Works Discussion Paper
Online ISSN : 2435-0753
63 巻
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  • ―基礎的データの確認―
    梅崎 修, 西村 純
    2022 年 63 巻 p. 1-16
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/28
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本稿の目的は、入社3年目までの人材定着率の基本統計を新卒採用者と中途採用者で比較することで、実態を把握することである。入社3年目以内の離職は、企業側から見ても個人から見ても損失と考えることができる。 定着支援の研究は、新卒採用者を中心に発展してきたが、近年、中途採用者に関しても実証研究が増えてきている。しかし、新卒採用者と中途採用者で、同じ人事施策のもとで定着率が異なるのかどうかという問いは、データセットが入手し難いという理由で研究が少ない。本稿は、「ワークス人材マネジメント調査」を使ってこの比較を行った。 企業のキャリア形成支援や能力開発投資と人材定着に関する分析結果より、新卒採用者と中途採用者では、人事施策の定着率に対して効果が異なる可能性が明らかになった。 新卒と中途の両方で定着との正の関係が確認できる人事施策は、メンター制度、早期選抜、フレックスタイムであった。一方、新卒採用者のみで正の関係が確認されたのは、MBO と 360 度評価であり、中途採用者のみで正の関係が確認されたのは、職務給であった。この比較から新卒社員の方が、組織への定着に対して、組織による精神的支援や仕事の支援が必要であるではないかと推測できる。さらに、能力開発投資に関しては、新卒採用者・中途採用者ともに統計的に有意に3年目定着率が高くなることが確認された。能力開発への積極的な投資は継続傾向を希望する理由になっていると解釈できる。 これらの分析結果は記述統計量の確認に止まるが、これらの数値を公開することで定着支援としての人事施策の多様性についての議論に役立つと言えよう。
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