サルモネラ対マウスの実験チフス症において, 均一な高い感受性のDKIに, 比較的抵抗性を示すC3H/Heの, 抵抗性支配遺伝子 (R) を導入したcongenic resistantのDKIRを用い, サルモネラ感染に対する感受性と, 結核菌, リステリア菌, および緑膿菌感染に対する感受性との関係について検討し, 次の成績が得られた。
1.結核菌感染に対して, DKIよりもC3H/Heの方が感受性であるが, DKIRも感受性であり, サルモネラ感染に対する抵抗性とは逆であった。両感染症に対する感受性に何らかの関係が認められるが, しかしそれがR遺伝子と結核菌感染に対する感受性支配遺伝子との連関によるかどうかは, 更に検討を要するであろう。
2.リステリア菌感染に対して, DKIよりもC3H/Heは明らかに抵抗性が高いが, DKIRは僅かにDKIより抵抗性で, R遺伝子は, リステリア菌感受性を支配する複数の遺伝子のうち, 主要遺伝子でないものと何らかの関係をもつことが考えられた。
3.緑膿菌感染に対して, DKIよりもC3H/Heの方が抵抗性であるが, DKIRは抵抗性ではなく, むしろ若干感受性であった。DKIRの脾又は腹腔細胞の殺菌効果はDKIより高いと推察されるが, それが感染防禦効果として反映しないのは, 感染後の菌が細胞外で増殖し, マウスは第一次敗血症によって死亡するためと考えられる。
マウス対サルモネラの実験チフス症において, 高い感受性のDKIに, C3H/Heの比較的抵抗性支配遺伝子 (Rと仮称) を導入したcongeni cresistantのDKIRを用い, サルモネラ感染に対する感受性と, 結核菌, リステリア菌, および緑膿菌感染に対する感受性との関係について検討し, 次の成績が得られた。
1.結核菌感染に対しては, サルモネラ感染とは逆に, DKIよりもC3H/Heは感受性であるが, DKIRもまた感受: 性であり, 両感染感受性には何らかの関係があると考えられる。
2.リステリア菌感染に対して, DKIRは僅かにDKIより抵抗性で, R遺伝子はC3H/Heの抵抗性の一部に関与することが考えられた。
3.緑膿菌感染に対する感受性には, 系統の差よりも個々のマウスの菌のクリアランスの差が強く影響した。
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