日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成18年度日本調理科学会大会
選択された号の論文の191件中151~191を表示しています
ポスター発表
  • 古代におけるミズアオイ(ナギ)・コナギの利用
    冨岡 典子, 柳 進, 穴沢 達彦, 木根 正一, 久保 由香子, 中川 忠彦
    セッションID: P-29
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]『日本書記』『万葉集』『延喜式』『倭名類聚抄』に記述の「水葱(ナギ)」(和名 ミズアオイ)は古くから日本に自生し、全国各地の浅水域や水田に生育する抽水性の一年草であり、葉茎部を食用とする。近年、水辺環境の破壊により「危急種」の植物のひとつである。「子水葱(コナギ)」も葉茎部を食用とし、水稲に随伴してきた史前帰化植物で、現在は日本全国の水田で雑草となっている抽水性の一年草である。このような水生食用植物は、日本に稲や麦などの栽培が普及する以前においてかなり利用されていたと考えられ、木の実や果実に加えて古代における日本人の採取文化の存在を考える上で貴重な食材である。本研究では、古代野菜のなかでもミズアオイ・コナギに注目し、古代における利用法について考える。
    [方法]『古事類縁』『奈良朝食生活の研究』を中心にしてミズアオイ・コナギが出現する資史料を抽出し、利用法を検討する。
    [結果] ミズアオイ・コナギは、『万葉集』に「殖子水葱」、『大日本古文書』の水葱条に「請自西薗」「殖所」、さらに『延喜式内膳』には宮廷直轄の園圃において植栽され、その耕種法が詳細に記載されていた。『宇治拾遺』『催馬楽』にも「田につくりたる事」と記述され、古代においては栽培されていたことが明らかであるが、蔬菜類の中では低廉の類であると記す。料理として「羹物(汁もの)」「塩漬」「汁糟漬」の調理法(『万葉集』『延喜式』)があり、薬用として小児の解熱(『長生療養方』)の効用の記述もあった。また、「なぎの花のみこしに奉る」(『枕草子』)など天皇・皇后行幸の神輿に飾る神聖な植物でもあった。
  • ミズアオイ(ナギ)・コナギの食味評価
    冨岡 典子, 柳 進, 穴沢 達彦, 木根 正一, 久保 由香子, 中川 忠彦
    セッションID: P-30
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]前報で、『万葉集』に「水葱乃煮物」と詠われたミズアオイは宮廷直轄の園圃で植栽されるなど、古代においては食材としてかなり利用されていたことを資史料より報告した。本報では、ミズアオイ・コナギの食味評価からその植物の特性を検討した。
    [方法] 奈良県宇陀市榛原町の休耕田を利用して、ミズアオイ・コナギを栽培・増殖(2004年3月から2006年現在まで)し、以下の方法でその植物の食味評価を行った。(1) ミズアオイ(塩ゆで)の 食味評価:実施時期は2004年11月、被験者(10歳代後半から20歳代前半の本学学生および教職員)26名を対象とし、無記名自記式質問紙法により実施した。評価項目は植物の周知度、食体験の有無、外観、食味、類似の野菜などであり、結果については単純集計を行った。(2) ミズアオイ・コナギの調理法別による食味評価(ほうれん草と比較して):実施時期は2005年9月、被験者(20歳代前半の本学学生および教職員)5名を対象とし、ミズアオイ(茹で水にA.0.5%重曹添加、B.2%食塩添加、C.4.5%米酢添加、D.無添加)およびコナギ(茹で水に0.5%重曹添加)について、評点法による評価を実施した。
    [結果](1)ミズアオイの周知度は「知っている」(26.9%)、「知らない」(69.2%)であり、被験者の70%はこの植物を知らなかった。その食味は「舌がピリッとする・ピリピリする」(57.7%)、「苦い」(19.2%)、「えぐ味」(15.4%)などの評価であり、類似の野菜として「ほうれん草」(38.5%)、「青ねぎ・わけぎなど」(19.2%)、「きく菜」(11.5%)などがあげられた。(2)(1)の結果をもとに、ほうれん草と比較した食味評価においては、ミズアオイ・コナギともに茹で水に0.5%重曹添加のものがほうれん草とほぼ同じ食味の評価を得た。
  • 成田 亮子, 加藤 和子, 長尾 慶子
    セッションID: P-31
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]食事が多様化されるなかで、正月の雑煮として欠かすことのできない餅について、家庭における行事と餅がどのように受け継がれてきているかの摂取状況調査を行った。
    [方法]調査対象は、本学家政学部栄養学科並びに短期大学部栄養科に在籍する学生170名である。調査期間は、2004年5月から9月とした。
    [結果](1)鏡餅について:正月に鏡餅を供える家庭が82%、供えない家庭が18%であった。入手方法の内訳では、スーパーで購入が66%、家庭で作るが30%、米店・和菓子店で購入が4%である。また、鏡開き後の餅を食する家庭が75%であり、食べ方としては、汁粉など小豆を使用する料理が27%、次いで焼く(磯部巻き・あべかわ)が14%、雑煮(12%)、揚げ餅(10%)であった。その他にチーズ巻き餅、ピザ餅といった回答も少数みられた。(2)雑煮について: 100%の家庭において食されていた。餅の種類では角餅の餡なしが87%を占め、餅の加熱方法では焼いてから入れるが76%と多く、次いで茹でる(12%)、生(11%)、電子レンジ(1%)であった。(3)餅を食する機会:正月のみが35%であり、年間を通して20回以上食する家庭も25%と多い。その餅を常備している家庭が25%、必要に応じて購入する家庭が67%であった。(4)餅に対する嗜好・イメージ:餅が好きと回答した学生が92%と多く、好きな餅料理では、雑煮、磯部巻き、あべかわ、汁粉、納豆餅と和風料理が94%を占めた。その他に、バター海苔餅、チーズ巻き餅、ピザ餅、ピザ餅グラタン、キムチ餅、キムチ鍋などの洋風アレンジが5%みられた。学生に餅から受けるイメージ語を自由記述させると、‘雑煮’、‘正月’、‘おいしい’が多く出現した。
  • 遠藤 千鶴, 西堀 尚良, 後藤 月江
    セッションID: P-32
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ポリアミンは全ての生物の細胞に存在し、植物系はアルギニンから動物系はオルニチンから合成される物質で、細胞の増殖に不可欠であると考えられている。そのため食品中のポリアミン含有量とその摂取量の把握が重要となっている。遠藤らは乳幼児死亡率が高いザンビア共和国(アフリカ)で子ども達の栄養調査を行っていることから、ザンビアの食品のポリアミン含量を分析し、子どもの摂取量を検討した。
    【方法】ポリアミンの分析に供した食品は検疫所を通して持ち帰った乾燥食材で、植物性食品7種と動物性食品3種の計10種類である。試料調製は食材をミルで粉砕後、5%TCA溶液中でホモジナイズし、遠心分離した。さらにその沈殿物に5%TCAを加え同操作を繰り返し、上澄みをHPLC(イオン交換カラム)で定量した。ポリアミン摂取量は分析値より年齢別に算出した。
    【結果・考察】HPLC の結果、植物性食品からはプトレシン、スペルミジン、スペルミンが同定でき、中でもCow pea は他の食品に比較しスペルミジン(1151±67n mol/g)が多く含まれていた。一方、動物性食品からはプトレシン、スペルミジン、カダベリンが同定できた。動物性食品にはプトレシン、カダベリンが多量に含まれていることがわかった。子どもたちの摂取量をみると、ザンビアの子ども達は食事量が少ない上、動物性食品の摂取も少なく、西堀らが報告1)している日本人の摂取量から考察しても少ない量であった。
    1)N.Nishibori et al.Food Chemistry , In press
  • 大橋 きょう子
    セッションID: P-33
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー

    〈目的〉家庭用食用油には様々な種類があり、近年では健康効果が期待できる旨が表示された特定保健用食品、栄養機能食品である食用油(以下「機能性食用油」とした)が発売され利用されている。そこで、首都圏在住の主婦を対象に、機能性食用油の使用実態および成分表示に対する認知度と健康意識について明らかにすることを目的とした。
    〈方法〉対象:昭和女子大学付属中学・高等学校の生徒の保護者149名。有効回答率74.5%。期間:2005年1月。内容:家族構成、調理担当者の年齢・職業、家庭で行う油調理の種類と頻度(週あたり実施回数)、使用油の種類、成分表示に対する認知度、購入理由、購入重視点、および食用油に対する要望について、アンケート調査を実施した。
    〈結果〉各家庭で頻度の高かった調理は「炒める」、「焼く」調理で、週に3_から_5回が、それぞれ全体の52%および40%、6回以上は13%および12%を占め、「揚げる」調理は週に3~5回は6.4%、1~2回が71%、0回が22%あった。使用油のうち77%の家庭で、a.ジアシルグリセロール、b.中鎖脂肪酸、c.オレイン酸、d.リノール酸を主成分とする油脂、e.ビタミンEまたはf.植物ステロールを多く含む油脂などの機能性食用油を使用、高齢者同居の家庭が不在の家庭に比べて10%程度高かった。購入理由として全体の72%が「生活習慣病予防に効果がありそう」を第一に挙げたが、成分表示への認知度は、a.13%、b.22%、c.41%、d.35%、e.32%、f.25%で、特に体に脂肪がつきにくいと表示されているa.およびb.の認知度が低かった。購入重視点および要望は共に、健康への効果を第1に挙げ、次に安全性、価格であった。
  • 松島 文子, 板倉 一枝, 横山 弥枝, 石川 行弘
    セッションID: P-34
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】鳥取県のカニ類の平成17年度漁獲量は6,800tで全国1位を誇り、全国シェアの約20%を占める。カニの1世帯当たり年間購入量は鳥取市で全国平均の約6倍の6,141g(16年度)であり、カニ消費量は全国1位である。今回、日本調理科学会特別研究_-_魚介類の調査_-_より鳥取県におけるカニの調理実態を明らかにすることを目的とし、カニの種類、入手方法、料理出現率、調理方法、日常食・行事食への利用などを中心に検討した。
    【方法】調査地域として日本海沿岸地域の県東部岩美町、県中部赤碕町、県西部境港市および県東部山間地域の智頭町の4地域を選定した。平成15年11月から平成16年4月にかけて、総数63世帯の30歳代から70歳代の調理担当者を対象に、日常食・行事食に用いる魚介類について、その摂食状況をアンケートならびに聞き取りにより調査した。
    【結果】鳥取県で食されるカニは、ズワイガニ(松葉ガニ、親ガニ、若松葉の総称)、ガザミ(ワタリガニ)などが主であった。入手方法は「購入」が約60%を占め、「自給・その他」が20%程度認められた。出現率の高い料理としては「ゆでガニ」「カニ汁」「カニすき」「カニ飯」などがあり、これらは全調査地域に共通して認められた。調理法については、岩美町、境港市では「ゆで物」が全料理件数の30%から50%と高く、「ゆで物」の他にも様々な調理法が用いられていた。年代別にみると40、50、60歳代は調理法の幅が広いのに対し、30、70歳代では調理法の限定化傾向が認められた。正月・冠婚葬祭などの行事食における利用は少なく、親ガニのみそ汁・鍋物・ご飯物など日常食として約90%が利用されており、秋季から冬季の味覚として県民に親しまれていることが確認された。
  • 今田 節子, 平野 尚子
    セッションID: P-35
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    目的 魚離れが取りざたされて久しい。しかし一方では、魚介類が健康食として見直されていることも事実である。本研究では健康意識が魚介類の食習慣に及ぼす影響を探った。
    方法 日本調理科学会特別研究の「魚介類の調査」に加え、魚介類に対する嗜好、知識、調理技術習得方法,情報源、健康意識の有無などについてアンケート調査を実施した。調査対象者は岡山県7市町村に居住する主婦(30歳代から70歳代)116名であった。
    結果 (1)104種類の魚介類があげられたが、使用率が70%以上をしめたものは、アジ、サケ、サバ、サワラ、イワシ、ブリ、アナゴなど限られた15種類であった。(2)魚介類の料理は2563例で、焼物34%、煮物22%、揚物15%で全体の70%以上をしめ、瀬戸内海のサワラやアナゴを使ったすし類や酢物などの伝統料理は中高年層に比較的利用が多かった。(3)魚介類を食べる際に健康を意識している41%、どちらかといえば意識している44%、意識してない15%で、若年層より中高年層の主婦に健康を意識している割合が高かった。(4)魚介類の栄養成分や機能に関する専門知識は、健康を意識している層の方に高い傾向が認められ、その情報源としてテレビ、新聞、料理雑誌などのメディア関連が67%をしめた。(5)魚を食べる日数はいずれも週に4日前後で差は認められず、使用する魚介類は25.4種類と32.3種類、料理事例数は36.7事例と42.1事例で、いずれも健康を意識していない層に多種類の魚介類と料理事例が認められた。
     以上の結果から、健康ブームのなかでメディアを通して魚介類に関する専門知識がふえ健康意識が高まっているものの、使用する魚介類の種類や料理法の選択範囲は広いとはいえず、定型化した魚食の実態が示唆された。
  • 加賀野菜の消費動向
    新澤 祥恵, 中村 喜代美
    セッションID: P-36
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】食品の流通が拡大し地域性が失われつつある中で、「地産地消」や「スローフード運動」といった地場産食品利用への関心が高まっている。我々は今日の食環境の中で郷土食がどのようにおかれているかを検討しているが、本発表では地域性の強い当地特産の加賀野菜について、野菜消費との関連でその動向を検討した。
    【方法】『金沢市中央卸売市場年報』1967_から_2004年の加賀野菜等の入荷量と、「加賀野菜の使用実態についての調査」(2000年11月実施)により消費動向の検討を行った。
    【結果】1 野菜を購入する際重視する要因は「鮮度」「価格」の順に多く、「産地銘柄」という要因の比重はそれ程大きくはなかった。また、「地物」への意識については、年齢階層が低くなるとこだわるものの割合が少なかった。2 日常よく使う野菜では大根、なす、胡瓜、トマト、白菜、人参、じゃがいも、たまねぎ、キャベツ、ねぎの出現率が高く、太胡瓜・金時草・つる豆・吹立菜はよく使う野菜としては高い位置づけとはいえなかった。3 『金沢市中央卸売市場年報』により野菜の入荷量を比較したところ、大根・白菜・ねぎ、蓮根のように和風の煮物調理として使われることの多い野菜は減少しているのに対し、たまねぎ・ピーマン・人参のように炒める素材としてよく使われるものや、トマト・レタスのようなサラダによく使われる野菜は増加傾向にあった。4 加賀野菜の入荷量では、つる豆・吹立菜はずっと減少傾向が続いており、特に吹立菜は2004年には県内産の入荷は全くなかった。これに対し、太胡瓜と金時草は一時期減少傾向にあったものの、比較的早くより加賀野菜としてPRされてきたためか近年増加傾向に転じていた。
  • 大坂 佳保里, 阿部 祐加子, 金武 由利子
    セッションID: P-37
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】21世紀を迎え、わが国の生活様式の多様化は著しく、これに呼応するように食生活も常に変容している。その中で、近年、1日3食を規範とした喫食行動に変化が生じ、欠食をはじめとした食の問題行動が表面化するに至っている。豊かな社会生活の一面でもあった多様化が、個人レベルで大きく展開するに至り、ともすると気ままな生活を誘発し、国民病の感がある生活習慣病の増加やその前駆症状と考えられるメタボリック・シンドロームの増加に拍車を掛けている可能性が否めない。そこで、日常の生活時間のありようが喫食行動に大きく影響を及ぼすものと考え、女子学生の生活時間を調査し、今後の食教育の手がかりとすることを目的とした。
    【方法】2005年4月から5月にかけて喫食行動を中心とした1週間の生活時間調査を行い、単純集計とクロス集計を行った。
    【結果】調査対象者は同意の得られた38名である。起床時間は平日が6時47分±38分、休日は9時24分±102分と両者に差が認められ、特に休日では対象者間のバラツキが大きかった。しかし、就寝時間では平日は0時16分±43分、休日が0時31分±55分とあまり差は認められず、生活時間の夜型への移行が恒常化していることが伺えた。睡眠時間は平日では6時間31分±53分、休日では8時間56分±112分と、平日の睡眠不足を休日に解消している姿が浮上した。喫食の所要時間は朝食、昼食、夕食の順に長くなるが、休日が平日より長い傾向にあった。本研究から生活時間はバラツキあり、個人差が大きいことが認められた。これは生活の多様化に起因していると考えられ、これが喫食行動に負の変容を生じさせ、欠食などの食の問題行動を誘発しかねない。今後、さらに生活時間に着目し、食の多様化との関係で検討を行なう予定である。
  • 河野 篤子, 米田 泰子
    セッションID: P-38
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]近年、惣菜の購入や、外食機会の増加によって、各家庭で調理の機会が減少し、地域の特色ある郷土料理が日常の食卓から姿を消しつつある。そこで、関西と共通点の多い山形県庄内地方において、現在の郷土料理の実施状況を把握し、併せて関西との共通点を確認する目的で調査をおこなった。
    [方法]2004年7月に、山形県庄内地方に在住で家庭の調理担当者136名を対象とし、アンケートを実施した。
    [結果]対象者は40歳代で、三世代世帯が最も多く、約9割が庄内地方の出身者で30年以上居住していた。郷土料理とされている中から主な45種類を選択し、知名度、現在の作成率平均を算出すると、それぞれ84.0%、41.3%と、料理名を知っていても作る機会が減少していると言える。料理を飯・麺、もち類、漬物類、副食、汁に分けて比較すると、飯・麺の「むきそば」「なまそば」、漬物類等の作成率は低く、またもち類については知名度、作成率ともに低かった。副食では「いわしのぬた」、「子寄せ寒天」等の作成率が低かった。いずれも手間がかかるためであろう。以上の結果を年齢別に比較すると、同様の傾向がみられたが、特に若い世代では、副食のうち酢の物、和え物の作成率の減少が著しく、嗜好に変化がみられた。
    行事食として、一般に「雑煮」には丸もちが使われたり、「棒だらと大根の煮物」、「飯ずし」(飯に麹を混ぜて発酵させ、数の子、大豆などを加える)等には使用する食材や料理法で関西との共通点がみられた。今回の調査では、もちの形態は質問しなかったが、「雑煮」は94%、「棒だらと大根の煮物」は54%の家庭で作られていたが、「飯ずし」に関しては手間がかかるためか、作成する家庭はみられなかった。
  • 飯田 文子, 戸田 美穂
    セッションID: P-39
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    目的 食生活の乱れが低年齢にまで及んでいることが指摘されている。そこで我々は若年層を中心に意識調査を行い、食べ物に対する選択基準やおいしさに関する意識を明らかにした上で、大学生に対する食教育効果を含め考察し、今後の食教育についての指標を得ることを目的とした。
    方法 日本女子大学附属小学校・中学校・高等学校・大学および社会人1169名を対象とし、留め置き式アンケート調査を行い、小学校198名、中学校241名、高等学校252名、大学173名、社会人108名の回答を得た(回収率83.1%)。内容は食品の選択基準・満足度・食に対する意識・食生活指針に関する項目・嗜好・食行動で、小学生に関しては考慮を加えた。また大学1年生と4年生の味覚に関するテストは27名について行った。
    結果 食品の選択基準では、外部情報の影響を一番受けやすいのは大学生で、次いで中学生・高校生、小学生と社会人は受けにくい結果が得られた。おいしさ・満足度の判断基準は、小中高生は「味」を中心とした基準で判断するのに対し、大学生以上はさまざまな視点を重視していた。食行動に関する質問では、食生活を自由に選択できるようになるとその行動は乱れることがわかった。食生活指針に基づく質問では、食物学科の学生に教育効果がみられた。食に対する意識の高い人は、主食2菜添え物などの整った食生活をしていた。大学生の味覚テストでは1年生よりも4年生のほうが本物志向であった。以上より食物学科で学ぶ大学生は食意識・食行動・味覚について優れており、食物学科で学ぶ効果は期待でき、このことから家庭教育や栄養教諭による食教育効果は十分期待できると結論づけられた。
  • 色付き飯の嗜好
    奧田 弘枝, 小園 佳美
    セッションID: P-40
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    目的 食物の色彩は人間の食欲に影響を与え、視覚情報による色彩と味覚にも関連があることが、これまでの演者らが行った研究で明らかになった。本研究では身近な飯ものやもち類について、色の濃さと食欲増進あるいは減退にどのような関連性があるのか、これらの色から連想する食べ物と、五味(甘味・塩味・酸味・苦味・旨味)によって違いがあるか否かについて検討を行った。
    方法 広島市近郊の女子大学生、女子高校生、その保護者ら115名を対象に、2005年7月_から_8月にかけて、色付き飯に関する視覚的官能検査を行った。さらに、色付き飯ともち類の市場調査もあわせて行った。
    結果 視覚的官能検査の結果、食べたいと思う色は黄>無彩色>茶>赤>黄緑>紫の順に多く選択された。食べたくないと思う色としては紫>無彩色>赤>黄緑>茶>黄の順に多く選択された。五味を連想する色としては、甘味は赤、塩味は無彩色(白)、酸味は黄、苦味は無彩色(黒)、旨味は茶、黄が多く選択された。身近な飯ものについても、食体験の影響が大きいことがわかった。色付き飯ともち類の市場調査の結果、しょうゆやソース類の調味料を用いた茶系のものが多かった。様式別にみると和風料理では、茶、黄、黄緑、紫系の薄い色の飯もの、もち類、西洋料理では暖色系(赤橙色系)の濃い色の飯ものが多かった。近年の健康食ブームとの関連性がみとめられた。
  • 年代別比較
    坂元 明子, 河野 篤子, 竜口 和恵
    セッションID: P-41
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]前報で、4種のいも類のイメージ、嗜好、およびいも料理摂取頻度についてアンケートを行い、じゃがいもが全体的に好まれ、良いイメージを持たれていること、また、数種の限られた料理のみを摂取していることを報告した。今回はいも料理の摂取頻度を年齢階層別に集計し、生活状況、嗜好等と関連させ、年齢による食事形態の特徴を検討した。
    [方法]昨年度のアンケート結果をもとに、年齢階層別に摂取頻度を集計した。有効回答数は612で回収率は67%であった。
    [結果]摂取頻度の高い料理上位5種について、「よく食べる」の割合を比較するとじゃがいもでは洋風料理は年齢階層による差はなく、和風料理では50歳代以上で、それ以下の年代と差がみられた。さつまいもでは、40歳代ではふかしいも、焼きいも、大学いもなどの、70歳代では大学いもの摂取頻度が低かった。さといもの汁物、煮物は20歳代を除いて年齢による差はみられなかった。やまいもは、お好み焼きは全ての年齢階層で摂取されていたが、和え物は20歳代では好まれていなかった。また、やまいも、さつまいもは、上位にそれぞれ「かるかん」「かりんとう」などがあり、地域の特徴もみられた。じゃがいも料理の肉じゃが、ポテトサラダおよびさつまいも料理はどの年齢階層でも好まれ、年齢による摂取に差がみられなかった。その他のいも料理では、共食者の年齢、時間的ゆとり、嗜好などが影響し、前報と同様に限られた料理を作成していると考えられたが、60歳代で、どのいも料理に関しても「よく食べる」割合が高かった。その要因として60歳代は、若い世代に比較して、時間的ゆとりがあり、料理が好きで、上の世代よりもいも料理作成頻度が高い傾向にあることが考えられた。
  • 角田 香澄, 伊藤 正江, 柵木 嘉和, 坪内 美穂子, 徳留 裕子
    セッションID: P-42
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、放課後の児童の生活習慣は、塾に通うなど以前に比べて大きく変化してきた。また、食の欧米化や生活習慣の変化にともない児童の嗜好性も変化してきた。食環境については、スナック菓子摂取量の増加、外食や調理済み食品、レトルト食品の使用等により、児童の嗜好性も変化してきたと思われる。学校給食の残食率は、嗜好性と同様に食環境と密接に関係しているといわれている。そこで、本研究では、主食に重点をおき、残食率と喫食環境との相互的な関係を知ることを目的にアンケート形式による、嗜好等の調査および喫食状況(残食率)を調査した。
    【方法】現在の児童の嗜好を知るために愛知県一宮市の小学生3040名(男子1537名、女子1503名)を対象にアンケート形式による嗜好等の調査を行った。また、小学校給食の残食率の調査を行った。
    【結果・考察】嗜好等の調査を「全国児童生徒の食生活等の実態調査」と比較した。全国調査の結果では、最も好まれる献立は、カレーライスであった。一宮市の児童も同様に、カレーライスを最も好むと答えた。嫌いな食品については、全国調査の上位10品目の結果は、その中の8品目が野菜であったのに対し、一宮市の児童も全国同様、野菜が上位をしめる結果であった。また、嫌いな料理の傾向も同様の結果が得られた。全国調査の嫌いな献立の1位は、野菜サラダであり、一宮市の児童も野菜の入った献立を好まない結果であった。2.米飯の月別残食率は、6月から9月にかけて高い傾向を示した。真夏などの暑さや湿度の影響を強く受けていると思われる。嗜好と残食率の関係については,好まれる献立である「カレーライス」について比較した。特にカレーライス時の残食率は5%と低いが,湿度が高く蒸し暑い時期には,8.7%と高い傾向を示した。給食の献立と気候は喫食状況に大きく関係する傾向が示唆された。
  • 明槻 とし子, 渡邊 幾子
    セッションID: P-43
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】日本の麺類の食文化は、多種多彩でのどごし、舌触りのよさ、食べ易さなどから世代、男女を問わず各種麺類が様々な調理法で日常手軽に摂取されている。そして、手作り麺や麺類を主とする外食産業も多く見られる。そこで若い世代の麺類の嗜好性や、摂取状況などを調査して、その特徴と動向を明らかにすること目的にした。
    【方法】対象は、本学男女学生250名で自記入アンケ_-_ト方式とし、調査時期は2005年6月に実施した。内容は、4種類の麺類(うどん、そば、ラ_-_メン、スパゲティ)についての嗜好、摂取頻度、よく食べる調理法などである。結果は、対象者を性別、地域別(徳島県出身、その他の地域)に分け集計し比較した。また、各種麺類の嗜好性は、大好き(+2点)_から_大嫌い(_-_2点)の5段階で点数化し、平均値のt検定を行った。
    【結果】有効回答率は57.6%であった。嗜好点数はうどん1.47±0.72、スパゲティ1.42±0.73、ラーメン1.32±0.81、そば0.83±1.04であった。その割合は、「大好き」「好き」を併せて、うどん(99.2%)>スパゲティ(85.4%)>ラーメン(84.0%)>そば(60.4%)の順であった。全体にうどんが有意に好まれ(p<0.05)、スパゲティとラーメンも嗜好性は高く両者に差はなく、男はラーメン、女はスパゲティを好んでいる傾向を示した。そばは他の麺と比べ嗜好性が最も低く、これはアンケートの対象が若年層のためと推察される。一方地域別で、そばに有意差がみられた(p<0.05)。徳島県では祖谷そばやそば米汁などの郷土料理があるため、そばが身近に感じられるためと考えられた。麺類の調理法は主食の代用としてまた、手軽な一品として和風、洋風、中華風に日常多彩に摂食していた。
  • 植田 和美, 高橋 啓子
    セッションID: P-44
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】日本各地で生産されている手延べそうめんはもともと農家の副業、家内制手工業
    として作られてきたものであるが、近年は組合や製麺会社などにより均一で高品質な商品の生産・流通へと変化している。しかし、地産地消やスローフードの観点から伝統的地域
    特産品として見直されるべきである。そこで、本研究ではそうめんの嗜好を把握するとともに、各地の手延べそうめんの食品学的特性について測定を行い嗜好との関連を検討した。
    【方法】そうめんの嗜好に関するアンケート調査は留め置き法により実施した(平成14年12月,327名,回収率81.3%)。食品学的特性については、生産量の多い7地域を選び、各地域5種類の手延べそうめんを試料として用いた。測定項目は、乾麺およびゆで麺の太さ・直径、重量、色などの性状、乾麺の水分含量、塩分含量、そして、ゆで麺のクリープメーターによる破断強度試験を行った。
    【結果】嗜好調査より麺類は90%の人が好み、うどん、ラーメン、パスタ、そうめんの順
    によく食べていた。そうめんは主に夏(90.5%)に食され、冷やしそうめん(95.1%)汁物(46.8%)の順で簡単な調理法が多い。知っているそうめんの名称では、半田(77.4%)、三輪(57.6%)、小豆島(40.9%)と続いた。好みのそうめんの太さでは細め(57.6%)、太め(15.2%)、標準(27.1%)と細いものが好まれていた。食品学的特性では、乾麺の太さ・直径は試料によるばらつきがあるものの生産地域による特性が見られた。最も太い麺は半田(直径1.63±0.17mm)であり、最も細い麺の約3倍の値であった。塩分濃度は、生産地域より試料による差の方が大きく、製造時季により塩分調整が行われたためと考えられた。
  • 石澤 恵美子, 坂本 恵
    セッションID: P-45
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】女性の社会進出と核家族化により食の外部化が進み、家庭の味や食文化の伝承が難しくなっている。現代の食環境で成長してきた若者たちが、どのような料理を受け継ぎ、次世代へ伝えたいと考えているのかを目的として、大学生を対象に調査を行ったので報告する。
    【方法】調査対象者は本学管理栄養士課程の1年生118名とし、平成18年4月から5月に実施した。内容は次世代に伝えたい料理2品を選び料理を作成し、材料・調理方法・出来上がりの盛り付け図(写真可)を提出してもらい、併せて作成時の様子や料理する時に大切なことなどについて自由に記入してもらった。
    【結果】作成した料理では、肉じゃが8.5%、ハンバーグ3.8%、餃子3.0%、オムライス3.0%、ロールキャベツ2.1%の順であった。また、特徴としてエスカロップ、くるみ餅、ほうろく焼きなどの地域性に富んだ料理も作られていた。調理するときに指導を受けながら作ったの回答は72.0%であった。指導は母親から受けたが64.4%と圧倒的に多く、次いで祖母5.1%、父3.4%の順であった。指導を受けながら一緒に調理をしたのは35.6%、しなかったの回答は33.1%であった。一緒に調理をしなかった者は、TVで見たのを自分流にアレンジした、電話で指導を受けた、料理本を参考にした等の回答が多かった。今回作成した時に一番大変だったことについては、味の再現(味付け)、材料・調味料の計量、じゃがいもの皮剥き等が多かった。調理する時に大切なことは、食べる側のことを考えて作る、衛生面に気をつける、心を込め丁寧に作るの回答が多かった。料理を作成した感想は、母が簡単に作っている味と同じにするのは難しいと思った。母と一緒に料理ができて楽しかった。大変ではあったが、少しでも母の味を覚えられてよかったなどであった。
  • 大須賀 彰子, 大越 ひろ
    セッションID: P-46
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】近年、若年者における食の問題として個食、孤食、偏食が挙げられて久しいが、このことは家庭における調理従事者の食意識や食嗜好と次世代の食嗜好と関係しているためと思われる。そこで本研究では、若年者と家庭での調理従事者(主に母親)の食嗜好についてアンケート調査を行い、両者の食嗜好の実態を把握し、調理従事者の食意識・食嗜好が若年者の食嗜好に及ぼす影響を検討した。
    【方法】調査対象は本学学生及び学生の家庭における主たる調理従事者(主に母親)とした。アンケート調査は自己記入留め置き法にて、平成17年6月から10月に実施した。調査内容は、過去に嫌いだった食材の有無とその食材(今回は野菜類と魚介類に限る)、また克服した食材、克服の時期、克服理由とした。
    【結果・考察】過去に嫌いな食材があったと回答したものは若年者の方が多かった。嫌いとして挙げた食材の出現頻度は、野菜類ではピーマン、セロリ、人参、なす、トマトが、魚介類では、うに、かき、いくら、あさり、うなぎが高かった。嫌いだった食材の克服状況を見ると、野菜類・魚介類ともに、年齢とともに克服したものは多く、時期は野菜類の方が魚介類よりも早い傾向を示した。克服理由は、野菜類、魚介類を問わず、若年者と調理従事者ともに「調理法」「食習慣」の回答が多かった。ことに調理従事者では「子どもの教育のため」を挙げていた。これらのことから、調理従事者の食意識・食嗜好が若年者の食嗜好に影響する可能性が示唆され、児童期からの家庭を中心とした食教育の重要性が認められた。
  • 弦間 夫佐江, 木内 清美, 斉藤 靖子
    セッションID: P-47
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】食育基本法が制定され、健康志向が高まっているが、前回の調査で家庭での食教育の不足が明らかになった。そこで今回は食生活を営む上で必要な基本的事項の認知度や関心の度合いについて調査を行い、これらについて一定の教育を行った後に再調査し、教育効果について考察した。
    【方法】愛知県内の短期大学に在籍する学生113名(食専攻40名、福祉専攻73名)を対象とし、食生活や食品に対する関心、料理に対する関心と経験、栄養やエネルギーの知識、献立・配膳の認識、賞味期限や食品添加物等の表示の認識について5段階評価の質問紙法により調査を行った。調理実習を通してこれらについて具体的な教育を行った後、各項目に関心が高まったかどうかの質問を加えて再度同様の調査を行い、両群を比較した。
    【結果】初回の調査では全項目において食専攻群のポイントが高く(平均3.9)、特に食生活や食品・食材、料理に対する関心が高かった。両群とも食品のおよその量の認識をたずねた項目のポイントが最も低く、経験不足が示唆された。食品の表示では、賞味期限はよく認識され、食品選択の指標としているが、原材料、食品添加物、栄養成分表示の認知度は低かった。再調査では、食専攻群は初回からポイントが高かったこともあり、大きなポイントの上昇は認められなかったが、17項目中5項目で過半数以上の学生が関心が高まったと回答した。福祉専攻群ではほぼすべての項目でポイントが上がり(平均3.5→3.7)、12項目で関心が高まったと回答した。これらの結果は教育効果を示唆し、基礎的な食教育を行うことにより食生活や健康に対する関心を引き出せることが明らかとなった。
  • ー 食育へのアプローチ ー
    井上 絵里香, 大窪 綾, 杉本 佳奈美, 佐野 友恵, 益田 理奈, 喜多野 宣子
    セッションID: P-48
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】近年、社会・経済構造の変化により、家庭における食生活は急速に変化している。その変化の中で、家庭や地域独特の行事食が衰退の一途をたどる懸念がされている。行事食の中でも行事菓子の伝承実態について全国調査されたものは極めて少ないことから、今後の食文化伝承を教育目標とする食育における行事菓子の位置づけや方向を考えるための基礎データを得る目的で、全国の行事菓子の認知度や実施度について調査を行うことにした。
    【方法】11都道府県の大学、短期大学、専門学校の学生1309名を対象とし、行事菓子についての認知度や実施度に関するアンケート調査を行った。調査時期は2005年7月、配布、回収は各学校を通して行った。回収率は90.4%、1165名を有効データとした。なお、検定方法はΧ2検定を用いた。
    【結果および考察】アンケートの結果、認知度が高い行事菓子は、実施度も高い傾向となった。しかし、認知度は高いが実施度が低い行事菓子については、衰退が懸念された。 また、全体的に実施度が高い行事菓子は、クリスマスケーキ、バレンタインチョコ、節分豆などの行事自体にイベント性が高いものや、千歳飴や雛あられ、柏餅など、子供に関係のある行事菓子であった。よって、子供のころから慣れ親しんだ行事菓子は、大人になっても継続して食されるのではないかと考えた。今後、学校給食や食育の授業などを通して、幼少期から行事菓子に慣れ親しむ機会を増やすだけでなく、伝承する立場の親世代についても、行事菓子について理解を深め、体験できる機会を提供する必要性があると考えられた。
  • フードコーディネート授業の一環として
    湯川 夏子, 岡部 愛, 今田 祐子, 米浪 直子
    セッションID: P-49
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】子どもの野菜嫌いは多く、これを克服し食嗜好の幅を広げることは、食教育において重要な課題の1つといえる。野菜は調理により様々な食感や味を生み出し、盛付けや調理の工夫次第で嫌いな食品の克服が可能である。本研究では、学生達が子どもの食生活についての意識を持つ機会になることを目的とし、フードコーディネート授業の取り組みの1つとして、子ども向け「野菜嫌い克服メニュー」の献立作成をおこなった。この実践結果とその評価について報告する。
    【方法】野菜嫌いの克服を目的とした料理を学生が考案・試作した。これを「料理の出来栄え」4項目「野菜の味」2項目「子ども向き料理としての適正さ」3項目、合計9項目について評価を行った。2品について、小学生の親子(13組)に試食を依頼し、母親によって、質問紙記入とグループインタビューによる料理評価を行った。
    【結果】学生により6品の料理が考案された。そのうち評価の高かった「なすのグラタン」を小学生の親子に試食・評価してもらったところ、外観が原因で全体の評価が低く、子ども向き料理として、外観の重要性が示唆された。「にんじんのコロッケ」では味・外観ともに好評であったが、「コロッケを手作りしない」という家庭が多く、家庭料理の実態にあわせた料理内容の提案が必要であった。これらの取り組みを通じて、学生は野菜の調理方法の工夫や、盛付けの重要性について学ぶことができた。学生が意欲的に取り組める課題であったと共に、母親に対しても子どもの食生活について考える機会として有効であった。今後さらに内容を検討し、効果的な食教育の取り組みとなるよう改善したい。
  • 富永 しのぶ, 岸田 恵津, 前田 智子
    セッションID: P-50
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】いり酒は,室町時代から江戸時代中期まで主に刺身や鱠などに使用された代表的な調味料であったが,醤油の普及とともに,いり酒の利用は減少し,いり酒に関する詳細な研究はなされていない。本研究では,江戸期の料理本を資料として,いり酒の製法や利用を調べ,この結果に基づいて再現し,成分等を分析することを通して,いり酒の特性を明らかにすることを目的とした。
    【方法】『翻刻江戸時代料理本集成』などに収載された料理本76冊からいり酒が記載されていた62冊1)を資料として製法や分量の記載を調べた。本研究では,「古酒に鰹節と梅干を加えて煮詰めた」ものを基本的な「いり酒」とし,再現試料とした。料理本には、「早いり酒」「精進いり酒」なども出現していたので,これらも検討の対象とした。いり酒の成分については,有機酸,アミノ酸,核酸(いずれもHPLC),塩分(モール法)等を分析した。
    【結果】いり酒の作り方と材料の分量が記載されていたのは11冊であった。調製方法や配合割合は,いずれの本においても大差がなかったので,江戸初期に刊行された『料理物語』に記述されていたいり酒の調製法(古酒1升,鰹5合,梅干10個)を基本として,再現した。いり酒の塩分は5%(w/w),遊離アミノ酸量は1.1mg/g,有機酸量は11.2mg/gであった。有機酸の主成分はクエン酸(40%)と乳酸(28%)であり,これらは材料の梅干と古酒に多く含まれているものであった。他の成分の詳細については現在検討中である。
    1)青山佐喜子ほか,日調科誌,37,21-34,2004
  • 山田 節子, 今野 祐子, 三森 一司, 出雲 悦子, 大久 長範
    セッションID: P-51
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]近年、ペットボトル飲料を日頃から水分補給のために利用する人が増えている。缶入り飲料に比べて、いつでも手軽に飲みたい分だけ飲め、そのうえキャップを閉めればどこへでも持ち運べるという利便性がある。また、消費者の健康志向も伴って、さまざまなペットボトル飲料の中でも、茶系飲料の売れ行きが好調である。しかし開栓後、直接口をつけて飲み、それを持ち運ぶことで様々な細菌に汚染されることが予測される。そこでペットボトル飲料に口内細菌と大腸菌を植え、どのくらい増殖および変化がみられるかを実験したので報告する。
    [方法]茶系飲料、スポーツドリンクおよびミネラルウォーターのペットボトル飲料に、自身の唾液より採取した口内細菌と、大腸菌をそれぞれ添加し、25℃で24_から_48時間保存したあと、菌数の変化をペトリフィルムで測定した。
    [結果]口内細菌を接種したところ、24時間後では、ブレンド茶は約、3.6倍、ミネラルウォーターは約、1.5倍と大きく増加する傾向が認められ、48時間後には無限大となった。ウーロン茶は、48時間後ではほぼ一定を保ち、緑茶は減少傾向を示した。PHが3.7と低いスポーツドリンクは口内細菌が減少する傾向にあった。大腸菌接種では、ウーロン茶、緑茶、ブレンド茶、スポーツドリンクは24時間で検出限界にまで減少し、ミネラルウォーターは一時的に減少したが、48時間後にも接種菌数の約、1/6が検出された。ペットボトル飲料が一般細菌に汚染された場合には、pHが中性に近づくに従い汚染が進行しやすく、pHが3付近では進行し難かった。
  • 岡本 洋子
    セッションID: P-52
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】本報告ではいくつかの代表的な甘味物質とバレイショデンプンに試料を絞って、添加するバレイショデンプンの濃度が上昇し、ゾルからゲルに移行するとともに、甘味の感じ方がどのように変化するのか、ゲルとゾルを同一条件で調べること目的した。
    【方法】年齢18から20歳の健康な女子学生26から30名をパネルとし、甘味試料としては、D-グルコース、D-フルクトース、スクロース、D-ソルビトールが用いられた。パネルは、「基準液」と「デンプン添加の甘味試料」を味わって甘味の強さを比較し、評点法で評価した。評点データは、一元配置分散分析後、グループ間の有意差をテューキーの多重比較により検定し、p<0.05を有意とした。統計ソフトはSPSS for Windowsを用いた。
    【結果】「ゾル群:0.15625_から_2.5%デンプン添加の甘味試料を含む群」では、平均評点はおおむね小さく、これは基準液と甘味強度にあまり差がないことを示している。「ゲル群:5.0から20.0%デンプン添加の甘味試料を含む群」では、平均評点はおおむね大きく、これは基準液と甘味強度の差が大きいことを示している。すなわち、「ゾル群:0.15625から2.5%デンプン添加の甘味試料を含む群」では、甘味が強く感じられ、「ゲル群:5.0から20.0%デンプン添加の甘味試料を含む群」では甘味が弱く感じられるといえよう。また、「ゾル群」と「ゲル群」では、甘味強度に有意差の認められた群間が多かった。これらのことから、甘味試料がゾルからゲルに変化すると粘性や硬さを増すが、それにともない甘味強度が弱くなるのではないかと考えられた。
  • 小林 三智子, 田井 宣子, 山本 真依, 山本 悠子, 吉田 桃子
    セッションID: P-53
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】アミロライドは、塩味に対して抑制効果があると言われ、ラットやマウスでは多くの報告がされている。本研究ではアミロライドを用い、5基本味の認知閾値がどのように変化するかを検討した。
    【方法】非喫煙者の本大学女子学生41名をパネルとし、測定の際には食後1時間以上経過していることを確認した。5基本味は、甘味(スクロース)、塩味(NaCl)、酸味(酒石酸)、苦味(硫酸キニーネ)およびうま味(グルタミン酸ナトリウム)を用いた。認知閾値は上昇系列全口腔法の3点識別法を用い、プロビット法により求めた。5μM 20mlのアミロライドで舌を刺激した前と後の認知閾値を比較し検討した。併せてアミロライドの苦味が舌に及ぼす影響を検討するため、カフェインについても同様の実験を行った。
    【結果】上昇系列3点識別法のプロビット法により求めた5基本味の認知閾値は、甘味4.00、塩味1.22、酸味7.18×10-2、苦味2.04×10-3およびうま味0.62mMであった。アミロライド刺激後およびカフェイン刺激後の認知閾値は、刺激前と比較すると酸味以外は上昇する傾向が見られた。特に、甘味・苦味・うま味は5%の危険率で有意差が認められた。しかし、酸味は刺激後に認知閾値が低下した。塩味に対するアミロライドの影響を検討するため、塩化ナトリウムをコントロールとし、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、塩化リチウム溶液に対して同様の測定を行った。その結果、塩化カリウムでは認知閾値の低下が見られたが、4塩味溶液で明らかなアミロライドの影響は認められなかった。
  • 小林 三智子, 市川 優香, 石井 美帆, 板橋 彩乃, 貴田 珠美, 須賀 未咲
    セッションID: P-54
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】味覚感受性の測定において、臨床の場では電気味覚計を用いた検査とろ紙ディスク法の検査が多く使用される。本報告では電気味覚計の測定法を用い、若年女性の月経周期と味覚感受性の関連性を測定することを目的とした。
    【方法】健康な19から23歳の女子学生28名を対象とし、口腔内には口内炎やう歯による痛みのないこと、食後1時間以上経過していること、非喫煙者であることを確認した。電気味覚検査は電気味覚計(リネン社:TR-06)を用いた。刺激部位は、舌尖より2cmの茸状乳頭領域の左舌縁(茸状)、舌縁後方葉状乳頭領域の舌根に近い左の部位(葉状)の計2箇所とした。測定時期は月経周期を月経期、卵胞期、黄体期の3区分とした。月経中を月経期、月経終了から排卵日前までを卵胞期と考え、パネルそれぞれについて測定した。
    【結果】電気味覚計の結果は、いずれの期間の茸状と葉状の比較において、有意な差は認められなかった。一方、刺激部位による味覚感受性の差は、卵胞期と黄体期を比較した場合、両者とも有意な差は認められなかった。
     しかし、茸状において月経期(-1.54dB)と卵胞期(-2.81dB)、月経期(-1.54dB)と黄体期(2.30dB)を比較した結果、両者とも有意な差は認められなかったが、月経期の方が高い値となった。葉状では、月経期(0.11dB)と卵胞期(-1.52dB)では有意な差は認められなかったが、月経期の方が高い値となり、月経期(0.11dB)と黄体期(-2.56dB)では月経期の方が有意に高い値を示した。
     以上より、黄体期は月経期よりも閾値が低いことが認められ、黄体期は月経期よりも感受性が高いことが示唆された。
  • 宮下 武也, 柳澤 琢也, 重松 康彦, 兒嶋 高志, 大橋 重夫, 青山 忍, 木村 義治, 長谷川 峯夫
    セッションID: P-55
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】茹卵は加熱調理時間が長くなると、卵黄の周囲に硫化黒変を生じ、卵臭さも強くなることが経験上知られている。官能評価すると、人によって感じ方は異なるが、卵白と卵黄のいずれも苦味や渋味あるいは舌の表面がしびれるような味が強くなる。逆に加熱調理時間を短くして、卵黄は凝固しているがオレンジ色の半熟にすると、硫化黒変は起こらず卵臭さ、苦味、渋味、しびれ感も弱い。しかしながら官能評価の難点として、人によって感じ方が異なり数値化し難く、また同一人でも体調によって一定の評価は得られない。そこで、茹卵の味の違いを機器分析で一定の評価ができないか、鶏卵の加熱調理時間、種類を変えて数値化することを試みた。
    【方法】種類の異なる鶏卵を95℃の湯中で10_から_20分間加熱時間を変えた試料を調製し、殻を剥いた茹卵4個をフードプロセッサーで粉砕し、イオン交換水で4倍希釈した。これを味認識装置SA402B〔(株)インテリジェントセンサーテクノロジー社製〕で測定・解析し、味の違いを数値化した。
    【結果】味認識装置の解析によると、加熱調理時間が20分のサンプルは10分に比べ、主に「旨味」が認識されるとするセンサーで、人が味の違いを識別可能とされる値を示した。また、主に「苦味雑味」が認識されるとするセンサーでは、味の違いを有効に分離したと判断されたが、人が識別できる程の差ではなかった。
  • 小田 佳史, 木村 知文, 青山 忍, 木村 義治, 長谷川 峯夫
    セッションID: P-56
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】一般的なカスタードプリンは、卵、牛乳、砂糖等を混合したスラリーをオーブンやスチーマーで加熱調理することによって凝固させる。したがって、これらの設備が導入されていない飲食店で本格的なカスタードプリンを提供することは非常に手間のかかる作業となる。そのため、市場にはゲル化剤を用いて冷やして固めるタイプのプリンスラリーや、粉末状のプリンの素も存在しているが、それらは加熱殺菌や加熱調理の際に卵が凝固しないようにするために卵の配合量が抑えられているか全く配合されておらず、カスタード風味に乏しいものであった。そこで本研究では、上記のゲル化剤で固めるタイプのプリンスラリーにおいて卵の配合量を増やすべく、検討を行った。
    【方法】卵黄15%を含むプリンスラリーを対照とし、これに対しカラギーナン、ゼラチンを加える等、条件を変更したサンプルを調製した。各サンプルから5mLを試験管に採取し、90℃で10分間加熱した際のスラリーの凝固状態を確認した。
    【結果】ゲル化剤としてカラギーナンを使用すると、卵黄の加熱凝固を抑制できることがわかった。すなわち、上記カラギーナンを添加しないサンプルではスラリーが凝固して流動性を失ったのに対し、カラギーナンを1%添加したサンプルでは加熱後もスラリーは流動性を有していた。これにより、卵の配合量を増加させることが可能となり、カスタード風味豊かなプリンスラリーを調製することができた。
  • 杉浦 華代, 田中 敏治, 木村 義治, 長谷川 峯夫
    セッションID: P-57
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】食品に卵黄を高配合すると、コクや風味が向上し好ましく仕上がるが、卵黄に起因する凝固や分離が生じる場合がある。特に加熱工程のある乳化食品では注意を要する。本実験では、酵素処理により卵黄を改質し熱安定性を付与した卵黄を用いて、安心して卵風味の高い乳化食品を製造する方法を探究した。
    【方法】乳化食品として、フラワーペースト(油脂24%)を用いた。この基本配合に対して、酵素処理卵黄、卵黄(未処理)、各種乳化剤を適宜配合して調製し、風味と加熱による油分離を調査した。また、乳化剤を除き卵黄部のみで乳化し、同様に油分離を調査した。
    【結果】酵素処理卵黄を乳化剤とともに乳化に使用した場合、油分離はみられず、また強いコク味が付与された。酵素処理卵黄の配合量が多い場合は、乳化剤不使用で油分離のないフラワーペーストが得られた。乳化剤により乳化した後に酵素処理卵黄を混合した場合は油分離が生じた。これは酵素処理卵黄が乳化部を再乳化したためと考えられた。未処理の卵黄では量や投入方法によらず全ての試験区で著しい油分離が生じた。以上より、酵素処理卵黄を使用することで乳化加熱食品の物性を損なうことなく風味や熱安定性を向上できることが示された。
  • 神谷 大介, 中西 さやか, 澤山 茂
    セッションID: P-58
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】多加水熟成中華麺(以下、中華麺)は熟成に時間を要するため、更なる生産性の向上を図る必要がある。そのための基礎データを得るために、本研究では麺の熟成がテクスチャーの特性に変化を及ぼすかについて官能的側面と、物理的側面の両面から把握することによって今後の中華麺の開発に資することを目的とした。
    【方法】中華麺に関するイメージについて本学学生を対象にフリーアンサー形式でアンケート調査をし、収集した用語のスクリーニングを行った。そこで得られた評価用語を用い、各項目の強さと好ましさについて7段階尺度で評価した。試料はA:熟成前、B:熟成後、C:熟成後4日間冷蔵保存した中華生麺である。麺のみと麺をスープにつけて評価を行った。破断測定には、テクスチャーアナライザー(英Stable Micro Systems製)及び、レオナーRE33005((株)山電製)を用い測定した。
    【結果】官能評価の強さの項目では、スープにつける、つけないに関らずもちもち感の評価は、Aに比べBで強いと感じ、有意差があった。破断測定でも、試料Bの測定値が最も大きかった。また、官能評価においてかたい、歯ごたえがあるとされたものほどテクスチャー測定における凝集性が高い傾向にあった。以上から、中華麺のテクスチャーに及ぼす熟成の効果はかたさ、もちもち感を強め、滑らかにする事であると考えられた。また、冷蔵保存による大きな変化はみられなかった。評価項目と凝集性に関連性が見られたことから、熟成による麺組織の構造の変化がテクスチャーに大きく関係していると示唆された。
  • 「炭酸ナトリウム」と「灰汁」のゲル化特性
    大野 婦美子, 山際 あゆみ, 笠井 八重子
    セッションID: P-59
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー

    [目的]いもこんにゃくの力学的特性は弾力とともに粘りがあり,表面には柔らかさや滑らかさを有する点にある.この力学的特性の形成要因としては,いも中の成分やマンナン粒子の粒径,調製過程における「のり」の膨潤温度や時間,さらにゲル化のための凝固剤による関与があることを報告してきた.こんにゃくの伝統的手法では種々の草木灰の「灰汁」が使用されているが,地域によっては「炭酸ナトリウム」の使用がみられる.そこで本報告では,主に「炭酸ナトリウム」使用に関わるいもこんにゃくの物性形成とその特徴について検討し,「灰汁」使用によるゲル化の特性と比較考察した.
    [方法]試料は広島県産コンニャク芋から加工した精粉,「飛粉」を各粒度区分に篩分けし一定の粒度構成及び配合で使用した.配合はいもこんにゃくの物性に近似する割合としてマンナン:「飛粉」=1:0.3,0.6を用いた.こんにゃく加工はマンナン濃度3%,膨潤温度35℃(60分)で調製した「のり」に凝固剤を混合して成形・加熱固化した.物性測定はクリープ試験・破断試験を,「のり」については走査型電子顕微鏡による観察を行った.
    [結果]1.「炭酸ナトリウム」使用の場合,使用濃度の差異がこんにゃくの物性に及ぼす影響は小さかった.水酸化ナトリウム使用では,使用濃度差によって著しい物性変化が認められた.2.「炭酸ナトリウム」使用では,「飛粉」配合試料は配合しない試料に比べこんにゃくの粘りや硬さが増大した.3.「のり」の微細構造観察から炭酸ナトリウム添加「のり」は「灰汁」添加の「のり」と類似することが示された.4.「のり」ゲル化の挙動から,「炭酸ナトリウム」使用は「灰汁」使用による物性変化と類似していることが明らかとなった.
  • 山中 なつみ, 小川 宣子
    セッションID: P-60
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    (目的)生卵白を凍結乾燥し高コレステロール飼料に添加してラットに与えると、血中コレステロール濃度の上昇が抑制された1)。そこで本研究では、加熱調理後の熱変性した卵白も生卵白と同様に血中コレステロール濃度の上昇を抑制するのか明らかにすることを目的とした。
    (方法)白色レク゛ホーン種の新鮮卵(H.U.70以上)を、殻付のまま卵白内部温度85℃まで加熱したゆで卵の卵白部分を凍結乾燥して乾燥加熱卵白とし、生卵白を凍結乾燥し乾燥生卵白とした。高コレステロール飼料(コレステロール1%添加)に各々20%の乾燥加熱卵白(加熱卵白群)、乾燥生卵白(生卵白群)、対照として同じ動物性タンハ゜ク質であるカセ゛イン(対照群)を添加し、Wistar系雄ラット(1群5匹)に10日間自由摂取させた。実験開始時と終了時に血中総コレステロール濃度(T-Ch),HDL-コレステロール濃度(HDL-Ch)を測定し、T-ChとHDL-Chの差をLDL-コレステロール濃度(LDL-Ch)とした。さらに実験7_から_10日目の糞と肝臓中のT-Chと胆汁酸濃度を測定した。
    (結果)実験10日目の血中T-Chは加熱卵白群102mg/dl、生卵白群96mg/dlであり、ともに対照群136mg/dlに比べて低かった。HDL-Chは群間に差はなく、LDL-Chは加熱卵白群69mg/dl、生卵白群68mg/dlともに対照群111mg/dlに比べて有意(p<0.05)に低かった。これより加熱卵白は生卵白と同様に血中T-Ch及びLDL-Chの上昇を抑制することが示された。糞中T-Ch、胆汁酸濃度は群間に差はなかったが、加熱卵白群、生卵白群ともに対照群に比べて肝臓中T-Chが有意(p<0.05)に低く、胆汁酸濃度は上昇する傾向がみられた。卵白の摂取は生でも加熱調理した場合でも肝臓でのコレステロール異化代謝を亢進させる可能性が示唆された。1) 山中 他;日本家政学会第57回大会研究発表要旨集,p75,2005
  • 安部 恵, 板垣 千尋, 鈴木 惇, 山田 正子, 中澤 勇二, 伊藤 晋治
    セッションID: P-61
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    目的: ブルーチーズには、複屈折性を示す結晶状の構造が、タンパク質の基質および脂肪球に存在する。カビの増殖した部位と結晶の分布状態および結晶構造に脂肪酸が係わるかを確かめるために、この実験を行った。
    材料: ロックフォール、ブルーデコース、スティルトンおよびゴルゴンゾーラを用いた。組織化学的方法によりカビと脂肪酸を染色して、カビと脂肪酸の分布を調べた。結晶の分布を偏光装置を用いて調べた。
    結果: これらのブルーチーズでは、多くの脂肪は複屈折性を示す結晶性の構造物が脂肪内にあった。また、タンパク質の基質に複屈折性を示す結晶が存在した。基質に分布する複屈折性を示す小さい結晶は、スティルトンが最も多く、次にロックフォールで、ブルーデコース、ゴルゴンゾーラの順に少なかった。これらのブルーチーズには、大きな結晶の集積および不定形をした結晶の塊が、カビが増殖した部位およびその近くに分布していた。大きな結晶の塊は、ロックフォールで多く、ブルーデコースおよびゴルゴンゾーラで少なく、スティルトンでは非常に少なかった。基質に分布する結晶および脂肪の一部は、脂肪酸の染色に染まり、脂肪酸が存在した。脂肪酸は結晶を構成する一成分となっていた。染色された部位の大きさと染色の強さによる脂肪酸の分布は、スティルトンで最も多く、ロックフォール、ブルーデコース、ゴルゴンゾーラの順に少なかった。
  • 橋本 多美子, 相良 剛史, 植田 和美, 横関 高資, 妹尾 寛及, 西尾 幸郎
    セッションID: P-62
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    目的:本格焼酎は近年の焼酎ブームにより全国的に消費量が増大し、酒造メーカーでは焼酎の生産を拡大させている。そのため、大量の焼酎粕も排出され、これらの処理対策が必要となっている。現在、環境汚染を防ぐために焼却処理される一方、多くは肥料や飼料として利用されているが、食品としてはほとんど利用されていない。そこで、芋焼酎粕の一般成分、食物繊維、アミノ酸の分析などを行い、芋焼酎粕の有用性を評価することにした。さらに、芋焼酎粕を添加した食パンを開発し、食品としての大量消費を検討した。
    方法:有限会社太閤酒造で芋焼酎生産過程に発生した蒸留残渣を材料とした。たんぱく質、脂質、灰分、水分の含量は食品成分の一般分析法を用い、食物繊維は酵素重量法(Porsky法)にて定量した。アミノ酸の定量には、日立アミノ酸分析計(L-8800)を用いた。一方、芋焼酎粕添加食パンは、芋焼酎粕を粉末状とペースト状にして添加し、直捏法にて製造して官能検査を行った。
    結果:芋焼酎粕の凍結乾燥粉末試料中の栄養成分含有量は食物繊維が79%を占め、続いてたんぱく質13%、水分3%、灰分3%、糖質2%であった。アミノ酸分析の結果、芋焼酎粕には必須アミノ酸がすべて含有されていることが示された。焼酎粕入り食パンの比容積は、無添加食パンと比べ小さかったが、官能検査において両者で差はみられなかった。今回の添加量は、6枚切り食パン1枚あたり2.9gの食物繊維が添加されたことを示し、市販食パンの約2倍量に相当した。これら結果より、芋焼酎粕は食物繊維を含有する食パンとして有効利用が可能であることが分かった。
  • 奥野 元子, 坂根 千津恵
    セッションID: P-63
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】現在、多くの特定給食施設では、平成9年(平成15年最終改正)に厚生労働省が通知した「大量調理施設衛生管理マニュアル」に従った衛生管理が行われている。このマニュアルは、HACCPの概念を取り入れた食中毒を予防するための重要管理事項を示したものである。本研究では、栄養士として身につけておくべき衛生管理の知識習得を目的とし、本学集団給食実習室及び食事サービス実習献立においてHACCPシステムをシミュレーションした。
    【方法】HACCPの前提条件である、一般的衛生管理プログラム(PP)の中の施設・設備環境について、集団給食実習室の現状把握を行った。次にHACCPの12手順に従い集団給食実習室の図面作成、衛生標準作業手順書(SSOP)の項目検討を行った。食事サービス実習の第1回献立をモデルとし、フローダイヤグラムと危害分析ワークシートを作成し、重要管理点(CCP)の決定、管理基準(CL)までを検討した。
    【結果】PPの施設・設備環境については、床、排水、窓を除く、換気、照明、温度、湿度、使用水の項目は基準を満たしていた。SSOPは基本的な衛生管理についてのマニュアルで、その項目は1.使用水の安全性2.食品に接する表面の状態と清潔さ3.食品等の衛生的な取り扱い4.交差汚染の予防5.手指の洗浄、手指の消毒、便所の施設の維持管理6.食用不適にする物質からの防除7.有毒化合物の表示、保管と使用8.作業者の健康状態9.有害小動物の駆除の9項目とした。モデル献立のフローダイヤグラムから危害分析を行い、SSOPによって管理できない工程をCCPとした。CCPには加熱工程が該当した。加熱工程のCLは大量調理施設衛生管理マニュアルに準じた。
  • 廣田 真由子, 中村 眞理子, 中村 充雄, 澤田 雄二
    セッションID: P-64
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】脳卒中による片麻痺や整形疾患により上肢機能に障害を持った場合、リハビリテーションでは片手での包丁操作を指導することが求められる。実用的な包丁操作の獲得には、片手動作での包丁操作の特徴を明確にする必要がある。今回、片手動作での包丁操作にはどのような特徴があるかについて両手動作との比較から検討したので報告する.
    【方法】対象:健康女性10名(平均年齢21.4歳SD±2.3).右利き.測定:被験者の右側9カ所および包丁先端に角度計測用マーカーを装着し、被験者の右側方から2台,上方,前方から各1台の計4台のビデオカメラで撮影した.映像は三次元動作解析装置を用い,肩関節,肘関節,手関節の角度変化について解析した.実験:ステンレス製の菜切り包丁を右手で用い,見本と同じ厚さになるようきゅうりを輪切りにするよう指示した.課題は1 通常の両手動作で切る課題(両手課題) 2 きゅうりをまな板の上に置き固定しない状態で片手動作で切る課題(片手課題) 3 きゅうりを釘つきまな板で固定し片手動作で切る課題(片手固定課題)の3課題とした.
    【結果と考察】 両手課題と片手課題,片手固定課題の各関節角度変化について検討した。片手課題,片手固定課題では非利き手の役割を代償するためと思われる変化が認められた.片手課題、片手固定課題では、手関節の橈尺屈の動作が大きくなる被験者、包丁を材料の上にとどめておく時間が長くなる被験者が認められた.橈尺屈の動作は非利き手の役割の幅の調節の役割の代償、包丁を材料にとどめる時間の増大は、固定の役割の代償を行うためと思われた.包丁操作を片手動作で行うには添え手の役割を,代償するために上肢の運動の変化が起こることが示唆された.
  • 中村 眞理子, 後藤 葉子, 廣田 真由子, 澤田 雄二
    セッションID: P-65
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】在宅障害者はセルフケアが自立しても、不安を抱え社会活動に踏み込めないものが多いが、『調理を活動種目としたサークル活動』を通し、社会活動の参加に至った事例を報告する.
    【事例】64歳,一人暮らしの女性.脳梗塞による右片麻痺。サークル参加時点で発症から約1年、退院から6ヵ月が経過。麻痺側上肢の運動機能は、肩の高さまでは挙上は可能だが手指の細かな動きは不可.病前は家事全般をおこない,社交的・活動的であった。退院後、買い物は配送サービスを利用.発症直前に事務職を定年退職し、通院以外に外出は少ない。「退院後、一度もガスレンジを使っていない。不安が先立ち、様々なことに躊躇してしまう。」との訴えがあった.
    【サークル活動の経過】活動は月1回3時間半。内容は調理,片付け,試食、次回の献立の企画,活動記録の記入である. 身体機能を考慮し,われわれが意図的にメニュー,調理道具の選定,調理方法・行程を決定した。当初の非麻痺側の使用を主とした椅座位での作業から,両手動作さらに右手主の使用へ発展させていく中で,包丁操作能力が向上した。5回目には、発病後避けていた友人に連絡し完成した料理を持ち帰り振る舞う、8回目には自宅でメニューを試作、一般の料理教室への参加を希望するなど社会活動に目が向いてきた。また、日帰りバスツアーに参加するなどの活動性が出現した.
    【まとめ】今回の事例は,活動を通して自己の能力を再認識することが社会活動への一歩につながったと考えられる.調理は生活に不可欠な食に関わる活動でありモチュベーションを得やすく、様々な工程を有し身体機能に応じて治療的段階付けができ、障害者の生活適応を目指すアプローチとして非常に有用であった。
  • 森 眞弓, 鈴木 啓子, 光崎 龍子
    セッションID: P-66
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    目的 文科省スポーツ・青少年局「体力・運動能力調査報告書」によると児童・生徒の体力(握力、持久走、立ち幅跳びなど)が昭和55_から_56年頃をピークに低下の一途をたどっている。子供達の心身の健康を考えると年間約180食の昼食を提供している現栄養職員の役割は重要である。栄養職員の各学校における取組みや事例報告の中から、検討課題をみいだし今後の展望について考察する事を目的とした。
    方法 神奈川県内34市町村の学校栄養職員、横浜市68名、川崎市24名、藤沢市13名、相模原市11名、大和、小田原、鎌倉など計200名が行った「栄養教諭に期待される使命と役割について」のグループ発表と各自の「学校における栄養教諭としての取組みについて」の記述を基に集計を行った。
    結果 栄養教諭の職務内容は、「学校給食管理」「食に関する指導」に区分される。「学校給食管理」はすでに行われていた。「食に関する指導」は児童に対しては給食時、家庭には給食便りなどで行われていた。しかしながらアレルギーなどの個別相談や指導は行われていない学校もあった。総合や家庭科などの教科での授業や補助、食に関する指導年間計画案策定への参画などは学校間で取組みに差があった。横浜市や川崎市など年間計画や献立作成等を連携して取り組んでいる地域と連携できない市町村があった。グループ発表では、食の年間指導の必要性があげられ、計画案が切望された。「食に関する指導」の重要性を考えると連携の難しい市町村や給食のない小学校のためにも、全国統一の年間計画指導案が必要であるとの認識をもった。
  • 畦 五月
    セッションID: P-67
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに1992年の国連環境開発会議以降国際レベルで環境保全策について合意が為され日本でも環境保全への動きが活発となった。これらの動きを新聞はどのように報道したか食環境分野に主に視点を当てて調査した。
    調査方法1997年9月から2001年8月までの4年間、全国紙(A誌)と地方紙(S誌)から環境記事を収集し、家庭・個人環境と食(A領域),社会環境と食(B領域)、地球環境と食(C領域)の3領域に区分し記事の掲載傾向、内容分類等を行った。。
    調査結果および考察 調査期間中は環境関連の10法令が制定、9法令が施行されるめまぐるしい環境立法年であった。A新聞は調査期間中1025件の記事を掲載し、年毎の記事数は'97>'98>'99>'00と年代を追い減少傾向を示した。前半に記事が多い理由は京都で'97に開催された気候変動枠組み条約会議(COP3)の開催に負うところが大きい。
    領域ごとの記事数は、A領域0.5%、B領域55%、C領域40%の割合であった。内容で分類すると前半は社会情勢が環境重視への転換したことをうけて環境保全を余技なくされた企業分野記事が突出し、後半は個々の環境問題(温暖化、大気汚染等)の占める割合が高かった。家政学分野に関連するA領域の記事数はB,C領域に比べて非常に少ない結果であったが、A領域は個人の価値観に関わる分野でもあるため、他分野に比較して記事としての掲載が難しい点が挙げられる。食環境分野はB,C領域とも密接に関連し、生活するうえで表裏一体の関係にある。それゆえ家政学の視点からもさらに掲載が望まれる分野であった。
講演1
  • 菅野 道広
    p. 190
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに
     逎ほど、いろんな意味で関心を集めている栄養素は少ない。原因の一つに油脂の摂取が内臓脂肪の蓄積(肥満)=メタボリックシンドロームに直結し、油脂を不健康因子とみなし忌み嫌う背景がある。果たして本当にそうであろうか。ここでは、油脂の持つすばらしい機能性を正しく理解し、健康に食べるために欠かせない「事実」を学ぼう。
    1.基本的問題点
    (a) 食用油脂を構成する脂肪酸とその栄養生理機能
    油脂の機能性を理解するには、まず油脂を構成する主な脂肪酸の種類・分布・含量などの基礎知識を理解し、油脂の科学的特性を把握する必要がある。
    (b) 食用油脂に含まれる脂肪酸以外の成分の生理機能
     食事に含まれる油脂には、脂肪以外の多種多様な脂溶性成分(トコフェロール、トコトリエノール、カロテノイド、オリザノール、植物ステロールなど)が含まれ、特徴的な健康効果を示す。特定保健用食品として認可されているもの(植物ステロール)もある。
    (c) 油脂の美味しさ:加工と調理
     油脂の味・高脂肪食品の旨さ・油調理による味覚向上など、油脂は食の楽しみと密接な関連がある食事成分である。舌には油脂の受容体があり、油脂に対する嗜好性を左右している可能性が指摘されていおり、肥満防止などへの応用も考えられている。
    2.油脂の健康な食べ方
     この問題は非常に複雑で困難なものである。それは、どのような油脂をどれだけ食べればよいのかを決める科学的根拠が十分ではないからである。世界各国で油脂の推奨摂取基準が提示されているが、いずれも当該国の健康事情を反映したものである。わが国のような低脂肪で特徴的な油脂構成の先進国は例がなく、したがって独自の健康基準で判断しなければならないが、それを可能にする科学的証拠があまりにも貧弱である。現時点では、「おそらく」このような摂取で大きな健康問題もなく納得できるのではないか、と言う程度の判断に委ねる状況にある。それだけに、いろんな意見を差し挟む余地が多く、いたずらに混乱を招いている一面もある。
    (a) 油脂摂取の量と質
     日本人の油脂摂取状況の特徴を生かした健康な油脂の摂り方を理解することが必要であるが、「油脂の食事摂取基準」(所要量)を知る上での最大の問題点は、油脂の必要量(必須脂肪酸として)と実際の摂取量との間に大きな差があることである。加えて、油脂摂取の量と質に関しては、ほとんどの情報が潔t脂質、引いては心疾患\防のために欧米諸国で推奨されている考え方が援用されていて、いわゆる普遍的な意味での健康に最適なものかどうかは明確ではない。しかし、現在の食事摂取基準で示されている値を否定することも、また別案を提示することも容易ではない。心疾患の予防のためには、現時点での日本人の摂取量やP/S比(約1)、n-6/n-3比(約4)にとくに問題は無いと考えられ、食事摂取基準も結果的にはおおむねその線で策定されている。
    (b) 加工油脂を巡る問題
     マーガリン、ショートニングに含まれるトランス酸については、血清コレステロール濃度への悪影響が認識され、米国Jナダでは食品成分表示ラベルに含量を表示し、摂取をできるだけ少なくするように規制されている。日本人の摂取量は少なく、現時点では問題視されない。しかし米国を中心に、部分水素添加しなくてすむ遺伝子組換え植物油(主として大豆油)が作出されてきており、目が離せない状況にある。
    (c) 機能性油脂の活用:特定保健用食品を中心に
     わが国では体脂肪が付きにくい油としてジアシルグリセロール、中鎖脂肪酸を含む油脂、そして血清コレステロール値の改善のための植物ステロールを添加した油脂製品が特定保健用食品として認可されている。これらをいかに適用するかが肝要である。
    3.これからの展望
     生活習慣病との関わりの点からは、まず油脂を摂り過ぎないことが基本的絶対条件である。しかし、動物実験におけるような油脂の摂取と各種疾患(たとえば結腸癌との間の相関は、ヒトでは確認されていない。事実に反し、油脂が肥満の根源とみなされるのも、それが高カロリーゆえの宿命であろう。ことから、h養^動x養{理念を生かす生活の構築、とくにエネルギー消費の増加策が根本的に大切である。
    参考論文
    菅野道廣;油は訴える、講談社(2000)、脂質栄養研究の潮流、宮澤陽夫ら編集「脂質栄養と健康」、3-12頁、建帛社(2006)、脂質栄養の問題点と対策、ネスレ栄養科学会議監修、注Nと脂質摂取」1-40頁、建帛社(2006) 江崎 治ら;n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取基準の考え方、栄養H糧学会誌、59:123-158(2006)
講演2
  • 佐藤 清隆
    p. 191
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    1. はじめに
     油脂は、糖質(炭水化物)や蛋白質と並ぶ重要なエネルギー源であると同時に、代謝により生じる生体必須の生理活性物質の供給源である。この栄養的な機能に加えて、油脂はそれを含む食品のおいしさとも密接に関係している。たとえば料理に油脂を少量添加するだけで、微妙に味が変わることは良く知られている。普通に食されている精製食用油それ自身には特別な味覚はないので、油脂が食品のおいしさにかかわる場合には、油脂と味覚にかかわる成分との間に特別な相互作用が働いている。
    最近、油脂は健康との関連できわめて高い関心を集めている(1)。肥満の原因として油脂を忌避する傾向が強いものの、『体に良い油』や、健康増進のための脂溶性栄養物質の摂取には油が不可欠であるという認識も広がっている。本講演では、さまざまな社会的ニーズに合致した『食品のおいしさ』の追求を考察した上で、『食品のおいしさ』を支える食品油脂の物理的な性質を考察したい。
    2. 食品油脂に対する社会的ニーズ
    現在、食品油脂に対する社会的なニーズを整理すると、表1のようにまとめられる。これらのニーズを満足させた食品を製造するためには、原料となる油脂素材の精製や分離・抽出や、生物学的・化学的な方法による脂肪酸組成の変調などの技術開発が必要である。しかしそれだけでは不十分であり、社会的ニーズと「おいしさ」を合致させるための技術開発も必要である。そのためには次節に示すように、油脂食品のおいしさと物性的な機能の関係を明らかにすることが望まれる。
    3. 食品油脂の物性と機能性
     チョコレート,マーガリン、ショートニング、ホイップクリームなどの食用加工油脂では、高融点・低融点油脂、乳化剤、フレーバー、水分などを混合・融解・凝固して、さまざまな機能物性を発現させている。その中で重要な役割を果たす油脂の物性としては、一般的にシャープな口どけ、硬さ-柔らかさ、構造安定性、スナップ性、展延性、均質なテクスチャー、分散性、ホイップ性、保水性、徐放性などがあげられる。
     図1に食品用油脂の機能的物性を、食品の物理状態ごとに整理して示す。バルク状態には、固体(チョコレートなど)とゲル(ショートニングなど)があり、エマルションには水中に油滴が分散したoil-in-water(O/W)エマルションと、逆の分散関係にあるW/Oエマルションがある。前者ではクリーム、後者ではマーガリンやファットスプレッドが代表的な製品である。さまざまな油脂の物性のなかでどれが重要となるかは、食品がどの物理状態にあるかに依存する。また、食用油脂が単独で使用されるのではなく、澱粉や蛋白質に添加される場合には、澱粉-油脂や蛋白質-油脂などの成分間相互作用が考慮されねばならない。
    バルクの固体状態では、油脂結晶の形態や密度、融解挙動、さらには製造工程における粘弾性が重要となる。(中略)
    本講演では、「食品油脂の物性とおいしさ』に関係した下記の話題を考察したい。
    (1)トランス酸代替問題と物性(本文略)
    (2)構造脂質と物性(本文略)
    (3)食品デリバリーシステムと物性(本文略)
    全文は日本調理科学会ホームページで公開http://wwwsoc.nii.ac.jp/jscs/meeting.html
feedback
Top