【目的】胎盤抽出物 (PE) は,アジア各国において更年期症状,創傷治癒や肝障害などに民間療法として用いられてきた.本研究では,ブタ胎盤抽出物 (PPE) が免疫系に及ぼす作用を探る一環で,単球細胞に対するサイトカインの産生と樹状細胞 (dendritic cells: DC) 分化誘導に対する作用を調べた.
【方法】株化ヒト骨髄由来単球細胞腫 (THP-1) をlipopolysaccharide (LPS) 存在下で,PPEあるいはヒト胎盤抽出物 (HPE) を作用させ,interferon (IFN)-γ,tumor necrosis factor (TNF)-α及びinterleukin (IL)-6の発現をELISA法とreal-time PCR法で測定した.さらに,PPEをTHP-1に処理することで,細胞膜表面に発現する樹状細胞系のマーカーであるCD11b,CD80 およびHLA-DR及ぼす影響について検討した.さらに,ヒトにおけるPEE投与が末梢血単球細胞 (PBMC) 中のDC発現数に及ぼす影響についてもフローサイトメトリー法により調べた.
【結果】HPEやPPEは,LPS存在下におけるIFN-γ,TNF-αおよびIL-6の分泌を促進した.また,PPEはIFN-γ処理したTHP-1 細胞 におけるCD11bやCD80 を増加させた.さらに,PPEの投与は閉経婦人のPBMC中のDC数を増加させた.
【結論】PPEは,単球系細胞の免疫応答と樹上細胞の発現を調節する作用があるこがin vitroおよびPPE投与患者において認められたことから,胎盤抽出物には,単球系の免疫応答の制御を介して種々の疾患に有効性を発揮している可能性が考えられた.
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