日本企業の人材育成においては、正社員比率の低下、中高年層のボリュームの増加など、人材育成のターゲットが変化して、人材育成の機能の低下が懸念されている。
そこで、本稿では、OJT が機能している程度、社内外での人材流動性、人事管理などの視点から、人材育成の現状把握を試みた。具体的には、リクルートワークス研究所「人材マネジメント調査 2013」のデータを用いて、上述の変数間の関係や規定要因を探索した。
その結果、社員の採用・離職割合でみた、人材の外部流動性は 6~8%に、社内異動の割合でみた、人材の内部流動性は 10~25%に分布の山があった。社員の年齢構成がピラミッド型の場合は、外部流動性が高く、つりがね型では内部流動性が高かった。外部流動性は、利益率、競争環境への適応力、株式市場での評価との正の相関がみられたが、内部流動性は、いずれの指標とも有意な相関はみられなかった。
OJT の機能の程度と人材流動性との間には明確な関係がみられなかった。回帰分析によると、OJT が機能している程度に対して、従業員数、昇進・昇格に関する年次管理の実施、複線型人事制度等の実施は正、次世代リーダー育成、ミドル処遇施策は負の関係があった。OJT が機能するためには、OJT の制度化、インフォーマルな取り組み、育成者のスキル、市場とのコミュニケーションの視点が欠かせないことが明らかとなった。
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