日本補完代替医療学会誌
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5 巻, 3 号
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総説
  • 三浦 健人, 北舘 健太郎
    原稿種別: 【総説】
    2008 年 5 巻 3 号 p. 163-171
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    ポリフェノールは植物界に広く分布する成分で,抗酸化活性などの機能を有し,食品工業においても幅広く利用されている素材である.プロアントシアニジンはカテキンの重合体で,天然に得られるものの多くは高分子量であるため,経口的に摂取された際に生体への吸収性が低いとされていた.我々は長崎大学薬学部との共同研究により,このプロアントシアニジンを食品産業上利用できる形で低分子化することに成功し,in vivo での抗酸化活性に優れた“Oligonol(オリゴノール)”を開発した.
    Oligonol ではライチ果実由来のプロアントシアニジンを酸性条件化で断片化し,下端ユニットにカテキン類を配位させることで安定的に低分子のプロアントシアニジンを得ることに成功した.
    Oligonol は,各種安全性試験により安全性が確認されているほか,ヒト第 1 相安全性試験も実施されており,米国食品医薬品局 (FDA) の NDI (New Dietary Ingredient) としても登録承認されている.また,経口摂取した際の生体への吸収に優れ,血流改善機能,抗疲労作用,内臓脂肪低減作用,美容作用などの機能面の研究が進んでいる.
  • 板倉 弘重, 高橋 二郎, 北村 晃利
    原稿種別: 【総説】
    2008 年 5 巻 3 号 p. 173-182
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    アスタキサンチンは,広く天然に存在する赤色のカロテノイドの一種であり,一重項酸素消去および抗脂質過酸化活性などの優れた抗酸化作用を有する.近年さまざまな生理活性が報告されるようになり,健康食品および化粧品素材として普及しつつ,予防医学の領域においても注目されている.本稿では,アスタキサンチンの由来,他のカロテノイドとの比較,化学的特長に触れつつ,抗脂質過酸化活性,抗炎症,血流改善,メタボリックシンドローム改善,眼精疲労改善,ピロリ菌抑制,脂質代謝改善,筋肉疲労改善,美肌効果,男性不妊症改善などの機能性,さらに体内動態および安全性についての細胞,動物試験,および臨床試験などの結果を取り上げ,補完代替医療素材としての可能性を紹介する.
  • 林 浩孝, 大野 智, 新井 隆成, 鈴木 信孝
    原稿種別: 【総説】
    2008 年 5 巻 3 号 p. 183-196
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    「特定保健用食品」のうち,生活習慣病の原因の 1 つである動脈硬化に関連して「コレステロールが高めの方に適する」表示をした食品については,現在のところ,再許可等特定保健用食品を含め 100 種類以上の商品がある.そのうちのいくつかについて,安全性・有効性について解説する.
  • 林 浩孝, 大野 智, 新井 隆成, 鈴木 信孝
    原稿種別: 【総説】
    2008 年 5 巻 3 号 p. 197-208
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    「特定保健用食品」のうち,生活習慣病の 1 つである動脈硬化に関連して「食後の血中中性脂肪が上昇しにくいまたは身体に脂肪がつきにくい」表示をした食品については,現在のところ,再許可等特定保健用食品を含め約 70 種類の商品がある.そのうちのいくつかについて,安全性・有効性について解説する.
原著
  • 岡崎 真理, 田中 愛子, 八田 侑子, 川原 由紀子, 神内 伸也, 岩田 直洋, 浅野 哲, 鈴木 史子, 飯塚 博, 日比野 康英
    原稿種別: 【原  著】
    2008 年 5 巻 3 号 p. 209-218
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    糖尿病では,持続的な高血糖状態による酸化ストレスが病状の進行や合併症の誘発に密接に関与する.そこで,霊芝菌糸体培養培地抽出物 (WER) の抗酸化活性を調査し,ストレプトゾトシン (STZ) 誘発糖尿病マウスを用い,WER の糖尿病態改善効果について検証した.
    WER の O2 消去能および過酸化脂質産生抑制能を調査した.また,STZ 糖尿病マウスに WER (1 g/kg) を約 2 ヶ月間 1 日 1 回経口投与し,血糖値,体内酸化ストレス度,臓器の過酸化脂質含量および抗酸化酵素 (catalase, SOD, GPx) の活性について検討した.
    WER は濃度依存的な O2 消去能および過酸化脂質産生抑制能を示した.WER を投与した STZ 糖尿病マウスでは対照群に比べ血糖値および血中酸化ストレス度の有意な低下が認められた.また,WER は腎臓および肝臓の過酸化脂質含量および抗酸化酵素活性を正常群と同レベルに維持し,組織学的障害を軽減した.これらの結果から,WER は糖尿病における高血糖および酸化ストレスを低下させ,臓器障害を予防・改善する可能性が示された.
  • 手計 雅彦, 明壁 史弥, 田頭 栄治郎, 熊谷 道彦
    原稿種別: 【原  著】
    2008 年 5 巻 3 号 p. 219-224
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    目的:ブタプラセンタエキスの抗アンドロゲン作用について検討をおこなった.
    方法:アンドロゲンレセプターを持つヒト前立腺癌細胞株 LNCaP.FGC を用いてブタプラセンタエキスの細胞増殖に及ぼす影響を検討した.また去勢ラットを用いて外因性のアンドロゲンの検討を行った.
    結果:ヒト前立腺癌細胞株 LNCaP.FGC を用いた検討では,培養系にジヒドロテストステロンを添加せずにブタプラセンタエキスを添加した場合は,細胞増殖に影響を示さなかったが,ジヒドロテストステロンを添加した群では,ブタプラセンタエキスの添加量に依存して細胞増殖の抑制が認められた.また,培養上清中の PSA (prostate specific antigen) 量は,ブタプラセンタエキスの添加量に依存して低下が認められた.また,ウエスタンブロットによる検討では,アンドロゲンレセプターの産生量が減少していた.
    去勢したラットを用いた外因性のアンドロゲンの検討においても,テスロステロンの作用を抑制する傾向を示した.
    結論:ブタプラセンタエキス中には,アンドロゲン作用を抑制する物質が存在することが示唆された.
  • ―映像選択システムの併用による色彩映像の感情刺激効果の検討―
    齋藤 ゆみ, 笹山 哲, 菅 佐和子, 池本 正生
    原稿種別: 【原  著】
    2008 年 5 巻 3 号 p. 225-232
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    目的:映像選択システムを併用した色彩映像の感情刺激効果を明らかにすること.
    方法:個人の嗜好や感情状態に適した映像を選択するシステムを併用して,コンピューターに取り込んだ「花」と「海」の 5 色彩系からなるオリジナル映像(それぞれ各色彩 10 枚,各計 50 枚の映像)の感情刺激効果を調べた.被験者は大学生 40 名.定期試験期間および試験ストレスの無い時期に色彩映像を提示し,その前後で多面的感情状態評価と唾液中のストレスホルモンを測定した.
    結果:色彩映像見た後では非活動的快や親和などのポジティブな感情が有意に上昇し (p<0.05),抑うつ・不安,倦怠,敵意などのネガティブな感情が有意に抑えられた (p<0.05).また,この結果はストレス指標のクロモグラニン A の有意な低下 (p<0.05)によっても確かめられた.
    結論:色彩映像は感情状態を副交感神経優位な状態に変化させる刺激効果があることが示唆された.
  • 森 広子, 小林 章子, 吉川 沙苗, 山下 仁
    原稿種別: 【原  著】
    2008 年 5 巻 3 号 p. 233-240
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    目的:医療現場でのアロマセラピーの有用性,導入可能性,および導入時の課題についての検討を目的とする.
    方法:大阪市内の鍼灸・柔道整復専門学校学生 866 名を対象にアンケート用紙を配布し意識調査を行った.
    結果:補完代替医療の利用率は 97.1%と高く,その中でのアロマセラピー利用率は 25.8%で,特に女性の利用率が高かった.利用経験者が自覚した利用目的に対する効果は,73.8~89.2%と高く,「メディカルアロマセラピー」に対しても 7 割が興味を示しており,最も期待する治療領域は心身症/精神疾患で 89.4%を占めていた.課題としては,特に有効性の科学的証明やコストダウンが挙げられた.
    結論:課題を解決することが出来れば,アロマセラピーが医療現場に浸透していく可能性は高く,患者にとってより満足度の高い医療を提供するための一つの手段と成り得ると考えられた.
短報
  • 大坪 憲弘
    原稿種別: 【短  報】
    2008 年 5 巻 3 号 p. 241-246
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    タベブイア・アベラネダエ粉末から抽出されたタヒボエキスの,ラット腹腔内肥満細胞からのヒスタミン遊離に対する作用を in vitro において調べた.肥満細胞を compound 48/80 または concanavaline A で刺激した際,通常の飲用濃度のタヒボエキスはどちらの刺激に対しても,濃度依存性にヒスタミン遊離を抑制した.タヒボエキスは compound 48/80 による刺激に対し,競合的阻害を示し,concanavaline A による刺激や, phospha-tidylserine に対しては非競合的阻害を示した.以上より,タヒボエキスはヒスタミンによるアレルギー反応を抑制することが示唆された.
臨床現場シリーズ
  • 楊河 宏章
    2008 年 5 巻 3 号 p. 247-250
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    補完代替医療の適正な利用に関する情報提供の必要性がますます高まっているなか,徳島大学病院では平成 19 年 7 月に補完代替療法室・おくすり相談室を開設し相談業務を開始した.食品などの分野に関する対応であるが,既存のエビデンスが少ないため,対応に当たって困惑することも少なくなく,他の大学病院における補完代替医療の外来診療部門との交流が業務の質向上には効果的と考えられた.今回,平成 20 年 7 月 14 日に徳島大学病院に金沢大学大学院補完代替医療学講座の大野智准教授をお招きし,第 1 回大学病院補完代替医療外来連絡会を開催したので報告する.
    患者,相談担当者,主治医がどのように情報を共有するかが重要であり,そのシステム構築が今後の課題であること,利用に関する判断の基準として科学的根拠が重要との説明が中心になること,「がんの補完代替医療ガイドブック第 2 版」や独立行政法人国立健康・栄養研究所のデータベースなどを参考に公表されたエビデンスを回答の根拠とすること,作用機序に関しても一定の範囲で説明する例が多いこと,対応後のフォローアップ体制構築が今後の課題であること,などの現状や問題点などが報告された.また,代表的な事例として,通常診療との相互作用で影響が懸念される例などが紹介され,特に補完代替医療の中で,単独,または相互作用で健康被害を生じる可能性のあるものに関する情報提供の必要性が示された.
    補完代替医療の利用状況の適切な把握,病院職員に対する補完代替医療の啓発,新しいエビデンスを構築するために,補完代替医療に関する臨床試験を推進する必要性があること,また臨床試験の前提となる安全性評価のガイドライン作成が必要である,などの課題も確認された.今後もこのような情報交換の機会継続を予定している.
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