深地層の研究施設である瑞浪超深地層研究所は,2本の立坑及び水平坑道で構成された深度500mに及ぶ研究坑道が掘削され,深度500mでは,湧水箇所の水圧は概ね3MPaを超え最大4MPaの高水圧という施工条件であった。地下深部における高い湧水圧の条件下において,十分な湧水抑制対策を行うことができる技術の確立は,高レベル放射性廃棄物の地層処分事業の実施において重要な技術開発課題の一つとされている。このため,研究坑道掘削時に,深度500mまでの範囲で工事の安全確保とともに坑道内への湧水を抑制するため,湧水抑制対策技術の開発を実施した内容について紹介する。
本報告では,福岡市地下鉄七隈線トンネルの陥没事故に伴うトンネル周辺の地下水の変化について七隈線建設技術専門委員会ならびに福岡市交通局技術専門委員会における資料をもとに整理する。
その結果,陥没事故により,急激な地下水低下を生じたこと,さらには,陥没孔を埋設した後,地下水がどのように回復したかを明らかにする。さらに,トンネルの再掘削を行うために実施する水抜き工事の方法を地下水回復の過程を考慮して検討し,工事による周辺地盤への影響を最小限に抑えて水抜きを行った結果を示す。最後に,トンネル内の土砂撤去を行った際の地下水変化の状況についても述べ,地下水の状況が陥没事故発生以前の状況に回復したことを示す。
大土被り下でのトンネル施工では事前調査で得られる地山情報に制約があるため,掘削中の観測,計測結果を最大限活用することが重要である。現在,中央日本の赤石山地において延長約25km,最大土被り1400mに及ぶ中央新幹線のトンネルを建設中である。変化する地質や地下水の状況に効果的に対処するため,切羽付近から掘削と並行して実施する1000m級の超長尺コントロールボーリングとトンネル計測管理とを組み合わせ,地山状況の把握とトンネル掘削時の挙動予測を行っている。
本手法は,大土被り下における安全で合理的なトンネル施工を進める上で効果を挙げている。
比貯留係数Ssは飽和層内における地下水流の非定常挙動に影響を与える帯水層定数である。地下水流動の予測は定常状態での評価が設計に取り込まれることが多いが,数値解析技術の普及に伴って非定常状態で評価する機会が増えてきたことから,Ssを活用する場面も増加している。Ssを測定する機会は透水係数より少なく,そのため文献からSsを得ることが頻繁になされているのが実状である。しかし,いくつかの文献では単位変換過程で数値の桁落ち,誤転記,誤換算がみられることから,本報文ではこれを指摘するとともに,修正したSsを示す。