Works Discussion Paper
Online ISSN : 2435-0753
12 巻
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  • ―全国就業実態パネル調査を用いて―
    玄田 有史
    2016 年 12 巻 p. 1-27
    発行日: 2016年
    公開日: 2023/01/26
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    本稿では、雇用契約期間の不明が労働者に及ぼす影響と、不明に至る背景について考察した。労働基準法は、雇用契約期間を書面で明示することを使用者に義務付けている。ところが実際は、調査に対し自らの雇用契約期間が「わからない」とする雇用者は多く、正社員以外では約 2 割が不明である。リクルートワークス研究所実施の「全国就業実態パネル調査」(2016 年)を分析したところ、正社員以外の学卒雇用者のなかでも、雇用契約期間の不明者は、時間当たり賃金、新しい知識・技術の習得機会、仕事への満足度など、いずれも劣ることが明らかとなった。さらに女性、未婚、若年、低学歴層、成績下位層など、企業に対する交渉力が相対的に乏しい雇用者ほど、契約期間が不明になる傾向もみられた。加えて経営者の裁量による雇用管理も多い小規模企業や、事業への参入コストが低い、もしくは社会的認知の低い業種でも、契約期間の不明は頻繁に生じていた。一方、職場に労働者の利益を代表して企業と交渉する組織がある他、人材紹介会社やハローワークなど、専門的な知識を有する仲介者を通じて入職した場合に、契約期間の不明は回避されやすいことも、データから示された。雇用契約期間を軸に安定した就業機会の拡大と正社員以外の待遇改善を図るには、その一つとして、契約期間不明の雇用者が存在する状況を極力解消していくための諸方策の推進が求められる。
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