる心血管系評価の有用性をすでに報告した
1)。今回、QT間隔延長に関する本評価系の信頼性をさらに高めるために、ヒトにおいてQT間隔が延長することが知られている薬剤(陽性対照薬)およびQT間隔延長作用が極めて低いと考えられている薬剤(陰性対照薬)に対するコモンマーモセットの反応性について血中濃度とあわせて検討した。
【方法】送信器を埋め込んだコモンマーモセット(2-3歳、体重約300-400g、雌雄各2例)を使用し、非投薬時のRR間隔とQT間隔から4種の補正式(Bazett、Fridericia、Van de Water、Matsunaga)のQT補正能について、回帰分析により検討した。また、陽性対照薬としてastemizoleの10, 30mg/kgおよびd,l-sotalolの5, 15mg/kg、陰性対照薬としてd,l-propranololの30mg/kgを強制単回経口投与し、QT、RR間隔の解析を行った。
【成績】QT補正能の検討の結果、4種の補正式の中でFridericiaの補正式が最も心拍数の影響を良好に補正することが確認されたため、薬剤のQT延長評価にはこの補正式を使用した。陽性対照薬である astemizole及びd,l-sotalolでは、いずれの投与用量においてもQTcの延長が認められた。一方、陰性対照薬のd,l-propranololでは臨床薬効血中濃度を超える30mg/kgを投与してもQTcの延長は認められなかった。以上の結果から、本評価系は薬剤性QT間隔延長作用を適正に評価できることが確認された。
1)Ikuo HORII
et.al.: J.Toxicol.Sci.,27(2),123-130,2002
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佐々木 洋子, 廣安 誠, 片山 誠一, 大保 真由美, 安東 賢太郎
セッションID: O-36
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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【目的】薬物により誘発される心臓の不整脈に関して,従来考えられてきたIkr/Iksチャネルの直接的なブロックの他に,新たにチャネルタンパク質の細胞膜への移行阻害作用が注目されている.しかし,既存の
in vitro安全性薬理試験である活動電位測定試験及びhERG電流測定試験では,薬物の膜移行阻害作用を正確に評価することはできない.そこで,チャネルタンパク質の細胞膜移行阻害作用について評価可能な試験系の確立を検討した.
【方法】hERG遺伝子を導入したHEK293細胞を,hERGタンパクの細胞膜移行を阻害すると考えられている三酸化ヒ素(As
2O
3)を含む培地で一晩培養した.その後,回収した細胞からタンパク質を抽出し,hERGタンパクの発現量をウェスタンブロット法により検出した.また,hERGタンパクの膜移行阻害によって影響を受けるhERG電流量の変化を,同様に三酸化ヒ素を処理したhERG導入HEK293細胞を用いて,ホールセルクランプ法により測定した.
【結果】ウェスタンブロット法により約135kDの未成熟型hERGタンパク,約160kDの成熟型hERGタンパクの2本のバンドを検出した.細胞に処理した三酸化ヒ素の濃度に応じて,成熟型hERGタンパクの発現量が減少し,未成熟型hERGタンパクの発現量が増加した.すなわち,三酸化ヒ素によりhERGタンパクの膜移行が阻害されたことが示された.また,それに伴うと考えられるhERG電流の減少を確認した.これより,タンパク質発現量の変化と膜電流量の変化を併せて捉えることにより,細胞内におけるhERGタンパクの膜移行阻害作用を正確に評価し得ると考えられた.
また,hERGタンパクの成熟・膜移行において,シャペロンタンパクであるHsp90が重要な役割を果たしているという報告がある.本会では,Hsp90の阻害剤であるGeldanamycinを処理した結果についても,併せて報告する.
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塩田 明文, 井上 智彰, 小林 和子
セッションID: O-37
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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心毒性評価のin vitro スクリーニング系を確立するために新生子ラット心臓から分離した細胞の培養条件[単層培養(MO)、I型Collagen gel+Matrigel(CM)]を検討し、昨年度の本大会にて拍動の頻度や細胞間の接合においてCMの方がin vivoに近い状態であることを報告した。そこで今回は、心筋特異的抗体を用いた免疫組織学的評価によりMO及びCMにおける心筋細胞の分化の差を精査するとともに、既知の心毒性物質Doxorubicinに対する反応を比較した。【方法】新生子SDラット心臓を摘出し、心室を分離細切した後、collagenase及びtrypsinで処理し細胞浮遊液を調製した。分離した細胞はMOまたはCMにて培養した。培養期間中は経時的観察を行い培養開始から約1週間後、固定処理し、ギャップ結合の主要蛋白であるConnexin43に対する抗体を用いた免疫組織学的評価を行った。陽性対照にはラット心臓組織を用いた。さらにこれらの培養条件下で約1週間前培養した後にDoxorubicinを暴露させ、LDH assay及びWST-1 assayを用いて細胞毒性を比較検討した。【結果と考察】培養開始3日目頃から固定処理するまで細胞塊を形成した部分を中心に拍動が観察され、CMではより多数認められた。Connexin43の免疫染色において、CMでは細胞塊の細胞辺縁に点状の陽性反応が認められ、ラット心臓組織の結果と類似していた。MOでも一部に陽性反応が認められた。Doxorubicinによる細胞毒性はいずれの方法においてもCMでより強く認められた。これらの結果からCMはMOに比較して心筋組織への分化がより誘導されており、LDH assay及びWST-1 assayによる心毒性物質に対する感受性も高く、in vitro心毒性評価への応用が期待された。
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佐藤 至, 西川 裕夫, 齋藤 憲光, 金 一和, 大網 一則, 津田 修治
セッションID: O-38
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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【目 的】パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やパーフルオロオクタン酸(PFOA)は合成樹脂原料,撥水剤,コーティング剤など,様々な用途に使用されている。これらは極めて安定性が高いために環境中に長期間残留し,人や多くの野生動物においても蓄積が確認されているが,その毒性については十分な情報が得られていない。このため本研究ではマウスなどの実験動物とゾウリムシを用いてPFOSおよびPFOAの神経毒性について検討した。【方 法】8〜9週齢のWistar系雄ラットまたはICR系雄マウスにPFOSまたはPFOAを経口投与し,一般症状を観察するとともに超音波刺激に対する反応を観察した。また,ゾウリムシをPFOSまたはPFOAを含む種々の溶液に入れ,遊泳行動の変化を観察することにより毒性評価を行った。【結 果】PFOSおよびPFOAのマウスおよびラットに対する致死量は約500 mg/kgであった。これ以下の投与量では一時的な体重の減少または増加の抑制が認められたが,その他の一般症状に著変は見られなかった。しかし,PFOSはマウスで125 mg/kg以上,ラットでは250 mg/kg以上で超音波刺激による強直性痙攣を誘発した。PFOSによる痙攣は超音波刺激2時間前にジアゼパムまたはニフェジピンを投与しても抑制されなかった。一方PFOSおよびPFOAはゾウリムシに対して後退遊泳を誘発し,膜電位あるいは細胞内カルシウムに対する影響が示唆された。後退遊泳誘発作用はPFOAよりもPFOSの方が強かった。ジアゼパムおよび数種のCa
2+チャンネルブロッカーは高カリウムによる後退遊泳は抑制したが,PFOSによる後退遊泳は抑制しなかった。また低カルシウム溶液中ではPFOSによる後退遊泳が増強された。以上の結果からPFOSは細胞外カルシウムの取り込みによらずに神経毒性を示す可能性が示唆された。
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戸和 秀一, 鳥海 亙, 桑原 正貴, 局 博一
セッションID: O-39
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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【目的】インスリン抵抗性と自律神経系機能の変化との間には密接な関連性の存在することが推測されている.しかしながら,未だその詳細は明らかにされていない.Zucker fatty rats(ZFR)はインスリン抵抗性を有するモデル動物として知られているが,我々のこれまでの研究ではZFRは対照のZucker lean rats(ZLR)と比較して自律神経系機能に大きな差異は認められていない.そこで,本研究ではインスリン抵抗性を改善させることによって生じる自律神経系機能の変化に着目することにより,両者の関連性を明らかにすることを目的とした.【方法】あらかじめテレメトリー送信器を埋込んだ15-18週齢のZFRおよびZLRにインスリン感受性増強薬T-174(100 ppm混餌)を7日間自由摂食させた.その間,無麻酔・無拘束下において心拍数および活動量を記録するとともに,投与前日と投与1,4,7日目に24時間の連続心電図記録を行い心拍変動パワースペクトル解析により自律神経系機能を評価した.【結果と考察】摂食量にはZFRとZLRの間で有意な差は認められなかった.ZFRではT-174投与により血漿インスリン濃度は劇的に低下し,トリグリセリドも低下する傾向にあった.心拍数はZFRで投与1ないし2日後から上昇し,観察期間を通して高い値で推移した.また,心拍変動解析の結果4日目以降に低周波成分(LF)と高周波成分(HF)は有意に低下した.さらに,これらの指標における明期と暗期の差が減少することによって日内変動が不明瞭になった.ZLRではZFRに認められたような顕著な変化はみられなかった.以上の結果から,ZFRにおいてはインスリン抵抗性が改善することにより副交感神経系活動が低下するために自律神経系のバランスが交感神経系優位になるものと考えられた.
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黒岩 有一, 梅村 隆志, 増村 健一, 神吉 けい太, 石井 雄二, 児玉 幸夫, 能美 健彦, 西川 秋佳, 広瀬 雅雄
セッションID: O-40
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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動物薬として用いられているキノロン系抗菌剤のフルメキンは、マウスにおける肝発がん性が知られている。
in vitroでの変異原性は陰性であるが、近年、発がんプロモーション作用に加えて弱いながらもイニシエーション作用を持つことが報告され、コメットアッセイにおける陽性結果も報告されている。フルメキンを投与したマウス肝臓におけるマイクロアレイ解析により酸化的ストレスに関連する遺伝子発現クラスターが同定されていることから、フルメキンの発がんメカニズムに酸化的ストレスが関与する可能性が考えられる。今回、酸化的DNA損傷に起因した突然変異がフルメキンの発がん性に寄与しているかどうかを調べるため、
in vivo変異原性アッセイ動物として知られる
gpt deltaマウスを用いて、フルメキン投与による肝臓における酸化的DNA損傷レベルと遺伝子突然変異頻度の解析を行った。
【方法】C57BL/6系統の
gpt deltaマウスに肝発がん好発系であるC3H/He系統を交配させて作成したB6C3F1系統の8週令雌雄の
gpt deltaマウスに、0.4%の濃度でフルメキンを13週間混餌投与した。対照群には基礎飼料のみを同期間与えた。投与期間終了後、肝臓のDNAを抽出し、レポーター遺伝子上の突然変異頻度を解析した。さらに、肝臓の酸化的DNA損傷レベルを8-オキソデオキシグアノシン(8-oxodG)量としてHPLC-ECDで測定した。
【結果】フルメキン投与による肝臓DNA中の8-oxodG量の有意な変化は認められなかった。突然変異解析においても、点突然変異および欠失突然変異ともにフルメキン投与による有意な変異頻度の増加は認められなかった。
【結論】フルメキンの発がん作用に、酸化的DNA損傷による突然変異が関与している可能性は低いと考えられた。
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竹入 章, 三島 雅之, 田中 健司, 原田 麻子, 新倉 博文, 増村 健一, 能美 健彦
セッションID: O-41
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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gpt deltaマウスは、λEG10ベクターを組込まれたトランスジェニックマウスであり、変異原物質により
in vivoで誘発される突然変異を検出可能である。この試験系では6-thioguanine (6-TG) selectionにより点突然変異をSpi
- selectionにより欠失変異をそれぞれ検出することができる。我々は、このマウス由来の肺線維芽細胞をSV40 T抗原を用いて不死化させ、
gpt delta L1細胞を樹立した。
gpt delta L1細胞の変異原物質に対する反応性を検討する目的で、mitomycin C (MMC)による遺伝子突然変異および小核の誘発頻度を調べ、さらに、誘発された突然変異の解析を行った。
gpt delta L1細胞を0.025から0.1 μg/mLのMMCで24時間処置し、6日間培養した後に細胞を回収した。この細胞よりDNAを抽出し、6-TG selectionおよびSpi
- selectionにより突然変異頻度を測定した。さらに、得られた変異体の塩基配列を調べ、MMCによって誘発された突然変異の特徴を解析した。同様にMMCで24時間処置した細胞を、培養プレート上で固定しacridine orangeで染色し、倒立型蛍光顕微鏡を用いて小核を観察した。その結果、MMC処置により遺伝子突然変異頻度、小核誘発頻度ともに増加が認められた。誘発された変異は主にG:C塩基対での塩基置換、5'-GG-3'配列でのタンデム塩基置換、8kbpまでの欠失変異であった。
gpt delta L1細胞はMMCで誘発される突然変異および小核を検出可能であり、さらに誘発された突然変異の塩基レベルでの解析が可能であった。従って、この細胞は変異原物質により誘発される塩基レベルから染色体レベルまでの変化を幅広く検出可能な系であり、変異誘発機序検討および遺伝毒性スクリーニングに応用可能であることが示唆された。
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長崎 修治, 谷藤 久人, 久田 茂
セッションID: O-42
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【目的】昨年の本学会において,遺伝毒性作用を有する4物質(Mitomycin C, N-ethy1-N'-nitro-N-nitrosoguanidine, 9-aminoacridine, ICR191)がIC
50用量でヒト培養肝細胞HeG2に対して,p53タンパクの蓄積ならびに関連遺伝子の発現を誘導することから,これらが遺伝毒性のパラメータになりうる可能性を示した。本実験ではp53タンパクの蓄積とDNA損傷の程度との相関性に関して検討した。【方法】HepG2にN-ethy1-N'-nitro-N-nitrosoguanidine(ENNG)およびMitomycin C(MMC)をIC
50(ENNG:20μg/mL,MMC:0.5μg/mL)用量を最高用量とし,公比3で設定した5用量で24時間処理し,DNA障害の程度をAlkaline(pH>13) comet assayで解析し,p53タンパクの蓄積をwestern blotで解析した。【結果】comet assayの結果,ENNGでは最低用量からtail momentの用量依存的な増加が観察された。MMCではtail momentの用量依存的な増加は観察できなかったものの,全ての用量でtail momentの増加傾向が観察された。一方,p53タンパクのwestern blot解析の結果,両物質とも高用量の2用量のみで強い蓄積が観察された。【考察】転写因子であるp53はDNAの損傷ストレスに応答して核内に蓄積し,その標的遺伝子群の発現調節を行うことにより細胞周期の調節,DNAの修復及びアポトーシスを誘導するとされている。しかし本実験の結果から,培養細胞という特殊な条件下ではあるが,p53タンパクの蓄積を誘導するには細胞増殖阻害を引き起こす程度の強いDNA損傷が必要であることが示された。よって,p53タンパクの蓄積を観察することは遺伝毒性試験のパラメータとして適さないと考えられた。今後はリン酸化p53タンパクの発現ならびにp53標的遺伝子の発現とDNA損傷との関連について解析し,DNA損傷時にこれらの果たす役割について検討する予定である。
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伊藤 格, 佐々木 有, 熊谷 木曜美, 酒井 洋樹, 樫田 陽子, 三森 国敏
セッションID: O-43
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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我々は昨年の本学会において、第二世代キノロン剤であるノルフロキサシンが、
in vitroコメットアッセイおよび小核試験、
in vivo中期発癌性試験である肝イニシエーション活性検索法において陽性を示し、遺伝毒性発癌物質である可能性が高いことを報告した。一方、第一世代キノロン剤であるナリジクス酸が、同様の検索において全て陰性を示し、遺伝毒性発癌物質である可能性が低いことを、第21回毒性病理学会で報告した。今回は、第二世代キノロン剤であるシプロフロキサシンについて同様の検索を実施した。ヒトリンパ腫由来のWTK-1細胞を2日間培養後、シプロフロキサシンを培地中に添加して20時間処理し、
in vitroコメットアッセイおよび小核試験を行った。また、雄のF344ラットに3分の2肝部分切除を実施し、その12時間後にシプロフロキサシンを単回強制経口投与した。その14日後から10日間2-アセチルアミノフローレン(2-AAF)の混餌投与を行い、その間に四塩化炭素を単回強制経口投与した。さらに11日間の休薬期間後、肝臓を摘出し、胎盤型グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST-P)一次抗体を用いて免疫染色を実施し、肝イニシエーション活性検索法を行った。シプロフロキサシンは、コメットアッセイで陽性を示したが、小核試験および肝イニシエーション活性検索法では陰性を示した。以上の成績より、シプロフロキサシンは、コメットアッセイで検出可能なDNA損傷を誘発するが、小核となる染色体異常につながらず、さらには
in vivoでのイニシエーションも成立しないと考えられた。したがって、シプロフロキサシンが遺伝毒性発癌物質である可能性は非常に低いことが示唆された。
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橋場 雅道, 笠原 利彦, 出川 雅邦
セッションID: O-44
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【目的】乳癌の治療や予防に用いられているトレミフェン(TOR)とタモキシフェン(TAM)は化学構造上酷似しているが、TAMのみラットに対して強力な肝発癌活性を示す。TAMによる肝発癌は、その代謝物が形成するDNA付加体により誘発されるが、TORの投与によってはDNA付加体がほとんど形成されない。我々はTAMによる肝発癌過程において、DNA修復及び細胞増殖関連タンパク質の発現変動が認められることを報告しており、今回、TAM及びTORのこれら発現変動に及ぼす影響ついて比較検討したので報告する。
【方法】雌SDラットにTOR(40 mg/kg/day)又はTAM(20、40 mg/kg/day)を2又は8週間連日経口投与し、肝臓におけるDNA修復関連タンパク質/酵素(XPA、XPC、APE、OGG1、MGMT)及び細胞増殖関連タンパク質(c-myc、PCNA、cyclin D1、cyclin B、p34cdc2)のmRNAの発現量をRT-PCR法により測定した。
【結果及び考察】TAMはAPE及びMGMTを、TORはAPEを増加させたが、他のDNA修復関連タンパク質/酵素の発現に明らかな変化は認められなかった。c-myc及びcyclin D1は両薬物投与により増加したが、cyclin B及びp34cdc2はTAM投与によってのみ増加した。TAMはTORに比し、より多くのDNA修復及び細胞増殖関連タンパク質/酵素の発現量を増加させた。本研究で得られたTAMとTORの相違とともに、先に報告したTAMの強い代謝活性化酵素(CYP3A2)誘導活性が、TAMとTORの肝発癌活性の相違を生む因子になっている可能性が示唆され、TAMはTORよりも強いイニシエーション及びプロモーション作用を有しているものと推察された。
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柿沼 志津子, 西村 まゆみ, 甘崎 佳子, 今岡 達彦, 大町 康, 島田 義也
セッションID: O-45
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【目的】マウスの胸腺リンパ腫(TL)は、放射線やアルキル化剤などの曝露によって効率に誘発し、人のリンパ腫発生に関わる遺伝子の探索やその解析に有用であると考えられる。我々はこれまでに、放射線で誘発したB6C3F1マウスのTLでは、11番染色体のセントロメア側に高頻度でヘテロ接合性の欠失(LOH)が存在するが、エチルニトロソウレア(ENU)誘発TLや自然発生TLでは見られないこと、およびこの領域にマップされるIkarosが高頻度で不活化されていることを報告した。今回は、ENU誘発TLにおけるIkaros、p53、およびKrasの変異を調べ、放射線による発がんメカニズムと違いがあるかどうかについて検討した。【材料と方法】5週齢のB6C3F1マウスに、X線照射(1.6 Gyx4回)により放射線誘発TLを、ENU溶液を飲み水として投与(400 ppm、8 週間)しENU誘発TLを作成した。発生した胸腺リンパ腫は、DNA、RNA、蛋白解析用に保存し材料とした。Ikaros、p53、Krasの発現およびゲノムの変異を、RT-PCR、ウエスタンブロットおよび塩基配列決定によって解析した。【結果】胸腺リンパ腫の発生率は、放射線誘発、ENU誘発ともに同程度であった(約70%)。放射線誘発TLは、Ikarosの不活化頻度が高く(48%)その変異は発現抑制、点突然変異、挿入およびドミナントネガティブの4タイプであった。これに対して、ENU誘発TLでは、Ikaros不活化の頻度は低く(19%)点突然変異タイプのみであった。また、放射線誘発TLでは、Ikarosの変異は高頻度でLOHを伴っていたが、ENU誘発TLではLOHを伴わない点で異なっていた。p53およびKrasの変異を合わせると放射線誘発TLでは54%、ENU誘発TLでは52%に変異が見られた。【結論】これらの結果より、発がん物質によって、ターゲット遺伝子にが異なること、また、同じ遺伝子でも変異スペクトルが異なることが明らかになった。
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武藤 朋子, 金井 好克, 和久井 信, 遠藤 仁
セッションID: O-46
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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フタル酸エステル類であるdi(n-butyl)phthalate (DBP)の胎生期曝露ラットでは出生後に精巣の形成不全やLeydig細胞過形成・腺腫が認められることが報告されている。我々は腫瘍細胞への必須アミノ酸供給を担うことが知られているアミノ酸トランスポーターのうち、極めて多くの必須アミノ酸輸送を担う中性アミノ酸トランスポーター(L-type amino acid transporter 1) LAT1の胎生期DBP暴露ラットの精巣における発現分布について検討を行った。SDラット妊娠12?21期間中連日1000mgのDBPを連日経口投与し、生後35日齢、50日齢、65日齢、100日齢、150日齢での精巣でのLAT1の発現について免疫組織化学的および免疫電顕組織化学的検討を行った。生後50-65日齢でLeydig細胞過形成が認められた。LAT1抗体による免疫組織化学検討では生後35-65日齢でLeydig細胞と血管内皮細胞にLAT1の発現が認められたが、以後100日齢-150日齢ではLeydig細胞過形成部のみにLAT1の発現が認められた。さらに、免疫電顕組織化学的検討からLeydig細胞過形成部の毛細血管内皮細胞膜と細胞質にLAT1が局在することが明らかとなった。また、同部のLeydig細胞では細胞質にLAT1が分布していることが認められた。これらの結果から、胎生期DBP曝露誘発ラット精巣・Leydig細胞過形成病変においてアミノ酸輸送系タンパクの発現亢進が関わることが示唆された。
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川井 康司, 上塚 浩司, 中山 裕之, 土井 邦雄
セッションID: O-47
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【背景及び目的】9,10–Dimethyl-1,2–bentzanthracene(以下DMBA)は4環式芳香族炭化水素の一種であり、白血病、乳癌、卵巣腫瘍などの誘発実験に用いられる強力な発癌性物質である。50日齢のSprague-Dawley (SD) ラットにDMBAを単回経口投与することで高率に乳腺癌を誘発することが知られているが、本実験系においては乳腺腫瘍の他臓器への浸潤及び転移は稀である事が知られている。マトリックスメタロプロテナーゼ(MMP)2、9及びそのインヒビター(TIMP)は腫瘍の浸潤・転移について大きな影響を及ぼすことが知られており、本実験系における腫瘍においてその活性を検索することは浸潤・転移の仕組みを解明する上で有意義であると考えられた。【材料と方法】SDラットに対する乳腺癌誘発実験はHugginsらの過去の報告に従って行われた。MMPおよびTIMPの活性測定・定量はそれぞれZymography法・Reverse zymography法を用いた。また、MMPの組織上における活性の分布を見る目的で、Film in situ zymography (FIZ) 法も行った。【結果・考察】ラットのDMBA誘発乳腺腫瘍では、正常乳腺と比較して、latent MMP-2の活性が上昇したが、Active MMP-2の活性が正常乳腺組織と比べて有意に上昇しておらず、さらにMMP-9の活性はほとんど認められなかった。また、乳腺腫瘍では正常乳腺に比べてTIMPの活性の上昇は認められたが、悪性腫瘍と良性腫瘍との間で有意差は認められなかった。FIZにおいては瀰慢性の融解を示し、MMP阻害薬によって融解がほぼ消失した。SDラットのDMBA誘発乳腺腫瘍では組織学的には悪性でも他の臓器への浸潤、転移はほとんどないことが知られているが、本研究の結果、MMPおよびTIMPの活性、その調節メカニズムが大きく関わっていることが示唆された。なお、当日は自然発生イヌ乳腺腫瘍についての解析結果もあわせて報告する。
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池田 博信, 長尾 友子, 堤 宏禎, 木村 恵人, 木村 伊佐美, 西森 司雄
セッションID: O-48
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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【目的】開発中の医薬品にQT延長作用の可能性が考えられる場合、その催不整脈のリスクを直接的に評価することが必要である。その評価方法の一つとしてウサギカールソンモデルが考えられる。そこで今回、本モデルを用いて数種の被験物質が不整脈を誘発させるか否かについて検討したので報告する。【方法】雄性ウサギを用い、チオペンタールナトリウム(20 mg/kg, i.v.)導入麻酔後、気管挿管し、人工呼吸器を用いて呼吸を維持させ、以後α-クロラロース(25 mg/kg)で持続麻酔した。右頸動脈及び両側大腿静脈にカテーテルを挿入し、左右大腿静脈に挿入したカテーテルから塩酸メトキサミン及び被験物質投与液をそれぞれ持続注入した。血圧は、右頸動脈より、心電図は標準第I誘導で測定した。血圧及び心電図は循環動態解析ソフトウェア(MP/VAS3、(株)フィジオテック)を用いて解析した。塩酸メトキサミン15 μg/kg/min持続投与開始後10分よりソタロールの300 μg/kg/minを30分間併用投与又はクロフィリウムの50 μg/kg/minを20分間併用投与した。塩酸メトキサミンは被験物質投与終了時まで投与した。被験物質投与開始後30又は40分まで不整脈(torsades de pointes:以下TdP)出現の有無を観察した。【結果】 塩酸メトキサミンの単独持続投与では、TdPは出現しなかった。塩酸メトキサミンにトシル酸クロフィリウム又はdl-ソタロールを併用持続投与すると、全例においてTdPが認められた。以上の結果、塩酸メトキサミンに催不整脈を誘発する可能性のある被験物質を併用投与すると不整脈を誘発することが観察されたことにより、本ウサギカールソンモデルは、フォローアップ試験として催不整脈のリスクを直接的に評価できる有用な方法であることが示唆された。今後更にデータを蓄積していきたいと考える。
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菊池 正憲, 向井 大輔, 古屋 有佳子, 嶋田 佐和子, 益森 勝志, 中嶋 圓
セッションID: O-49
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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In vivo小核試験は染色体異常誘発を検出する変異原性試験である.末梢血液を用いる場合,1匹の動物から数回のサンプル採取が可能であるため小核誘発の経時的推移が追うことができ,また反復投与毒性試験など様々な動物試験に組み込むことが可能であるため,使用動物数の削減にもつながる有用な試験である.しかし,標本の顕微鏡観察には多大な時間が必要であり,また,適切な教育・訓練を受けた者でなければ観察することができない.フローサイトメーターを用いた場合,操作が簡便であるため短時間に多量のサンプルを測定することが可能となり,測定者の主観も入り込む余地が無くなる.これらのことから,小核試験においてフローサイトメーターを用いることが大変有用であると判断したため,以下に示す検討試験を実施した.【試験方法】マウスに既知小核誘発物質であるマイトマイシンC(MMC)を投与し,24∼48時間後にサンプルとして末梢血液を採取した.顕微鏡観察に際しては,末梢血液をアクリジンオレンジ(AO)染色したスライドガラス標本を作製した.この標本を落射蛍光顕微鏡下で観察し,小核を含む網状赤血球(MNRET)の出現頻度および全赤血球中における網状赤血球(RET)の比を求めた.フローサイトメーターを用いる場合は,Micro Flow PLUS kit (BD Pharmingen)を用いて末梢血液に固定等の処理を行った.次いで,抗CD71-FITC標識抗体で網赤血球を,propidium iodide (PI)で小核を,抗CD61-PE標識抗体で血小板をそれぞれ染色した.フローサイトメーター(Cytomics
TM FC500,ベックマン・コールター株式会社)で計測し,顕微鏡観察と同様にMNRETの出現頻度,RETの比を求めた.今回はこれらの両データの相関性・問題点等について報告する.
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田中 憲穂, 梅田 誠, 浅田 晋, 小野 宏
セッションID: O-50
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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発がん性物質の短期スクリーニングとして、突然変異や染色体異常を指標とする遺伝毒性試験が実施されているが、これらの試験系は初期の変異を検出する系であり、多段階発がんの過程を包含する試験系ではない。一方、Balb/c 3T3細胞を用いるトランスフォーメーション試験は、薬剤処理後、長期の培養過程を経て生じた形質転換フォーカスの数を指標にし、二段階発がん試験のモデルをin vitroで再現する事が可能である。佐々木らはBalb/c 3T3細胞にv-Ha-ras遺伝子を導入したBhas42細胞を樹立(1988)し、この細胞がプロモーターの検出に極めて有効である事を示した(1990)。その後、大森らはプロモーター活性検出の為のアッセイ系を確立し、多施設による評価試験を実施している(2002)。 また浅田らは、化学物質をBhas42細胞の増殖期に処理する事でイニシエーター活性を、細胞増殖静止期に処理する事でプロモーター活性を検出できる事を報告し、発がん性物質のin vitro短期二段階検出系としての有用性を示した(2003)。[方法] イニシエーション試験では、Bhas42細胞の増殖期に被験物質を処理し、培地交換しながら28日後に固定染色しフォーカスを計数した。プロモーション試験では、細胞を播種後、細胞増殖靜止期に被験物質を含む培地で処理し、14日後に正常培地に交換し、21日目に固定染色してフォーカスを計数した。[結果] これまで得られた既知のイニシエーターとプロモーターを用いた実験では、MNNGや芳香族炭化水素等のイニシエーターは、細胞の増殖期の処理によって検出され、TPAやリトコール酸などのプロモーターでは、細胞の増殖静止期に処理する事で検出された。 以上の結果より、多段階の発がん機構の中で作用機序の異なる、遺伝的傷害により発がんを生じるイニシエーターと、細胞の増殖や細胞間連絡等に関連するプロモーターを、Bhas42細胞を用いその試験プロトコールを変える事で検出する事が可能であり、非変異発がん性物質の検出にも有用である事が示唆された。 (本研究の一部は、日本化学工業協会が推進するLRIにより支援されました)
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金澤 由基子, 佐藤 秀隆, 松岡 千明, 小島 幸一
セッションID: O-51
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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【目的】金属製医療用具の安全性評価のために行われる感作性試験では、「医療機器審査No.36」に従い、金属イオンを用いるMaximization testを実施することが推奨されている。しかし、金属製品の感作性には、溶出率が大きく影響する。また、臨床において多数報告がなされている金属イオンアレルギーは、動物で再現することが難しい。今回、これらを考慮し、安全性評価に使用できる感作性試験方法を確立したので報告する。【方法】動物は、Hartley系モルモット(雌、7週齢)を使用した。5種(ニッケル、クロム、コバルト、マンガン、タングステン)の金属について、それぞれ1%金属イオンオリブ油液を皮内投与(処置第1日)し、同金属イオン2%液(媒体:30%エタノール)を週3回、2週間、24時間閉塞貼付(処置第1〜3日、処置第8〜10日)した。惹起(処置第22日)では、それぞれの金属イオンを24時間閉塞貼付した。また、代表的金属医療用具であるステントについて、溶出試験で得られた最高溶出濃度の1000倍濃度の5種金属イオン混合液を同様のスケジュールで感作し、同混合液の希釈液およびステント抽出液で惹起した。【結果】マンガンを除く4種金属イオンで感作性が確認された。最高溶出濃度の1000倍濃度の5種金属混合物(原液)とその1/10、1/100希釈液で惹起した場合、原液とその1/10希釈液で明らかな感作性が認められた。ステント抽出液で惹起した場合には、陰性であった。【結論】動物を感作することが難しい金属イオンについて、本感作方法で感作性陽性動物を作製することができた。また、溶出試験結果から求めた最高溶出濃度の1000倍濃度で感作し、惹起濃度を変化させることで、製品から溶出する金属イオンの感作性を評価することが可能となった。本試験方法を用いることで金属製医療用具の感作性評価が確実に行えることが示された。
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江馬 眞, 福西 克弘, 松本 真理子, 広瀬 明彦, 鎌田 栄一
セッションID: O-52
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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2-(3,5-Di-tert-butyl-2-hydroxyphenyl)-5-chlorobenzotriazole (CAS No. 3864-99-1: DBHCB) はポリオレフェン、塩化ポリビニル、ポリカーボネート、ポリウレタン、パイレックスガラスや種々のペンキ等に紫外線吸収剤として使われている。紫外線吸収剤は食品の品質保持のために食品包装用器材に添加されている。今回は、紫外線吸収剤のDBHCBの発生毒性をCrj:CD(SD)IGSラットを用いて検討した。ラットの妊娠5-19日(精子発見日=妊娠0日)に0, 62.5, 250または1000 mg/kgのDBHCBを5%アラビアゴム水溶液に懸濁して強制経口投与し、妊娠20日に妊娠ラットを剖検し、胎児を検査した。妊娠ラットの死亡は観察されなかった。妊娠ラットの一般症状、体重増加、摂餌量、剖検所見、卵巣及び子宮重量にDBHCB投与の影響はみられなかった。黄体数、着床数、生存胎児数、吸収胚及び死亡胎児数、着床前及び着床後胚死亡率、胎児生存率、胎児体重、生存胎児の性比にDBHCB投与の影響は認められなかった。胎児の外表、骨格及び内部器官の検査の結果、奇形を有する胎児の発現頻度にDBHCB投与による影響は認められなかった。これらの結果から、DBHCBはラットに対して発生毒性を示さず、妊娠ラット及び胎児に対するDBHCBの無毒性量は1000 mg/kgと考えられた。
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筑波 千晶, 松原 和衛, 高橋 寿太郎, 佐藤 至, 津田 修治
セッションID: O-53
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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【目的】妊娠個体が化学物質に暴露された際、胎仔の体細胞のみにDNA損傷が起これば子供に影響は出ても孫以降は安全であり生殖細胞のみにDNA損傷が起これば子供は安全であっても孫以降に影響が起こる可能性が考えられ、体細胞と生殖細胞がともに損傷を受ければ子供にも孫以降にも影響が出る可能性が考えられる。しかし、胎仔の体細胞と生殖系の細胞の間でDNA損傷物質により受ける損傷の程度に違いがあるのかどうかについて確かめられていない。そこで本実験では、雌雄胎仔の生殖隆起および代表的な代謝の場である肝臓の細胞が受けるDNA損傷の程度に違いがあるかどうか調べることを目的とした。【方法】妊娠12.5日目のICRマウスにジメチルニトロソアミン(DMN:CYP450の代謝を受けてDNA損傷を引き起こす:80mg/kg)およびメチルメタンスルホン酸(MMS:CYP450の代謝を受けずに直接DNA損傷を引き起こす:10mg/kg)を腹腔内投与し、投与6時間後に子宮から胎仔を取り出して肝臓および生殖隆起を採取し、DNA損傷の程度について単細胞ゲルアルカリ性電気泳動法(コメット法)を用いて調べた。対照として、妊娠12.5日目の無処置のマウスから摘出した胎仔肝臓および生殖隆起を用いた。【結果】MMSを投与したものでは胎仔肝臓および雌雄胎仔生殖隆起のいずれにおいても対照群と比べ有意にDNA損傷が増加した。また、DMNを投与したものでは、胎仔肝臓および雌雄胎仔生殖隆起いずれにおいても対照群と比べDNA損傷は増加しなかった。【結論】胎仔においてDMNは代謝活性化されにくいことが示唆された。また、MMSは胎仔に直接的なDNA損傷を引き起こすが、この損傷の程度は胎仔の肝臓と雌雄生殖隆起細胞の間では差が認められなかった。
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古川 賢, 臼田 浩二, 阿部 正義, 小川 いづみ
セッションID: O-54
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【目的】我々は植物ホルモンであるインドール酢酸(IAA)を妊娠12-14日目のラットに投与することにより,胎児に小頭症が誘発されることを報告した(Tox Pathol 2004 32: 659-667).本発表ではIAA類縁体5化合物についてラット胎児の神経上皮細胞に対する影響を病理組織学的に比較検討した.【材料及び方法】被験物質はN-methylindole-3-acetic acid (1Me-IAA),2-methyl-5-methoxyindole-3-acetic acid (2Me-5MeO-IAA),2-methylindole-3-acetic acid (2Me-IAA),5-methoxyindole-3-acetic acid (5MeO-IAA)及びindole butyric acid (IBA)と陽性対照物質としてIAAを用いた.投与用量は2Me-IAAのみ500mg/kg/dayとし,その他の被験物質は1,000mg/kg/dayとした.各群には8匹の妊娠Han Wistarラットを供試し,妊娠12,13及び14日目にオリーブオイルで懸濁した被験物質を強制経口投与し,妊娠14.5及び21日目に胎児を摘出した.妊娠14.5日目の胎児は重量測定し,ホルマリン固定後,病理組織学的検査に供試した.妊娠21日の胎児は外表検査及び重量測定を行い,ホルマリン固定後,脳を摘出し脳重量を測定した.【結果】1)母動物への影響:2Me-IAA,5MeO-IAA及びIBA群で一過性,1Me-IAA群で試験期間を通して体重増加量の減少が認められた.1Me-IAA及び2Me-IAA群で強直及び自発運動減少が認められ,2Me-IAA群では妊娠14日目に1例が死亡した.2)胎児・胎盤重量:1Me-IAA,2Me-5MeO-IAA,5MeO-IAA及びIBA群で妊娠21日目の胎児重量は減少傾向を示した.3)胎児外表検査:IAA群で口蓋裂の発生(49.5%)が認められた.4)胎児脳重量:絶対脳重量の低下は1Me-IAA,5MeO-IAA,IBA及びIAA群で,相対脳重量の低下はIAA群のみで認められた.5)胎児組織検査:5MeO-IAA及びIAA群で,妊娠14.5日目の脳室帯においてアポトーシスが認められ,その程度は5MeO-IAA群の方が弱かった.【考察】5MeO-IAA及びIAA群で認められたアポトーシスの程度は異なるものの,ともに脳室帯の中間層及び背側層で認められたことから,その発現は同じ機序によるものと推察された.1Me-IAA及びIBA群での脳重量低下は胎児の発育遅延によるものと推察された.
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石田 有香, 大町 康, 平岡 武, 伏木 信次, 島田 義也, 荻生 俊昭
セッションID: O-55
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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【目的】ヒトにおいて、発生中の神経細胞に生じた増殖抑制や移動障害といった混乱は出生後の精神遅滞を引き起こすと考えられている。マウスやラットではX線の胎生期照射により胎児脳神経細胞死や神経細胞移動障害、出生後の大脳皮質低形成・低脳重量、薬理学的には記憶・学習障害が起こることが知られている。今回我々は、LETの異なる二種類の放射線(ガンマ線、中性子線)のマウス胎児大脳皮質神経細胞死の線量効果関係について詳細に検討した。【材料と方法】胎齢13.5日のB6C3F1マウスに速中性子線(サイクロトロンより発生、ピークエネルギー:10 MeV、0.02~1.0 Gy)、あるいは
137Csガンマ線(ガンマセル、0.1~2.0 Gy)を照射、その24時間後に胎児の頭部を採取しホルマリン固定後、大脳中央部を通る前頭断し、常法に従い包埋、パラフィン切片を作製した。切片はHE染色およびTUNEL染色を施し、大脳皮質の一定領域におけるTUNEL陽性細胞インデックスを解析した。【結果および考察】中性子線およびガンマ線照射のいずれでも頭頂部大脳皮質や側脳室周囲の神経細胞のアポトーシスが認められた。中性子線1.0 Gy 、ガンマ線2.0 Gy 群では神経細胞アポトーシスとともに大食細胞の浸潤増生が認められた。以上の変化は中性子線の方が強かった。TUNEL陽性細胞インデックスは線量依存的に増加し、閾値は認められなかった。また、いずれの放射線でも最低線量群で対照群と比べやや高いインデックスの個体が認められ、アポトーシスを指標にすると影響を鋭敏に評価できるものと考えられた。直線二次モデルにフィットさせ中性子線とガンマ線の生物効果比を算出した結果、低線量域で中性子線はガンマ線より約10倍アポトーシス誘発が大きいことが明らかとなった。
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高木 篤也, 菅野 純
セッションID: O-56
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【目的】発生初期の胎児は小さく、かつ、培養も難しいため、一般に解析が困難である。一方、ES細胞から形成される胚様体(Embryoid body:EBと略す)は胎児の卵筒胚(egg cylinder, マウスで5?7日胚)に近似しており、発生初期胎児への影響を調べるために利用されている。しかし、血清のロットの違いや、培地中のフェノールレッド(PR)(エストロジェン作用がある)がES細胞の分化等に影響する恐れがある。そこで、新たにES細胞用無血清培地を作製し、そのES細胞分化への影響を検討した。【方法】Gabriele Proetzel ら(Methods in Mol. Biol., 185, 17-26, 2002)のES細胞用無血清培地の組成を参考にPR(-)の改良型無血清ES培地を作製した。マウスES細胞(E14-2a)を通常のES用培地にてゼラチンコートDish上で培養後、無血清ES培地で4日間浮遊培養して細胞分化を誘導させた。その間に、ES細胞培養系における神経分化誘導物質として良く知られているall-trans retinoic acid (ATRA)を0.5μMの濃度で添加した。4日間浮遊培養後、ATRAを除いた無血清培地でさらに浮遊培養あるいはゼラチンコートdish上で培養し、形態を観察した。【結果及び考察】ATRA添加培養4日後において、形成されたEBのサイズは対照群に比較して減少していたが、さらに浮遊培養を続けると、対照群より増大した。また、ATRA添加4日間の浮遊培養後、EBをゼラチンコートdish上で培養すると神経様細胞の出現増加が見られ、さらに培養を継続すると心筋様細胞の拍動が観察された。この結果、この系が発生毒性物質の影響解析に利用できることが期待された。
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福島 民雄, 浜田 悦昌, 小宮山 政敏, 森 千里, 堀井 郁夫
セッションID: O-57
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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[目的] 潰瘍性大腸炎などの治療薬であるSulfasalazine(SASP)は男性不妊を起こすことが知られている。先の研究で,ラットにSASP 600 mg/kgを28日間投与したところ,妊孕性抑制作用の原因の一つと考えられる精子運動性および先体反応の抑制がみられ、さらに、精子成熟への関与が示唆されるCD59,MCPおよびDAF遺伝子発現の抑制が認められた。本研究では,これらの影響を精査するため,ラットにSASP 600 mg/kgを1、7および14日間投与し、より初期の変化について検討を加えた。[方法] 成熟IGS雄ラットにSASP 600 mg/kgを1、7および14日間経口投与した。対照群には溶媒(0.5%メチルセルロース)を投与した。右側精巣上体尾部より精子を採取し,HTM-IVOSを用いた精子運動性検査およびFITC-cocanavaline A lectin染色を用いた先体反応検査に供した。また、左側精巣上体は、液体窒素で凍結後、総RNAを抽出し定量PCR解析に供した。[結果] 精子遊泳速度などの精子運動性の低下が、投与7日目以降から認められた。また、精子先体反応の抑制も投与7日目以降からみられた。これらの精子機能への影響は、投与期間とともに増強した。定量PCR解析では、CD59およびDAF遺伝子発現の低下が、投与1日目認められた。一方、MCPに関しては減少傾向はあるものの有意な低下は認められなかった。[結論] 以上の成績より、SASPの短期間反復投与では精子運動性および先体反応の抑制に先行して、精巣上体におけるCD59およびDAF遺伝子発現の低下が起きることが明らかになった。このCD59およびDAFの発現抑制が、SASPによる妊孕性抑制作用の引き金となる可能性が示唆された。
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眞鍋 昇, 峯畑 二子, 後藤 康文, 井上 直子, 前田 晃央, 程 圓, 阿南 小有里, 才 貴文, 李 俊佑
セッションID: O-58
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【目的】成熟した哺乳類の卵巣では、性周期毎に発育・成熟中の卵胞の99%以上が選択的に閉鎖し、極わずかが生き残って排卵にいたる。卵胞閉鎖の制御に顆粒層細胞のアポトーシスが関わっているが、細胞内アポトーシスシグナル伝達径路には不明な点が多い。今回、顆粒層細胞はシグナルがミトコンドリアを介して伝わるII型アポトーシス細胞であることを示し、細胞内におけるシグナル伝達の制御について考察する。【方法】成熟ブタ卵巣から卵胞を切出して卵胞液中のプロゲステロン/エストラジオール比に基づいて健常、閉鎖初期および後期に分類し、各々から顆粒層細胞を単離・調製した。顆粒層細胞からRNAとタンパクを抽出し、定量的RT-PCR法およびWestern blot法等にてアポトーシスシグナル伝達径路の構成因子の発現といくつかのプロテアーゼの活性の卵胞閉鎖に伴う推移を調べた。併せて卵巣組織切片を作製し、いくつかの因子の局在の推移を調べた。【結果と考察】完全性周期動物であるブタの卵巣においては、顆粒層細胞はII型アポトーシス細胞であることが判明した。我々は、この細胞に特異的な細胞死受容体とその囮受容体を見いだし、これらと細胞内アポトーシスシグナル伝達阻害因子cFLIPが協働してアポトーシスを制御し、卵胞閉鎖を支配していることが分かった。本知見は、化合物が排卵の過程におよぼす毒性の分子機構の理解に貢献する。
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松岡 雅人
セッションID: O-59
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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癌抑制遺伝子産物p53蛋白は、リン酸化等により活性化され、DNA修復、細胞周期や細胞死等を制御している。重金属によるp53蛋白セリン残基のリン酸化部位、さらに、そのリン酸化に関わるキナーゼについて、野性型p53を発現するヒト乳癌MCF-7細胞を用いて検討した。塩化カドミウム暴露細胞抽出液よりp53蛋白を免疫沈降後、Ser6、9、15、20、37、392のリン酸化を検討した結果、Ser15のリン酸化が認められた。塩化カドミウムの暴露量および暴露時間に依存したリン酸化型p53 Ser15および総p53蛋白量の増加が認められた。塩化亜鉛、塩化水銀、塩化トリブチルスズ、塩化鉛、塩化マンガンの暴露では、p53蛋白Ser15部位のリン酸化は認められなかった。extracellular signal-regulated kinase(ERK)経路阻害剤のU0126、c-Jun N-terminal kinase(JNK)経路阻害剤のLL-Z1640-2、p38阻害剤のSB203580の処理では、塩化カドミウム暴露によるリン酸化型p53 Ser15および総p53蛋白量の増加に影響しなかった。一方、DNA-activated protein kinase(DNA-PK)および ataxia telangiectasia mutated(ATM)の活性阻害剤であるwortmannin、ATM および ATM-Rad3-related protein(ATR)の活性阻害剤であるcaffeineの処理により、塩化カドミウム暴露によるリン酸化型p53 Ser15および総p53蛋白量の増加が、濃度依存性に抑制された。DNA傷害性を有するカドミウム暴露によるp53 Ser15のリン酸化は、phosphatidylinositol 3-kinase related kinase(PIKK)ファミリーに依存する。
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本田 晶子, 佐藤 雅彦, 長谷川 達也, 瀬子 義幸, 鈴木 純子, 遠山 千春, 永瀬 久光
セッションID: O-60
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【目的】妊娠期間中にカドミウム (Cd) の腸管吸収が増大することが報告されており、妊娠期間中のCd曝露による胎仔への健康影響が懸念されている。一方、メタロチオネイン (MT) は、Cdの蓄積に関与することやCd毒性を軽減することが報告されているが、体内動態へのMTの関与については未だ明確にされていない。そこで、Cd妊娠期曝露におけるCdの胎仔への蓄積におよぼすMTの影響をMT-I/II欠損 (-/-) マウスを用いて検討した。【方法】MT (+/+) マウスおよびMT (-/-) マウスをそれぞれ雌雄番いで1日間交配し、妊娠1日目から50 ppmのCd濃度を含む飲料水を自由飲水させた。妊娠19日目にエーテル麻酔下で心採血した後、肝臓、腎臓、胎盤、胎仔、羊水および羊膜を摘出した。さらに摘出した胎仔については、肝臓と脳を摘出した。各臓器を硝酸-過酸化水素水で湿式灰化した後、臓器中Cd濃度をICP-MS装置で測定した。また、胎盤可溶性画分中のCdの存在状態をHPLC/ICP-MSを用いて調べた。【結果および考察】妊娠期にCdを経口曝露したMT (-/-) マウスの母体腎臓中Cd濃度は、MT (+/+) マウスより低値を示したが、母体肝臓および胎盤中Cd濃度は、両マウス間で差は認められなかった。一方、胎仔肝臓並びに脳中Cd濃度は、MT (-/-) マウスの方がMT (+/+) マウスより高値を示した。母体血液、羊水および羊膜中Cd濃度は、両マウス間で差は認められなかった。また、MT (+/+) マウスの胎盤可溶性画分中のCdは、主にMT-IとMT-IIの画分に存在していたが、MT (-/-) マウスの胎盤可溶性画分中のCdは、主に高分子画分に存在していた。以上の結果より、MTは、胎仔へのCd蓄積抑制に関与することが明らかとなった。また、胎盤におけるMTとCdとの結合が胎仔へのCd蓄積抑制に関与することが示唆された。
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村井 康高, 黄 基旭, 永沼 章
セッションID: O-61
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【目的】我々はメチル水銀毒性発現機構を明からにするために、真核生物モデルである酵母のメチル水銀感受性に影響を与える遺伝子群の全容解明を目指している。これまでに、酵母細胞内の輸送小胞を介した液胞への物質輸送経路のうち、ゴルジ体→エンドソーム→液胞、という輸送経路に関わる蛋白質であるVps27やVps45を欠損させた酵母がメチル水銀に対して耐性を示すことを見出している。そこで、メチル水銀がこの物質輸送経路に与える影響について検討した。【結果および考察】酵母細胞内で合成されたcarboxypeptidase (CPY) は未成熟体のままゴルジ体からエンドソームを介して液胞へ運ばれ、液胞内でプロセシングを受けることにより成熟型になることが知られている。まず、Vps27またはVps45の単独欠損酵母、もしくはその二重欠損酵母におけるCPYの液胞への輸送をCPYのプロセシング状態を指標とするWestern blot法により検討した。その結果、これらの欠損酵母では野生株に比べて、成熟型CPY量が少ないことが確認された。このことより、Vps27またはVps45欠損酵母はゴルジ体からエンドソームを介した液胞への輸送が抑制されることによってメチル水銀に対して耐性を示す可能性が示唆された。次に、メチル水銀処理がこの輸送経路に与える影響を検討したところ、メチル水銀処理によって成熟型CPYの増加が確認され、メチル水銀によってこの輸送系が亢進される可能性が示唆された。一方、輸送小胞が液胞に融合する際にアダプター蛋白質として機能するVam3やVam7を欠損させた酵母は、メチル水銀に対して耐性を示さなかった。以上の結果から、何らかの蛋白質のエンドソーム内への輸送が亢進することによってメチル水銀毒性発現が増強される可能性が考えられる。現在は、エンドソームに運ばれることによってメチル水銀毒性を増強させる蛋白質の同定を試みている。
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ピッサヌ トラヤクル, 作田 床平, ケース ドン, 熊谷 進
セッションID: O-62
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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In order to gain a better understanding of the relative activities of glutathione S-transferase (GST) and aldehyde reductase toward aflatoxin B1 (AFB1) in relation to the variation of species susceptibilities, we studied the in vitro cytosolic GST and reductase activities in liver tissues from male Fischer rats, ICR mice and golden hamsters, adult male rainbow trouts and female piglets. The GST activity was determined by incubating the liver cytosol with glutathione (GSH) and AFB1 in the presence of the hamster liver microsomes to generate AFB1-8, 9-epoxide from AFB1. The reaction product, AFB1-GSH conjugate was quantified by HPLC with pirkele-concept chiral column using AFB1-GSH conjugate prepared by chemical reaction as standard. The reductase activity was determined by incubating liver cytosol with AFB1-dialdehyde, followed by the quantification of the metabolic product, AFB1-dialcohol, by HPLC. AFB1-dialcohol for HPLC was prepared by chemical reaction of AFB1-epoxide and N,N dimethylformamide standard. All the animal species possesed the GST activities and AFB1-GSH formed was increased with AFB1 concentration according to first order enzyme kinetics reaction. The Vmax and Km values of the GST activities in rodent species were higher and lower, respectively, than those in the trout and pig, being consistent with the relative susceptibilities to AFB1 of these animal species. However, no relationship was noted between the reductase activity and species susceptibility. Thus, the result of this study shows that GST toward AFB1, but not aldehyde reductase, is a determinant of the variation of species susceptibilities to AFB1.
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川崎 靖, 杉山 晶規, 古宮 裕子, 倉部 誠也, 田代 文夫
セッションID: O-63
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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アフラトキシンB
1(AFB
1)は、土壌菌である
Aspergillus flavusや
A. parasiticusによって産生されるカビ毒で、強い肝毒性と共に発癌性を有しており、実験動物に肝癌を誘発することが知られている。AFB
1誘発ラット肝癌より樹立したK2細胞では、
p53、
Rb、
H-Ras、
N-Rasや
K-Rasの変異は見られず、癌遺伝子である
c-mycおよびシグナル制御因子であるリン酸化セリン結合タンパク質14-3-3
βが過剰発現されている。今回、K2細胞の増殖および造腫瘍性における14-3-3
βの機能を解析した。14-3-3
β mRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドでK2細胞を処理したところ、その増殖能は低下した。また、アンチセンス14-3-3
β cDNA発現ベクターを導入することにより14-3-3
βの発現量を低下させたK2細胞株を樹立し、ヌードマウス皮下へ移植したところ、腫瘍形成能の著しい低下が見られた。形成された腫瘍の性質を調べたところ、アポトーシスの増加と血管新生能の低下が認められた。14-3-3
βはBadに結合してアポトーシスを制御すると共に、
c-mycと同様に細胞増殖を制御するRaf-1キナーゼの活性を調節していることが報告されている。そこで、K2細胞に14-3-3
β、
c-myc、
raf-1のアンチセンスオリゴヌクレオチドを様々な組み合わせで添加し、増殖能に対する作用を解析した。その結果、
c-myc、14-3-3
βおよび
raf-1に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの同時処理により、K2細胞の増殖は顕著に抑制された。これらの結果より、14-3-3
βは
c-mycと協同してRaf-1キナーゼの活性を正に制御して肝癌細胞の増殖や造腫瘍性に強く関与していることが強く示唆された。また、アンチセンス14-3-3
β cDNA発現ベクターを導入した細胞ではVEGF mRNAの発現量が低下していたことから、14-3-3
βは血管新生においても重要な役割をしているものと思われる。
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三輪 恵子, 篠塚 淳子, 村上 直子, 有賀 千浪, 藤村 久子, 鳥海 亙
セッションID: O-64
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【目的】T-2 toxinはFusarium属真菌により産生されるトリコテセン系マイコトキシンである.このマイコトキシンに汚染された食物,飼料の摂取によるヒトおよび家畜の中毒事例が世界各地で多数報告されており,公衆衛生ならびに家畜衛生上 重要な問題となっている.T-2toxinがリンパ系組織や造血組織に強い細胞毒性を示すことはこれまで報告されているが,肝毒性に関する報告は少ない.そこで今回は,T-2 toxinをマウスに投与した際の肝臓に対する作用を検査し毒性学的に解析したので報告する.【方法】5週齢のICR系雌マウスにT-2 toxin 10 mg/kgを単回経口投与した.投与0.5,3,6,24,48時間後に動物を剖検し,血液学・血液生化学的検査を行なうとともに,肝臓の重量測定,病理組織学的検査とDNAマイクロアレイ(Gene Chip®, Mouse Expression Set 430A 2.0)を用いた遺伝子発現解析を実施した.【結果】T-2 toxin投与群では,白血球数は投与3および6時間後に増加し24および48時間後に減少した.血中の肝逸脱酵素(AST,ALT)の増加,血糖値および脂質系パラメータの減少など各種血液生化学的検査データの変動が投与3時間後から認められたが48時間後にはほぼ正常値にもどっていた.血中の総蛋白量,アルブミン量は投与3時間後から減少が認められ試験期間中回復しなかった.肝臓重量は投与6および24時間後に減少していた.病理組織学的検査においては,投与3時間後から肝細胞死が,投与24および48時間後には脂肪沈着が認められた.【まとめ】T-2 toxin投与マウスには肝細胞障害ならびに肝機能低下を疑う変化が認められた.肝細胞死ならびに脂肪蓄積のメカニズムをより詳細に検討するために,現在,DNAマイクロアレイ解析を用いた遺伝子発現解析を継続中である.
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