Journal of Computer Chemistry, Japan
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8 巻, 1 号
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研究論文
  • 小林 正人, 赤間 知子, 中井 浩巳
    2009 年 8 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2009/03/15
    公開日: 2009/03/15
    [早期公開] 公開日: 2008/11/25
    ジャーナル フリー
    線形コストスケーリング電子状態計算法のひとつである分割統治(DC)法は,これまで主にHartree-Fock (HF)交換項を含まない密度汎関数理論(DFT)や半経験的な分子軌道計算に適用されてきた.著者らは,このDC法をHF計算やハイブリッドDFT計算に適用し,効率的で有用な方法であることを確認してきた.さらに,エネルギー密度解析(EDA)の考え方を利用して,DC-HF計算で得られる部分系の軌道を用いた線形スケーリングポストHF計算法を独自に開発し,2次摂動(MP2)および結合クラスター(CCSD)計算でこの方法が有用であることを示した.著者らの研究室では,これらの手法は量子化学計算プログラムGAMESSに実装されており,通常の入力ファイルに多少の変更を施すだけで簡単に利用できるようになっている.本論文では,これまでにGAMESS上で開発を行ってきたDC計算プログラムの実装と計算可能なプロパティについて述べ,DC計算の実行方法および計算結果について報告する.
  • 青山 智夫, 神部 順子, 長嶋 雲兵, 中山 榮子
    2009 年 8 巻 1 号 p. 13-22
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/03/15
    [早期公開] 公開日: 2008/12/12
    ジャーナル フリー
    黄砂,ヘイズは大気中の浮遊粒子状物質(Suspended Particulate Matter, SPM)が起こす現象である.我々はそのときのSPM濃度分布を調査した.その結果SPM濃度分布にメソ構造が存在すること,その構造が黄砂現象と大気境界面で違うことを示した.
    メソ構造の詳細を見るため,デジタル一眼レフカメラを用いるSPM可視化の方法を考案した.その方法で明らかになった黄砂現象の特徴は,
    1. 分布形状は不定形で高濃度の中心部と周辺部がある.雲の生成を伴うこと,
    2. 随伴雲の位置から判断すると黄砂の上限高度は約600mであること,
    3. 海に沈降する黄砂は,本体とヘイズ部の二層構造を成していること,
    である.同法をヘイズに適用して,
    1. 大気の中の微細な流れをSPMの散乱光は明らかにし,大気流動のトレーサになること,
    2. SPM粒子散乱光のRGB分解画像から大気の立体構造が定性的に分かること
    が明らかになった.
  • Yosuke KATAOKA, Yuri YAMADA
    2009 年 8 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2009/03/15
    公開日: 2009/03/15
    [早期公開] 公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    The Gibbs free energies of proton-ordered ices were estimated by molecular dynamics simulations. The ordered structures were obtained using NTV ensemble molecular dynamics of cells with small numbers of molecules, where the cut off distance for short range interaction was 1.4×10-9 m. The internal energy and volume were obtained by NTp molecular dynamics simulations at T = 1 K for each type of ice, where the cut off distance for short range interaction was half of the unit cell and the Ewald method was used to determine coulombic interaction. The infinite number limits in the internal energies of each ice type at T = 1 K were estimated. The enthalpy temperature dependence was calculated and the low temperature limit was estimated to obtain the Gibbs free energy at low temperatures. Phase transition pressures obtained were satisfactory when compared with the experimental results, at least qualitatively.
  • 寺前 裕之, 大田原 一成
    2009 年 8 巻 1 号 p. 31-40
    発行日: 2009/03/15
    公開日: 2009/03/15
    [早期公開] 公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    Ab initio分子軌道計算において、大域的な分子構造の最適化が可能となる高次元アルゴリズムを実装した。構成原子数が多数となる系でも、大域的な分子構造最適化を現実的な時間内で処理することをめざし、8台のパーソナルコンピュータ(PC)から構成したPCクラスター計算機により、2電子積分を中心とする並列処理を行うことを試みた。並列処理においてPC台数を増加させた場合の計算時間を調べ、実時間の短縮効果を明らかにした。ベンゾチアゾピン系およびチエノジアゼピン系抗不安薬分子について3-21G基底で、SCF計算とエネルギー勾配計算に要した計算時間を計測した。フルトプラゼパム(C19H16ClFN2O)の計算では、CPU数1の通常計算に対し、CPU数4での加速率は、CPU時間4.1倍、実時間4.3倍,CPU数8での加速率は、CPU時間7.9倍、実時間42.1倍を得た。PC台数を増加させることにより、PCクラスター計算機のメモリー上に必要な2電子積分の値がバッファーされ結果としてハードディスクへの入出力が省略されることにより、計算に必要な実時間がCPU台数以上に短縮されることがわかった。
  • 栗崎 以久男, 渡邉 博文, 田中 成典
    2009 年 8 巻 1 号 p. 41-50
    発行日: 2009/03/15
    公開日: 2009/03/15
    [早期公開] 公開日: 2009/03/06
    ジャーナル フリー
    RNA結合タンパク質(RBP)はRNAの塩基配列や高次構造を特異的に認識、結合し機能を発現する。RBPの一種であるPumilioはC末端側にPufドメインとよばれるRNA結合ドメインをもち、RNAの塩基配列特異的結合 (Figure 1)とRNA特異性という二つの結合特異性を持つことが知られている。Pufドメインは8個のモジュールが並んだ構造をしており (Figure 2)、特定の塩基配列を含むRNAと選択的に結合し複合体を形成することが知られている(Figure 3)。更に塩基置換実験から結合配列中の塩基ごとに複合体安定化への寄与が異なることが示唆されている。本研究では塩基ごとの複合体安定化への寄与を定量的に調べるために計算機シミュレーションを行った。Pufドメイン-RNA複合体の分子動力学計算を行い、分子運動のトラジェクトリーから特異的結合に重要であるとされるPufドメイン-RNA間の水素結合形成の頻度を解析した (Figures 6, 7)。また各アミノ酸、塩基の結合自由エネルギーのエンタルピー項への寄与を計算し、定量的に比較した (Figure 8)。解析の結果、結合配列中の塩基の複合体の安定化への寄与は一律ではないこと、PufドメインではRNA結合界面付近のアミノ酸残基が特に安定化に関与していることを明らかにした。
技術論文
  • 阿部 博史, 長嶋 雲兵
    2009 年 8 巻 1 号 p. 51-58
    発行日: 2009/03/15
    公開日: 2009/03/15
    [早期公開] 公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    リアルタイム三次元可視化分子動力学シミュレータMolecula Numericaを開発した.高性能パーソナルコンピュータをプラットフォームと想定し,その計算能力および三次元表示能力を活かした, MacOS X,Windowsなどで動作するマルチOSのソフトウェアである.通常の単原子モデルに,リジッド分子モデルを備えており,並進運動と回転運動の両方を扱える.回転運動には四元数表記方程式系を用いた.また,ソフトウェアはC++で開発されており,リジッド原子モデルに適した原子/分子クラスと,2体間相互作用をC++のTemplate機能を用いたダブルディスパッチ法を用いて実装し,原子/分子クラスと,相互作用の定義を分離させる事によって,新たに相互作用モデルを追加する際のプログラムの変更コストを低減させた.計算例として塩の結晶が水に溶け出す様子のシミュレーションを紹介した.本ソフトウェアのバイナリはMacOSXとWindows XP用が無償で提供されている.
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