日本補完代替医療学会誌
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2 巻, 1 号
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特別講演
総説
  • 坪野 吉孝
    2005 年 2 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/11
    ジャーナル フリー
    近年の栄養疫学研究の発展に伴い,食物栄養素とがんとの関連に関する各種の知見が,大規模な介入研究や前向きコホート研究から報告されている.これらの知見を集約して,がんと栄養に関する判定と勧告を行う試みが,国際機関などにより行われている.本稿では,World Cancer Research Fund と World Health Organization がそれぞれ出版した報告書における,がんと栄養に関する知見の現状を概括した.さらに,野菜および果物とがんに関する最近の前向きコホート研究の現状を示した.
  • 黒木 政秀, 芝口 浩智, 黒木 求
    2005 年 2 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/11
    ジャーナル フリー
    がんの免疫療法は,大きくワクチン療法と抗体療法に分けられる.ワクチン療法が患者自身の細胞性免疫賦活を目指す能動免疫療法であるのに対し,抗体療法は異種動物の液性免疫(抗体)を利用する受動免疫療法である.その抗体療法の特徴の一つは,癌細胞上の標的分子の発現が HLA に非依存性であるとともに,組織検索によりその存在の有無が容易に確認できその有効性の有無が予測できることである.近年,悪性リンパ腫を中心とする造血器腫瘍や乳癌を中心とする固形腫瘍に対するキメラないしヒト化抗体が実用化されている.一方で,遺伝子改変マウスを利用した完全ヒト型抗体の作製が可能となり,異種抗体の免疫原性の問題が完全に解消されるとともに,ヒト補体およびリンパ球との相性一致も可能となった.また,抗体は細胞性免疫のエフェクター細胞である CTL や NK 細胞の癌細胞標的化に利用されるとともに,遺伝子療法の癌細胞標的化にも利用されている.
  • ―その情報の問題と対処法―
    小内 亨
    2005 年 2 巻 1 号 p. 23-36
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/11
    ジャーナル フリー
    日本で入手できる健康食品に関する情報のほとんどは広告である.広告から得られる情報にはバイアスがかかっており,そこから健康食品の科学的評価やその問題に関する情報を得ることはできない.日本の健康食品には臨床研究が不足しており,不均一性,副作用,医薬品との相互作用など様々な問題がある.したがって,自分に適した健康食品を選択するためには,広告情報の限界を知り,そこから得られない情報について積極的に収集する姿勢が重要である.
  • 藤本 靖
    2005 年 2 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/11
    ジャーナル フリー
    ロルフィングは,軟部組織に働きかけることにより重力場において身体全体を最適にバランスさせる手技療法である.ここでは,ロルフィングの現状,歴史,理論的背景について概観し,その効果についての研究結果を紹介する.
  • 中村 純, 松香 光夫
    2005 年 2 巻 1 号 p. 45-57
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/11
    ジャーナル フリー
    ミツバチの生産物の一つであるプロポリスは,ミツバチが植物の防衛物質である樹脂などを集めて,巣の補強,保持に供するものである.また民間医療薬として用いられてきた歴史があり,昨今の日本では健康食品として普及している.各種の生理活性が報告されているが,本稿では 163編の文献を引用しながら,プロポリスの由来,研究の概況,化学成分について略述し,補完代替医療素材としての観点から幅広い生理活性について,その活性成分の検討,作用機作,また実際の効果試験についての研究成果を紹介した.取り上げた生理活性は,抗微生物(細菌,真菌,原虫,ウイルス)活性,抗酸化作用,抗炎症作用,抗腫瘍活性,抗肝毒性,とその他の作用である.また,利用に当たっての注意事項も付した.
原著
  • 栗山 洋子, 渡邉 聡子, 忠井 俊明, 福居 顯二, 白畠 庸, 今西 二郎
    2005 年 2 巻 1 号 p. 59-65
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/11
    ジャーナル フリー
    目 的:マッサージの免疫学的,心理学的及び血清脂質に及ぼす影響を検討する.
    デザイン:32 名に対する被検者内比較試験
    場 所:京都府立盲学校及び京都府立医科大学
    方 法:18 歳から 56 歳までの 32 人の成人(男性 10 人,女性 22 人)に 25 分間の全身のマッサージをおこない,白血球数,白血球分類,血清脂質,唾液分泌型 IgA,STAI 不安尺度 (State-Trait Anxiety Inventory) などにつき検討した.
    結 果:心理学的指標;状態不安,特性不安,ともに有意に減少した.血清脂質;統計学的に有意な血液希釈が認められ,血清 T-CHO HDL-c,LDL-c ともに有意減少した (p<0.001).免疫学的指標;統計学的に有意な好中球の減少 (p<0.05) と CD16 陽性細胞の減少 (p<0.01) が認められた.
    結 論:以上により,マッサージ療法は不安を軽減し,免疫力および血清脂質濃度に影響を与えることが示唆された.
  • 丸谷 晃子, 松木 幸栄, 八田 理恵, 斉藤 佳恵, 橋本 多恵, 水野 一美, 竹内 弘美, 冨田 静江, 大野 智, 小松 和人, 並 ...
    2005 年 2 巻 1 号 p. 67-73
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/11
    ジャーナル フリー
    我が国における癌患者の補完代替医療利用の実態についての報告は散見されるが,良性疾患も含めた外来通院患者の利用実態についての報告は少ない.そこで,我々は,2004年3月10~31日までに金沢大学医学部附属病院泌尿器科外来を受診した全患者331名を対象に代替医療利用実態の聞き取り調査を行なった.補完代替医療利用者は101名(30.5%)であり,年齢,性別による利用率の差は認めなかった.疾患別の利用率は良性疾患55名(27.0%),悪性疾患46名(36.2%)であり,悪性疾患患者の利用率が高い傾向を認めた(P=0.08).また,利用者のうち医療従事者に補完代替医療の利用を相談している患者は,16名(15.8%)であった.このことより我々は補完代替医療の現状を十分把握していないことが推測された.補完代替医療を併用する患者を把握し,患者に不利益がないか検証することが今後の課題であることが示唆された.
臨床現場シリーズ
  • 川嶋 朗, 班目 健夫
    2005 年 2 巻 1 号 p. 75-79
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/11
    ジャーナル フリー
    日本には,漢方医学という伝統的な医療がある.漢方薬は 1895 年に一度廃絶されたが,1965 年には復権し,保険医療で認められるに至っている.最近では,カイロプラクティックやアロマセラピーなどの他国から輸入された相補(補完)・代替医療 Complementary and Alternative Medicine (CAM) がわが国でも広がりつつある.漢方医学以外の CAM に関する学会の設立は目白押しで,遅ればせながら CAM に取り組む気運が盛り上がりつつある.教育面では漢方医学が広く普及してきたが,その他の CAM についても少数ではあるが,教育を行う施設も出てきている.しかしながら,CAM の実践となると家庭医くらいで病院は数えるほどしかない.さらに統合医療となると実践施設はほとんど存在しないのが現状である.2003 年 6 月,東京の青山にわが国の大学としては初の統合医療実践施設が誕生した.西洋医学の専門家が CAM を中心に診療を行っている.筆者はその責任者である.本稿では,統合医療を実践するための問題点や現在行っているプログラムなどについて報告する.
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