本稿は,従来あまり議論がなされてこなかった論点を中心に,告知義務違反時の因果関係不存在特則に関して今後議論すべき論点の全体像を示すことを目的とするものである。具体的には,まず,因果関係不存在特則における因果(原因と結果)および因果関係の内容を解明することを試みるとともに,告知義務違反に基づいて保険者が保険契約を解除した場合に,請求者がいかにして因果関係不存在を立証することができるかを検討する。そのうえで,自動車保険の告知事項である記名被保険者の運転免許証の色のように,危険に関する事実を表象する事柄を告知事項とする場合に因果関係不存在特則をいかに適用すべきかを検討する。検討の結果,今後議論すべき課題が多く残されていることが明らかとなった。
本研究は自然災害に備える意思決定を確率的な発生時間を考慮したランク依存型効用関数を用いて考察する。特に,損失を回避したいと望む焦燥が将来に向けた時間の隔たりの大きいほど弱まる選好特性を正式に特徴付け,当該選好が,ランク依存型効用の確率加重関数の対数を取った場合に,点1で星形の関数となることと同値であることを示した。本研究の特徴付けた選好を持つ意思決定者の望む損失補償保険を考察すると,現在からある一定期間に起こる損失のみをすべて補償し,それ以降の損失を補償しない保険がよいとの解釈を得る。
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