損害保険研究
Online ISSN : 2434-060X
Print ISSN : 0287-6337
77 巻, 3 号
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<論文>
  • —リスク情報提供と規制の在り方をめぐって—
    中林 真理子, 井出野 尚, 佐々木 美加
    2015 年 77 巻 3 号 p. 1-17
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

     保険契約者は保険加入に際して何を不安に感じるのかについてweb調査(2014年度実施「第2回自動車保険加入時のリスクの捉え方に関する調査」)に際し,2012年実施の第1回調査の結果の因子分析をもとに,「契約者にとって,加入時に商品内容について十分な説明が受けたいのは確かだが,それはどのようなサービスがあるか,また事故の際に自分が保険金を迅速に入手できるかといった直接的な情報であって,あらゆる情報について時間をかけて伝えてほしいという訳ではない」という仮説を設定した。本論文は,この仮説を検証し,保険募集をめぐる情報提供とそれへの規制の在り方について考察するものである。第2回調査の結果の因子分析で,リスク認知次元として『安心・信頼』,『コスト削減』,『情報探索因子』の3因子構造が抽出されるとともに,上記仮説は強く裏付けられる程ではないものの,完全に否定すべきものでもないという結果となった。この仮説を検証するための分析をさらに重ねる必要があるとともに,契約者に過度の負担をかけずに重要な情報を確実に伝える方法は画一的に示されるものではなく,その結果,そのため規制の在り方も一概には決められないものであることを指摘した。

<研究ノート>
  • —コンビニエンスストアの賠償リスクの一側面—
    鎌田 浩
    2015 年 77 巻 3 号 p. 19-43
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

     コンビニエンスストアは,食品・日用品等の販売,ATM,宅配便の集荷,公共料金の支払,通販商品の受け取り等の各種サービスの他,防犯・防災や高齢者見守りの場といった社会インフラやセーフステーションとしての役割も有している。また,24時間365日営業をしている店舗には老若男女を問わず不特定多数の者が出入りし,「社会的空間」と呼ぶにふさわしい場を提供する一方で,来店客の利用行動に応じた「賠償リスク」がそこには見出される。そこでコンビニエンスストアの店舗構造・管理の特性から,特に同一平面における転倒事故に注目した。転倒を生じる「転倒の3要因」から転倒のメカニズムを解析し,過去の判例からコンビニエンスストアの賠償責任の認否を検討した。店舗内の構造・管理に起因する原因を分析し,店舗としての転倒予防の対策を進めることが課題である。

  • —流早産例—
    清水 秀規
    2015 年 77 巻 3 号 p. 45-73
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

     交通事故に遭遇した妊婦は外傷による切迫流産や流産,早産(以下「流早産」という。)を伴うことがある。裁判例において交通事故と流早産との因果関係について争った際に,胎児に相当する部位(腹部・腰部・骨盤)に外力が加わっていない場合であっても,事故との因果関係が認められる判例があり,判断根拠に疑問が残る事例もある。

     そこで,本稿は,判決文から交通事故と流早産との因果関係を判断した裁判例の理由について,事故形態,重症度,妊娠期間,異常症状の出現時期,受傷部位について検討し,裁判所の判例傾向を明らかにした。

<講演録>
<寄稿>
  • 髙野 浩司
    2015 年 77 巻 3 号 p. 145-170
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

     海上保険法を含む商法の現代化作業の過程で,法制審議会が作成した「商法(運送・海商関係)等の改正に関する中間試案」のパブリックコメント手続きに則り,損保業界は意見書を提出,海上保険実務を担う者として一連の議論に対する立ち位置を明らかにしている。

     試案は,海上保険法を企業保険のデフォルト・ルールを示すものとして存続させることを前提に,自発的申告義務を定める「告知義務」の規律の新設,失効や以後免責を定める「危険の変更」の規律の維持を提言。また,審議過程では海上保険法の適用範囲が実務実態に近い形で確認された。委付の廃止をはじめ,予定保険,法定免責の規定整備など,現行海上保険実務に沿った提案が多いが,航海保険の規定の廃止,遅延免責の導入見送りなどは実務家に異論を残した。

     本稿では,今日の海上保険実務とその背景にある考え方をもとに,損保業界がどのような意見を表したかを記す。

<損害保険判例研究>
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