筑波医学実験用霊長類センターで繁殖・育成されたオス・ミドリザル45頭および当センターへ輸入後10年以上経過した野生由来の成熟オス7頭 (推定年齢15歳以上) の計52頭を用い, 腰椎骨の骨密度, 骨幅, 投影面積の計測とそれらの加齢変化について解析を行い, その加齢変化について検討を加えた。測定には, 2波長X線骨密度測定装置 (DPX-α; Lunar社製) を用いた。計測にあたって, 動物を全身麻酔した後, 発泡スチロール製の保定器に仰向けに固定した。測定は, 第3腰椎から第5腰椎 (L3~L5) で行い, それらの部位を平面に投影した時の平均骨密度 (BMD; Bone mineral density) , 平均腰椎幅 (骨幅) および平均骨面積 (投影面積) について, 小児用解析プログラムを用いて測定した。測定にあたり, 5歳齢から7歳齢の成熟した動物5頭を用い測定値の個体内再現性 (変動係数) を検討した。個体内再現性の平均は, 骨密度で1.9%, 骨幅で0.9%, 投影面積で2.6%であった。6ヵ月齢の動物の骨密度, 骨幅, 投影面積の測定値は, それぞれ約0.3g/cm
2, 1.2cm, 4.5cm
2であったが, その後, 値はゆるやかに増加し, 5歳齢では約0.7g/cm
2, 1.5cm, 11cm
2となり, ほぼプラトーに達し, 以後10歳齢まで, ほぼ一定の値を示した。他方, 10歳齢以上の育成個体と当センターですでに10年以上飼育している野生由来の推定年齢15歳以上の動物では, 投影面積および骨密度は, 5歳齢以上10歳齢以下の動物よりやや小さい値を示した。オス・ミドリザルの場合, 最大骨量を呈している期間は5歳齢から10歳齢までであると判断される。
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