損害保険研究
Online ISSN : 2434-060X
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<研究論文>
  • ―近時の裁判例を参照して―
    武田 典浩
    2023 年 84 巻 4 号 p. 1-41
    発行日: 2023/02/25
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    近時,我が国においても,再保険契約における出再者による受再者に対する再保険金請求事例が増えており,そこではイギリス再保険法における議論が相当程度参照されている。本稿では,そのイギリス再保険法におけるFollow the Settlements条項に関する裁判例を概観することにより,それら事例への示唆を得たい。とりわけ,イギリス再保険法においては契約の明示的な条項の解釈を最重要視し,仮に明示的な条項がないときにはそれに付随する条項を厳格に解釈することによって,問題解決に当たっている。我が国における請求事例においても,契約の明示的条項の解釈が最重要視されており,このイギリス法の状況と同じであるといえる。

  • ―海上保険実務家の視点から―(1)
    久保 治郎
    2023 年 84 巻 4 号 p. 43-76
    発行日: 2023/02/25
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    海事私法には陸上の企業活動に適用される規律とは性質を異にする,言わば海的色彩を帯びたものがある。本稿では,代表例として航海過失免責,船主責任制限,共同海損,不成功無報酬の原則に基づく成功報酬型救助契約を取り上げて,本来の趣旨を確認し規律と実務の現状を分析した上で今後のあり方を検討した。その結果,これらの制度は現在も維持されているが,利害関係人の意識を含めた社会環境の変化に伴う規律の改正や新規律の成立,判例や実務の変化によって変質していることが理解できた。特に,不成功無報酬の原則は既に実質的に廃止に至っていると評価できる。制度間の関連性の観点から,今後,既存条約の発効によって航海過失免責が廃止されると共同海損制度は機能不全に至る事態が予想される。海上保険による機能代替の観点から考察すれば,他の制度は廃止があり得るが,成功報酬型救助契約は機能代替が不能であり,今後も維持されるべきものである。

<研究ノート>
  • ―企業保険市場・個人保険市場の半世紀の変遷と現在の動向―
    大島 道雄
    2023 年 84 巻 4 号 p. 77-127
    発行日: 2023/02/25
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    1970年前後,損害保険企業では「保険の大衆化」という言葉が飛び交っていた。本稿は,この言葉が損害保険事業においてどのような意味を持っていたか,具体的に損害保険事業にどのような変化をもたらしたのか,およびその変化は現在どのような状況にあるかについて考察したものである。この結果,その本質はそれまでの企業保険市場に重点を置いた損害保険企業の経営を個人保険市場重視に転換すること,すなわち,経営構造を転換するための挙社体制の販売キャンペーン等を含む,損害保険企業全体を巻き込んだ大きな変革のうねりであったことを論じている。次に,すべての損害保険を個人保険及び企業保険に区分し市場動向の分析を行った。特に火災保険及び自動車保険に関してはそれぞれの市場の伸び率,損害率,シェア等を検証した結果,個人保険市場が規模のみならず収益性においても企業保険市場より優位性を占めたこと,また,この個人保険市場が優位な状態は,1995年の業法改正により大きな影響を受けたものの,2010年代まで継続していたことを明らかにした。さらに,この個人保険市場優位の損害保険市場の,近年における変化および近時の損害保険企業の諸活動を考察した結果,現在は,成長セクターが個人保険市場から企業保険市場に移りつつあり,損害保険事業は既に第二の構造転換期に差し掛かっていると考えられることを論考している。

<損害保険判例研究>
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