本稿では,自然災害リスクマネジメントに関連して,政府が各個人の災害防止努力コストを引き下げることを目的とした「防災情報提供」と災害発生時における災害損失額を引き下げることを目的とした「災害時の備え」を実施する状況についての経済分析を行う。そして分析の結果,⑴災害防止努力を実施しなかったときの災害損失発生確率が低下したとき,初期富の大きさが減少したとき,災害防止努力コストの最低値が低下したとき,政府は防災情報提供の水準を上昇させ,災害時の備えの水準を低下させること,⑵災害防止努力を実施したときの災害損失発生確率および災害防止努力コストの最高値が上昇したときにおける防災情報提供および災害時の備えの水準の変化については一概に言えないこと,⑶社会に存在する個人の人数が増加したとき,防災情報提供および災害時の備えの水準のいずれか一方あるいは両方を上昇させること,⑷防災情報提供前における災害防止努力コストが低い範囲に分布しているとき,災害防止努力の効果が大きいとき,初期富が小さいとき,災害防止努力を実施する社会に存在する個人の割合は高くなること,を明らかにする。
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら