日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成26年度(一社)日本調理科学会大会
選択された号の論文の211件中1~50を表示しています
口頭ー発表
  • 伊藤 典子, 佐々木 久美, 藤江 未沙, 山坂 友貴子, 上田 恭己
    セッションID: 1A-a1
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/29
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    【目的】本校の栄養士科は、調理師養成・製菓衛生師養成の実績を背景に「調理ができる栄養士」の養成を2014年4月にスタートした。藤本らの報告(奈良佐保短期大学研究紀要14、55-61、2006)によると、近年の栄養士としての就職先は67%が給食受託会社であり、福祉施設や病院へ派遣されるケースが多くなってきており、調理を担当している割合が高い。また、本校在学生が就職を希望する島根県・鳥取県においても、ハローワークで開示されている栄養士の求人情報の多くが給食受託会社や老人福祉・介護事業所、児童福祉事業所であった。ところで、これまで栄養士教育について行われている研究の多くが、同職種を対象とした報告である。栄養士(特に管理栄養士)はひとたび就職すると、同職種間で仕事をすることは少なく、多職種他業種の現場で仕事を進めていかなくてはならない。そこで、本研究では栄養士が現場で協力して仕事を進める多職種の方を対象として、現場が求める栄養士像の調査を目的として実施した。
    【方法】研究に対して同意が得られた香川県にある社会福祉法人守里会の職員を対象に、質問票を用いて留置調査法により行った。
    【結果】調理員(調理師含む)、栄養士(管理栄養士含む)、管理職からの回答より、調理ができる栄養士のニーズは88%あった。また、現場の多職種が栄養士に求めるものとしては、献立作成能力、嚥下・食事摂取量に問題を抱える利用者に対するケア等が挙げられた。
  • 近藤(比江森) 美樹, 四宮 彩, 我如古  菜月
    セッションID: 1A-a2
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/29
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    【目的】管理栄養士養成課程における調理学実習は、給食経営管理などの基盤となる科目である。近年、調理の知識・技術の低下が問題視されており、調理学実習の内容を精査して限られた時間で効果の高い授業を行う必要がある。本研究では、現在の実習内容における学習効果を検討する目的で、実習の受講前後に基礎的な調理事項に関するアンケート調査を実施し、昨年度は、飯物および汁物の結果について報告した。今回は、蒸し物・焼き物・揚げ物・和え物・酢の物・寄せ物・練り物の学習効果を検討した。
    【方法】研究に同意が得られた平成22・23年度O大学の栄養学科入学生78名を対象に、調理学実習受講前、実習I受講後、実習II受講後の計3回、アンケート調査を行った。調査紙は、料理の認知と調理方法の理解に関する質問からなり、調理方法の理解に関する質問は、「よく理解している」、「少し理解している」、「知らない」で回答を求めた。解析は、SPSSを用いてχ2検定もしくはウイルコクソンの順位和検定を行った。
    【結果および考察】蒸し物のうち、茶碗蒸しの認知度は、実習前と比べてⅠ受講後に有意に増加し、II受講後でも同水準であった(P<0.001)。一方、火加減の理解度は、茶碗蒸しを実習していないII受講後に低下した(P<0.001)。揚げ物の天ぷらと練り物のきんとんの認知度は、Ⅰ受講後に増加し(P<0.001)、これらの効果は経験によるものと考えられた。焼き物の松笠焼き、和え物の木の芽和え、酢の物の黄身酢の認知度は、受講前、Ⅰ受講後、さらにII受講後に段階的に上がった(P<0.001, P<0.01, P<0.025)。寄せ物の理解度も段階的に向上した(P<0.001)。これらの結果から、料理の認知は単回の経験で達成されているが、調理方法の理解の向上には反復経験が必要であることが示唆された。
  • 我如古 菜月, 四宮 彩, 近藤(比江森) 美樹
    セッションID: 1A-a3
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/29
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    【目的】調理学実習は、管理栄養士養成施設において調理技術習得や献立作成力を養う科目のひとつであるが、学生の調理機会の減少等により、調理技術や調理学的基礎知識の低迷が懸念されている。演者らは、学生の現状把握と基礎調理の教育効果について検討することを目的としてアンケート調査を行い、昨年度の本大会にて一部を報告した。本発表では、卵や魚介類、肉類に関する結果について報告する。
    【方法】対象は、O大学の栄養学科に平成22年・23年度入学生のうち、調理学実習I、IIを全て受講した78名である。質問項目として、卵の調理特性等の理解や認知及び魚介類のさばき方、肉類の調理方法等の認知に関する項目とし、理解度を尋ねる項目は「よく理解している」「少し理解している」、「知らない」で回答を求めた。解析は、SPSSを用いてχ2検定もしくはウイルスコンの順位和検定を行った。
    【結果】「卵の調理特性について理解しているもの」の項目全てにおいて、受講前よりも受講後で理解している者の割合が有意に高くなった。特に「乳化性」や「起泡性」については、段階的に高くなった(P<0.01)。魚のさばき方について質問したところ、「理解している」と回答した者の割合が受講前と実習II受講後で増加した(P<0.01)。三枚おろしや大名おろしは受講前後で半数以上が理解していると回答したが、腹開きや背開きは理解している者の割合が半数以下であった。これらは実習中に取り上げた回数が少なかったために理解度が定着しにくかったと推察された。「ハンバーグの副材料の効果について理解しているか」は、受講前は半数以上が「知らない」と回答していたが、受講後には約5割が「よく理解している」と回答した。
  • 磯部 由香, 平島 円, 堀 光代, 長野 宏子
    セッションID: 1A-a4
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/29
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    【目的】調理の重要な操作として「切り方」が挙げられる。本研究では,大学の調理実習で「切り方」の扱うための知見を得ることを目的とし,大学生と専門学校新入生の「切り方」の知識とその操作を行う自信度について分析し,学生の調理技術について検討した。
    【方法】2010~2013年に大学・短大・専門学校に入学した学生1,149名に対し,20種類の「切り方」の知識とその自信度についてアンケート調査した。それぞれの項目について「できる」「ほぼできる」「少しできる」「たぶんできる」「できない」「知らない」から選択回答させた。その結果から20種類の切り方をクラスター分析により分類した。
    【結果】学生が「知っている」切り方は「リンゴの皮むき」「みじん切り」「ジャガイモの皮むき」の順で多かった。しかし,学生が「できる」と回答した,すなわち自信度の高い切り方は「輪切り」「みじん切り」「いちょう切り」の順だった。「皮むき」については自信度が低かった。学生の自信度により切り方を分類したところ,自信度の高い切り方が7種類,個人差の大きい切り方5種類,自信度の低い切り方8種類と3つに分類された。自信度の高い切り方は高等学校までの教科書に多く記載されている切り方で,自信度の低い切り方は教科書にほとんど記載されていなかった。したがって,学生の調理技術を高めるためには経験することが重要であり,大学の授業で扱う必要があるとわかった。また,大学で調理実習を行う予定の学生と行わない学生に分けて切り方を自信度別に分類したが,調理実習を行う学生のほうが自信度の高い切り方が少なかった。実習を行う予定の学生のほうが調理の難しさを理解しているのではないかと推察された。
  • 髙橋 秀子
    セッションID: 1A-a5
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/29
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    【目的】岩手県一関市千厩町奥玉地域では,昭和40年代まで,冬の農閑期に、10日間位の期間で,集落の先達者が講師となって若い人を対象に,「道場」と称する講習会を開催していた。道場の講習内容には,謡(うたい)・算盤(そろばん)・料理・躾(しつけ)などがあった。奥玉地域のご祝儀(結婚式)は,謡による進行で盛大に行われていた。そのため,地域の若者たちは,謡などの技能やご祝儀に関する知識を身につけることが身だしなみとして要求された。道場は、若者たちにとって,地域構成員として身につけるべき教養を習得する場であったとされる。そこで,このような道場が,一関市奥玉以外の地域でも開催されていたのか調べたので報告する。
    【方法】一関市内の歴史と文化をまとめた文献と印刷物を収集し,道場に関する記載の有無を調べた。また,道場のテキストを見つけることを試みた。
    【結果】「山目史」「真滝村誌」「一関市史」の3出版物,一関市内の中学校の生徒が中心となって編集した郷土史「ふるさとの四季」の1出版物,躾道場のテキストと思われる「目出度節躾道場昭和二十六年旧正月吉日」「昭和三十年頃の婚姻習俗について」の2印刷物複写の合計6点の関係資料を収集した。これらの資料には,一関市内で道場が開催されていたことが記載されていた。また,昭和40年代以前のご祝儀の進行がどのようなものであったか記載されていた。そして,ご祝儀の場において謡と料理は必ず必要とされるものであり,躾という言葉は,謡の技能やご祝儀の進行を行なうための口上などの教養を示すものとされていた。
  • 七里 あや子, 井上 瑞穂, 久保 加織
    セッションID: 1B-a1
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/29
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    【目的】漬物は、食品の長期保存と嗜好性の向上を目的に先人が工夫を重ねたものであり、地域に伝承される特有の漬物も多く、日本の食文化の一端を担ってきた。野菜の漬物は各種機能性と食物繊維の供給源として期待される一方で、塩分摂取につながる食品でもある。本研究では、日本の漬物文化継承に向けて、現代の若者の漬物の摂取状況を把握し、継承への方策を探るために調査を行った。
    【方法】平成23年11月に滋賀大学学生を対象に無記名自記式の質問紙調査を行った。有効回収票(率)は219票(92.4%)であった。嗜好調査は、45名の学生をパネルとして、滋賀県で伝承されている菜の花の黄金漬けと新漬けに対して実施した。
    【結果】漬物を全く食べないは2.3%、好きな漬物はないは5.0%と低く、漬物は身近な食品であると考えられた。漬物を食べるときに塩分量を気にしてないは79.0%であった。また、実家での漬物の摂食頻度は週に数回が42.0%、下宿あるいは寮生の自宅での漬物の摂食頻度は月に数回が8.7%、漬物を食べたいと思う頻度は週に一回が39.4%と最も多く、食事における漬物の存在は大きいと考えられた。小学生の頃に比べ、漬物の摂取量はあまり変わらないと回答するものが多かったが、漬物を漬ける家庭は小学生の頃が44.3%であったのが、現在は38.3%と減少していた。好きな漬物として多くあがったものも、よく食べる漬物も、きゅうり浅漬け、キムチ、たくあんであった。嗜好調査の結果、熟成期間が半年で発酵臭の強い菜の花黄金漬けより熟成期間が1週間の新漬けの方が味と総合評価で好まれたことから、現在の若者は発酵の程度の低い漬物を好む傾向が認められた。 
  • 真部 真里子, 松宮 愛, 落合 晴香, 徳田 和香, 佐藤 常雄
    セッションID: 1B-a2
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/29
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    【目的】塩分の摂取抑制の観点から、塩分濃度の高い味噌・醤油の使用を控えるように指導されてきた。しかし近年、醤油のにおいが塩味を想起することが報告された。そこで本研究では食品の喫食を想定し、後鼻腔経由の醤油のにおいの効果について検討した。
    【方法】T字管の左端を試料Aの入ったインピンジャーに、下端を試料Bの入ったカップに連結し、右端から吸い込むと、試料Aのにおいと試料Bを同時に口腔内に導入できる装置を作製した。この装置を用いて、20歳代女性(73名)を被験者とし、2点比較法による官能評価を実施した。試料Aには、濃口醤油(以下、濃口)希釈液、さしみ醤油希釈液、濃口100℃加熱液、濃口200℃(1分50秒)加熱残渣を用いた。試料Bを0.62-1.00%NaCl溶液として被験者に提供し、においのない0.80%NaCl溶液と飲み比べ、「塩味が強いもの」、「塩味が好ましいもの」を回答してもらった。また、各醤油試料のにおいは、HS-SPME法にて抽出し、GC-O分析を行った。
    【結果】プロビット法で解析した結果、濃口希釈液にやや塩味増強傾向が認められた以外、他の醤油試料の後鼻腔経由のにおいには、塩味増強効果は認められなかった。しかし、いずれの試料のにおいでも、高塩分濃度での好ましさを上昇させる傾向にあり、特に濃口100℃加熱液、濃口200℃加熱残渣のにおいでは塩分濃度に関わらず、塩味の好ましさを有意に上昇させた。加熱した醤油のにおいは、塩味の嗜好性を高めると考えられた。GC-O分析結果から、濃口醤油を加熱することによって消失する香気成分と増加する香気成分が認められたことから、これらの成分変化が嗜好性の向上と関係していると推察した。
  • 髙山 裕子
    セッションID: 1B-a3
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/29
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    【目的】生活習慣病予防の観点から塩分を控えた食事が重要視されており,食嗜好を考慮した減塩が必要とされている。そこで,食塩摂取に関連する食嗜好と食習慣を明らかにすることを目的とし,若い女性を対象として調査を行った。
    【方法】対象は,18歳~29歳の若年女性58人であった。BDHQ質問票により,習慣的な食品摂取量,栄養素摂取量といくつかの食習慣を把握し,食習慣については,補足の質問紙調査を行った。調査項目は,食行動(朝食,主食・主菜・副菜の摂取),栄養成分表示の利用,食べる速さ,食事の時刻,共食,空腹感,食事内容(献立構成:主食,主菜,副菜),食事量,温度,調理法であった。嗜好状況の把握には,おいしさ,食事の満足感により評価した。家庭で作られた料理について,塩分濃度を東亜ディーケーケー株式会社製SAT500型を用いて分析した。塩味の嗜好は,官能検査により,みそ汁,コンソメスープについて,濃度の違いによる感じ方(薄い・濃い)と,好み(好ましい・好ましくない)を調べた。これらの項目についての関連性を,各群間の関連はFriedman検定を行い,有意性が認められた場合,Wilcoxonの符号付き順位検定を用いてBonferroniの修正による多重比較を行った。
    【結果】BDHQ質問票による習慣的な1日食塩摂取量は,11.6gであった。家庭のみそ汁の塩分濃度の平均値は,0.84%で標準的な範囲であり,1.2%以上の高濃度のみそ汁はなかった。1日の食塩摂取量と汁物の塩分濃度との間に関連はみられなかった。官能検査による塩味に関する食嗜好は,洋風料理の摂取,調理法,献立構成との間に関連がみられた。
  • 角田 美紀子, 野村 希代子, 淺井 智子, 杉山 寿美
    セッションID: 1B-a4
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/29
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    【目的】和食の美味しさは汁や菜を白飯と組み合わせることで成立し,汁は欠かせない。一方,生活習慣病の増加により食事全体,特に汁の塩分量の減少が求められている。しかし,飯と組み合わせた時の汁の塩味の嗜好性,すなわち食事の美味しさを保つ塩味の範囲に関する検討はなく,実際の食事における「減塩」の許容範囲は明らかでない。我々は,これまでに汁と飯の食べ方や汁の具により,汁物の塩味の嗜好性が影響されることを報告している。本報告では,レモン外皮を加えた汁物の塩味の嗜好性について報告する。【方法】官能評価は,レモン外皮を加えた塩分濃度0.4-0.9%のみそ汁,すまし汁について行った。汁に白飯あるいは桜飯(0.6%塩分)を組み合わせ,「汁の次に飯を食す(汁→飯)」「飯の次に汁を食す(飯→汁)」の場合について,汁物として最も好ましい塩分濃度,汁物として許容できる塩分濃度を選択させた。【結果】レモン外皮を加えた汁の最も好ましい塩分濃度は,レモン外皮を含まない場合と比較して,みそ汁では低濃度側に,すまし汁では高濃度側に移行した。また,すまし汁では,幅広い塩分濃度の汁が許容された。飯と組み合わせて食べた場合は,すまし汁と白飯の組み合わせを除き,最も好ましい塩分濃度は低濃度側にシフトし,低濃度(0.5-0.6%)の汁を許容できるとした者が増加した。これらのことから,レモン外皮を加えた汁物では,汁単独では低い塩分濃度の汁の嗜好性が低くなる場合がある一方で,飯と組み合わせて食べた場合では低い塩分濃度の汁物が許容され,実際の食事における「減塩」へのレモン外皮の活用の可能性が示唆された。
  • 船石 由香, 仲野 由香, 佐古 美奈子, 岩倉 里恵, 岡本 洋子
    セッションID: 1B-a5
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/29
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    【目的】本報告では,“味”に影響を及ぼす因子のうちで,ハイドロコロイド,とくに寒天を添加したときの甘味の感じ方について調べた。代表的な甘味物質としてスクロースを用いて,寒天濃度が増すとともに,我々の感じる甘味強度がどのように変化するのか検討することを目的とした。さらに,スクロースゾル試料およびゲル試料について,粘度と破断特性を測定し,甘味強度との関係を明らかにした。
    【方法】寒天濃度0.025,0.05,0.10,0.15,0.20,0.30,0.40,0.50,0.60%の9種類,スクロース濃度3,10,30%の3種類の計27種類のゾルおよびゲルを試料とした。スクロース濃度3,10,30%溶液を基準液とした。官能評価の手法(-3~+3の両極7点評点法)によって甘味強度の評価を行うとともに,ゾル試料についてはTV-22形粘度計(東機産業)を用いて粘性を測定した。ゲル試料の破断特性の測定には,クリープメータ(RE2-3305B:株式会社山電製)を用いた。
    【結果】ゾル5試料のうち,「3%スクロース」では,寒天濃度0.025%,0.05%の2試料において,「スクロース溶液」に比べ甘味を強く感じた。「10%スクロース」でも,寒天濃度0.025%,0.05%の2試料おいて,「溶液」に比べ甘味を強く感じた。「30%スクロース」では,寒天濃度0.025%の1試料において,「溶液」に比べ甘味を強く感じた。ゲル4試料では,いずれの場合にも「溶液」に比べ甘味を弱く感じた。ゾルにおける甘味強度と粘度の関係では,低粘度の試料を除いて,粘性が増加するほど甘味が「より弱く」感じられることが示された。
  • 土川 瀬莉奈, 翠川 美穂, 林 徹, 奥西 智哉
    セッションID: 1C-a1
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/29
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    【目的】米は、古くから日本人の主食として馴染みがあり、ごはんとして食べることは日常である。パンの材料のうち、小麦粉の一部をごはんに置き換えた「ごはんパン」は、ふくらみが良く、甘みがあり、しっとり・もちもちしているパンであることが知られている(奥西、食科工、2009)。柔らかく粘る、いわゆる良食味米の米飯がごはんパンに適した米品種であることも明らかにしている(Iwashita et al.、FSTR、2011)。 【方法】平成25年茨城県産コシヒカリ(精米歩合90.6~90.7%)を用い1.5倍加水炊飯した米飯を用い、ホームベーカリーにて山型食パンを作成した。パンの基本配合のうち小麦粉の一部を炊飯米で5~40%置換したパンを5~40%ごはんパンとした。得られたパンを1時間冷却したのち比容積を測定した。水分はハロゲン水分計により測定した。パン硬さはテンシプレッサーによる円筒プランジャー25%貫入時の反発応力とした。パンクラムを約1gを25mLの水に分散して得られた抽出液を用いてFキットによるグルコース、フルクトース、マルトースおよびスクロースの含量を測定した。 【結果】ごはんパンは15-20%付近で膨らみの最大値をもっていた。焼成1日後のパン硬さはこの割合付近で小さい値をとった。焼成3日後では10%以上のごはん率のものは比較的軟らかさを維持していた。水分はごはん率の増加とともに減少する傾向にあった。ごはん率の増加に伴いマルトース含量が増加傾向にあるので、水分蒸発が抑えられた結果、見かけの水分率が減少したと推察される。既報におけるごはん率としっとり感の関係もマルトース含量がその要因であると考えられる。
  • 伊藤 聖子, 芦澤 芽衣, 松永 夏希, 新井 映子
    セッションID: 1C-a2
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/29
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    【目的】米粉パンは小麦粉パンよりも老化が速いことが課題となっており、うるち米粉のアミロース含有量と米粉パンの硬化速度との間に相関があると報告されている。もち米はアミロペクチンのみから成ることから、米粉のアミロース含有量はもち米粉の置換によって調節可能である。そこで、本研究では、糊化度の異なるもち米粉を用い、もち米粉置換による米粉パンの製パン性と保存性への影響を明らかにすることを目的とした。
    【方法】市販のうるち米粉及びもち米粉を試料とし、もち米粉は生粉(もち生粉)と糊化粉(寒梅粉)を用いた。うるち米粉100%のグルテン添加米粉パンをコントロールとし、うるち米粉の10、20、30%を各もち米粉と置換して米粉パンを調製した。各パンの比容積と焼成1日及び3日後のテクスチャーを測定した。また、焼成3日後のパンを試料とし、順位法による官能評価を行った。
    【結果】もち生粉置換パンは、いずれもコントロールと同等の比容積であった。寒梅粉10%置換パンは比容積がコントロールより増加したが、20%以上は置換率の増加に伴い著しく低下した。焼成1日後のクラムの硬さは、もち生粉置換パンはいずれもコントロールより有意に低い値を示し、寒梅粉10%置換パンもコントロールより低値であったが、20%以上置換すると高値になる傾向があった。焼成3日後のもち生粉置換パンのクラムの硬さは、コントロールと同程度に硬くなったのに対し、寒梅粉置換パンはいずれも有意に低値となり凝集性も保持され、寒梅粉置換による米粉パンの老化遅延効果が示された。コントロールともち生粉及び寒梅粉置換パンの官能評価では、寒梅粉置換パンが有意に好まれ、しっとりとふわふわして甘いパンと評価された。
  • 楠瀬 千春, 松中 仁, 中村 和弘, 藤田 雅也
    セッションID: 1C-a3
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/29
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】6倍体小麦では3つのWx座(Wx-A1,Wx-B1,Wx-D1)がコードするWxタンパク質がアミロース合成を担っている。本研究では,これら3つのWx遺伝子を変異させた3タイプの準同質遺伝子系統および原品種を用いて小麦粉アミロース含量の差異が製パン性に及ぼす影響を検討した。
    【方法】パン用小麦「ユメシホウ」のWx遺伝子を変異させたWx-B1変異型,Wx-A1/B1変異型,Wx-A1/B1/D1変異型(以下Wx)および原品種を供試した。 (独)九州沖縄農研センター圃場で収穫した玄麦をビューラーテストミルで製粉した。得られた60%粉をについてタンパク質含量(rapid-N),糊化特性(アミログラフ),生地物性(ファリノグラフ)を測定した。製パン試験は,一次発酵までホームベーカリー(National製SD-BT102)で調製後130gに分割し,200℃で25分間焼成した。パンはレオメータ(山電(株)製)で破断試験を行った。生地の発酵過程については,生地10gをシリンダーに入れて40℃の恒温内で発酵させ,生地の高さと漏えいしたガス量を経時的に測定した。
    【結果】Wx粉の製パン性は低く,原品種パンとは大きく異なった。Wx-B1変異型,Wx-A1/B1変異型はその中間的性質を示した。ファリノグラフでは,Wx生地の安定度が最も低かった。発酵中のWx生地は生地の膨化が小さく,ガス漏えい量が最も多かった。アミログラフではWxの糊化開始温度が低く,ブレークダウンが最大であった。Wxパンは,両側が大きく収縮した形状となり,Wxパンクラムの破断時の最大荷重は最小であった。顕微鏡観察では,Wxのパン組織中のデンプン粒子のみが崩壊していた。Wxパンは官能検査より独特の粘質なクラムを持つことが示された。以上の結果よりデンプンのアミロース含量の差異が,発酵中の膨化,焼成後のパン性状,食感に大きく影響を及ぼすことが認められた。
  • 村田 絵美, 志方 万莉奈, 岡田 真実, 佐橋 磨衣子, 横山 実香, 小西 洋太郎
    セッションID: 1C-a4
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/29
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】本研究は,玄米の発芽過程で生じる内因性酵素や機能性成分を利用し,製パン性(品質と機能性)を向上させる最適条件について検討した.
    【方法】強力粉100%パン(コントロール)および10%発芽玄米粉(2012年産コシヒカリを0,1,2,5日間発芽)を添加した計5種類のパンを,Panasonic SD-BMS104ホームベーカリー(約2時間のShort Course, SCおよび4時間のLong Course, LC)で焼成した.パン材料,発酵生地,焼成後のパンについて,還元糖量(BCA法),総遊離アミノ酸量(TNBS法),フィチン酸量(Wade法),GABA量(酵素法)を測定した.またパンのクラムについては卓上型物性測定機TPU-2CLを用いて硬さと凝集性を測定した.
    【結果】(1)発芽玄米の還元糖量は発芽2日目までは減少し,3日目以降は増加した.総遊離アミノ酸量とGABA量は,発芽日数を長いほど増加する傾向にあった.フィチン酸量は発芽3日目までは増加したが,その後減少した.(2)製パン工程において,還元糖量,総遊離アミノ酸量,GABA量はいずれも,発酵生地の段階で有意に増加し,パン焼成により減少した(しかし材料中の含量よりは高い).フィチン酸量は材料,発酵生地,パンの順に減少した.(3)SC, LCにかかわらず,焼成後のパンの比容積はコントロールと差はなかった(4~5 ml/g).SC, LCにかかわらず,発芽日数の長い発芽玄米を使ったパンほど,柔らかくなる傾向にあり,5日発芽パンが最も柔らかかった.発芽玄米パンの凝集性はいずれもコントロールよりも低かったが,発芽玄米パン同士で比較すると1,2日発芽玄米パンにおいて高かった.
  • 山内 知子, 阪野 朋子, 小出 あつみ, 間宮 貴代子, 松本 貴志子, 勝崎 裕隆, 今井 邦雄
    セッションID: 1C-a5
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/29
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】愛知の地元野菜であるアシタバに着目し,生活習慣病予防を目指した機能性パンの開発を試みた。試料のアシタバの構成成分の分析と粉末アシタバ置換量が製パンの機能性亢進に与える効果について,製パン中のポリフェノール量及び抗酸化活性の変化を明らかにした。
    【方法】】アシタバは,2012年11月に稲沢市の栽培農家から購入し,凍結乾燥(-80℃)し粉末(250μm)にした。強力粉重量400gの内、1%(4g)、3%(12g)、5%(20g)をアシタバ乾燥粉末で置換してパンを作成し、試料とした。対照としてアシタバ無置換パンを作成した。パンの材料配合は置換したアシタバ以外は、使用したホームベーカリーに示される方法で焼成した。アシタバ成分の構造はLC-MSとNMRで分析し,ポリフェノール量はFolin Denis法,抗酸化活性はDPPHラジカル捕捉活性測定法を用いて測定した。データは多重比較法によりTukey-Kramer法で解析し,統計的有意水準は1%とした。
    【結果】成分分析の結果,今回実験に使用したアシタバの主要成分の一つがChlorogenic acidであることを明らかにでき, Quercetin やkaempferol の配糖体が含まれていることも示唆できた。アシタバ置換パンにおいて,ポリフェノール量・DPPHラジカル捕捉活性能は対照パンと比較して,両者ともにアシタバの置換量増加に伴い有意(p<0.01)に増加する傾向を認めた。日常的に食するパンの強力粉の一部をアシタバに置換することにより、効率的に機能性成分を摂取できる可能性が示唆された。今後,より生理活性の高まるアシタバを用いた調理・加工法について検討していきたい。
  • 上野 真理, 鈴木 麻希, 渡辺 雪乃, 冨田 美鈴, 杉山 寿美
    セッションID: 1D-a1
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/29
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    【目的】フライ調理は外部化し,家庭内で揚げ加熱を行って直ちに食することは少なくなっている。そこで,揚げ加熱前の冷凍過程,揚げ加熱後の保存過程がフライの嗜好性に及ぼす影響を把握することを目的とし,バッター配合のテクスチャーへの影響を検討した。
    【方法】バッターは,小麦粉:水=1:2とした(コントロール)。また,粉重量の30%をリン酸架橋澱粉(タピオカ,とうもろこし,小麦澱粉),ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉(タピオカ澱粉)に置換したものも調製した。バッターに舌平目20gを浸し,パン粉をまぶす作業を2度繰り返した。衣づけした試料の一部は,-20℃で一晩冷凍した。これらは中心温度が75℃となるよう180℃で加熱した。静的粘弾性は,テクスチャーアナライザーEZ-S (島津,φ5mm)を用いて,硬さ,破断エネルギーを測定した。官能評価は,管理栄養士養成課程の学生をパネルとした。衣の観察は走査型電子顕微鏡(JSM-5800LM,JOEL)で行った。
    【結果】静的粘弾性測定:加熱直後の衣の硬さ,破断エネルギーは,コントロールと澱粉バッターに差は認められなかった。4時間保存後は,いずれのバッターでも,硬さ,破断エネルギーが有意に増加し,特に澱粉バッターで顕著であった。冷凍試料でもほぼ同様であった。官能検査:加熱直後はコントロールとタピオカ澱粉で歯切れ,脆さに有意な差は認められないものの,4時間保存後にはコントロールの歯切れ,脆さが著しく低下し,衣の硬さで有意な差が認められた。冷凍試料では,有意ではないもののコントロールの歯切れが悪く,硬いと評価された。SEM:冷凍の有無にかかわらず,コントロール,タピオカともに大きな凸凹は認められるものの,多孔性の構造は認められなかった。
  • 廣兼 希美, 鈴木 麻希, 渡辺 雪乃, 冨田 美鈴, 杉山 寿美
    セッションID: 1D-a2
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/29
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    【目的】フライにおいて,衣のテクスチャーは嗜好性決定の主要因である。一方,フライ調理の外部化は著しく,家庭内で揚げ加熱を行って直ちに食することは少なくなっている。本研究では,フライの加熱過程での衣の重量,体積,水分量変化と,加熱前の冷凍過程,揚げ加熱後の保存過程がこれらへ及ぼす影響について検討した。
    【方法】バッターは,小麦粉:水=1:2とした(コントロール)。また,粉重量の30%をリン酸架橋澱粉(タピオカ,とうもろこし,小麦),ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉(タピオカ)に置換したものも調製した。バッターに豚ヒレ肉30g(4.0cm×4.0cm×1.8cm)あるいは舌平目20g(4.3cm×4.3cm×1.2cm)を浸し,パン粉をまぶす作業を1度あるいは2度行い,中心温度が75℃となるよう180℃で加熱した。フライの体積は菜種法で,水分は天秤式水分計(ザルトリウス)を用いて食材(肉,魚)と衣を分けて測定した(135℃)。
    【結果】重量:加熱により,いずれのバッター配合でも,食材(肉,魚)の重量が減少し,衣の重量が増加,全体重量は減少した。4時間保存による食材および衣の重量変化は小さかった。冷凍試料でもほぼ同様の結果であったが,加熱による食材の重量減少,衣の重量増加は顕著であった。体積:加熱による体積増加は,冷凍試料で顕著であった。水分量:保存による水分量変化は,食材(肉,魚),衣ともにわずかであり,冷凍試料でも同様の結果であった(衣の水分量は30-40%であった)。まとめ:食材から衣への水分移行は,主に加熱中に生じていると考えられた。
  • 中平 真由巳, 安藤 真美, 伊藤 知子, 今義 潤, 江口 智美, 久保 加織, 高村 仁知, 露口 小百合, 原 知子, 水野 千恵, ...
    セッションID: 1D-a3
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/29
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    【目的】近年、簡便な揚げ調理として、少量の油で揚げる「シャロウフライ」が注目されている。前回、「シャロウフライ」は通常の揚げ調理に比べて、官能評価が低いことを報告した。しかし、これは官能評価に影響を及ぼす要因である脱水率が統一されていない条件下であった。そこで今回は、脱水率を統一して「シャロウフライ」の再評価を実施した。
    【方法】試料は豚カツ(業務用冷凍豚一口カツ)、揚げ油はキャノーラ油を用いた。油量は、通常の揚げ調理である揚げ種の厚さの2倍の深さ(D)、厚さの1倍(S1)、および厚さの1/2倍(S1/2)とした。温度調節付ガスコンロを用いて180℃で揚げ調理を行い、揚げ種の中心温度と油温の変化を測定した。揚げ油の物理化学的性状値として、酸価、カルボニル価、粘度、極性化合物量、および色を測定した。揚げ種について脱水率を算出し、分科会のメンバーをパネル(n=18)として官能評価を評点法(外観、油臭さ、におい、味、揚がり具合、テクスチャー、および総合)により実施した。
    【結果】通常調理(D、揚げ時間5分)と同じ脱水率を得るために、S1は6分、S1/2は8分を要した。官能評価の評点(外観、におい、揚がり具合、テクスチャーおよび総合)において、S1とS1/2は揚げ時間の延長により、有意に高い評価が得られた。揚げ油の化学的性状値は、カルボニル価、極性化合物量、および色においてS1/2では揚げ時間の延長とともに上昇した。以上の結果から、シャロウフライは的確な揚げ時間の延長と揚げ作業の継続により、Dと同等の風味評価を確保できることが明らかとなった。一方、シャロウフライでは、使用油の劣化は大で、油の劣化に繋がることが明確になった。
  • 大野 智子, 伊藤 萌, 佐々木 玲
    セッションID: 1D-a4
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/29
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    【目的】ライフスタイルの変化、多機能調理家電の普及により、我々の食生活は多様化が進んでいる。同時に、嚥下機能が低下している高齢者用介護食の調理操作における簡便化も求められている。本研究では、加熱方法の異なるプリンの物性および食味を評価し、簡便な調理操作による介護食への適用について検討することを目的とした。
    【方法】材料は、牛乳、鶏卵、上白糖、バニラエッセンスとし、オーブンレンジ、電子レンジ、ガス蒸し器、電気蒸し器による加熱調理操作にて調製したプリンを試料とした。物性は、試料を直径6.8cm、高さ4cmの軽量強化磁器に35mm充填し、万能試験機にて、直径20mm、高さ40mmの樹脂製のプランジャーを用い、測定速度10mm/sec、クリアランス10mmで2回圧縮測定した。得られた記録曲線から硬さ、付着性、凝集性を算出した。官能評価は、20代の女子学生34名をパネルとし、外観、色、硬さ、べたつき、飲み込みやすさ、口中でのばらつき、口中での残留感、おいしさ、総合評価の9項目による評点法にて実施した。試料温度は、物性測定:10±2℃、20±2℃、官能評価:10±2℃とした。
    【結果】ユニバーサルデザインフード区分の硬さと比較したところ、区分1「容易にかめる」、区分2「歯ぐきでつぶせる」、区分3「舌でつぶせる」に4試料とも該当した。電子レンジを使用した試料が、官能評価においても「良い」と評価を受けたことから、調理時間の短縮が期待できる介護食用プリンの調製が可能であることが示唆された。
  • 淺井 智子, 杉山 寿美
    セッションID: 1D-a5
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/29
    会議録・要旨集 フリー
    目的乳化特性を有する卵は油脂を配合しやすく,その加熱ゲルは特有のテクスチャーとなる。我々は,これまでに,乳脂肪クリームを配合したオムレツは脆弱な,菜種油を配合したオムレツはしなるような硬さ(軟らかさ)テクスチャーとなることを確認している。本報告では,これら特有のテクスチャーへの配合油脂の影響について,冷却遠心分離による脂質分画等によって検討した。
    方法オムレツは,卵液(卵黄35gと卵白65g)に,「乳脂肪クリーム30ml」,「菜種油18ml+水12ml」,「水30ml」のいずれかを加え,200℃で攪拌加熱して調製した。分析には,加熱前(10℃)および加熱過程(65℃,75℃),加熱後(80℃)の試料を用いた。試料をストレーナーに通した後,冷却遠心分離による脂質分画を行った。得られた3画分からBligh&Dyer法で脂質抽出を行い,脂肪量,リン脂質中リン量を測定した。また,SDS-PAGEは,Laemmliの方法で行った。
    【結果】冷却遠心分離による脂質分画の結果,卵黄脂肪は加熱前には中層に,その後は下層に多く分画され,乳脂肪クリームは加熱前後ともに上層に分画された。菜種油を配合したオムレツは,卵黄単独の場合と同様に,加熱後に,下層の脂肪量が多くなり,上層にも多く分画された。乳脂肪クリームを配合したオムレツは,加熱前においても下層の脂肪量が多く,加熱後も上層の脂肪量は少なかった。このことから,加熱により菜種油や乳脂肪クリームが卵たんぱく質に抱合され,乳脂肪クリームでその程度が大きいことが推察された。このことは,脂肪酸組成等の結果からも確認された。SDS-PAGEからは,乳脂肪クリームを配合したオムレツではオボアルブミンの加熱変性の程度が低いことが示唆された。
  • 杉山 香琳, 大谷 貴美子, 古谷 規行, 村元 由佳利, 松井 元子
    セッションID: 1E-a1
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】大豆は,昔から「畑の肉」として日本人の健康を支えてきた重要な食材であり,多種多様な大豆加工品とともに,日本人の食文化には欠かせない食材である。近年,日本各地で全国流通大豆品種との差別化をめざし,その土地に古くから栽培し続けられてきた品種「在来種」を復活させ,地域固有の資源(地域ブランド)として活用する取り組みが活発化しつつある。そこで,本研究は,利用頻度の低い青大豆に焦点をあて,京都を含め産地の異なる青大豆の調理科学的特性を比較し,若干の知見を得たので報告する。
    【方法】本研究に用いた在来青大豆は,平成25年産の京都府産6種(京田辺,久田美、水くぐり,亀岡,十倉,市野原),山形県産4種(あおばた豆,秘伝豆,黒神,サトウイラズ),秋田県産(大潟村),長野県産(鞍掛豆)の計12種である。百粒重,粒の大きさ,水分含量,色差,吸水率,煮熟重量増加率,煮豆の破断強度,イソフラボン等の機能性成分含量等を測定する。
    【結果】試料大豆の水分含量は,京都府産と山形県産(黒神)は約11%で,それ以外は13~14%であった。百粒重は亀岡(52.5g)が最も重く,黒神(14.2g)は最も軽く,他の豆は40~50gであった。吸水曲線はいずれも一般的な大豆と同様の曲線を描き,黒神は他の品種に比べ若干早く吸水したが,10時間後にはすべての豆が元の重量の約2倍になった。吸水後の豆の硬さは,京都府産の豆は他の産地に比べて若干軟らかい傾向がみられた。煮熟後の煮豆の物性やイソフラボン含量等については現在検討中である。なお,本研究は,平成26年度京都府立大学地域貢献型特別研究(ACTR)の支援を得ている。
  • 野村 知未, 松井 元子, 大谷 貴美子, 古谷 規行
    セッションID: 1E-a2
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】大豆は,マメ科植物の中でも珍しく未熟および完熟子実の両者で食すことが可能な作物である。大豆を未熟な内に収穫したものがエダマメだが,近年は各々の専用品種が存在する一方で,‘京白丹波’は兼用品種としての普及を進めている。そこで本研究では,‘京白丹波’に着目し,大豆の煮豆およびエダマメの食味に寄与する要因を明らかにした。
    【方法】
    大豆の試料は,京白丹波:KT,新丹波黒:ST,オオツル:OTの3品種,エダマメはKT,紫ずきん:MU,富貴:FKの3品種を用いた(同年に京都府農林水産技術センターで栽培・収穫)。それら煮豆及びゆでエダマメを調製し,化学分析として80%エタノールおよびメタノールにて可溶性糖・アミノ酸を抽出しHPLC(1260 Infinity/Agilent technologies)に供して定量した。また,物性測定はクリープメータ(RE2-3305B/YAMADEN)により行い,官能評価は京都府立大学食保健学科の学生を対象に行った。
     【結果】大豆の煮豆ではST,エダマメではMUの遊離糖および遊離アミノ酸(前者:1180㎎,506㎎/100g d.w.;後者:4610㎎,621mg/100g f.w.)含量が最も高く,物性は軟らかく粘性のある性質を示し,官能評価(総合評価)では他の2品種に比べ有意に(p<0.05)高く評価された。しかし,STおよびMU以外では,煮豆とエダマメでは官能評価(総合評価)を高くする要因が異なった。煮豆は,物性の軟らかくもちもちとした食感が,エダマメでは物性に加えて遊離糖や遊離アミノ酸含量が官能評価に影響を及ぼすことが示唆された。食味に関わる要因として香りも重要であるため,今後は品種や調理法の違いによる“香り”が食味に及ぼす影響についても検討する予定である。
  • 上野山 あつこ, 畦西 克己, 吉村 美紀
    セッションID: 1E-a3
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】加齢や疾患に伴って咀嚼・嚥下などの生理機能が低下すると,食品に求められる特性は,栄養価や味に加えてテクスチャー特性が重要となる。そこで,本研究では市販の酵素を用いて形状を変えることなく,加熱方法の違い,または酵素の有無による煮大豆の物性の変化と嗜好性,咀嚼性の関連について比較,検討することを目的とした。
    【方法】試料は北海道産鶴の子大豆(北尾商事株式会社)を,酵素はスベラカーゼミート(株式会社フードケア)を使用した。大豆50gに蒸留水を150g加えたものを酵素未処理試料,さらに酵素を3g加えたものを酵素処理試料とし,20℃の恒温器内で15時間浸漬した。浸漬後,蒸留水と調味料を加え,普通鍋と圧力鍋を用いて加熱した。普通鍋では1時間加熱し,圧力鍋では3分間の加圧時間をとり,調理を行った。酵素の有無,または調理法の違いによる4種の試料を用いて貫入試験,テクスチャー測定,重量変化率,官能評価,筋電位測定を行った。
    【結果】酵素を添加し、浸漬した大豆の吸水量は、蒸留水で浸漬した大豆より減少し、硬さへの影響が少なかった。圧力鍋で加熱した煮大豆は、普通鍋加熱より応力が小さく,凝集性が高く,付着性がみられた。また官能評価では軟らかく,口の中でまとまりやすく,飲み込みやすく,おいしいと評価された。筋電位測定では咀嚼時間が短く,咀嚼回数も少なかった。つまり,圧力鍋で調理することで,やわらかくなるだけでなく,より食べやすく飲み込みやすいテクスチャーとなることが示唆された。
  • 大場 将生, 飯塚 公美, 本杉 日野, 村元 由佳利, 大谷 貴美子, 松井 元子
    セッションID: 1E-a4
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 近年,我が国でも‘シャインマスカット’など無核化が容易で,かつ果皮が薄いブドウ品種が登場し,「皮ごと食べられるブドウ」と表記されて販売されている。しかし,これまで日本ではブドウは剥皮を前提として食されていたため,こういったブドウを客観的に評価する手法がないのが現状である。そこで,本研究では,「皮ごと食べられるブドウ」の特性を客観的に評価する指標について,若干の知見を得たので報告する。
    【方法】 市販されている各種ブドウを試料とした。ブドウの物性は,クリープメータ(山電,RE2-3305B)を用いて測定した。食味成分である甘味は糖度計(ATAGO,N-1)で測定,酸味は滴定により酒石酸換算の酸度を求めた。渋味に関与する果皮のタンニン量は,レーベンタール法により定量した。果皮厚はマイクロスコープ(KEYENCE,VHX-1000)にて観察,測定した。これらの測定結果と官能評価を合わせて「皮ごと食べられるブドウ」を客観的に評価できる指標を検討した。
    【結果】 「皮ごと食べられるブドウ」の評価指標になりえる物理的な特徴は,果粒の第1破断歪率,第2破断歪率が低く,果皮の破断荷重,破断歪率が低く,破断エネルギーが小さいこと,さらに,果粒のクリープ測定による瞬間弾性率が高いことが示唆された。また官能検査により,糖度が高く,酸度とタンニン量が低く,果皮は薄いものが食味が良いと評価された。なお,本研究は京都府立大学地域貢献型特別研究(ACTR)(平成25,26年度)の支援を得ている。
  • 倉林 友崇, 中野 礼菜, 阿部 雅子, 綾部 園子, 小澤 好夫
    セッションID: 1E-a5
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】かりん果実は豊かな芳香を持つが、果肉が硬く強い渋みを持つため、生食には向かず、果実酒やはちみつ漬けやジャム(かりんあめ)として利用されている。かりんジャムはアク抜きした果実を煮沸して得た抽出液に砂糖を加え加熱して製造する。ジャムは美しい茜色に着色するが、その着色についての詳細な研究はない。そこで、本研究ではかりんジャムの特性と着色について研究した。
    【方法】かりんは本学で栽培したものを用いた。果実の芯部分を除去して薄切りし、水さらし後、水を加えて30分間加熱して抽出液を得た。抽出液をイオン交換樹脂に吸着させ、吸着部と非吸着部に分離した。抽出液、樹脂吸着部および非吸着部に砂糖(果実の0、10、20、30、40%)を添加して加熱し糖濃度60%のジャムを調製した。ジャムの色(色差計、分光光度計)、物性(テクスチャーアナライザー)を測定した。また、着色したジャムのメタノール可溶区分を濃縮し、ゲルろ過して5つのフラクションに分画し、塩化シアニジンとアントシアニジンを標準物質としてペーパークロマトで展開した。
    【結果】抽出液から調製したかりんジャムは、果実に対し30%の砂糖を添加したものが、最もL値が低く、a値とb値が高く、390nmの吸収が大きく赤色が強かった。砂糖無添加のものはゲルとならず、10%添加では、硬すぎて流動性がなかった。アンバーライトXAD-4吸着部は砂糖を加えても着色せず、非吸着部は赤色に着色した。ペーパークロマトの結果、かりんジャムの5つのフラクションは、塩化シアニジンおよびアントシアニジンのような単一のスポットは得られなかった。また、各フラクションにはポリフェノールが含まれていた。
  • 保育園における給食風景から
    香川 実恵子
    セッションID: 2A-a1
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】幼児期の成長・発達は著しく、食事の特徴も年齢により大きく異なる。しかしながら、幼児の年齢ごとの食行動の特徴や支援の実態については、経験的に捉えられていることが多く、詳細な調査報告はほとんどない。そこで、保育所における給食時間の観察より、年齢別にみた幼児の摂食行動と支援の特徴について調査することとした。 【方法】2011~2013年のいずれも6月2週間、女子大学153名が、それぞれの保育所で0~5歳児クラスまでの全ての年齢の給食時の様子を観察し、年齢毎に子ども姿と保育者の支援について、自由記述方式により記録をつけた。回収記録用紙のうち、0~6歳児までの食事の様子が詳しく記載されているもの115件(有効回答率75.2%)を集計し、分析した。 【結果】0歳児は、ほとんどの食事の支援を保育者がしている。1歳児は、スプーンやフォークを用いたり、手づかみ食べ等をしたりするが、こぼすことが多い。2歳児は、小グループで座り、揃って食事を食べることができるようになる。こぼす量は1歳児に比べると減るものの、食べる量やスピードは個人差が大きい。3歳児は、食事の準備についてできることが増え、エプロンもしなくなる。当番制が加わり、食事中も友達との会話をしながら食事を楽しむ風景がみられるようになる。4歳児は、配膳など準備の仕事が増え、当番制で食前食後の挨拶、メニューの説明、台ふきなどを行っている。食具の扱いとして、正しい持ち方で箸を使う子どもが増える。友達との会話がさらに増え、食事に集中できないことも多い。5歳児では、当番制を取り入れた給仕や配膳を行い、食べ終わる時間設定をするなど、小学校生活を意識した給食指導を行っている。
  • 山本 智恵美, 久保 加織
    セッションID: 2A-a2
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】高等学校家庭科では、生活をよりよくするために主体的に実践できる能力と態度を育成することを目指している。本研究では、食に対する意識が高いと思われる子育て中の保護者を対象に、食生活の意識や生活習慣、食育への関心と、学校教育の家庭科で学習した内容が今の生活にどの程度活かされているのかを調査し、高等学校家庭科で食の教育をどのように展開していけば、生徒の現在と将来の生活における実践につながるか検討することを目的とした。
    【方法】滋賀県草津市の保育園あるいは幼稚園に通う園児の保護者を対象に質問紙調査を2013年11月から12月に実施した。有効回収票(率)は、1044票(47.7%)であった。
    【結果】現在の食生活において、自身だけでなく家族の食にも関心をもち、主体形成高位の自己承認を形成していると考えられる9項目を点数化し、対象者を主体形成高位群(高位群)と主体形成低位群(低位群)とに分類した。高位群は低位群より豊かな食生活を送りたいと考え、経済性や効率化への関心の程度が低かった。また、高位群は低位群より加工食品の使用頻度が低く、各種料理やお節料理の手作り度が高かった。効率化より食事の内容に力を入れたいと考えている人が多いと考えられる。外食頻度や朝食の摂取頻度に差はみられなかったが、夕食の子どもとの共食頻度は高位群で高かった。自己承認というレベルまで主体が形成されている人ほど、食生活をよりよくしようとする傾向がみられた。これを踏まえ、高等学校の家庭科では、自己承認レベルの主体を育成するような授業を展開する工夫が必要であると考えられた。
  • 福永 淑子, 前田 文子, 宇都宮 由佳, 瀬尾 弘子, 田渕 弘子
    セッションID: 2A-a3
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ガスコンロ調理の特徴のひとつは、炎を見ながら自分で火加減を調節することである。本研究では、調理経験が比較的少ない小学生と65歳以上の男性を対象に、ガスコンロを使っての調理体験が意識と調理操作にどの様な影響を及ぼすか、また調理体験が日常生活の意識や行動に対してどの様な影響を及ぼすかについて調査した。【方法】小学5,6年生22名と65歳以上の男性16名を対象に、ガスコンロによる調理実習を1カ月ごとに4回実施し、実習のたびに料理数を一品ずつ増やしていった。実習後、アンケートによりガス調理への意識を調査し、変化を比較分析した。また実習終了時に聞き取り調査を行うとともに、調理中の表情の変化、調理操作の様子を記録するために動画撮影を行った。さらに小学生と保護者を対象に実習終了後2か月経過した時点での小学生の意識変化を、高齢者では実習1回目と4回目終了時の意識変化を、アンケート調査により分析した。【結果】アンケートの結果、小学生では体験調理後に「家族の為に調理したり手伝った」が85%で、その多くで調理操作に何らかの工夫をした様子が読み取れた。また、調理体験の反復によって調理技術が習得できるだけでなく、家族で調理や食べ物について話す機会が多くなったなどの食育での意識にも影響することが示唆された。高齢者では、ガスコンロ調理の反復によって「楽しい、おいしくできる、簡単」との意識の変化が見られ、「集中することができ、その集中力が他のことにも生かされる気がする」と考える傾向があった。小学生も高齢者も聞き取り調査とアンケートの自由記述では、調理実習の反復により、前回より上手にできたという達成感が生まれたことが示された。
  • 森山 三千江, 山本 淳子, 田中 義人, 高倍 昭洋
    セッションID: 2A-a4
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】新調理法は、機能性成分の損失が少なく、より効率的に栄養を摂取することができるとされている。しかし、従来の調理操作と異なるため、仕上がりは見た目、味、食感、香りの面で差が生じ、嗜好的に好まれるとは限らない。そこで、新調理法と従来の調理法を用いた調理作業を行い、物理的特性および機能性成分がどの様に変化するのか追跡するとともに嗜好的に好まれるのか官能検査を行い、今後、大量調理現場で普及していくかどうか検討することを目的とした。
    【方法】アスパラガスとジャガイモを試料として、茹で加熱、蒸し加熱(スチコン)、真空調理を用いて調理を行った。物理的特性として色調、破断応力および歪み率を測定し、機能性成分としてビタミンC(VC)およびクロロフィル量、ポリフェノール量、抗酸化活性を測定した。官能評価は、大学生60名をパネラーとし「見た目」、「香り」、「食感」、「味」、「総合」の5項目について5点評点法を用いて行った。また、イカ、ホタテを試料として用い、旨味成分としてベタイン量をTOF-MASにより測定した。
    【結果】アスパラガスでは、VCおよびクロロフィル量は調理操作による差はあまりみられなかった。ジャガイモでは、VC量、ポリフェノール量、DPPHラジカル捕捉活性は、スチコン使用の方が高く、破断応力は真空調理の方が高かった。色調はジャガイモの短時間加熱ではL*値、a*値ともに茹で加熱の方が高く、長時間で逆転した。官能評価は、アスパラガス、ジャガイモとも短時間加熱では茹で加熱が、長時間加熱は真空調理による調理品がいくつかの項目で好まれた。又、イカ、ホタテの異なる加熱操作による調理品のベタイン量は、茹で加熱に比べてスチコン調理が全般的に高かった。
  • 桒田 寛子, 木村 安美, 石井 香代子, 山口 享子, 渕上 倫子
    セッションID: 2A-a5
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】フライパンは主に炒める、焼く調理で用いるが、近年、手間や早さ等の理由から、茹でる、揚げる調理を行う際にもフライパンを使用している家庭が増加傾向にあり、メニューに対しての調理器具の固定概念が変化しつつあると推察される。使用頻度の高いフライパンを用いて、茹でるなどの調理を行い、鍋を用いたときの調理時間、調理性などと比較し、フライパン類を活用した最適メニューの提案を行うことを目的とした。 【方法】直径26cmのフライパンと直径18cmの鍋(上下2段)を用いてカボチャの煮物を同重量調理し、破断応力を測定した。また調味後の官能評価を行った。フライパン調理に最適なメニューの開発を行い、フライパンと鍋を用いて再現し、エネルギー消費量と加熱調理時間を測定した。 【結果】フライパンと鍋を比較すると、鍋の方が軟化が遅かった。また、鍋は上段と下段で煮え方が異なり、上段の方が、またカボチャの中心部の方が軟化が遅かった。調味後の官能評価において、鍋の上下段で有意差が見られた。鍋の場合、2段に分けることで味にムラができるため、フライパンの方が味が均等に染み込んだ。フライパンは、「焼く」メニューでは鍋に対し加熱調理時間が33%早く、ガス消費量は4%削減できた。これは火力を強めに設定し短時間で調理できるためと示唆された。また、「煮る」「揚げる」「茹でる」場合、フライパンでの調理が加熱調理時間で17%早く、ガスの消費量は4%削減できた。「蒸す」「炊く」場合、ガスの消費量では鍋調理が優位であった。フライパン調理の特徴として、加熱時間が短いメニューほどフライパンの優位性は増し、調理時間が長く、かつ弱火となるメニューではフライパンの優位性が低下した。
  • 肥後 温子
    セッションID: 2A-a6
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】学生に電子レンジの加熱特性、マイクロ波(Mw)加熱法と熱伝導加熱法との違いを理解してもらうために調理学実験にMw加熱法の基礎加熱特性、基礎調理性能を調べる実験を導入し、またMw加熱法を有効活用してもらうために調理学実習の部分調理、調理、デザート作りに電子レンジを利用する試みを行ってきた。学生の関心は高く、学生の実験結果を集計したところ貴重なデータが得られたので報告する。 【方法】基礎加熱特性:1)水を置く位置を変えてMw加熱法の昇温速度を比べ、2) じゃがいもをMw、オーブン、茹で加熱して昇温速度と昇温部位を比べた。基礎調理性能:3) カップケーキ(IECテスト生地)をMw加熱、オーブン加熱して膨化率、外観、味、食感を比べ、4) 玉ねぎをMw加熱、フライパン加熱して甘み、旨味、嗜好を比べ、5) じゃがいも餅、大根餅をMw加熱、フライパン加熱して食感、嗜好を比べた。実習への利用:Mw加熱時の留意点を伝えた上で、6)長ねぎ、さといもの下茹で、7)レアチーズケーキ作り、8)中華おこわ作りの実習を行った。【結果】基礎加熱特性: 1)2)3種の異なる機種(26台)で昇温速度の違いを調べた結果、同じ機種でも温度差があり、じゃがいもの昇温部位にも電子レンジの個体差が表れた。基礎調理性能:3)カップケーキの膨化率は、Mw加熱4.1-4.4倍、オーブン加熱3.2-3.4倍でMw加熱の方が高く、4)Mw加熱した玉ねぎは有意に甘く、5)Mw加熱した大根餅はもちもち感が増して有意に好まれた。実習への利用:6)7)8)時短効果があるだけでなくMw加熱に向くもの、利用上のヒントになるものを利用例として選んだため、いずれも好評であった。
  • 太田 七瀬, 白杉(片岡) 直子, 本多 佐知子, 堀江 孝史, 丸山 達生, 大村 直人
    セッションID: 2A-p1
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ハンバーグの焼成条件については、既に本学会の近畿支部「焼く分科会」により、微生物汚染による食中毒対策の重要性から、多面的かつ綿密な取り組みと多くの研究報告の蓄積がなされている1)。我々はそれらの成果を参考に、どのような焼成条件が省エネルギー・低炭素化に寄与するかの視点を加え、実際に焼成を行って、使用電気量、ガス流量から消費エネルギー量を推算した。【方法】加熱装置[1]はガスコンロ/IHクッキングヒータ、フライパンは鉄製/フッ素加工を施したものを用意し、[1]と[2]を組み合わせて4種類の条件下で焼成を行った。試料のハンバーグは、フライパンを強火で熱して表面温度が180℃に到達した時点で投入し、以降は全て弱火で焼成を行った。高さをずらした3本のK熱電対を一つにまとめ、穴を開けたふたの上から通して試料の中央に差し込むことで、試料の底面から10・13・16㎜の3点の温度変化を計測した。食中毒対策のために、焼成時の内部温度を「75度・1分以上」保つ条件を必須とした。焼成で使用した電気量、ガス量から換算係数[ガス] 45MJ/m3,[IH] 9.76MJ/kWhを用いて消費エネルギー量を求めた。【結果】鉄製フライパンはフッ素加工のものに比べ、わずかに消費ガス/電力量が少ない結果となった。また、ガスコンロとIHヒータを比較すると、ガスコンロの方が調理時間は長くなるが消費エネルギー量は少なかった。今回の実験条件では、弱火で長時間加熱の方が消費エネルギーは少なかった。【参考文献】1) 日本調理科学会 近畿支部 焼く分科会:「ハンバーグステーキの焼成方法―75℃以上で1分間焼成するには―」文教出版(2012)ほか
  • 久保田 賢, 河合 洋見
    セッションID: 2A-p2
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】食中毒は喫食者の健康を損ねるのみならず生命を奪う危険性をはらんでいることから,食を提供するすべてのサービスにおいて,最善の対策を講じることが求められる。平成8年の腸管出血性大腸菌O157による食中毒事故をきっかけに「大量調理施設衛生管理マニュアル」(以下,「衛生管理マニュアル」)が示された。しかしながら,現在でも毎年2万人を超える食中毒事故の患者が発生している現状がある。そこで本研究では,食中毒事故が発生した調理現場において,その原因の分析に加え,再発防止策を検討するための第三者チェック方法について検討した。
    【方法】
    大量調理業務の従事者が参照する衛生管理マニュアルの記載内容のうち,「重要管理事項」および「衛生管理体制」の全文の内容を再整理し,第三者チェック用資料を作成した。また,組織マネジメントの観点から食中毒発生防止策について検討し,衛生管理マニュアルに含まれない内容の抽出を試みた。
    【結果】
    衛生管理マニュアルの記載内容の再整理により,調理業務,施設・設備,組織管理および帳票記録の4区分,計120項目に上るチェック項目を抽出し,チェック用リストを作成した。より包括的な検討を行なった結果,給食調理部門の円滑な経営には,1.知識・技術レベルの向上,2. 組織管理体制の構築,3. 従業員の行動変容の支援,4. 意思決定システムの明確化が必要と思われた。このうち,1.および2.の一部については,衛生管理マニュアルの内容に含まれているが,3.および4.についてはほとんど記載がないことが分かった。そこで,これらの実情を把握するための従業員に対する調査用紙を作成した。
  • パスタ料理をモデルとして油の酸化を考える
    山田 直史, 高本 有芽, 田中 美里, 秋山 花於里, 児玉 里菜, 岩崎 香織, 石井 詩織, 泉 真央, 中村 宜督
    セッションID: 2A-p3
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】食用に使用する植物性油は,光や加熱,時間経過によって,酸化が進むことが知られている。油脂の酸化によって悪臭や風味の変質が起こる。本研究では油脂の種類によって,どの程度酸化のされやすさが異なるかを調べた。続いて,直射日光による酸化速度への影響を調べた。またパスタ料理に使用される食材には抗酸化能を有した食材が多いため,酸化抑制を期待し,直射日光下における酸化速度への影響を調べた。
    【方法】①油脂の違いによる酸化程度の違いの測定 キャノーラ油・オリーブ油を酸化促進剤を用いて過酸化脂質とし,チオバルビツール酸法によって過酸化脂質の測定した。 ②直射日光による酸化への影響 キャノーラ油・オリーブ油と水を界面活性剤を用いて懸濁し,直射日光を当てて保存した油と,アルミホイルを巻いて保存した油を作り,一週間ごとに酸化の度合いを調べた。 ③食品添加による酸化速度への影響 パスタ料理に使われる食材をすり下ろし,キャノーラ油に添加した。界面活性剤を用いて水と懸濁し,直射日光に1週間当てて,コントロール(水添加)との酸化速度変化を調べた。添加食材にはトマト,大根,ニンニク,青ジソ,トウガラシを用いた。 
    【結果】①酸化促進剤によって,キャノーラ油,オリーブ油ともに酸化が進んだが,キャノーラ油の方が促進の程度が小さかった。しかし,どちらもそれほど大きく酸化が進んだわけではなかった。 ②直射日光によって,どちらの油も酸化が促進した。強い光に当てないことが油の保存には有効であった。一方で,暗所保存であればほとんど酸化されなかった。 ③トウガラシ,大根は油の酸化を抑制した。青ジソも抑制する傾向にあった。一方で,ニンニク,トマトは酸化を促進する可能性も見られた。
  • 浪花 絵梨, 隅蔵 菜海, 太田 沙織, 三宅 千悠, 小西 洋太郎
    セッションID: 2A-p4
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】グルコースのC1位が還元された1,5-アンヒドログルシトール(AG)は微量だが自然界に広く分布する。しかし、市販品は高価であり、食品科学分野での研究は進んでいない。私たちは最近、生薬オンジ(イトヒメハギ科植物の根)から高純度・大量精製(ここでは数十グラムの意)に成功した(1)。今回その甘味特性、物理化学的性質を明らかにし、調理・食品加工における利用の可能性について検討した。
    【方法】AGの甘味度、甘味特性は官能試験および味覚センサーSA402Bにより評価した。またAGの吸湿性、水分活性、メイラード反応(pH 4~8でグリシンとともに120℃加熱)、BSAおよびオボアルブミン(OA)との乳化活性についてスクロース等と比較した。
    【結果】[甘味度・甘味特性]味覚センサーによる甘味度は約75、官能試験では約60であった。温度による甘味度の変化はなく、甘味の引きが早く後味として少し苦味が残った。塩味や甘味による増強効果はなかった。酸味、苦味、渋味に対しては、スクロースよりは弱いものの抑制効果を示した。[吸湿性]相対湿度97%下で、高い吸湿性(250%)を示した。[水分活性]他の糖質溶液よりも有意に低い値を示した(0.912)。[メイラード反応]他の非還元性糖と同様に褐変を引き起こさなかった。[乳化活性]OA溶液では対照と変わらなかったが、BSA溶液では有意に乳化活性を促進し、エマルション安定性を高めた。このように、AGは新しい甘味料のみならず、調理における利用の可能性が示唆される。
    (1)太田沙織ら、日本応用糖質科学会平成24年度大会講演要旨集、p. 31(2012)
  • 山田 潤, 三ッ石 純子, 松田 秀喜, 八木 雅之
    セッションID: 2A-p5
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】糖化とは,糖とタンパク質が非酵素的に反応し,糖化最終生成物(advanced glycation endproducts:AGEs)が生成することである。AGEsは食品調理中でも生成し,それらの摂取は人体に悪影響を与えると言われている1,2)。本研究では,和食の基礎調味料である「だし」における,抗糖化効果の検証を目的とした。【方法】(in vitro試験)荒節・枯節・昆布・煮干(カタクチイワシ)・椎茸から一番だしを調製し,試験サンプルとした。グルコース,牛血清アルブミン,試験サンプルを混合し,90℃30分間加熱反応後,AGEsの一つとして有名なNε-(carboxymethyl)lysine(CML)の生成量をOxiSelectTM CML Competitive ELISA Kit(コスモ・バイオ(株))を用いて分析した。サンプル無添加のCML生成量と比較し,各試験サンプルの抑制率を求めた。(調理試験)団子状にした鶏モモ挽肉を,試験サンプルに上白糖を添加した調味液中で,95℃30分間加熱調理し鶏肉団子を調製した。調理後の鶏肉団子は,6N塩酸を添加し110℃24時間加水分解反応を行い3),中和後,上記キットによりCML含量を分析した。【結果】各種2.5%だしは,70~95%のCML生成抑制率を示した。抑制率の強さは,荒節だし>枯節だし>煮干だし>昆布だし>椎茸だしの順であった。また,調理試験では,だし濃度に比例して,肉団子のCML含量は抑制された。1)Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94, 6474-6479 (1997) 2)Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99, 15596–15601 (2002) 3)J. Biol. Chem., 271, 9982-9986 (1996)
  • 佐藤 真実, 島田 理帆
    セッションID: 2B-a1
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】1960年以降、食の洋風化にともなって米の1人当たり消費量は減少を続けている。米の消費量減少は日本人の伝統的食文化(和食)を危機的状況にすると考えられる。本報では、少子高齢化、世帯構成の変化等が進行していく中で主食である米の消費拡大方法を検索することを目的とし、福井県と東京近郊に住む大学生に米の消費に関するアンケート調査を実施し、地域と世帯構成の違いが若年層の米の消費にどう関わるのかを明らかにする。
    【方法】平成25年6~7月に東京と福井県に所在のある短期大学、大学の学生667名(回収率89%)を対象として留置法によるアンケート調査を行った。質問項目は米の消費に関する6項目、炊飯作業に関する8項目、白飯の嗜好に関する7項目である。
    【結果】ほとんどの項目で地域、世帯構成間に有意差があった。福井県では「拡大家族」(38.3%)、「炊飯作業をしない」(31.0%)割合が高く、米の入手方法は「知人から購入」(32.7%)「生産している」(22.8%)割合が高い。米の選択理由は「美味しい」(60.4%)、「信頼性がある」(28.1%)が高く、米を「丁寧に洗う」(34.7%)、「120分以上浸漬する」(18.8%)割合が高い。また、白飯は「ほぼ毎日」(73.3%)、「1日3回」(31.0%)食べる割合が高い。一方、東京では「1人暮らし」(38.5%)、「炊飯作業を自分でする」(34.6%)割合が高く、米の種類は「銘柄・産地は決めておらず」(63.7%)、「価格が安い」(32.1%)米を「店で購入」(62.1%)する割合が高い。白飯は「1日2回」(49.5%)食べる割合が高い。白飯の満足度は有意差がなく「満足している」が高いが、白飯の嗜好度は「好きでも嫌いでもない」(10.2%)、「嫌い」(5.9%)の割合が福井県で有意に高かった。福井県は米食回数が多く、食料消費における選択が拡大している中で米食が続くことは嗜好度低下の一要因になると考えられた。
  • 関本 美貴, 大橋 きょう子
    セッションID: 2B-a2
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】演者らは近現代の食生活におけるジャガイモ受容の実態について調査研究を行っている。本報告では、ジャガイモの生産量が急増後、横ばいに転じた1920年代に焦点を当て、ジャガイモ受容の実態を古くから食べられてきた里芋と比較検討しつつ明らかにすることを目的とした。
    【方法】農商務省統計、農林省統計、農林水産省統計、内閣統計局統計、総務省統計、北海道庁統計を資料とした。また「日本の食生活全集」からジャガイモ及び里芋料理を抽出し、料理の内容、食べ方、おいしさの評価、料理に期待する事柄について精査した。
    【結果】ジャガイモの生産量は明治後半から大正期にかけて急増し、1920年代には里芋の1.5倍に達した。しかし家庭レベルでの消費量は共に年間約10kg/人と推計でき、ほぼ同程度食されていたことが分かった。ジャガイモ料理のうち洋風料理はわずか7%であり、出現地域は都市部及び富裕層の家庭に限られていた。じゃがいも・里芋共にかて飯、煮物、汁物が全体の66%を占めたが、料理に期待する事柄は大きく異なり、ジャガイモは「空腹を満たす」「温まる」等生理的欲求の充足を強く期待されていることが分かった。また里芋が多くの場合ハレ食に使われるのに対し、ジャガイモは日常食がほとんどであり、小昼、間食、夜食等の食事を補う食べ方も多かった。これらの中には澱粉を分離して餅や団子を作る料理が多数出現し、里芋とは異なる調理法の誕生を認めた。以上より、明治発足後数十年のジャガイモはエネルギー補給的性質が強いものの、独自の調理特性を生かした多彩な料理の萌芽を有する実態が明らかとなった。
  • 澤田 崇子, 山田 正子, 瀬戸 美江, 藤本 健四郎
    セッションID: 2B-a3
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】平成24年国民健康・栄養調査結果の概要によると、女性の肥満者(BMI≧25)の割合は、年齢が上がるにつれ高くなっている。閉経後に見られる脂肪分布の変化、すなわち内臓脂肪優位の蓄積は、皮下脂肪優位の蓄積に比べて多くの病態の発症に関与し、肥満は更にその頻度を増加させる。中高年肥満女性の「閉経群」では、内臓脂肪の増加に対して砂糖摂取量が正の相関を示し、閉経前で肥満傾向にない中高年女性で、健康を維持している割合が高いことも示されている。そのため、閉経前後各々約5年間の更年期の健康管理が重要であると報告されている。「間食」という言葉は、本来、「食事と食事の間に食べること。また、その食べ物」という意味があるが、現在ではその意味は薄れ、単に朝食、昼食、夕食以外のもの全般を指すようになっている。間食などの摂取を控え、食行動の変容を促すことが、メタボリックシンドロームの改善に寄与する可能性が示唆されているが、間食の動機は、「空腹」、「人にすすめられた」、「口がさみしい」など多様で、栄養教育の困難さも報告されている。そこで今回は、女子学生と母親の間食調査を行い、更年期に入る母親世代の間食摂取について検討した。
    【方法】1.間食に関するアンケート調査、2.食事調査、3.甘味し好食品摂取による調味への影響について調査を行った。
    【結果】間食の割合は学生:20.1%、母親:26.9%だった。年齢が上がるにつれ、間食を食べる時間が、食事時間外から食事中に移行しているのではないかと推測された。「間食を4回から3回にする」ということが、中高年女性の間食摂取の一つの目安になるのではないかと考える。また、調理前に甘味し好食品を摂取することが、調味に影響することが推測された。
  • 松山 洸一, 白杉(片岡) 直子
    セッションID: 2B-a4
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】茶葉から淹れる緑茶(リーフ緑茶)は情緒的価値が高く,その飲用は生活の質の向上に繋がると期待される.しかし,近年はペットボトルなどの緑茶飲料が普及し,リーフ緑茶の消費量は減少傾向にある.そのため,特に若者のリーフ緑茶飲用に対する意識が変化している可能性がある.したがって本研究では,現代の日本人におけるリーフ緑茶の飲用習慣や求める特性・香味を明らかにするとともに,年代による差異について検討する.
    【方法】2013年10月および11月に近畿地方で質問紙調査を実施し,大学生138名(男性64名,女性74名)および高齢者(60歳以上の人)127名(男性74名,女性53名)より有効回答を得た.回答者の平均年齢は大学生で19.4歳,高齢者で68.3歳であった.
    【結果】リーフ緑茶をよく飲む,または時々飲むと回答した高齢者は81.9%であったのに対し,大学生は45.7%であり,約半数の大学生はリーフ緑茶を日常的に飲む習慣を持たなかった.また,自分では緑茶を淹れないと回答した大学生は59.0%と高い割合を示し,若者を中心にリーフ緑茶離れが進んでいることが窺えた.一方,高齢者は自分で緑茶を淹れており,飲み方や茶葉の選び方にこだわりのある人が多く,リーフ緑茶の飲用を楽しむ意識が強いことが明らかとなった.リーフ緑茶に求める特性にも年代差はみられ,高齢者では品質や信頼性,新茶であること,品種や産地などを重視する度合いが比較的高かった.さらに,求める香味も年代によって異なっており,大学生がうまみや味の濃さを重視していたのに対し,高齢者はまろやかさや香りのよさを求めていた.リーフ緑茶活用の際には,飲用習慣や嗜好に上述のような年代差があることを考慮する必要があると考えた.
  • 辻 昌美, 真部 真里子
    セッションID: 2B-a5
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】金沢市に伝わる5つの縁起菓子、すなわち、正月の「福梅」、7月1日の氷室の日に食べる「氷室万頭」、ひな祭りの砂糖菓子「金花糖」、婚礼の道具入れや建前の日に配られる「五色生菓子」、8月の田休めの餅「ささぎ餅」について、県内での製造・販売状況を調査し、金沢の伝統的な和菓子文化が周辺地域にどのように影響しているかを検討した。【方法】金沢市以外の石川県菓子工業組合(以下、組合)に所属する和菓子店、計34店を対象に、上記5つの縁起菓子の製造・販売について検討した。支部長店には自店と支部所属店について質問紙調査を、その他の店には聞き取り調査を実施した。聞き取り調査では、製造・販売があった場合には、菓子の詳細、使用用途等も合わせて調査した。【結果】福梅は県内全域で製造販売されていた。これは、正月は行事実施率が高く、福梅に替わる正月菓子がなく、また登録商標権による制限もないためと考えられた。氷室万頭は奥能登の一部を除きほぼ製造されていた。平成以降、組合による普及活動で能登地方へ広がったが、能登での定着は希薄であった。金花糖は、加賀地方のみで能登地方にはほとんど見られなかった。現在砂糖は貴重品ではなくなってきたため、加賀地方でも衰退傾向にあった。五色生菓子、ささぎ餅は能登地方と加賀市ではほとんど見られなかった。能登地方は米の生産量が少なく、加賀市は江戸時代政治経済状況が厳しく嗜好品に食材をかける余裕がなかった、また近年菓子が用いられる行事習慣が簡略化したことが原因として考えられた。以上の結果から、行事と食が一体となって伝わらないと定着しないとわかった。縁起菓子の伝播と定着には、その背景の行事や謂れも次世代に伝わることが必須である。
  • 荒田  玲子, 渡辺 敦子
    セッションID: 2B-a6
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】日本調理科学会・平成24~25年度特別研究における聞き書き調査の中で、茨城県石岡市とその周辺地域における昭和20~30年代の食生活の様子、その地域で作られた食材、当時の物流の中で入手可能な食材による料理に注目して、石岡地域の食生活の特徴【目的】平成24~25年度日本調理科学会特別研究における聞き書き調査の中で、茨城県石岡市とその周辺地域における昭和20~30年代の食生活の様子、その地域で作られた食材、当時の物流の中で入手可能な食材による料理に注目して、石岡地域の食生活の特徴を知ることを目的とする。【方法】旧石岡市と八郷地区の食生活改善普及員を対象とし、複数回の直接面談法により調査を行う。調査の前に予め、「当時の食生活の様子」、「次世代に伝えたい家庭料理と地域を代表する行事食・日常食」、「地域の行事食とその料理にまつわる思い出や蘊蓄」についてのアンケートを自由記述形式にて行い、回答内容に従って面談する方法をとった。調査者は、石岡市内に35年以上居住する、59~75歳の女性(食生活改善普及員石岡地区役員)9名とした。【結果】特徴的食材・料理としては、貝地の高菜栽培と高菜漬、地域の店で現在も入手できる海藻用羹を使用した「海藻羊羹」、正月などハレの日に作られる「矢羽の羊羹」、「ばらっぱもち」、「たがねもち」などの餅類があげられた。栃木や茨城県西部の郷土食「すみつかれ」と同名の「酢みつかれ」は、鮭頭は入らないが、大豆や石岡産の落花生が入り、大根は鬼おろしでおろして作られる酢の物であった。正月の「昆布巻き」は、霞ヶ浦に近いこともあり、鮒やワカサギなどの淡水魚を昆布で巻いて作られていた。山間の八郷地区と平野の広がる石岡地区、近くに河川や霞ヶ浦を臨み、山や川や大地の恵みを利用した食生活が営まれていたことがわかった。。
  • 中野 優子, 笠松 千夏, 野中 雅彦, Pascal Schlich, 香西 みどり
    セッションID: 2B-p1
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】「甘味好き」「塩味好き」といった個人の味の好みを客観的に評価する方法は確立されていない。本研究では、「濃い味」「薄味」など味の強弱に対する個人の好みの程度を測定するための食嗜好評価モデルを開発し、その有効性を検証することを目的とした。
    【方法】個人の食嗜好を測定する尺度としてフランスで開発されたPrefQuest(Deglaireら,2012)を参考に、食品の味つけに関わるソースやジャムといった調味品の添加量に着目した。塩味、甘味、うま味およびそれらに脂質が加わった味の強さに対する個人の好みを反映しうる食品と調味品の組合せを選定し、調味品量を変化させた料理写真を作成して食嗜好評価モデルとした。質問紙の形式は、モデルを見て、味つけとして最も好ましいと思う調味品の量を回答するものとした。調査1では、この質問紙を用いて消費者122名に調査を行った。調査2では、質問紙に示した料理写真と調味品量が対応している5水準6食品の試料を調製し、女子大学生32名に食べさせる官能評価を実施した。その後同一パネルに対して質問紙調査を行い、官能評価と質問紙調査の結果を比較した。
    【結果】選定の結果塩味6、塩味+脂質3、甘味4、甘味+脂質1、うま味3の計17のモデル食品が得られた。調査1の結果から、本質問形式は年齢や性別に関わらず簡便に個人の嗜好特徴を把握する方法として有効であると考えられた。また、調査2において同一パネルの質問紙調査と官能評価の結果を対応させることで、モデルとして適する食品を選別可能であると確認された。本調査では、「ヨーグルト+フルーツソース」が甘味、「ほうれん草のお浸し+醤油」が塩味に対する嗜好を評価するモデルとして有効である可能が示唆された。
  • 松尾 章子, 松井 元子, 大谷 貴美子
    セッションID: 2B-p2
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我が国では、味覚形容詞「甘い」が、一般的なおいしさを伝える評価語として多用されている。しかし、それらを裏付ける研究例はあまり認められない。そこで、「甘い」ということばが、我が国でどのように用いられてきたのかを経時的に考察するとともに、それが、現在の我が国に独自の事象なのかを、イタリアと比較し、考察した。
    【方法】経時的な調査では、CD-ROM「朝日新聞 戦後見出しデータベース from1945-to1999(朝日新聞社)」と総合生活雑誌「暮しの手帖」(1946年~2013年)、および料理漫画「美味しんぼ」(1984~2008年)を資料とした。また、京都市内および、イタリア・シチリア州・カターニア県内の大学生を対象に、甘味表現に関するアンケート調査を実施した。
    【結果】我が国の「甘い」もしくは「甘み」「甘さ」などの甘味表現出現頻度を経時的に調べた結果、特に素材そのものの甘味を表現する頻度が、1980年代半ばを境に顕著に高くなっており、生活習慣病の増加に伴う健康志向との関連が示唆された。また甘味表現に関する日・イタリアの比較調査では、日本人学生では、「ほのかに甘い、ほんのり甘い、とても甘い」などスケールを伴う甘味表現に加え、「やわらかい甘み」にみる触覚表現などを用いた共感覚表現などが多く認められたのに対し、イタリア人学生の場合は、スケールを伴う味覚表現が中心で、日本人学生より甘味表現の種類数は少ないことが示された。これらには、イタリアでは、一般的に料理に砂糖が用いられないこと、イタリア語には、日本語の「甘辛い」に匹敵した甘味と塩味が同軸上に存在する味の表現が存在しないことなどの食文化の違いが、関与しているためと考えられた。
    なお、本研究は、嗜好品文化研究会の補助金(平成24年度)を得て実施した。
  • 奥井 美和, 堂土 奨, 村元 由佳利, 松井 元子, 佐野 睦夫, 大谷 貴美子
    セッションID: 2B-p3
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】生活習慣病の増加に伴い、個人の食事管理の重要性が指摘されているが、その困難さから、写真撮影法などを用いた新たなサービスが提供されている。しかし、栄養計算には管理栄養士などの人の手が必要な場合が殆どで、すべてを自動化するには現在のところ至っていない。食事管理には摂取栄養素量だけでなく、摂取栄養素のバランスを評価することも重要である。そこで我々は、まず調理操作が簡単なサラダに着目し、食材の色面積割合を利用して栄養素バランスが評価できないかを検討し、その可能性を報告した1)。本研究では、色面積算出の自動化について検討した結果を報告する。
    【方法】資料としては、レシピーが記載されているweb上のサラダ写真24枚を用いた。写真のホワイトバランスを自動調節した上で、皿と背景を青に塗り、Feelimage Analyzer(ビバコンピューター(株))を 用いて11色(黒、白、緑、黄緑、黄色、橙、赤、茶、ピンク、紫、クリーム)の占有色面積割合を求めた。一方、先の報告と同様に、Paint機能を用いて、人的に色分けを行った場合の色の占有色面積割合を求め、両者を比較した。
    【結果】先の研究1)では、出現頻度が少なく、かつタンパク質量の多い食材が用いられたサラダを除き、色彩分析によって栄養素の摂取バランスが一定評価できる可能性が示唆された。今回、色彩分析を自動化し、旧来の結果と比較したところ、黒、緑、赤色では高い相関が認められたものの、白やクリーム色と識別された色面積が特に大きくなった。これは、光の反射があると色が判別できず、これらの色に判別されたためと考えられた。現在、料理の背景を自動的に削除することも含め検討中である。
    1)Y.Muramoto et al. Trace Nutrients Research 30:1-6(2003)
  • 加藤 佳子, 程 文輝, 岩永 誠
    セッションID: 2B-p4
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】SOC(Sense of coherence:首尾一貫感覚)は,ストレスフルな環境下においても健康を維持することのできる性格特性である。これまでの研究から,SOCは食習慣を含めた生活習慣とも関連があることが報告されている。本研究では,偏食行動の機序の一端を明らかにすることを目的として,偏食行動とSOCとの関係について検討することとした。 【方法】大学生164名(男性94名,女性70名)平均年齢19.4±1.2歳を対象に偏食行動,SOC,主観的健康感,生活習慣,ソーシャルサポートに関する質問紙調査を行った。 【結果と考察】SOCは主観的健康感,生活習慣,重要な他者および家族からのソーシャルサポートと正の関連があり,先行研究と一致した傾向が確認された。次に,偏食行動との関連について検討した。はじめに,偏食行動に関する尺度について検討したところ,「苦手な食べ物の回避」,「手軽な食べ物の摂取」,「多様な食べ物の摂取」,「好きな食べ物への偏った摂取」の4つの因子において,一定の妥当性と信頼性が確認された。主観的健康感は,偏食行動のうち「好きな食べ物への偏った摂取」との間に負の相関が見られた。そして,SOCは偏食行動のうち「手軽な食べ物の摂取」および「好きな食べ物への偏った摂取」との間に負の相関関係が確認された。つまり,SOCは,好きなものばかり食べる偏った食行動の制御因子として機能し主観的健康感と関連している可能性が示唆された。 【結論】偏食行動を検討する上では,SOCといった個人内要因も考慮する必要性があることが見出された。
  • ―変形性関節症予防効果に着目して―
    柴田 紗知, 味八木 茂, 萱島 知子, 伊豆 英恵, 藤井 力, 松原 主典
    セッションID: 2B-p5
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】多量のアルコール(エタノール)摂取はガン,肝臓障害や依存症などの問題を生じさせるが,少量~適量のアルコール摂取は心臓病等の疾病リスクを低下させることが多くの疫学研究で明らかになっている。また,飲酒習慣が変形性関節症(OA)の進行を抑制することが複数の疫学研究から示唆されている。実生活において,味噌や醤油などの調理に使用する調味料は発酵食品であり低濃度のアルコールが含まれていることから,飲酒習慣が無い場合でも微量のアルコールを日常的に摂取していると考えられている。そこで,我々は近年問題となっている高齢者に多い変形性関節症に着目し,少量アルコール摂取の予防効果について検討を行った。 【方法】老化促進モデルマウスSAMP8系に飲料水として脱イオン水に1もしくは2 % (v/v)エタノールを加え自由摂取させた。15週間投与後,膝を回収し組織化学染色による病理評価を行った。また,C57BL/6Jマウスの大腿骨から単離した初代培養軟骨細胞を用いて,OA発症に関わる遺伝子発現に対する低濃度エタノールの影響を定量RT‐PCR法を用いて検討した。 【結果】SAMP8の膝関節の状態は,対照群ではOAを発症したマウスが見られたが,エタノール投与群では明確にOAを発症しているマウスは見られなかった。また,初代培養軟骨細胞の実験では,OA発症に重要な役割を果たす細胞外マトリックス分解酵素等のOA発症関連遺伝子の発現が低濃度のエタノールで抑制されることが分かった。以上のことから,少量のエタノール摂取は変形性関節症予防に対して有効に作用する可能性が示された。
  • 大須賀 彰子, 岩崎 裕子, 川村 泰司, 中村 武嗣, 高橋 智子, 大越 ひろ
    セッションID: 2C-a1
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】油脂を添加したマッシュポテトの食べやすさは、添加する油脂の状態が影響し、液状油添加試料が高い評価であった。しかし、液状油添加は油の分離等の問題があり、実際には調製後の安定面から固形脂の使用が主流となっている。本研究では、液状油に油脂の増粘・固化を目的とした食品用乳化剤(以下油脂固化剤と称す)を用いて固形脂を調製し、その固形脂を添加したマッシュポテトの力学的特性と安定性に及ぼす影響を検討した。
    【方法】マッシュポテトはポテトフレークに温水を加えて、調製した。マッシュポテトに加える副材料はサラダ油に油脂固化剤(TAISET50)を2、4、6%添加した油脂とサラダ油の4種類とした。マッシュポテトに4種類の油脂を10%添加し、20℃の恒温器中で、1時間または20時間静置したものを試料とした。試料の力学的特性としてテクスチャー特性、降伏応力、動的粘弾性の測定を行った。併せて、試料からの油脂の分離を観察した。
    【結果】マッシュポテト試料の硬さと付着性、降伏応力は油脂固化剤の添加濃度の増加に伴い、高値を示した。動的粘弾性は添加濃度に関わらず、ほぼ重なる挙動を示した。油脂の分離は添加濃度が高くなるに従い、少なくなった。静置時間で比較すると、20時間静置試料が1時間静置試料に比べて、硬さと付着性、降伏応力は高値を示した。動的粘弾性のひずみ依存性はほぼ重なったが、周波数依存性は異なる挙動を示した。また、油脂の分離は静置時間が長い方が少なくなった。以上より、油脂固化剤を用いた固形脂が試料の調製時に油脂固化剤の網目構造が破壊されるが、静置時間を設けることで網目構造が再形成し、マッシュポテトの力学的特性と安定性が向上することが示された。
  • 高橋 智子, 河村 彩乃, 大越 ひろ
    セッションID: 2C-a2
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的】本研究では、全粉乳により調製したミルク溶液添加ゲル状パン粥、および食べる人のエネルギー補給のために一部をサラダ油に置換したミルク溶液により調製したゲル状パン粥の物理的特性、食べやすさについて試料品温を変えて検討した。
    【方法】食パンにミルク溶液、および重量の10%をサラダ油に置換したミルク溶液を各々加え真空包装後、95℃の恒温水槽中加熱を行った。加熱後、均一ペースト状まで攪拌・粉砕後、ジェランガム(ケルコゲル,三栄源エフ・エフ・アイ(株))を用いてゲル状パン粥を調製した。物理的特性の検討として、テクスチャー特性、破断特性、サラダ油滴の分散状態の顕微鏡観察を行った。食べやすさの評価として官能評価、嚥下筋電位測定を行った。
    【結果および考察】試料品温45℃のサラダ油置換パン粥試料は延性破断を示し、テクスチャー特性は軟らかく、付着性はミルク溶液添加パン粥試料に比べ、大きい傾向を示した。官能評価結果より、サラダ油置換パン粥試料はミルク溶液添加パン粥試料に比べ、口中でやわらかく、べたつき感があり、口中から喉へ食塊が送り込みにくい傾向にあることが示された。嚥下時筋電位測定の結果、試料品温45℃でサラダ油置換パン粥試料の筋活動時間は、ミルク溶液添加パン粥試料に比べて有意に長いことが認められた。しかし、流動性を有するゆるいゲルを用いてサラダ油置換パン粥試料をまとめることで、テクスチャー特性の付着性は小さくなった。流動性を有するゆるいゲルでサラダ油置換パン粥試料をまとめることにより、食べやすくなることが示唆された。
  • 岩崎 裕子, 大越 ひろ
    セッションID: 2C-a3
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】施設や病院などで、咀嚼機能が低下した高齢者に提供されているきざみ食は、口中でばらつくことから誤嚥の危険性が危惧されている。まとまりをよくするために、先行研究において、トロロの効果が報告されている。本研究では、トロロのように粘稠性を有するゾル試料について力学的特性の測定および官能評価を行い、刻んだ食片をまとめる効果について検討を行った。【方法】試料は、馬鈴薯でんぷん、アルギン酸Na、市販トロミ調整食品2種(キサンタンガム、グアーガム)を緑茶飲料に添加したゾル試料、およびとろろ粉末を用い調整したゾル試料とした。それら5試料の粘度が、ずり速度50s-1において500mPa・sおよび2000 mPa・sとなるよう調整し、流動特性、動的粘弾性、テクスチャー特性、ワイセンベルクの測定を行った。ゲル試料は寒天ゲルを4~5mm角の微細ゲルに成形し、ゾル(500mPa・s)とゲルを重量比1対1で混合系試料とし、テクスチャー特性の測定および官能評価を行った。【結果】混合系試料の官能評価の結果、飲み込みやすさは、アルギン酸Naが最も飲み込みにくく、最も飲み込みやすいと評価されたトロロと有意差が認められた。流動特性の結果、アルギン酸Naは降伏応力が低く、流動性指数が1に近いことから、ニュートン流体様であった。一方、キサンタンガム、トロロの順に降伏応力が高く、流動性指数が小さくなった。動的粘弾性1rad/sにおけるG’は、トロロとキサンタンガムが高い傾向を示した。テクスチャー特性の硬さは、トロロが最も低値を示し、他の試料と異なった。ゾルのG’や降伏応力がゲルをまとめる効果に作用し、官能評価特性にも影響することが示唆された。
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