日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成18年度日本調理科学会大会
選択された号の論文の191件中51~100を表示しています
口頭発表
  • だし汁の違いがさといもの調理特性に及ぼす影響
    高岡 素子, 中山 琴美, 吉池 架奈, 笠松 千夏
    セッションID: 2A-p3
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    精進料理とは、禅宗で食されている料理を示す。日本では鎌倉時代に入って、曹洞宗の開祖道元が、野菜を中心とした中国の食作法を日本の風土に合わせた形で考案し、体系づけた。本研究では、精進料理の最大の特徴である「動物性の食材を使わない」という点をだし汁にしぼり、だしの持つ調理特性や食味に対する影響について解析した。
    「方法」こんぶ、しいたけ、かつお、鶏がらを材料として用い、一般的な方法に従い、四種類のだし汁を調製した。それらのだし汁と冷凍のサトイモを用いて、サトイモの白煮を作成した。調理後、テクスチャーアナライザーによりサトイモの物性について測定し、さらに官能評価を行った。また、調理前後のだし汁に含まれるL-グルタミン酸濃度について定量した。
    「結果」それぞれのだし汁で調理したサトイモの圧縮強度を測定した結果、しいたけだしで最も高い値を示し、こんぶ、鶏がら、かつおの順であった。官能検査の総合評価では、かつおだしで調理したものが最も好まれ、次に鶏がら、こんぶ、しいたけの順となった。だし汁中のグルタミン酸濃度は、こんぶで高く、他のだしにはほとんど含まれていないことが明らかとなった。また、こんぶだしで調理したサトイモ中のグルタミン酸濃度は、未調理のものより高くなっていた。
  • 津田 淑江, 久保倉 寛子, 瀬戸 美江, 大家 千恵子
    セッションID: 2A-p4
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    (目的)CO2排出量削減に向け持続可能な消費の取り組みが行われている。国や自治体などによる規制や規則が必要となる一方で、家庭においても資源を考えた行動を起こすことが重要となってきている。2002年家庭部門のCO2排出量は1990年比で28.8%増加している。同期間1.7%減の産業部門に比べ急増しており、家庭でのCO2排出量を抑える必要がある。本研究では、家庭における食事作りに焦点を当て、特に炊飯と保存方法の違いによるCO2排出量を算出した。さらに環境家計簿調査を行い、現状の把握とCO2排出量抑制方法の検討を行った。
    (方法)1)CO2排出量の測定:ジャー炊飯器で炊飯し、蒸らし終了までの電気量を測定した。また炊飯後、そのまま保温保存、冷凍保存・電子レンジによる解凍を行い、その時の電気量をそれぞれ測定した。CO2排出量は、電気CO2排出係数0.38を用いて算出した。
    2)環境家計簿調査:1人暮らしおよび家族と同居の男女計25名を対象に調査を行った。電気、ガス、水道、ガソリンなどの使用量、アルミ缶、ペットボトル、牛乳パック、食品トレーなどのリサイクルに出さずに捨てたゴミの量に各CO2排出係数を乗じ、CO2排出量を算出した。
    (結果)1食に食する米を1合と想定し、(1)3食分である3合を毎回炊いた場合、(2)3合を一度に炊いた後、ジャー炊飯器で12時間保温した場合、(3)1食は食べ、残りの2/3を冷凍保存し、電子レンジで1食毎に解凍した場合のCO2排出量を算定した。その結果、ジャー炊飯器で保温した場合のCO2排出量が最も多かった。また、環境家計簿調査の結果、家族と同居(平均3.08人)の1ヶ月平均CO2排出量は一人暮らしの約2倍であった。
  • 四宮 陽子, 有山 かほる, 宮脇 長人
    セッションID: 2A-p5
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】地球温暖化防止のためには温室効果ガスを大幅に削減しなければならない。我々は昨年度の本大会で、食料自給率は食生活におけるCO2排出に対して大きく影響し、自給率40%の2002年と60%の1970年のCO2排出量の差が、京都議定書のCO2削減目標値に迫る水準であることを明らかにした。そこで現代の食生活の種々の献立について、栄養バランスも考慮しながら効果的にCO2排出量を削減する食材選択について検討した。 
    【方法】食材選択の基本は、農産物生産と不足分の輸入輸送および経済バランスによる輸出品の生産と輸送まで含めたC排出量である、有効炭素排出係数σeff (g-C/g-Fd)[1]を用いた。献立パターンは、地産地消と食育を理念とするスローフード献立、若者に人気のファーストフード献立、有効炭素排出係数からC排出量が多い食材を選んだCO2排出献立、逆に少ない食材を選んだCO2削減献立とした。ファーストフード献立は本学学生200名に対してアンケート調査を行いメニューを選んだが、他の献立は食事摂取基準[2005年版]による栄養バランスに則った。
    【結果】各献立はファーストフード献立以外は栄養的なバランスが取れていた。CO2排出量を比較すると、牛肉や輸入果物などを使用したCO2排出献立と、主食は主に米、国産の食材や地場の野菜や果物も用いたCO2削減献立とのC排出量の差は、昨年度算出した2002年と1970年の差を越えていた。したがって輸入食材を減らし地場の食材を用いることでCO2排出量はかなり削減できると考えられる。
    [1]宮脇長人,上西浩史,相良泰行,食科工,52(6),257-265 (2005).
  • 小原 章裕, 松久 次雄
    セッションID: 2A-p6
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】発ガン物質であり変異原物質であるヘテロサイクリックアミン類(HCA)が肉や魚のようにタンパク質を多く含む食品の加熱処理中に低レベル形成されることが明らかになっている。そこで実際に調理した食品中に生成される変異原物質量を測定することにより、材料や調理方法の違い,調理時間が変異原物質生成にどの程度影響を与えるかを調べる目的で研究を行った。
    【実験方法】変異原物質量の測定は.,Amesテストの変法であるプレインキュベーション法により実施した。食品(試料)中の変異原物質の抽出は,変異原物質抽出剤であるブルーレーヨンを用いて行った。食品中に生成される変異原物質は多様なので,試料液により生じた復帰コロニー数よりTrp-P1量に換算して生成変異原物質量とした。
    【結果及び考察】豚肉(もも肉)と鶏肉(ささみ)を何も付けずに180℃で過熱し,変異原物質の生成量について比較した。10分加熱した際に30gの肉片あたり鶏肉は5.6μg,豚肉は3.6μg であった。両検体とも加熱時間と共に変異原性が予想通りそれぞれ上昇した。次に,調理法の違いによる変異原物質の生成量は,「焼き」と「揚げ」で加熱時間の経過とともに直線的に変異原物質量が増加した。「煮る」では,時間の経過とともに若干増減はあったがほぼ横ばいだった。8種の野菜について豚肉と一緒に加熱した場合と加熱した肉に生の野菜を添加した場合について検討した。ニンジンは,両方の場合ともに8種の中で最も変異原物質の生成抑制率が高く,ダイコン,タマネギ,ナス,キャベツでも同様の傾向を示した。また,香辛料や調味料4種類(醤油,穀物酢,黒酢,味噌)についても同様に検討した。用いた野菜,調味料と豚肉で実際に調理を行い,生成した変異原物質量を測定すると,試料個々で発現した変異原生成抑制率の中で最も高い抑制活性を示した試料と同程度の抑制を示した。
  • 室 香鈴, 会田 久仁子, 角野 猛
    セッションID: 2A-p7
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】 豆豉は中国の大豆発酵食品であり、日本人の食生活に密着した調味料ではない。しかし、栄養価が高いこと、保存性が良いこと等から、中国では調味料の一種として重要である。日本では、中国納豆または塩辛納豆と呼ばれ、醤油や味噌に類似した香りがあり、加熱すると風味が増す。なお、調味料以外に酒の肴や茶うけ等にも利用される。 本研究は、豆豉の微生物、遊離アミノ酸組成、Na量、K量等を測定し、調味料としての実態を明らかにすることを目的とした。
    【方法】 実験に用いた豆豉は、上海などの食料品売り場で購入した10件体である。一般生菌数、大腸菌群数などの細菌検査は食品衛生検査指針に準じて行った。遊離アミノ酸組成の分析は、高速アミノ酸分析計(日立製、L-8500)を用い、生体分析法にて行った。Na量、K量は試料5.00gを450度で灰化後、炎光光度計(東京光電ANA-10kl型)を用いて行った。また、水分活性は水分活性測定器(アイネックス社製)を用いて測定した。
    【結果】 1、一般生菌数は、対数平均値で4.574/g、水分活性は平均0.713であった。分離された細菌は、Bacillus属が中心であった。2、遊離アミノ酸総量は、平均6172mg/100gであった。いずれの試料ともグルタミン酸、ロイシン、アスパラギン酸、アルギニン、及びリジンが多く認められ、それぞれ11.9%、9.8%、8.9%、8.0%及び7.7%であって、これらの5種で遊離アミノ酸総量の46.3%を占めていた。3、Na量、K量及びNa/K比はそれぞれ平均5185mg/100g、880.0mg/100g及び6.5であった。4、分離したBacillus属細菌は食塩濃度15%でも発育が見られ、耐塩性が認められた。
  • 原 たつえ, 高崎 房子, 大家 千恵子
    セッションID: 2B-a1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】大麦とえん麦は穀物の中でも食物繊維含量が多く、利用価値の高い食品である。本研究はもち種大麦とえん麦の調理・加工特性を解明するために各々の澱粉のアミロペクチンの鎖長分布と糊化特性について調べ、今後の利用法の基礎資料とするために行った。
    【方法】試料はもち麦澱粉(愛媛県産ダイシモチ平成14年度産)、えん麦澱粉(ホワイトソルガムアメリカ穀物協会)、比較のためにコシヒカリ澱粉(新潟県産)を用いた。澱粉をイソアミラーゼで枝切り後ゲル濾過法によるアミロペクチンの鎖長分布測定、電顕写真による測長の測定、X線回折、膨潤力・溶解度、RVAによる粘度測定を行い検討した。
    【結果】アミロペクチンの鎖長分布はFr.III/Fr.IIの値はもち麦澱粉3.93、えん麦澱粉2.82、コシヒカリ澱粉3.22であった。平均鎖長60以上の長鎖がもち麦澱粉13.3mol%、えん麦澱粉6.7mol%となり、コシヒカリ澱粉8.8mol%と比較するともち麦澱粉は多く、えん麦澱粉は少ない傾向であった。短鎖では10_から_20の鎖長がもち麦澱粉とコシヒカリ澱粉が多く、えん麦澱粉は10以下の鎖長の分布が多かった。Fr.IIとFr.IIIの和の数平均鎖長はもち麦澱粉32.9、えん麦澱粉31.7となり、コシヒカリ澱粉の21.6より数平均鎖長は長かった。澱粉の形状はもち麦は円形で扁平な形で馬鈴薯澱粉に似ており、えん麦はやや角張った形でトウモロコシ澱粉に似ていた。もち麦澱粉は膨潤力と溶解度がともに高い傾向を示し、えん麦澱粉は膨潤力は他の2種に比べて低いが、溶解度はコシヒカリ澱粉より高かった。RVAによるもち麦澱粉は最高粘度、ブレークダウンの値が高く、えん麦澱粉は最高粘度、ブレークダウンは他の2種類と比べると低いが、最終粘度は最高粘度よりも高かった。
  • 魚住 惠
    セッションID: 2B-a2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    目的:演者は先に、“そば切り”(以下“そば”と記す)を調製する際に、豆腐ペーストを添加すると、豆腐がそばでんぷん粒子の周囲を被い、つなぎの働きをすると同時にそば生地の水分変化を抑制する働きをすることを報告した。本研究では、そば粉と同様に水で捏ねただけでは薄く圧延し、切ることが困難な米粉生地に対する豆腐添加の影響を調べ、豆腐を麺生地に添加することによるつなぎ効果に関する新たな知見を得ることを目的として実験を行った。
    方法:粳米粉とそば粉をそれぞれ0_から_100%の配合比で混合し、もめん豆腐をミキサーでペースト状にしたものと水を用いて麺生地を調製し、生の生地と加熱した生地の物性および放置による水分変化量を測定した。それぞれの生地の微細構造を電子顕微鏡により観察し、物性および水分変化量を比較し、検討した。
    結果:適度な硬さの生地を打つ際の豆腐ペーストの換水値は57%で、そば粉と米粉で等しかった。米粉100%の生地は、豆腐の添加割合を増加させると、しっとりした手触りになり、加水量の約半分を豆腐で置換した生地は、生のまま製麺することが可能となった。米粉を含む生地においても、そば粉のみの場合と同様に、米のでんぷんの周囲に豆腐たんぱく質による膜が観察され、豆腐は米粉をつなぎ、生地の水分変化を抑制していると考えられた。
  • 前田 穣, 遠山 良
    セッションID: 2B-a3
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    目的:近年、岩手県においては雑穀の生産量は増加している。食物繊維、ミネラルを豊富に含む雑穀に対して、健康志向の消費者、生産者、加工業者、流通販売業者の関心は高い。しかしながら、雑穀の特性は従来の加工原料として用いられてきた、小麦、馬鈴薯澱粉等に比べ異なっており、現段階の加工機器、製造方法の枠内では使いにくい素材とされている。本研究においては、雑穀を主原料とした麺開発に繋がる知見を得ることを目的とした。
    方法:花巻産のヒエ、ウルチアワ、モチアワ、キビを製粉し、試験に供した。湯捏ね、水捏ね、蒸練によって得られた生地を長さ約200mm、直径30mmの棒状になるポリ塩化ビニリデンチューブに充填し、80℃水と沸騰水中において、それぞれ20、40、60分間の加熱を行った。加熱後、25℃で約24時間静置したのちに、「湯中での生地保持性」及び「生地の物性」を評価した。湯中での生地特性は試料を75℃水中に入れ、20分間静置した後の未溶解物重量を測定することにより評価した。生地の物性は、高さ30mm、上底面直径30mmの円筒形となるように試料を切り出し、上面中央への直径5mm円柱プランジャーによる押し込み試験により破断距離、破断強度を測定することにより評価した。
    結果:ヒエについては、蒸練処理によりデンプン生地と同等の生地が得られることが判った。ウルチアワについても蒸練によりデンプンと同様の生地が得られることが期待できた。モチアワ、キビについては、湯中での生地保持率は高かったものの、柔軟性は低いため、ヒエやウルチアワと比較した場合に麺材料としての適性は低いと考えられた。
  • 高橋 良子, 高木 稚佳子, 藤井 恵子, 大越 ひろ
    セッションID: 2B-a4
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】米粉は近年小麦粉に代わる食材としてパンやケーキなど多様な用途に応用されるようになり、米粉の食資源としての認識が変わりつつある。しかしどのような粉体特性を有する米粉が製パン性に適しているのかは明らかではない。本研究では、米粉の粉体特性を把握し、製パン条件を検討するとともに、米粉の粒度分布及びバッター粘度、発酵時間の相違が製パン性に与える影響について検討した。
    【方法】米粉に蒸留水、砂糖、ドライイーストを添加して生地を調製し、210℃のオーブンで24分焼成して米粉パンを作製した。米粉の特性として粒径、水分含量、色度を測定した。生地に関してはバッター粘度、発酵中の生地膨張力を測定した。米粉パンに関しては高さ、比容積、色度を測定した。また、米粉の粒度が製パン性に与える影響を見るために米粉を3種類の粒径(大は75μm以上、中は38から75μm、小は38μm以下)に篩別し、バッターを調製する際には加水量を等しくし実験を行った。
    【結果】米粉パンの生地調製においては、小麦粉と比較すると、必要な加水量は約2倍となり、状態はドウではなくバッターとなった。生地のpHは小麦粉生地よりも速く低下し、最低値も小麦粉ドウが4.7であったのに対し、米粉バッターは4.2まで低下した。また、ガス抜き方法や発酵時間についても最適条件がそれぞれ異なることが示された。焼成後のパンにおいては米粉パンの比容積は低く、明度が高い傾向が見られた。また、粒度の異なる米粉を用いた場合、得られた生地のバッター粘度は粒径が小さいほど高くなった。以上の結果から、米粉の製パン性は小麦粉と異なっており、加水量など粉体特性に対応して調製方法を検討する必要があることが示された。
  • 平島 円, 松井 麻里, 高橋 亮, 西成 勝好
    セッションID: 2B-a5
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】澱粉食品は,砂糖・塩・酢などの調味料を用いて味付けされている場合が多い.その中でも頻繁に使用されているのが砂糖すなわちショ糖である.一般に砂糖を澱粉に加えると澱粉の老化を抑制することが知られているが,その添加ショ糖濃度および添加方法についての検討はほとんどなされていない.本研究では,可能な限り広い濃度範囲でショ糖を澱粉に添加し,さらにショ糖を澱粉に添加するタイミングを変化させ,澱粉の糊化および老化に及ぼすショ糖の影響について検討した.
    【方法】澱粉にはコーンスターチ(三和澱粉工業(株))を用い,その濃度は15wt%とした。ショ糖は市販のグラニュ糖を0から30wt%添加した。澱粉水分散液を97ºCで1時間加熱することにより澱粉ゲルを調製した。澱粉分散液へショ糖を添加するタイミングは,加熱前の25ºCと加熱後の97ºCとした。DSC測定と破断測定により澱粉ゲルの性質について検討した.DSC測定にはDSC6100S(セイコーインスツル(株))を,破断測定にはレオナーRE-3305((株)山電)を用いた. 【結果】ショ糖を澱粉に添加すると糊化温度は高温側へ移行し,糊化エンタルピーは大きくなった.ショ糖を添加すると澱粉の糊化は阻害されることがわかった.しかし,澱粉ゲルのゲル強度はショ糖を添加すると高くなった.このことはショ糖を加熱前と加熱後に添加しても同様であったが,加熱後にショ糖を添加した方が澱粉ゲルのゲル強度は高くなった.加熱後にショ糖を添加した方が澱粉の糊化が充分に起こるため,強いネットワーク構造を形成すると考えられる.澱粉ゲルの老化の進行具合に関してはショ糖を加熱前と加熱後に添加した試料において大きな差は見られなかった.澱粉に20wt%以上の高濃度のショ糖を添加し7日以上保存すると澱粉の老化が促進された.したがって,老化を抑制するショ糖濃度には上限があると考えられる.
  • 佐藤 恵美子, 山岸 亜衣, 西成 勝好
    セッションID: 2B-a6
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    「目的」精進料理としてのゴマ豆腐は本葛澱粉を用いるが、他の澱粉が混入される場合もある。澱粉の種類がゴマ豆腐の静的粘弾性と破断特性に及ぼす影響について報告する。
    「方法」皮むき白ゴマ(かどや製油製)を用い、K.本クズ澱粉(古希)、S.サツマイモ澱粉、T.タピオカ澱粉(タイ産の化工澱粉)さらに、3種澱粉を等量混合したK+S,K+T,T+Sの6種について検討した。調製は、皮むきゴマ40gに450gの水と共に粉砕、濾過して得られたゴマ乳435g(澱粉ゲルの場合は水435gを添加)に各種澱粉40gを加えた懸濁液を電熱器上で、攪拌機250rpmにて98℃、25分間攪拌して行った。糊液をテフロン製円筒器(20mm×20mm)に入れて放冷凝固させた各種澱粉ゲルとゴマ豆腐をレオナー(REー3305,山電、直径40mmのプランジャー)を用いてクリープ測定と破断測定し、官能検査を行った。
    「結果」6種澱粉ゲルとゴマ豆腐のクリープ挙動は、Voigt要素2個の直列結合にMaxwell要素を直列に結合した6要素モデルとして解析された。ゴマ豆腐の瞬間弾性率(E0)は、K本クズ>K+S>K+T>S.サツマイモ>T+S>T.タピオカの順に高い値を示した。ゴマ豆腐のコンプライアンスが最も高いのはタピオカであるが、最も老化しやすいのはサツマイモであった。破断応力は、両試料共にT.タピオカ>S.サツマイモ>T+S>K+S>K.本葛>K+Tの順に高くなった。6種ゴマ豆腐の破断歪率は、79.1%から79.5%とほぼ同様の値を示した。SD法によるゴマ豆腐は、タピオカは弾力があり餅のような食感であるが、本クズとサツマイモはなめらかさにおいて高く評価され、類似の波形を示した。順位法では、K.本クズ及びK+Tの間に有意差が認められず、両方共にゴマ豆腐として好ましいと評価された。
  • ー吸水特性および加熱に伴うL-DOPAの変化ー
    香西 みどり, 飯島 久美子, 早川 和那, 藤井 義晴, 古林 章弘, 畑江 敬子
    セッションID: 2B-a7
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    ‹目的›ムクナはインド原産のマメ科の植物でL-DOPA(L-3,4-dihydoroxy-phenylalanine)の含量が多く、雑草抑制効果などアレロパシー(他感作用)があり緑肥にも利用される。L-DOPAは大量摂取で下痢・嘔吐を引き起こすが適切な調理による除去が可能である。ハッショウマメはムクナの和名であり日本では現在はほとんど栽培されていない。本研究はムクナ属マメの調理性を明らかにし、伝統的食品の復活をはかることを目的とするものであり、第一報では吸水特性および加熱に伴うL-DOPAの変化について検討した。
    ‹方法›ムクナ属試料マメとしてハッショウマメおよびフロリダベルベットビーン(以下、FVB)を用いた。一般成分(水分、タンパク質、脂質、灰分、炭水化物、食物繊維)を常法により測定した。試料マメを20,40,60,100℃の水に0-50時間浸漬したときの吸水率、20℃の水に5-25時間浸漬した後に沸騰水で1-2時間加熱したときのマメの破損率、硬さ(テクスチュロメーター)およびL-DOPA量(HPLC)を測定した。
    ‹結果›一般成分結果より試料マメはデンプン性であるが、タンパク質、食物繊維が比較的多かった。20℃における吸水率を大豆、小豆とともに測定した結果、大豆>FVB>小豆>ハッショウマメの順に早くハッショウマメは特に吸水が遅かった。浸漬温度の上昇とともに吸水率は大きくなり、40℃では20℃の半分の時間で同一吸水率に達した。浸漬時間および加熱時間が長いほど硬さは減少し、浸漬時間を15hとしたとき加熱時間はハッショウマメでは1.5h、FVBでは1hでほぼ適度な硬さに達したがばらつきが大きかった。L-DOPA量は硬さの減少と共に減少し、ハッショウマメは生マメの約6割、FVBは約4割になった。
  • 飯島 久美子, 香西 みどり, 藤井 義晴, 畑江 敬子
    セッションID: 2B-a8
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】 第一報より、ハッショウマメはフロリダベルベットビーンズ(以下、FVB)より吸水率の個体差が大きく実際の調理においてはこれを改善することが明らかになった。そこで第2報では前処理による吸水率の改善、アク成分の除去あるいは軽減、マメの軟化に適した加熱条件および調味と嗜好性について検討することを目的とした。
    【方法】ムクナ属試料マメとしてハッショウマメおよびFVBを用いた。前処理は試料マメを(1)傷をつける、(2)煎るとした。前処理後4,20,40℃の水に0から24時間浸漬し、重量変化の測定より吸水率を求めた。吸水率が70%を超える浸漬条件の豆を加熱し、浸漬液および茹で水の色の変化を色差計により測定した。試料マメの加熱はゆで加熱と加圧加熱(85kpa)で1分_から_90分間行った。調味は試料マメが十分軟化したところで砂糖、しょうゆ、味噌の3種で行い、官能検査を行った。
    【結果】いずれの前処理においても試料マメの吸水率は増大し、浸漬温度が高いほど吸水率は高くなった。傷をつける前処理のほうが煎るより吸水率が高く、ばらつきも少なかった。この効果はハッショウマメの方が顕著であり、傷をつけて40℃浸漬では20℃未処理の1/6の時間でほぼ同一吸水率に達した。吸水率が上がるとゆで水の褐変度が減少する傾向が見られ、前処理はアク成分の除去にも効果があった。前処理なしでは加圧加熱しても軟化しない豆があったが、前処理によりすべての豆が軟化し、ゆでおよび加圧時間が短縮された。官能検査の結果、砂糖、しょうゆ、味噌のうち砂糖の調味が好まれ、餡および餡ペーストとしての利用が期待できた。
  • 伊藤 知子, 川越 聖子, 高橋 美奈
    セッションID: 2B-a9
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】餡は細胞状食品であり、細胞内に含まれるデンプンが細胞外に流出量が少ないほどサラサラした触感を有し、良質の餡であると考えられる。餡の材料のほとんどは小豆やインゲン豆であるが、これら以外にも餡としての適性を有する食品は多いと考えられ、そのような食品を利用することで例えば和菓子の多様性が広がる可能性もある。種皮の色素にラジカル補足活性を有することが明らかになり、用途の拡大が望まれるツタンカーメンエンドウ、および大阪特産のクワイについて検討を行った。
    【方法】ツタンカーメンエンドウおよびクワイを用いて餡を作成した。細胞外に流出したデンプン量を酵素法により測定し、小豆の場合との比較を行った。また、顕微鏡観察により形状観察を行った。さらに、総合的なテクスチャーについて検証するために、パネル41名による官能検査を行った。
    【結果】細胞外へのデンプン流出量はツタンカーメンエンドウ、クワイ共に小豆餡とほぼ同じであり、餡としての適性が認められた。テクスチャーについては、官能検査の結果からツタンカーメンエンドウは、小豆餡と同等、もしくは高い評価が得られた。顕微鏡観察の結果からも、細胞の形状は小豆と似ており、エンドウ独特の色を生かした利用が期待できる。一方、クワイについては評価が分かれ、小豆餡のテクスチャーとは異なることが分かった。顕微鏡観察の結果から小豆餡よりも細胞のサイズが大きく、また細胞表面に凹凸が見られ、これがザラザラした触感の原因となっていると考えられる。この独特の触感を生かした製品の開発、また製餡方法の改良が必要であると考えられた。
  • 新井 映子, 田口 沙和子
    セッションID: 2B-p1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    目的 近年,消費者の食への安全志向が高まる中,有機米の生産は増加傾向にある。しかし,有機米が広く消費者に受け入れられるためには,食味の良さも兼ね備えていることが重要である。そこで,本研究では原料が異なる肥料を用いた有機米の特性を,化成肥料を用いた慣行米と比較することにより,有機農法が米飯食味に与える影響を検討した。
    方法 供試米には,静岡大学の実験圃場において,3種類の有機農法(籾殻堆肥,牛糞堆肥,レンゲ)と慣行法で栽培されたひとめぼれを使用した。一般成分,アミロース量,RVA測定値,加水分解酵素活性から,有機米と慣行米の米粒特性を比較した。カラーインデックス,テクスチャー,遊離糖量,グルタミン酸量,官能検査から,有機米と慣行米の米飯特性を比較した。
    結果 有機米は,慣行米よりもたんぱく質含有量が低く,RVA測定値の最高粘度とブレークダウンが大きかった。そのため,有機米米飯は,慣行米米飯よりも軟らかく,粘りが強かった。有機米米飯は,慣行米米飯よりも遊離糖量が多く,炊飯過程で内在性アミラーゼの作用を受けやすいことが推察された。官能検査の結果より,レンゲの有機米米飯は慣行米米飯よりも総合評価が高く,嗜好性において優れていた。牛糞堆肥の有機米米飯は,軟らかさや旨味の評価が高いにもかかわらず,香りが慣行米米飯よりも悪いと評価され,総合評価に有意な差は認められなかった。籾殻堆肥の有機米米飯は,すべての特性において慣行米米飯との間に有意な差は認められなかった。以上の結果より,本研究で検討した有機農法の中では,レンゲが米飯食味に好ましい影響を与えることが判明した。
  • 川原 早苗, 金丸 早智子, 丸山 悦子
    セッションID: 2B-p2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    目的 玄米は自然食嗜好など健康食として現在なお受け継がれているが、食味上から日常的に用いられてはいない。玄米飯の食味を改良するために種々の方法で玄米の炊飯方法が検討されてきている。本報は圧力を変えて玄米の炊飯を行い、玄米粒の重量、体積、粒形、糊化度および硬さや付着性を測定し、より好ましい玄米飯の炊飯に必要な圧力について検討した。
     方法 試料は滋賀県産日本晴玄米を5℃で保存したものを使用した。玄米450gを洗米後、1.7倍量脱イオン水で、2時間浸漬したのち直接式圧力電気炊飯器(M社製SR-203型改良型、1.8L炊き)を使用し、常法で炊飯を行い、通電タイマーを10分にセットし、蒸らし時間は15分とした。
     結果 釜内の圧力を増すにつれて、玄米粒の重量、体積は増大し、比重は約1.4倍までは著しく増加し、1.6倍でほぼ一定値に達した。飯粒の粒形では短径は小さく、長径と厚みは伸長した。硬さは1.4気圧までは急激に減少し、1.6から2.0気圧で、ほぼ一定となったが、付着性は圧力を増すに伴い増大し、2.0気圧では釜内の部位差がみられなくなった。玄米飯の炊飯には糊化度や形態などから1.6気圧以上が必要であることが示唆された。
  • 綾部 園子, 小島 美由紀, 関口 さやか, 香西 みどり, 畑江 敬子
    セッションID: 2B-p3
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】/黒米はぬか層に黒紫色のアントシアニン系色素を含む米であり、食物繊維、ビタミン類、無機質が豊富で、抗酸化性などの機能性を有することが知られている。黒米にはインディカ種とジャポニカ種、もち米とうるち米があるが、種々の黒米についての調理特性を比較した研究は少ない。そこで本研究では、数種の黒米を用いて炊飯特性に及ぼす黒米混合率および調味料添加の影響について検討した。
    【方法】黒米の朝紫、おくのむらさき、およびNursery sticky rice、対照としてゴロピカリを用いた。ゴロピカリに黒米を0、10、30%混合した米200gに対し、しょうゆ(20.7g)、砂糖(6g)、酢(10g)、塩(3g)を添加して常法で炊飯した。対照として無添加の米飯も調製した。測定項目は、炊き上がり重量、飯の物性(テクスチャーアナライザー 集団法)、水分量(常圧乾燥法)、色(カラーリーダー)、ポリフェノール含量(Folin-Denish法)、および官能評価(7段階評点尺度法および順位法)である。
    【結果】黒米混合により炊き上がり重量、水分量は減少し、飯の凝集性が低下した。飯の色は朝紫混合飯が最もL値が低く、次いでNursery sticky rice、おくのむらさきの順で、混合率が高くなるほど明度は低下した。ポリフェノール量は朝紫>おくのむらさき>Nursery sticky riceの順で、黒米の混合率が高いほど増加した。10%混合飯の官能検査の結果、総合的な好ましさにおいてNursery sticky rice≧朝紫≧おくのむらさきの順となり、Nursery sticky riceが最も好まれた。調味料添加による影響では、しょうゆ添加において硬さと付着性が増加し、L値とa値が低下しb値が上昇した。ポリフェノール量も増加したがこれはしょうゆに由来するもので飯のそのものの変化ではなかった。酢添加においては硬さが減少し付着性が増加し、L値とa値が上昇しb値が減少した。朝紫の色の変化が顕著であった。
  • 小林 麻衣子, 貝沼 やす子
    セッションID: 2B-p4
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    [目的] 米を長期に保存するに当たり、現在は玄米の状態で低温に保存されているが、遠洋漁業で捕獲された大型魚を保存するための超低温(-60℃)倉庫に保存可能な他の食材の模索が行われていることから、精白米での保存の可能性を検討した。
    [方法] ポリエチレンの袋に入れた精白米を紙袋に包んで密封し、10℃、-20℃、-40℃、-60℃の各温度で2,4,6ヶ月保存し、各保存温度・保存期間における精白米の性状変化を検討した。測定した項目は、生米については水分含量、吸水率、吸水させた米の硬度、水浸漬時に溶出した還元糖量、グアヤコール法による米の鮮度判定である。米飯については加水量1.3倍、1.5倍、1.7倍の3種類で炊飯し、破断強度及びテクスチャーの測定、官能検査などを行った。
    [結果] 生米については、保存による水分含量の変化は見られなかったが、保存温度が高い米ほど吸水率が低下し、吸水させた米の硬度は増加した。また、水浸漬時に溶出する還元糖量は減少し、米の鮮度も低下した。いずれの現象も10℃の低温庫保存の米において顕著であり、保存期間が長くなるにつれ保存温度が高い米ほど0ヶ月との間に差が生じた。米飯についても、保存温度が高い米で炊飯した米飯ほど保存期間の経過に伴う変化が生じ、硬く付着性の少ない米飯となり、10℃の低温庫保存の米において特に顕著に米飯の物性に変化が現れた。-60℃保存においては、米の性状、米飯の物性は0ヶ月とほぼ同じ状態が維持されており、官能検査でも有意に好まれた。-60℃という超低温を利用した保存は、米の品質保持の点で明らかに優れていると推察された。
  • 高崎 禎子
    セッションID: 2B-p5
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】近年、米を微細化する技術が進歩しており、米を酵素処理後、気流粉砕する方法が開発されている。本研究では米粉利用の方向性を探るために、米の微細化が米粉の理化学的性質に与える影響について検討した。さらに小麦粉の代替として、スポンジケーキ、シュー、クッキーなどの菓子への応用についても検討した。
    【方法】微細米粉(酵素処理後気流粉砕)、通常米粉(自由粉砕)、薄カ粉を用いた。粉の粒度分布、糊化特性を測定するとともに加水した場合の生地の物性(硬さ、付着性、凝集性など)を測定した。3種類の粉を用いてスポンジケーキ、シュー、クッキーを調製し、出来上がった製品の評価(重さ、体積、膨化量、比容積、物性、官能検査など)を行った。
    【結果】微細米粉の粒度は30-53μmのものが約47%を占め、薄カ粉と同様な粒度分布であった。一方、通常米粉では106μm以上のものが約52%を占めていた。微細米粉の糊化特性は、糊化開始温度、最高粘度、最低粘度において通常米粉より低い傾向にあった。加水した際の生地の物性は粉の種類により差が見られた。米粉を用いたスポンジケーキの品質には粉の粒度の大きさが影響を及ぼしており、微細米粉を用いたスポンジケーキは薄力粉と同等、またはそれ以上の品質であった。米粉クッキーは崩れやすいが、クッキーの調製が可能であった。通常米粉で調製したシューは膨化が不十分で不適であったが、微細米粉では薄力粉に近い良好な製品が得られた。本研究により微細米粉がスポンジケーキ、シュー、クッキーにおいて小麦粉の代替として応用できることが明らかとなった。
  • 升井 洋至, 内山 綾子, 竹内 若子
    セッションID: 2B-p6
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】我々はこれまでに,白米,玄米等を試料に、発芽に伴うデンプン分解酵素(α-グルコシダーゼ:α-GSD,プルラナーゼ:PUL等)活性の挙動から炊飯米における還元糖生成への影響について検討を行ってきた。しかし,米飯の香気成分の生成とこれら分解酵素活性との関連性については,未だ十分な検討がなされていない。そこで本研究では、米の貯蔵に伴う糖質分解酵素活性の変動と炊飯過程での香気成分生成への影響について検討してみた。
    【方法】試料米は,主に「日本晴」(平成16年度滋賀県産)を用い、4℃,室温(25℃),37℃の温度条件で保管(0から14日間)したものについて比較検討した。酵素活性は,調製試料米を,粉砕後,抽出緩衝液にて磨砕後の上清を粗酵素液とした。α_-_GSDおよびPULの両活性は,マルト_-_ス,プルランをそれぞれ基質として測定した。炊飯米の香気成分は,におい識別装置(島津製FF1)およびGC_-_MS分析(島津製GC-17A_-_GC-QP5050A)により行った。また,別品種の試料米として、国産の「あいちのかおり」、中国産の「もち米・短粒」および「もち米・長粒」、「黒米」、「香米」についても比較検討してみた。
    【結果】貯蔵温度,貯蔵期間による,α_-_GSD活性の変動は,4℃保存条件の場合,精米後1日目でやや上昇しその後わずかに低下し,10日目まで漸増した。室温(25℃)、37℃保存でも同様の挙動を示したが,保存温度の上昇につれて変動は小さくなった。また、PUL活性の4℃保存では、5日目で最大活性を示したが、その後14日までは低下傾向を示した。37℃および室温下では、同様に5日目で最大となり、4℃の約1.5倍もPUL活性上昇が認められ、保存温度が高いほど活性増加が大きかった。
  • 山田 千佳子, 鍋田 早希子, 間崎 剛, 加藤 保子, 和泉 秀彦
    セッションID: 2B-p7
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】これまでに我々は、米を一定条件下で浸漬すると可溶性タンパク質が溶出することに着目し、これを利用した浸漬による米アレルゲンの低減化について報告している。そこで本研究では、米の浸漬時間および浸漬溶液のpHを変化させることによるアレルゲンの溶出量を解析し、低アレルゲン化の最適条件を明らかにすることを目的とした。
    【方法】精白米を0.5MのNaCl溶液に浸漬させ25℃、50℃で一定時間(0-24h)置いた。米から浸漬溶液中に溶出したタンパク質量をLowry法で定量し、タンパク質組成をSDS-PAGEで、アレルゲン溶出量の変化を特異抗体を用いたイムノブロットにより調べた。さらに浸漬後の米粒より可溶性タンパク質を0.5MのNaCl溶液で抽出し、米粒中に残存しているタンパク質についても溶出タンパク質と同様に解析した。また浸漬溶液のpHを 2-10に変化させて24h浸漬後に同様の解析を行い、アレルゲンタンパク質の溶出に及ぼすpHの影響について調べた。
    【結果】浸漬時間による可溶性タンパク質およびアレルゲンの溶出量について調べた結果、16hまでは浸漬時間が長いほど溶出量が増加したが、その後はほとんど変化がなかった。また、50℃で浸漬したところ25℃の約1.6倍のタンパク質が溶出し、アレルゲン溶出量も増加した。さらに浸漬溶液のpHを変化させた結果、pH2-4およびpH9、10で溶出タンパク質量が多く、それにともなって14-16kDaアレルゲンも溶出されていた。また、26kDaアレルゲンはpH4で浸漬したところ、浸漬溶液中にも米粒残存可溶性タンパク質抽出溶液中にも確認されなかった。
  • 大野 佳美, 川田 かおり, 中里 やちほ, 米谷 友里, 内山 綾子
    セッションID: 2C-a1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】揚げもの調理における揚げ種への吸油量の把握は,揚げ操作における温度管理や揚げ種などの諸条件によって影響を受け一定の基準を見出すことは困難である.そこで,揚げ種と吸油量等間に一定の傾向があるかどうかを検討するために,2種類の食用油を使用して素揚げ,天ぷらおよびフライ調理を行い,揚げ油の化学的性状の変化と揚げた食品への吸油量を測定し,これらの項目間の関連性をしらべた.
    【方法】日常よく揚げものに使用されている食品16種類を選び,市販食用油2種類を使用して素揚げ,天ぷら,フライの揚げ操作を180℃で6回行った.揚げた食品については吸油率,脱水率,衣付着率,水分量を測定した.揚げ油についてはΔE値,アニシジン価(ANV),カルボニル価(COV),酸価(AV)を測定した.また,これらの項目間の関連性をしらべるために相関係数を求めた.
    【結果】食用油の違いによる揚げものの吸油率,脱水率,衣付着率、水分量にはほとんど差がみられなかった.素揚げでは食品の種類により吸油率が異なった.天ぷらとフライでは水分量は同程度であったが,天ぷらの方が低い傾向がみられた.ΔE値は食用油間に差が認められた.揚げ油のANVおよびCOVは揚げ回数とともに高くなり、また、揚げ種により異なったが,揚げ回数3回と6回の平均値を用いて揚げもの全体の揚げ油の平均値を算出して得た値を比較すると,ΔE値が高値を示した食用油の方がANV,COVともに高い値を示す傾向がみられた.AVは全体に低値を示した.吸油率と脱水率間,揚げ回数とANVおよびCOV間,ANVとCOV間には関連性がみられた.
  • 金谷 由美, 門田 めぐみ, 味村 妃紗, 築野 卓夫, 河智 義弘, 澤井 作司, 王 忠信, 本間 悦子, 菊崎 泰枝
    セッションID: 2C-a2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]揚げ物は店頭で陳列、運送、または保管中に酸化し、商品価値が低下してしまう。これを抑制するため、油脂の酸化防止剤としてすでに使用されている米糠由来のγ - オリザノールに注目した。γ - オリザノールはこれまで、油脂に直接添加して使用されてきたが、今回、揚げ衣に添加することによる揚げ物の酸化抑制作用について検討した。併せ、揚げ油に対する効果についても検討を加えた。
    [方法]植物油として汎用される大豆油、或いはγ - オリザノールが溶存している米油を揚げ油として試験を行った。揚げ種には鶏モモ肉を用い、γ - オリザノール0.2%を添加した揚げ衣を付した。180℃で揚げた後、唐揚げを6ヶ月間冷凍保存し、酸化や食味について検討した。酸化については、揚げ物の衣を剥がして油分を抽出し、過酸化物価等を測定した。また、揚げ油の酸化(過酸化物価、粘度等)についても検討した。さらに、γ - オリザノールとビタミンEを液体クロマトグラフィーで分析し、酸化抑制と油脂に溶存する抗酸化物質との相関を検討した。
    [結果]揚げ衣にγ - オリザノール0.2%を添加した時、揚げ物の酸化は抑制された。また、保存による食味劣化も抑制された。更に、γ - オリザノールを揚げ衣に添加することにより、揚げ油の酸化も抑制された。γ - オリザノールによる揚げ物および揚げ油の劣化抑制は、大豆油より米油に顕著に認められた。米油と大豆油中のγ - オリザノールおよびビタミンE含量を測定した結果、双方とも含量は米油の方が含量は高かった。揚げ衣にγ - オリザノールを添加した場合、揚げ物中のγ - オリザノールが揚げ油に移行し、逆に揚げ油中のビタミンEは揚げ物中に吸収された。
  • 内山 綾子, 堀田 和孝, 須谷 和子, 升井 洋至
    セッションID: 2C-a3
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、家庭用調理機器においても高機能化が進み、揚げ物機能については、温度設定をするだけで調理者自ら温度調節をしなくても調理可能となっている。
    本研究では、揚げ物温度制御機能付きIHヒーターおよびガスコンロでの揚げ物調理を行い、個々の差異が調理物に及ぼす影響について検討した。
    【方法】加熱調理機器は、IHヒーター(松下電器 HS32A)、およびガスコンロ(大阪ガス 110-5090 ガラストップ 内炎式)を用い、揚げ鍋は、IHヒーター付属鍋を使用して、揚げ物調理を行なった。揚げ操作は、IHヒーター、ガスコンロいずれも自動温度設定の揚げ物180℃に設定し、自動加熱で行った。各機器の設定温度到達ブザーが鳴った時点を揚げ物調理開始とした。対象食品として、市販冷凍コロッケ(CO-OP冷凍食品 牛肉コロッケ)、及びフライドポテト(Coop’s 有機フライドポテト)について検討した。揚げ物の評価は、吸油量、吸油率、脱水率、水分量(電子水分計 長計量器製作所 MC-30MB)、破断荷重(山電 BAS-3305)を行なった。
    【結果】加熱調理機器としてIHヒーターを用いた方がガスコンロに比べ、揚げ物の吸油量、吸油率は低い傾向を、水分量は高い傾向を示した。脱水率において、コロッケの揚げ物では、一回の揚げ操作に投入する食材量により異なり、投入量が多くなるとIHヒーターの方が低かった。油温度は、設定温度到達ブザーが鳴った時の温度が異なり、IHヒーターの方が高かった。破断荷重は、明らかな違いは見られなかったが、官能的には、IHヒーターの揚げ物の方がサックリ感があり、好まれる傾向がみられた。
  • 田村 朝子, 平田 なつひ, 佐々木 舞, 木下 伊規子
    セッションID: 2C-a4
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、特定給食施設などで導入されている新調理システムの中で、特に真空調理システムは簡便であり、従来の調理法に比べ、食品の形態をくずすことなく軟らかく仕上げることができ、衛生的、経済的であるという利点から注目されている。そこで、本研究では植物性食品を試料とし、真空調理法と通常調理法において、加熱による食材の温度変化、物性の変化、破断強度の比較をし、真空調理法が食材に及ぼす影響について検討した。
    【方法】植物性食品の試料として根菜類であるにんじん、大根、ごぼうを用い、にんじんは1辺が2cmの立方体、大根は2cm厚さの輪切り、ごぼうは1辺が3cmの立方体に調製した。真空調理では、試料をフィルム包装(真空度98%、真空吸引60秒)後、スチームコンベクションオーブン(庫内温度100℃)で加熱した。通常調理では、試料と水をそれぞれ直径30cmのアルミ製鍋に入れ加熱した。真空調理、通常調理ともに中心温度が90℃になった時点を0分値とし、そこから25分(ごぼうのみ60分)まで5分ごとに取り出した。試料の加熱前後重量、中心温度、破断強度をそれぞれ測定した。また、女子大学生36名を対象に、中心温度が90℃になってから10分後のものを試料とし5段階評点法により官能検査を行った。
    【結果】植物性食品(にんじん、大根、ごぼう)の加熱において中心温度は、真空調理に比べて通常調理のほうが高かった。これは、真空調理は試料の周囲をフィルムで覆い加熱しているため熱が伝わりにくいためだと考えられた。真空調理に比べ通常調理では、破断強度が低く、煮くずれしやすいことが分かった。これは、真空加熱では煮汁による熱伝導の対流が起こりにくく、食材がぶつかりあわないためだと推察された。官能検査の結果では、通常調理に比べ真空調理において色、軟らかさにおいて有意な差が(p<0.05)認められた。
  • 木下 伊規子, 佐々木 舞, 平田 なつひ, 田村 朝子
    セッションID: 2C-a5
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】前報と同様の目的で、本研究では動物性食品を試料とし、真空調理において加熱および加熱温度の違いによる食材の温度変化、物性の変化、破断強度を測定することにより、真空調理法が食材に及ぼす影響について検討した。
    【方法】動物性食品の試料として豚肉を5cm×5cm×2cmに調製をし、フィルム包装(真空度98%、真空吸引60秒)した。スチームコンベクションオーブンの庫内温度を70℃、80℃、90℃に設定し加熱した。それぞれの庫内温度で試料の中心温度が70℃、80℃、90℃になった時点を0分値とし、そこから40分まで5分ごとに取り出した。試料の加熱前後重量、加熱後のフィルム内液量、中心温度、破断強度についてそれぞれ測定した。また、加熱後に得られたフィルム内液量と同量の水または油をあらかじめ添加し、加熱した後、上記と同様の測定を行った。さらに女子大学生36名を対象に、庫内温度を70℃とし、中心温度が70℃になった時点を0分値とし、そこから10分加熱したものと、庫内温度を90℃とし、中心温度が90℃になった時点を0分とし、そこから5分加熱したものを試料とし5段階評点により官能検査を行った。
    【結果】真空調理における温度変化では、試料内部温度が設定した中心温度に到達するまでの時間は、庫内温度70℃で15分、80℃で20分、90℃で26分であった。加熱後のフィルム内液量は加熱時間の経過に伴って増加しており、庫内設定温度が高くなるほど高値を示した。破断強度は、加熱時間の経過に伴い高値を示す傾向にあった。水、油の添加実験では、無添加で加熱したものと比較し、フィルム内液量が低値を示した。また、水添加と油添加でフィルム内液量を比較すると、油添加の方が低値を示した。官能検査では、庫内温度70℃に比べ90℃において色、軟らかさにおいて有意な差が(p<0.05)認められた。
  • 丹羽 悠輝, 森山 三千江, 大羽 和子
    セッションID: 2C-a6
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    目的:真空低温調理法は煮崩れが少ない、調味料が少量ですむ、酸化を防止するなどの利点があると考えられる。本研究では真空調理されたものの貯蔵期間や温度の異なる貯蔵条件下で食品の抗酸化機能成分を経時的に追跡し変化を検討した。
    方法:試料はサツマイモ、里芋、大根を用い、生および真空低温調理品から調製した。またサツマイモは同時に従来の調理法も行ない、両者の比較をした。冷蔵(4℃)および冷凍(-18℃、-30℃)で7、14日間貯蔵した。ビタミンC(VC)量はHPLC-ポストカラム誘導体法、ポリフェノール(PP)量はFolin-Denis法、ラジカル捕捉活性はDPPH法により定量した。
    結果:サツマイモの調理後のVC残存率は従来法で加熱する(47%)より、真空調理(68%)の方が高かった。真空調理後冷蔵(14日間)すると、サツマイモ、大根、里芋のVC残存率は生の53%、50%、40%であった。冷凍貯蔵(14日間)では、VC量の残存率が高く58%以上であった。調味料の代わりに水を用いた真空調理でも調理直後のVC量は同様に減少し、それらを冷蔵(4℃)すると生の68%_から_27%に減少した。PP量は従来法でも真空調理でも調理後に約80%残存し、冷蔵で減少傾向、冷凍貯蔵では変化しなかった。調味料に醤油を添加した場合にはPP量もラジカル捕捉活性も共に増加した。水のみで調理したサツマイモ、大根、里芋のPP量は調理直後生の83%、104%、63%となり、冷蔵(14日)後に生の75%、88%、46%に減少した。ラジカル捕捉活性とPP量の両者に正の相関(r=0.920)が見られたので、これら試料のラジカル捕捉活性は主にPP量に起因したと考えられる。
  • 三好 隆行, 古賀 秀徳
    セッションID: 2C-a7
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】ビタミンB群の水溶性ビタミンである葉酸は緑黄色野菜や果物に多く含まれており、造血に作用し、不足すると貧血を生じることがあるとされている。また、2000年12月に旧厚生省は神経管閉鎖障害の発症リスク低減のために妊娠可能な女性に対して葉酸摂取(1日400μg)に関わる適切な情報提供が必要との通知を出している。しかしながら今日その摂取量は多くの若年・妊娠女性で不足している旨の報告が示された。そこでジャガイモにも葉酸が含まれていることから、若年層にも好まれているジャガイモ主原料スナック中の葉酸含有量について調査した。
    【方法】ジャガイモおよびその主原料加工食品であるポテトチップスについて微生物法によって含有量を測定した。
    【結果】ジャガイモについて、その品種間で葉酸含有量に違いがあることが認められた。またポテトチップスでは使用する原料品種によっては60μg/100g以上、さらに低油分タイプでは80μg/100g以上の葉酸が含まれていることが認められた。なおビタミンB6、ビタミンCもポテトチップスには含まれていることから葉酸の供給食品の1つとしても期待できると思われた。
  • 山口 智子, 上島 由子, 大矢 智子, 高村 仁知, 的場 輝佳
    セッションID: 2C-a8
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】近年の健康志向と美食志向に伴い、食材の持つ機能性を活かしつつ、そのうま味や食感を十分に引き出す新しい調理方法の開発が試みられている。本研究では、電子レンジにスチーム機能を搭載したスチームオーブンレンジを用いて、スチームレンジ加熱が野菜の機能性および嗜好性に及ぼす影響を検討した。
    【方法】ブロッコリーを試料とし、加熱にはM社製の家庭用スチームオーブンレンジを一部実験用に改造して使用した。調理条件は、700W電子レンジ機能のみで加熱(ラップあり、ラップなし)、電子レンジ機能にスチーム機能を併用して加熱(スチーム発生条件A、スチーム発生条件B)とした。さらに、電子レンジ加熱前にスチームを2分または5分当てたものを調理した。対照として、ゆで加熱を行った。機能性の評価として、DPPHラジカル捕捉活性、アスコルビン酸量、総ポリフェノール量を測定した。嗜好性については、色、硬さ、水っぽさ、甘さ、総合評価としてのおいしさに注目して官能検査を行った。
    【結果】ブロッコリーのラジカル捕捉活性、アスコルビン酸量、総ポリフェノール量は、ゆで加熱の場合には加熱時間が長くなるほど減少した。しかし、電子レンジ加熱の場合には、ラップありおよびラップなしともに増加傾向がみられた。スチーム発生条件Aおよびスチーム発生条件Bの場合、ラジカル捕捉活性、アスコルビン酸量、総ポリフェノール量はラップなしでの電子レンジ加熱と同等の値を示した。電子レンジ加熱前に5分間スチームを当てた場合には、ラジカル捕捉活性とアスコルビン酸量が少し減少した。官能検査では、スチーム発生条件Aが最も色鮮やかで甘みの強いことが明らかとなった。
  • 槙尾 幸子, 仲 克巳, 西山 勝利, 田口 充子, 保田 康子, 江口 幹子, 岡田 勝子, 吉田 礼子, 高木 昌子, 中嶋 町子, 中 ...
    セッションID: 2C-a9
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】学校給食の調理場においては、原則として、全てその日に学校給食調理場で調理し、生で食用する野菜類、果物類を除き、加熱調理したものを提供することになっている。特に野菜類の使用については、原則として加熱調理することになっている。そのため野菜類を使用することの多い「あえ物」では洗浄、裁断、ボイル、冷却、水切りなど手の加わる工程が複数存在し、二次汚染の危険度が高いことから、食中毒が心配される。各調理場においては規模により機械、器具も異なり調理作業がマニュアル化されていない現状に着目し、作業工程の見直しを行い、ビタミン、ミネラル、食物繊維が摂取できる貴重な栄養源となっている「あえ物」がおいしく、安心して子どもたちに提供できるよう、衛生管理に基づいたマニュアルを作成したので報告する。
    【方法】「あえ物」の工程を手順に沿って、問題があると考えられる箇所の拭き取り方法により安全性を確認した。拭き取り検査結果から、作業工程、加熱温度、加熱時間、冷却水を再度見直し、同様の拭き取り検査を実施した。
    【結果】大量調理マニュアルに沿って、ボイル温度は3点測定し85℃1分間以上を確認して実施したにも関わらず、出来上がり食材から大腸菌群が検出された。加熱温度の確保により十分な衛生管理に基づいていると確信していたが、温度確認だけでは、十分な加熱になっていないことが分かった。作業工程を再度見直し、洗浄する量、加熱する量の違いにより、洗浄不足、加熱不足の確認ができた。機械、器具の違いはあっても、今後小分けの洗浄、小分けのボイル、温度の均一化のための攪拌の3原則を守ることが検証できた。
  • 田中 麻里子, 住 正宏, 坂本 加奈, 宮崎 裕介
    セッションID: 2C-p1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】コーヒー飲用時によく利用されているクリーミングパウダーは、牛乳やクリームに比べて保存性に優れ、熱や酸にも強く、コーヒー等にコクや乳味感を付与する上で便利な食品である。本研究ではコーヒーへの用途に限定されがちなクリーミングパウダーを調理用途に使用することを目的とし、ハンバーグに使用した時の効果を検討した。
    【方法】ひき肉、炒めた玉ねぎ、卵に、肉に対して0から20%の間で量を変えたクリーミングパウダー(主原料が乳製品のタイプ)を添加してハンバーグ生地を焼成し、機器分析によるテクスチャー測定と焼成後の重量の測定を行なった。機器分析では、破断点における荷重値(破断応力)や面積(破断エネルギー)等の破断特性を測定した。さらに、食感・風味に関する官能評価を30、40代の女性を対象にして行なった。
    【結果】クリーミングパウダーをハンバーグへ添加した時の添加量と破断応力には関係性はあまり認められなかったが、破断エネルギーについては、クリーミングパウダーを添加していないものよりも添加したハンバーグの方が小さい傾向にあった。また、焼成後の重量はクリーミングパウダーの添加量が多いほど増加する傾向にあった。官能評価の結果、クリーミングパウダーを添加していないものより、添加したハンバーグの方がやわらかいと評価され、機器分析による破断エネルギーの測定結果と類似し、その食感は好まれた。また、クリーミングパウダーの添加により肉臭さが少なくなる等、おいしさの評価も高かった。クリーミングパウダーをハンバーグに利用すると、食感がやわらかくなるとともに、風味の向上にも効果があることが認められた。
  • 金子 真由美, 後藤 雅広, 三尋木 健史, 飛田 昌男, 長谷川 峯夫
    セッションID: 2C-p2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】マヨネーズを厚焼たまごとハンバーグに添加すると、食感及び食味を改善する効果があることはすでに報告した。本研究では、親子で楽しく作ることができるホットケーキについて、マヨネーズ添加による食感及び食味改良効果を探求することを目的とした。
    【方法】市販のホットケーキミックス、卵、清水を攪拌し、基本配合のホットケーキ生地を調製した。基本配合に対し、一般的な卵黄型マヨネーズを、清水と置き換えて全量の2.5_から_12.5%まで5段階にて添加した。調製した生地は円形の型を使用し、ホットプレートにて焼成した。焼成した試料は放冷後、体積、破断特性およびテクスチャーを測定した。基本配合及びマヨネーズを2.5、7.5、12.5%添加した4種類のホットケーキを用いて、順位法により官能評価を行い、最適な添加量を求めた。
    【結果】ホットケーキの体積は、マヨネーズ添加量の増加に従い増加した。破断応力およびテクスチャーの硬さは、マヨネーズ添加量の増加に従い減少した。順位法による官能評価では、マヨネーズを添加した3種類のホットケーキは、基本配合と比べ有意に「ふんわりしている」「サクッとしている」「おいしい」と評価された。「ふんわりしている」「サクッとしている」の項目は、マヨネーズ添加量に依存する傾向が認められた。しかし、「おいしい」については添加量7.5%が最も好ましいと評価された。
    以上の結果から、マヨネーズ添加により、ホットケーキの食感をより好ましくすることが示された。
  • 木下 枝穂, 小池 恵, 津田 淑江
    セッションID: 2C-p3
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    〔目的〕我々は煮熟ジャガイモの保存時における本みりんの影響を検討し、いくつかの知見を得た。本研究では、本みりん中の主要成分,エタノール、糖類、および有機酸が,ジャガイモ澱粉の糊化特性に及ぼす影響を測定し、本みりんの煮熟ジャガイモにおける糊化度との関係を明らかにする事を目的とした。
    〔実験方法〕ジャガイモ澱粉の糊化特性は,ラピッドビスコアナライザー(以下R.V.A)を用いて測定した。使用した溶液は,水,本みりん15%溶液,エタノール2.1%溶液,煮きりみりん15%,みりん風味調味料15%溶液,グルコース6%溶液,マルトース,マルトトリオース,ニゲロース各1%溶液および乳酸を用い,澱粉濃度4%で測定した。さらに,生のジャガイモを凍結乾燥させ粉末にしたジャガイモ粉末についても,同様にR.V.Aで粘度測定を行った。煮熟ジャガイモの糊化度測定は,β-アミラーゼ‐プルラナーゼ法により測定し検討を行った。
    〔結果〕ジャガイモ澱粉のR.V.Aによる糊化特性測定では,本みりん,煮きりみりん,みりん風味調味料では,最高粘度が水加熱の約3割に減少し,セットバックは約3倍に増加した。エタノール,グルコース,マルトース,マルトトリオース,ニゲロースそれぞれの糊化特性は水加熱と比べて大きな変化はなかったが,これらを混合した場合,最高粘度は,水加熱の約9割に減少し,セットバックは約1.7倍に増加した。このことから,本みりんの澱粉におよぼす影響は,糖やエタノール単独の効果ではなく,混合した場合に示す性状であると考えられた。あわせて,ジャガイモ粉末の結果について検討を行い,煮熟ジャガイモにおよぼす本みりんの影響を考察した。
  • 大迫 早苗, 永島 伸浩
    セッションID: 2C-p4
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】新食料資源として注目されているキヌアは、アカザ科に属する1年草の植物でたんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などに富み、アレルギーを起こしにくい食品の1つとして知られている。最近 クッキー、ケーキ、シリアル、醤油など加工食品として利用されているが、まだまだ利用率は低い。そこで前報では、キヌアの調理への利用として餅にキヌア粒および粉末を添加することに試みた。さらに利用を拡大するためにキヌアの配合割合を変えて各々の違いがパンの性状および食味特性におよぼす影響について検討した。
    【方法】材料として強力粉、キヌア粒・粉末を用い、ナショナルホームべーカーリーSD-BT102の基本配合割合でパンを調製した。キヌアの添加量は強力粉の10、20および30%とした。生地比重、焼成後のパンの高さ、比容積、断面組織の観察、表面と断面の色(日本電色工業ZE2000)、水分含量を測定し、テクスチャーは(山電製RE-33005)硬さ、凝集性について測定した。また焼成後のパンの経時変化による硬化度についても調べた。官能評価は外観、色、味、風味、きめ、硬さ、弾力などについて行った。
    【結果】生地の比重はキヌアの添加量が増加するとともに大きくなり、比容積は20%を過ぎると小さくなった。硬さはキヌアの添加量の増加とともに硬くなった。断面組織の観察ではキヌア添加のものにきめの粗さが認められた。表面の色は添加量とともに濃くなる傾向が見られた。官能評価では、キヌア無添加と10%添加のものは香りもよくきめが細かく、弾力性があったことより好まれた。20%添加からはキヌア特有のにおいが強くなった。また 粉末添加より粒添加のキヌアパンのほうか評価が良かった。
  • 女子学生とシェフの比較
    笠松 千夏, 立山 和美, 高取 幸子
    セッションID: 2C-p5
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    目的 麻婆豆腐は、ひき肉を炒め、調味料とスープ、さいの目に切った豆腐を加えて煮た後、でんぷんでとろみをつけて仕上げる調理である。加工食品として数多くの合わせ調味料も販売されており、家庭で簡単にできる中華料理の一メニューである。近年、家庭において調理済み食品や加工食品が利用される中、女子学生の調理技術の低下が懸念されている。簡便とされている加工食品を学生がどのように使用し調理を行っているかの実態を知ることを目的とした。
    方法 パネル(N=12)を一人ずつ調理室に呼び、中華合わせ調味料(「CookDo広東式麻婆豆腐」(味の素製))を用いて麻婆豆腐を作るよう指示し、下処理から仕上げまでの一連の動作をビデオに撮影した。フライパン内の表面温度変化はサーモトレーサ(TH7100、NEC製)にて30秒ごとに撮影し、仕上がりの豆腐、肉ソースの物性を測定した(TA-XT2i、SMS製)。比較のため、中華シェフに同様の条件で調理をお願いした。
    結果 女子学生は裏面の作り方説明を読みながら、丁寧に調理を行っていた。しかし下処理の段取りが悪く時間がかかり、豆腐の下ごしらえの湯通しを行ったのは12名中8名であった。また、シェフの調理時間が7分30秒であったのに対し、女子学生は平均14分で、最も調理時間が長かったものは20分かかっていた。フライパン内の温度変化はシェフが80℃以上、ほぼ一定であるのに対し、女子学生では調味料や豆腐を加える度に温度が下がり加熱が不十分な様子が観察された。そのため仕上がりの豆腐のテクスチャーがシェフ品と大きく異なり、下ごしらえを含めた豆腐の扱いが最も重要であることが示唆された。
  • 四十九院 成子, 山岸 美穂, 吉田 恵子
    セッションID: 2C-p6
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】大豆は栄養価が高く、近年種々の機能性も報告されている。しかし豆が固いこともあり加工品としては利用されているが、日常の食事への利用は減少している。そこで本研究では機能性とおいしさとの観点から、豆の加熱方法の違いによる機能性成分の増加や豆の味などを明らかにすることを目的とした。機能性については血圧降下に関係するアンジオテンシン_I_変換酵素(ACE)阻害活性について検討した。
    【方法】大豆を茹で加熱、蒸し加熱、圧力鍋加熱の3種の方法で比較した。また圧力鍋中の温度を100℃、112℃、118℃、121℃の4種の温度で比較する実験はオートクレーブを使用した。ACE阻害活性測定法は山本らの方法を用いた。また3種の方法で加熱した豆について、柔らかさの度合いをクリープメーターを用い破断強度測定によって比較した。豆の甘さについては、糖の定性、定量を行った。また官能検査も行い大豆の加熱方法による、豆のおいしさを物理的、化学的、官能検査の点から評価し、これらとACE阻害活性との関連を検討した。
    【結果】圧力鍋加熱が、蒸し豆、茹で豆に比べ柔らかかった。またACE阻害活性は、圧力鍋加熱豆が最も強く、蒸し豆、茹で豆の順であった。茹で豆のACE阻害活性が低いのは、茹で汁にも阻害活性が認められたことから、茹で汁に阻害物が溶出したためと思われる。常圧による蒸し加熱では、おいしいと感じられる3_から_4時間加熱豆で茹で加熱よりも強い活性が認められた。またオートクレーブの温度の違いによるACE阻害活性は、官能検査で味の点でも一番おいしいという評価であった112℃15分加熱豆が最高値を示した。
  • 調理成績、調理時間、エネルギー消費量、調理操作性について
    杉山 久仁子
    セッションID: 2C-p7
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】加熱調理においては、圧力鍋や保温鍋、オーブンレンジなど様々な調理器具が利用されている。従来の鍋を使用した調理よりも手間が省ける、省エネルギーであるなどといわれているが、実際に一つの料理を異なる調理器具で調理した時の特徴についての総合的な比較はほとんど行われていない。本研究では、調理における負担感の異なる2種類の料理を取り上げ、調理成績や調理時間、エネルギー消費量、調理操作性などを比較した。
    【方法】調理時間がかかるビーフシチュー(B)と調理技術を要するカスタードプディング(C)を、普通鍋(B)、保温鍋(B,C)、圧力鍋(B,C)、電気煮込み鍋(B)、蒸し器(C)、オーブンレンジ(B,C)を使って調理した。予備実験により肉の硬さ(クリープメーター、破断強度)と卵ゲルのすだち状態(目視)を基準に最適な調理条件を決定した。その条件における調理所要時間、ガス消費量、消費電力を測定し、官能検査を行った。
    【結果】ビーフシチューについては、いずれの調理器具を使ってもほぼ同程度の調理成績のものが得られた。調理時間の短縮では圧力鍋、エネルギーの節約では保温鍋・圧力鍋・電気煮込み鍋、手間の軽減では保温鍋・電気煮込み鍋において普通鍋の調理よりも利点が認められた。プディングは、異なる調理器具で調理成績をそろえることは困難であった。調理の簡便さでは、蒸し器(余熱利用)・保温鍋・オーブン、調理成績ではオーブン、エネルギーの節約では保温鍋において蒸し器による通常の調理方法よりも利点が認められた。今回の実験で得られた基礎的なデータは、調理担当者がその生活スタイルや考え方などに応じて調理方法を選択する際の目安となると考えられる。
  • 林 真愉美, 遠藤 陽子, 市川 和子, 河原 和枝
    セッションID: 2C-p8
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】凍結全卵の調理特性については、我々のこれまでの研究で卵豆腐や茶碗蒸しなどの蒸し料理において普通卵と同様の結果が得られ、コスト面では普通卵に劣るものの、ごみや保管スペース、作業効率、衛生管理の面で利用価値が高いと考えられた。しかし、かきたま汁や中華スープなどの汁物では卵が散ってしまい外見が悪いという点から実用化には至っておらず、凍結全卵の汁物への適応が課題として残されていた。今回は液卵の粘度に着目し、汁物における凍結全卵の利用について検討を行った。
    【方法】凍結全卵はキューピータマゴ(株)の凍結全卵No.3およびNo.12、ツインパックを使用した。常温(15℃)に解凍した各種凍結全卵および普通卵を用いてかきたま汁を作成し官能評価を行った。さらにツインパックを47℃に加温し同様の官能評価を行った。官能評価は普通卵を基準とし、評価項目は散在状態、色、味・食感、総合の4項目とした。さらに凍結全卵No.3、ツインパック、普通卵の各温度帯における粘度についてB形粘度計(東京計器)を用いて測定した。
    【結果】官能評価の結果、常温で使用した凍結全卵のかきたま汁はいずれも普通卵に劣っており実用化できるものではなかった。しかし、47℃に加温したツインパックは散在状態以外の全ての項目で普通卵よりも良好な結果が得られ、従来汁物以外で使用している凍結全卵No.3でも40℃以上に加温することで普通卵に近い状態が確認され、加温することで汁物にも利用できる可能性が示唆された。液卵の粘度については、ツインパックは普通卵と同様に温度による変化が小さく安定していたが、凍結全卵No.3は温度による影響を受けやすく、不安定であることが明らかとなった。
  • 原田 和樹, 川本 裕夏, 嶋田 寛, 前田 俊道, 福田 裕, 伊藤 信夫, 戸村 啓二
    セッションID: 2D-a1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】魚介類の「活き」とは、死直後から完全硬直に至るまでの期間とされ、活魚と同等の価値があると言われている。従って、鮮度指標K値が20%以下で完全硬直を遅延させれば、刺身素材としては、「活き」の良い最も価値あるものになる。大分大学の望月らは、関アジ・関サバで5℃あたりの寒温で保存すると「活き」の状態が持続する事を報告したが、我々は、他の魚種でも同様の結果が得られるのかどうか調べた。また、流通中に0℃以上の一定の寒温状態を作り出す事は困難を伴うが、我々は寒温状態を作り出す新しい保冷剤を開発したので、ここに報告する。
    【方法】使用魚種は、ヒラメ、マコガレイ、山口県の瀬付きアジを用いた。試料は、延髄刺殺による活け締め処理を行い、各貯蔵温度区は、0℃、4℃、8℃、12℃とした。死後変化の指標は、HPLCによるK値変化並びにATP核酸関連物質量の変化、硬直指数R値の変化、レオメータによる破断強度の変化などを用いた。
    【結果】瀬付きアジは、関アジの結果と異なり、0℃保存に比べて、4、8、12℃保存で硬直の遅延は認められなかった。しかし、マコガレイでは8℃保存で若干の硬直遅延が、ヒラメでは8℃保存で18時間という顕著な硬直遅延が認められ、完全硬直時のK値は15%以下であった。そこで、我々は、0から12℃に融点を持つ保冷剤の開発を試み、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)等の水和物を利用する事で成功した。近い将来、0℃以上の寒温の保冷剤を流通に使用する事により、家庭では「活き」の良い刺身素材を調理できる様になるだろう。本研究は、農林水産省「地域食料産業等再生のための研究開発等支援事業」の一環として実施された。
  • 濱田(佐藤) 奈保子, 高山 京子, 小林 武志, 今田 千秋, 渡邉 悦生
    セッションID: 2D-a2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    生鮮魚介類の品質管理や安全性管理にHACCPの考え方を導入することは世界の趨勢である.HACCPの考え方に基づけば生鮮魚介類の品質は生成ヒスタミン量によって判断されているが, 魚を生で食べるレベルの品質評価指標としては相応しくないことは明らかである.そこで我々は,生鮮魚介類の品質を鮮度指標K値に基づいて評価,管理する考え方を提唱してきた 1).一方, 生鮮魚介類の品質保持技術は現在のところ, 2,3の特殊な技術を除けば冷蔵・冷凍技術をおいて他にない. 従って, 温度管理をいかに厳格にするかによって最高の品質管理が可能になると考えられるが,生鮮魚介類の品質が今どのような状態(生で食べられる期間はあと何日あるか)にあるかをいつでも即座に知りうることが重要である.この考えに基づき,刺身としての有効消費期限を目視で計測できる技術の開発を進めてきた.この技術は生可食限界値までのK値(初期鮮度指標)変化が酵素反応による発色度の変化に相関することに基づいている.具体的には,密閉容器内で発色試薬を含んだ条件下で酵素反応を行い(以下バイオサーモメーターと呼称する),その発色度とK値との間に良い相関があったことから,魚をバイオサーモメーターと同じ環境におくことで,K値に基づく魚の生可食期限が算出可能であった.1) Naoko Hamada-Sato et al. Quality assurance of raw fish based on HACCP concept. Food Control, 16, 301-307 (2005).
  • 乾 久子, 久保 加織, 堀越 昌子, 岡田 俊樹
    セッションID: 2D-a3
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】琵琶湖では淡水産エビとしてスジエビやテナガエビが漁獲されている。しかし食生活の変化に伴いスジエビの食用として利用は減少している。本研究では琵琶湖のスジエビを原料としたエビ醤油の作成を試みた。
    【方法】琵琶湖産スジエビ、塩、発酵促進剤として煎米と米麹、醤油麹を用いてエビ醤油を作成した。また作成時の仕込み量の影響を見るために、5.5kg区と1.1kg区を設定した。塩分濃度は16,18,20,25%の試験区を作った。スジエビと各材料を蓋つきの容器に入れ、まんべんなく混ぜて室温で熟成させた。エビ醤油のpH、酸度、ホルモール窒素量の測定、アミノ酸分析をおこない、発酵の進行過程と熟成度、醤油としての性状を調べた。また作成したエビ醤油の官能検査を実施した。
    【結果】琵琶湖のスジエビを用いてほぼ6ヶ月でエビ醤油を作ることができた。pHは最初の6週間で大きな変化が見られ、味の良好なエビ醤油は中性域からpH 4_から_pH 5へ移行した。また発酵促進剤として煎り米、米麹を用いたものが、順調な発酵の経過をたどった。材料の仕込み容量が1.1kg以下と少ない場合は、発酵が順調に進行しなかった。塩分濃度は発酵進度を大きく左右した。エビ醤油を大豆醤油と比較した結果、総遊離アミノ酸量は5703.94mg/100g、6140.73 mg/100gでほぼ同レベルを示した。主要アミノ酸はグルタミン酸、アラニン、ロイシン、リジンであり、グルタミン酸は大豆醤油の方に多く、リジンはエビ醤油の方に多く含まれていた。官能検査の結果は煎り米、米麹添加のどちらのエビ醤油も、市販のエビ醤油より高い評価を得た。
  • 小出 あつみ, 山内 知子, 武藤 亜有, 大羽 和子
    セッションID: 2D-a4
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー

    目的:最近、食肉中に存在する抗疲労ジペプチド、アンセリン(Ans)・カルノシン(Car)に抗酸化作用があることと、牛肉・豚肉に比べ鶏肉中に多く含まれることが報告された。本研究は、鶏肉中のAas・Carを有効に活かす貯蔵と加熱調理操作を探ることを目的に実施した。
    方法:試料は屠殺後32時間以内のブロイラー(B肉)、三河赤鶏(M肉)、名古屋コーチン(K肉)の生肉、貯蔵肉、加熱調理肉を用いた。Ans・Carの含有量比較は、部位別、種類別、貯蔵方法別、加熱調理操作別に行った。加熱は電子レンジ、真空調理、スチーム、フライ、ロースト、ボイルで行った。試料肉を5%スルホサルチル酸溶液で抽出し、Ans・Car含有量を ODS C18カラムHPLC法で測定した。ラジカル捕捉活性は試料肉を80%エタノールで抽出し、DPPH法で測定した。
    結果:ジペプチドのAns・Car含有量は生肉、貯蔵肉、加熱肉で、もも肉より胸肉で有意に多かった。これらの含有量比率(生の胸肉⁄もも肉)は、Ansで3.28倍、Carで2.84倍が最大であった。鶏種類別では、Ans・Carともに有意にB肉に多く、K肉で少なかった。胸生肉比較で、AnsではB肉中にK肉の1.16倍、Carで2.15倍と多かった。塊生肉を冷凍貯蔵してもAnc・Car量は変化しなかったが、ミンチ肉にして冷凍貯蔵すると有意に増加した。増加量はB胸肉よりK胸肉で多く、Ancは1.43倍、Carは2.3倍に増加した。加熱調理操作によりAns・Car量は全般に減少したが、B胸肉の真空調理、ボイル(茹で汁含む)で、K胸肉のスチーム、フライでAns量は変化しなかった。
  • 吉田 順子, 堀 幾太郎, 菊池 英夫, 神山 かおる, 早川 文代
    セッションID: 2D-a5
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、日本人の食生活に占める加工食品の割合は年々増加している。なかでも、焼売は、惣菜、弁当等、用途が広く利用機会が多い。そこで、市販の肉焼売の記述的な官能評価を実施し、肉焼売の特性について明らかにすることを目的とした。
    【方法】試料には市販の肉焼売8品を選定した。パネルはISO 8586-1に準拠した訓練を受けた15名で構成した。まず、パネルに試料の特性描写用語を書き出させて135語を得、専門家パネルの討議によって63語にまとめた。これらの用語について5段階尺度を用いた予備的な官能評価を行い、クラスター分析によって用語を分類し、最終的に、肉焼売の評価用語として19語(外観4語、味・におい8語、テクスチャー7語)を選定した。本評価は、これらの19語を評価用語として、両端から1 cmずつのところにマーカーを入れた10 cmの線尺度を用いて行った。試料は電子レンジで75 ℃まで加熱し、透明なプラスチック皿にのせ3分放置したのちに単独で提示した。データ解析には、一元配置の分散分析、Tukeyの多重比較、主成分分析、クラスター分析を適用した。
    【結果】分散分析の結果、19語中18語に試料間の有意差がみられ、評価用語の妥当性が示された。主成分分析の結果、第1主成分を「肉の存在感」、第2主成分を「味付けの濃さ」、第3主成分を「液汁の量」と解釈できた。寄与率はそれぞれ、23%、17%、9%であった。また、第5主成分までの因子付加量を用いてクラスター分析(Ward法)を行ったところ、肉焼売は4クラスターに分類され、各グループの特徴を示すことができた。以上により、市販肉焼売の個々の特性や類似性について定量的に明らかにすることができた。
  • 岩森 大, 山崎 貴子, 伊藤 直子, 堀田 康雄, 村山 篤子
    セッションID: 2D-a6
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ハンバーグは日常的に幅広く親しまれている料理の一つである。ハンバーグのおいしさは、香り、味、テクスチャー、特に「ジューシー感」と呼ばれる多汁性に左右される。一般家庭においてハンバーグは手作りされる場合も多く、調理方法の改良によるおいしさの向上が期待される。これまでに、低温スチーミング調理による食材の軟化や栄養素の保持などの有用性を報告してきた。本研究ではスチーミング処理を行うことによって、ハンバーグの食味をさらに向上することを目的に、検討を行った。
    【方法】ハンバーグの材料として、一般的に用いられる牛挽き肉(もも)を用いた。スチーミング調理の際は、100gの小判型に成型したハンバーグを用いた。条件は60℃、75℃でそれぞれ15分、30分、60分で行った。その後、室温に戻した後フライパンを用いて焼き、スチーミングせずに焼いたハンバーグと比較した。ハンバーグを焼く際は食品衛生マニュアルに従い、中心温度が75℃以上、1分間持続するように調整を行った。それぞれの試料について、栄養成分値、テクスチャー測定、官能評価から、食味特性を比較した。
    【結果及び考察】スチーミング処理後のハンバーグの内部温度は、60℃スチーミングで53℃、75℃スチーミングで67℃であった。スチーミングしたハンバーグは生に比べ、重量が増加し、75℃スチーミングで特に膨潤が見られた。スチーミング済みのハンバーグを焼くと、スチーミングせずに焼いたハンバーグに比べて、肉汁の流出が少なかったが、中心温度が75℃に到達するまで1分以上時間を要した。75℃で15分スーミング処理したハンバーグが柔らかく、ジューシー感で高い評価を得た。一方、60分スチーミングしたハンバーグは、硬くなりテクスチャーの評価が悪かった。以上のことから、低温スチーミングの温度及び時間が、ハンバーグの調理において食味に影響を及ぼすことが分かった。
  • 長谷川 愛, 鈴木 麻友美, 渡邉 佳子, 採田 雅子, 関口 めぐみ, 牧 亜紗子, 西島 基弘
    セッションID: 2D-a7
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    <目的> 市販の輸入穀類、種実類についてカビの汚染状況を調査し、検出したカビについてはマイコトキシン産生性の確認を行った。 また、フザリウムが産生する可能性があるゼアラレノンおよびフモニシンB1について次亜塩素酸水、強アルカリ性水、アルカリ水(調理用)によって分解できるかを検討した。
    <方法> カビ汚染状況に関しては、穀粒培養法及び希釈分散培養法で検出した。検出されたAspergillus flavus菌株についてはアフラトキシン産生を、Fusarium菌株については、デオキシニバレノール(DON)、ニバレノール(NIV)、ゼアラレノン(ZEN)産生をそれぞれ薄層クロマトグラフィーで検討した。産生が確認された試料は高速液体クロマトグラフィーで定性及び定量を行った。ゼアラレノンおよびフモニシンB1の分解については、それぞれ標準品について次亜塩素酸水、強アルカリ性電解水、アルカリ水(調理用)を加え、それぞれ30秒、2、4、6、10および15分間置いたものを高速液体クロマトグラフィーで経時的に定量した。
    <結果> ピスタチオ、ハトムギ、麦シリアル飲料は比較的カビの汚染率が高く、種類も多種多様であった。ハトムギでアフラトキシンB1が30ppb検出されたものがあった。コーングリッツから検出されたFusarium菌株からはDON,NIV,ZENいずれも検出されなかった。ゼアラレノンおよびフモニシンB1の分解は、次亜塩素酸水、強アルカリ性水、アルカリ水(調理用)いずれも減少した。
  • 牧 亜紗子, 工藤 蘭, 百瀬 和恵, 西島 基弘
    セッションID: 2D-a8
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】近年、市販おにぎりは様々な種類が見られるようになった。そこで、海産物を主とする混ぜおにぎりの微生物汚染に着目し、一般生菌、大腸菌群、黄色ブドウ球菌汚染状況を調査した。さらに、それらおにぎりが消費期限後に菌がどのような挙動を示すかについて調査した。
    【方法】 1) コンビニおにぎりの細菌汚染状況調査:主に海産物が入っている混ぜおにぎりを対象として一般生菌、大腸菌群、黄色ブドウ球菌を消費期限内のものと消費期限過ぎまで室温保存(約23℃)したものを検査した。 2) 惣菜店のおにぎり(駅構内、デパート)の細菌汚染状況調査:海産物が入っている混ぜおにぎりを対象とし、1)と同様に一般生菌、大腸菌群、黄色ブドウ球菌を購入直後のものと消費期限過ぎまで室温保存したものを検査した。
    【結果】 1) コンビニで購入したおにぎりの消費期限内のものでは4検体が一般生菌105CFU/g以上であった。消費期限過ぎ(8時間から40時間放置)まで室温保存(約23℃)した試料は菌数が増加し、ほとんどの検体が105CFU/g以上となった。黄色ブドウ球菌・大腸菌群は、いずれの検体からも検出されなかった。 2) 惣菜店のおにぎりでは期限内のもの18検体中、一般生菌105CFU/gを上回ったものは6検体、黄色ブドウ球菌の検出されたものは1検体、大腸菌群は102CFU/gを上回るものは見られなかった。消費期限過ぎ(10時間から17時間30分放置)まで室温保存(約23℃)した試料は菌数が増加し、ほとんどの検体が105から107CFU/g以上となった。
    期限内のおにぎり36検体を検査したが東京都の基準値に不適合となったものは11検体であった。
  • 逵 牧子, 田中 智子, 森内 安子, 森下 敏子, 杉本 智美, 武政 二郎
    セッションID: 2D-a9
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】学校の食品衛生実験室および調理実習室の実験台、流し台、まな板および包丁の細菌汚染状況ならびに実験室内の空中細菌数を調べた。また、調理実習用のまな板および包丁の煮沸法による殺菌効果を調べた。さらに、スタンプ法による各種器具器材の細菌汚染度チェックの有効性を検討した。
    【方法】1.食品衛生実験室および調理実習室の3つの実験台・流し台の2ヵ所を使用前および使用後(2回実施)の合計24検体からの生菌数および大腸菌群数を測定した。採取方法は拭き取り法(日研生物医学研・フキトリT10)とスタンプ法(栄研器材)で行なった。2.使用後の3つのまな板と包丁の煮沸後(100℃、1分)の生菌数を拭き取り法とスタンプ法で測定した。3.空中浮遊菌数測定は食品衛生実験室および調理実習室の2ヵ所で遠心衝突法(RCSエアーサンプラ_-_: 1分間吸引)と落下菌法(30分開放)で行った。4.拭き取り法による生菌数・大腸菌群数測定は食品衛生検査指針に準じた。
    【結果】1.実験台および流し台各12検体の使用後の生菌数が使用前より10倍以上に増加したのはそれぞれ2および6検体であった。2.食品衛生実験室および調理実習室の空中浮遊菌数は1?75個で、食品衛生実験室が調理実習室より多かった。3.まな板および包丁の消毒に煮沸法を推奨する。4.スタンプ法は各種器具・器材の細菌汚染度を簡単にチェックできることが明らかになった。
  • 柿山 章江, 安部 テル子
    セッションID: 2D-p1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    【目的】昨年度の本大会において、幼児期の調理保育のカリキュラムを策定するにあたり、1)季節の食材を使う、2)加工食品ではなく素材からの料理を心がける、3)収穫した農作物を使用する、4)調理過程における食品の匂いや形の変化に興味を持たせる、5)「食品素材」から「料理の出来上がり」までの一連の過程を体験させる、6)行事食を取り入れる、といった6つの基本方針を報告した。そこで、今回、幼児が食材や調理に興味を持つことを目的として感覚的に記憶に残るような五感を使って体験出来る調理保育カリキュラムを作成し、調理前に匂い当てゲーム・絵本・食物見本を使って食材、調理の由来を説明し、調理過程の中で味覚(食材自体の味を知る)、視覚(食材料が姿を変えていく姿を見る)、嗅覚(匂いをかぐ)、触覚(切る、剥く等)、聴覚(食材料の姿が変化する時の音を聞く)で体験する調理実習を行った。
    【方法】幼稚園年長児20名を対象として、2004年5月から2005年1月、月1回の頻度で計8回の調理実習を行った。また、調理実習後、教諭、家庭及び幼児に実践内容や食意識に関するアンケート調査を行った。
    【結果】年長児が材料の計量から仕上げまで全ての調理に関わることは可能であった。また、本調理実習の中で最も関心の高かった献立は、子供がクリスマスケーキで、教諭がサツマイモを使った料理であった。さらに、調理実習後の家庭において、子供が料理に参加する回数の増加、嫌いな食材の克服や食生活を見直すきっかけになったとの意見が聞かれた。
    【結論】幼児における調理保育は、カリキュラムの工夫により幼児期の調理に対する興味・関心を高め、食意識の向上を促す可能性が示唆された。
  • 中野 典子, 安藤 京子
    セッションID: 2D-p2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
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    目的
    2005年7月、食育基本法が施行され、子どもから高齢者まで食育への関心が高まる中で、人間形成に大きな影響を与えるといわれている乳幼児期に注目した。乳幼児を預かる施設側から見た食育の現状を調査し、今後取組むべき問題点を明らかにしたい。
    方法
    アンケート調査を実施した。実施期間は平成17年8_から_10月。対象は愛知、岐阜、三重に所在する乳幼児施設(保育園、幼稚園)。78施設より回答があり、回収率82%であった。
    結果
    1・食生活に不安を感じる子どもがいると答えた施設は87%で、偏食のほか に朝食の欠食、食事がお菓子など食習慣の問題、家族で食事をする事が少 ない孤食の問題があげられた。
    2・食育という言葉から施設として考えられる事柄としては、楽しく食べるこ と、食を通し健康を学ぶ、食べ物の大切さがあげられた。
    3・食育を始める時期としては、4から6歳が56%、0から3歳が31%と乳幼 児期が望ましく、主体的に取組む場所としては家庭が50%、保育園・幼 稚園が40%という結果となり家庭への働きかけが重要視されていた。
    アンケートの結果より食育は、乳幼児と関わるすべての人が統一見解を持って取組むことで、より効果的に実施できると考えられる。今後は家庭での食育につながる働きかけの方法を検討していきたい。
  • 久保田 恵, 寺本 あい
    セッションID: 2D-p3
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    目的:近年、アトピー性皮膚炎や気管支喘息などのアレルギー疾患を示す小児が増加しており、保育所給食における食物アレルギー疾患児への対応は重要な課題となってきている。しかし、これまでの保育所給食におけるアレルギー疾患児への対応に関する調査は、発症率や原因食品、除去食療法実施率などについての報告に限られている。現在、保育所にでは食物アレルギー疾患児の昼食は自宅から持参するケースが多いが、今後は給食提供の要望が高まることが予想される。そこで、本研究は乳幼児の食物アレルギー疾患の原因食品として頻度の高い卵と牛乳について、実際にアレルギー対応の代替食を調理し、その労作時間及び食材料費分析をおこない、アレルギー対応食の実施に伴う問題点を検討した。
    方法:岡山県内の保育所で実施されている給食献立を参考に3タイプのモデル献立A、B、Cを作成し、卵・牛乳除去の代替献立を展開した。この献立を用い、アレルギー対応あり・なしの場合について、調理担当者2名により50食規模で2回ずつ大量調理を行ない、調理作業時間及び食材料費の変動を検討した。50食の内訳は離乳後期10名(うちアレルギー児2名)、1~2才児20名(うちアレルギー児4名)、3~5才児20名(うちアレルギー児4名)とした。
    結果:各献立により労作時間及び食材料費の負担増減の程度は異なった。「アレルギー対応なし」を対照とし「アレルギー対応あり」と比較したところ、すべてを手づくりで代替献立を実施すると食材料費は-0.5~6%の増加、労作時間は6~44%の増加となった。また、一部市販アレルギー対応食品を使用すると、食材料費は9~13%の増加、労作時間は0~31%の増加となった。
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