地層が堆積した当時の水文情報が残っている可能性のある霞ヶ浦において,海水準変動,塩濃度変化,堆積物の堆積過程といった長期的な変遷を考慮した非定常の2次元鉛直断面地下水流動解析を行った結果,既往調査で得られた2地点のコア間隙水の塩濃度プロファイルを概ね再現することができ,2地点の陸域からの淡水地下水の寄与の違いを定量的に示すことができた。解析結果からも,湖岸に近いSiteK-1は地表水だけでなく陸域からの地下水の影響を受けやすい環境であるのに対し,湖心付近のSiteK-2は陸域からの地下水の影響を受けにくい環境であった。非定常解析を行うことにより,以上なような詳細な水文環境の変遷状況が明らかとなった。
大気濃度の分布を理解することは,SF6による地下水年代推定の生命線である。日本国内の大気SF6濃度の空間分布を明らかにするために,東京・名古屋・大阪の三大都市と都市域から離れた中部地方の山岳地域において大気濃度の観測を実施した。すべての観測地点の濃度は北半球の清浄大気の濃度を超過していた。東京・大阪・名古屋・中部地方の山岳地域の平均超過率はそれぞれ103%,52%,30%および15%であった。これらの超過は3~17年の見掛けSF6年代の過小見積もりを生じさせるため,日本でSF6による地下水年代推定を実施するためには大気濃度の補正が必要である。
中国地方の中山間地域の地下水から高い塩化物イオン濃度が検出され,この地下水を使用した電気温水器等が錆等により短期間で故障した。電気温水器は一般に耐久性に優れている銅等が用いられているが,この故障原因と塩化物イオンとの関係は高いものと考えられた。
本研究は,地下水に含まれる塩化物イオンと電気温水器の故障との因果関係を整理するとともに,簡易な腐食促進試験により塩化物イオン濃度に依存する銅の腐食度及び耐用年数との関係を簡易的に求めた。その結果,耐腐食性のある銅は,高温多湿状態においては,低い塩化物イオン濃度(約20mg/L)によっても10年程度で腐食が生じる可能性があることが分かった。