われわれの研究室で維持している14系統の近交系モルモットコロニーに発生した肺炎球菌感染を, 1981年1月から10月にわたって疫学的に観察した。発症個体の月別発生率は16.6~0%で, とくに発生の最初の月に多かった。しかし, 系統によって発症率に著しい差がみられ, JY-1系の75%に対してJYGやStrain 2系では0%であった。発症個体は立毛, 鼻孔周囲の乾燥した汚れ, 腹部の削痩, 呼吸困難などの症状を示し, 一部には死亡例もみられた。病理学的には線維素化膿性肺炎, 胸膜肺炎および胸膜炎が主病変で, 一部の個体ではさらに線維素化膿性心外膜炎, 腹膜炎とこれに伴う胸水や腹水の滲出がみられた。菌は大部分の有病変臓器および鼻腔や気管から分離された。鼻腔からの検出率はとくに高く, 無症状保菌動物も含めて, 感染動物の97.1%が陽性を示した。鼻腔検査によって健康保菌動物を3回にわたって調べたところ, 保菌率は17.2%から36.5%まで徐々に増加する傾向がみられたが, JYG系では常に陰性であった。
観察期間中にホルマリン死菌ワクチンの接種, 早期離乳, 飼料中ビタミンCの増加などの防止対策を施したが, その有効性は確認できなかった。一方, 本流行例から分離した1菌株をハートレイ系モルモットに経鼻感染させたところ, 自然例と相似の病変を形成した。
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