Works Discussion Paper
Online ISSN : 2435-0753
71 巻
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  • ―ワーク・アイデンティティの重要性に着目して―
    大嶋 寧子
    2023 年 71 巻 p. 1-18
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/09
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    これまで仕事と介護の両立に関わる上司の支援では、主に介護離職や介護疲労の防止が主な目的とされてきたが、加えて、介護中の部下が仕事やキャリアに主体性を持ち続けるためには、部下が組織の一員として、あるいは、一人の職業人としての自分らしさであるワーク・アイデンティティを維持できることも重要である。本稿では、部下の自律的な判断や行動を尊重する上司のエンパワリング・リーダーシップが、介護中の従業員のワーク・アイデンティティにどのような影響を及ぼすのかを、本人による仕事の主体的な改編としてのジョブ・クラフティングによる媒介に着目して検討した。構造方程式モデリングを用いた分析の結果、上司のエンパワリング・リーダーシップは、より良い仕事体験を求めて仕事の中身や作業手順、人間関係や認知を見直す接近ジョブ・クラフティングと、ネガティブな結果を避けるために仕事や人間関係を減らす回避ジョブ・クラフティングの双方を促すが、前者はワーク・アイデンティティと正の関わりを、後者は負の関わりを持っていた。介護をする部下がワーク・アイデンティティを維持する上では、上司が介護を理由に仕事の守備範囲の縮小を優先するのではなく、まずは仕事の中身や作業手順の改善、周囲との相互支援的な協力関係の構築、柔軟な働き方の構築などを通じて、同じ役割をより効率的に遂行できるよう支援していくことが重要となる可能性がある。
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