日本森林学会大会発表データベース
第129回日本森林学会大会
選択された号の論文の883件中51~100を表示しています
学術講演集原稿
  • 枚田 邦宏, 奥山 洋一郎, 田村 典江
    セッションID: C11
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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    伐採届の受理、森林経営計画の認定をはじめ、地域の森林・林業において、市町村の林務の仕事が取り組まれてきた。とりわけ、森林・林業再生プラン以降、市町村森林整備計画の内容を充実等、単に書類を受理・認定するだけでなく、構想に基づき地域の森林・林業振興の主体者として機能することが求められている。しかし、実態としては市町村の林務に森林管理技術者配属されておらず、求められる仕事のみが増加する状況である。既存の研究においては、地方自治体の林務行政については財政状況等の分析があるが、森林管理技術者の配置、人材育成の面からの取り組みはあまり行われていない。 本研究では、市町村の林務行政の取り組みが盛んな豊田市の活動等の聞き取り調査に基づき、林務担当職員に求められていることを整理し、仕事を実行する上で必要な能力とそのための再教育の内容、具体的に再教育を行う場合の教育研修の場としての既存の教育組織の取り組み可能性について検討する。

  • 青柳 かつら
    セッションID: C12
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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    【目的】近年、人口減少や超高齢社会対策は全国の自治体に共通する課題となっている。地域資源の活用と高齢者福祉に資する地域学習プログラムの開発という着眼から、地域資源マップを製作し、この効果と課題を明らかにすることを目的とした。【方法】2016年3月より、旭川兵村記念館友の会有志(10名)による地域資源マップ製作にファシリテーターとして参画し、製作過程を参与観察した。マップ校了時(製作者対象)とマップを普及する報告会時(参加者対象)に、マップの効果をたずねるアンケートを実施した。【結果】既存の学習成果の活用と製作の役割分担がうまく機能し、参加型会議・行事計12回によって、9ヵ月でマップを完成できた。アンケートでは、製作者に、知識の獲得や地域の魅力の再発見といった学習効果が認められ、文化伝承への意欲の形成という製作目的も達成できた。また、報告会では、製作者による見どころ紹介もあり、参加者に面白さが伝わり、文化伝承への意欲が共有できた。人材確保に影響を与えてしまう、成員が高齢者であることの困難を超え、地域の他団体との連携を深め、マップの活用と地域学習を継続化させることが課題である。

  • 神前 佳毅
    セッションID: C13
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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    森林教育の効果を高めるためには、義務教育の期間内、特に初等教育の段階における実地体験学習を中心とした教育を普及させることが望ましい。幼少期の体験学習が、成長後の価値観や行動規範に与える影響は計り知れないからである。しかし、多くの人々はそれぞれの人生において、在学期間よりも長い間働き、家庭等を守り、さらには余暇を過ごすこととなる。そこで、学校卒業後でも森林の重要性について学ぶことのできる生涯学習の機会を作り、一生継続することのできる森林教育を普及させる方法はないだろうか、この点について考察したいと思う。本発表では、ブータン国内の学校で実施される植樹体験学習と、北欧諸国の慣習法として発展した自然環境享受権の二点に焦点を当てつつ、Ⅰ.ブータンにおける植樹実地体験学習を中心とした森林教育の制度及び実地調査の内容、Ⅱ.北欧諸国における自然環境享受権の定義及び制度的枠組み、Ⅲ.フィンランドにおける森林博物館と国立公園での実地調査の内容、最後にこれらの内容を踏まえたうえで、Ⅳ.世界中の人々が地球規模で行うことのできる森林に関する生涯学習の可能性と展望、の四項目について述べることとする。

  • 山本 清龍
    セッションID: C14
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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    数十年,数百年に一度の頻度で発生する危険事象については,いかに次の世代へ伝えるのか,すなわち,伝承の方法論が一つの課題である。津波災害から5年後に完全復興を宣言した奥尻島では,可能な限り早期の復旧,復興を目指したため震災遺構の保存は図られなかったと言われる。一方,東日本大震災では,国の交付金により一つの自治体につき一つずつ遺構を保存できることになったが,「見るのがつらい」と解体を求める遺族の声もあり,実際には自治体からの申請が少ないという現状もある。それゆえ,危険事象とその結果として起きる災害をどのように伝えるべきか,震災遺構の役割を含めて検討しておく必要がある。そこで,本研究では,危険事象の一つとして津波を取り上げ,震災遺構,語り部を含めて,津波災害の伝承の方法論について論じ考察することとした。研究方法は文献調査,ヒアリング調査,アンケート調査である。論考から,震災遺構には防災意識を高める役割を持つ可能性があり,防災学習時の緊張感や臨場感を強化することが考えられた。また,震災遺構がなくとも,住民,語り部との交流が同様の効果を生起させる可能性が示唆された。

  • 比屋根 哲
    セッションID: C15
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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    東日本大震災を経験した子どもたちは、その当時、森林等の自然をどのように感じていたのか。また、大震災後の復興の過程で地域の自然景観が変貌していくことに何を感じていたのか。本研究は、研究倫理の観点からも子どもたちに直接尋ねることができないこの課題に迫るため、東日本大震災を直接的あるいは間接的なテーマとして作成したテキストの内容を分析することにより、その一端の解明を試みたものである。対象としたテキストデータは、岩手県久慈市から山田町に至る岩手県沿岸北部で東日本大震災により津波の被害を受けた地域に位置する小学校5校、中学校4校の児童・生徒が作成し、文集等に掲載された感想文や作文等である。分析にあたっては、子ども1名の作文につき、作文の総文字数、総文章数、うち自然を表す単語を含む文章数と自然がどのような文脈で描写されているか、その特徴を把握した。調査の結果、たとえば、海→人命を奪う→悲しい、という感情を含む記述がある一方、復興→裏山→削られる、という感情や評価のない状況のみを表す記述等、個々の児童・生徒が体験した内容によって、様々な自然を表す単語を含む文脈のパターンが確認された。

  • 大島 順子
    セッションID: C16
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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    国民の森林に対する興味・関心の変化は、森林本来が持つ多面的機能に気づき、積極的に享受するようになったことにある。ところが、林業現場の多くはその社会的変化に順応できていない現状がある。沖縄やんばるにおける森林組合等の林業技術者に対する教育は、仕事をする中で森林施業に必要な技術を身につけ、経験を積み上げていくことが主であった。しかしながら、現在の森林・林業をめぐる情勢変化にあって、現場の技術者に必要とされるものは、技術の基になる森林・林業の専門知識や木材生産向上につながる技術の習得だけではないだろう。特に、国立公園エリアや世界自然遺産登録地周辺等で施業を行う林業者は、様々なレベルで市民が森林に期待する価値観を理解しつつ、当該地域における森林施業の仕組みや自分たちが置かれている立場等を客観的にわかりやすく伝えるコミュニケーション能力が必要とされている。また、現場で作業する強みを活かした内容を素材とし、見える化していく意識改革も有効であろう。本報告では、大学の公開講座で森林組合の技術者と連携しながら自らも学習者とする成人の学習という視点から実施している森林環境教育の成果について、議論を深める。

  • 井上 真理子, 大石 康彦
    セッションID: C17
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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    木育や環境教育に関わる森林教育の活動をさらに進めるには、森林・林業分野の関係者に加え、教育活動を行う教員や実践者などとの協力を図り、活動の実践を増やすことが求められる。学校教育では、活動が推進されている自然体験活動を行うために指導者向けテキストが開発されている。テキストには、活動の意義、学校教育との関わりなどの理論と、具体的なプログラムの企画立案や指導法、活動や安全管理に関する技術が含まれている。自然体験活動を参考に、既往の研究成果から、森林教育の活動を実践するための手引きの内容を検討した。森林教育では、目的、活動の内容、発達段階にもとづいた活動が整理されており、さまざまな体験活動のプログラムで学校教育の教育課程との関わりが言及されている。指導法や安全管理は、野外での活動には自然体験活動の内容も援用できる。また、プログラムの企画・立案では、学校の実践事例をもとに、森林体験活動の実施プロセスと、活動の構成要素(6W2H:目的、内容、時期、場所、学習者、指導者、方法、費用)が挙げられているが、幅広い内容を含む森林教育の活動の実践には、さらに実施体制の体系的な整理が必要といえる。

  • 中島 皇
    セッションID: C18
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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     昨年の森林学会鹿児島大会で森林教育関係の部門が認められることになり、今大会(129回)から一般発表部門に「教育」が新設されることになった。このことは教育部門の関係者による努力は勿論ではあるが、一般社会においても森林教育という言葉が市民権を得られているように思われる。そしてそれが森林環境教育ではないところに大きな意味があると考えている。CSR(企業の社会的責任)が取り上げられ、現代社会の環境への負荷が問題視されてきた。環境の一つの代表が森林と見なされていた時期からは一歩進み、森林そのものを正しく理解しようとする気運が生まれていることを意味している。 さてこの森林教育にとって何が必要か?これまでの発表においても指摘してきたが、①時間の感覚がわかる要素と②実物を体感できる要素は不可欠であろう。この他には、③教える側と教わる側の要素。④人間が中心か森林が中心かの要素。⑤動物が中心か植物が中心かの要素などが思い浮かぶ。今回は森林技術教育-森林人間教育と森林自然教育-森林真理教育について言葉及びその言葉の定義も含めて議論を深めることを目的とした話題提供を行いたい。(連絡先:tnakashi@kais.kyoto-u.ac.jp)

  • 井倉 洋二
    セッションID: C19
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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     2017年3月に告示された新学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」という表現でアクティブラーニングを推進することを明示しており、その主な改善事項の一つに「体験活動の充実」も挙げられている。自然体験活動推進協議会(CONE)では、2017年に開催した全国フォーラムのテーマに「自然体験活動とアクティブラーニング」という表現を入れ、自然体験が持つアクティブラーニングとしての効果についての議論が行っている。森林環境教育では森林での直接体験を伴う学びのスタイルが一般的であり、アクティブラーニングとして位置づけることができる。小学校~高校教育だけでなく大学教育においても、自然の中での体験活動には主体性や対話性を育む要素があると考えられる。 本報告では、大学生を対象として鹿児島大学演習林で実施しているAL型授業「森・ひと・体験」を紹介し、そのプログラムの構造と、その中で受講生がどのように主体性や対話性を引き出されていったのかという点に焦点をあて、レポートやアンケート内容をもとに考察する。

  • 中村 和彦, 大塚 啓太, 藤原 章雄, 小林 博樹, 斎藤 馨, 瀬崎 薫
    セッションID: C20
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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    森林環境教育では、体験活動が重要視される一方で、森林動態や気候変動など長時間規模の事象を扱うことも望まれるが、両者を一連の内容として繋ぐ教育方法の開発は十分でない。東京大学秩父演習林では、1995年10月より自動撮影カメラ・マイクを用いた定点撮影・録音が継続されており、この画像音声アーカイブによる教材を秩父演習林において体験活動を行った学習者に提示することで、体験活動と長時間規模の事象とを繋ぐことを試みた。関東圏から希望者を募り、夏休み期間中の2016年8月19日(金曜日)に中学生14名を対象に上記をねらいとする教育プログラムを実施した。当日は午前10時に西武秩父駅に集合とし、そこからマイクロバスで1時間ほどかけて演習林まで移動して、自動撮影カメラ・マイク地点において45分間程度の自然観察を行った。その後、近隣の演習林講義室に移動し、同地点の画像音声アーカイブによる教材を用いた演習を45分間程度行った。プログラム実施後のアンケートからは、参加生徒らが生物季節(フェノロジー)に興味を持てたことや、同プログラムの内容を夏休みの宿題として活用することを検討していることなどが把握された。

  • 大石 康彦, 井上 真理子
    セッションID: C21
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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    森林教育は、学校教育(フォーマル教育)と社会教育(ノンフォーマル教育)に加え、社会生活における非組織的な教育(インフォーマル教育)においても行われている。森林教育は、初期人類から近代以前まで日常生活や生業における森林との関わりについてのインフォーマル教育であったが、近代以降には学校教育や社会教育の発展とともに飛躍的に発展した。森林教育は、森のようちえんや自然学校の興隆、ESDへの取り組みなどの動きから、さらなる発展が予想される。一方、森林教育の主軸をなしてきた高校や大学における専門教育が解体の危機に瀕し、小中学校における一般教育は未確立のまま、といった重大な問題をかかえている。こうしたなかで森林教育研究には、実践の現場や組織、地域社会における諸事象(施設、フィールド、事業、プログラム、対象者、担い手、安全、行政等)のみならず、森林教育を支える概念や歴史など広範なテーマをとらえることによって、森林教育のさらなる発展に寄与することが求められている。したがって、これからの森林教育研究には、量的研究法、質的研究法、混合研究法など各種の研究手法を駆使していく必要がある。

  • 吉田 茂二郎
    セッションID: D1
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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     筆者は、1980年代後半から主にスギ人工林の樹冠の測定を行ってきた。樹冠は林外からの光によって成長を司る栄養分を生産する一方で、林内に降り注ぐ光を遮断する役割も果たしている。したがって、森林、特に人工林管理を考える上で、林分や個体の成長と公益的機能を保つ意味での林内光環境の制御を同時に実現することが求められ、それを実現するには、樹冠の構造や動態の把握が必要と考え、測定を継続してきた。 近年、森林管理の指標の一つとして、樹冠長が提唱されるようになり、樹冠に関する関心が高まっている。さらに、ドローンに代表される林分上空からの情報が容易に取得できるようになり、今後、一層樹冠に関する興味と重要性は高くなっていくと思われる。そこで、今回は長い間地上から行ってきた樹冠測定の意味とその結果をとりまとめて紹介する。発表項目は、以下の通りである。 ①樹冠測定の意味、②樹冠の形状、③林分管理と樹冠構造の関係、④樹冠量と林内照度の関係、⑤樹冠量と成長の関係 など

  • 細田 和男, 西園 朋広, 山田 祐亮, 高橋 正義, 齋藤 英樹, 佐野 真琴
    セッションID: D2
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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     人工林の本数密度は、面積あたりの植栽本数と活着率によって初期値が決まり、植栽後の除伐や間伐の反復、様々な被害や個体間競争による枯死木の発生によって低下していく。間伐が不十分な場合、劣勢木や被圧木が混在することで平均樹高の増加が抑制されるが、優勢木だけを取り出して算出した上層樹高は、本数密度や間伐の影響を受けにくいというのが通説である。このことは、樹高を地位の指標とする根拠ともなっており、地位指数は基準林齢における上層樹高そのものである。しかし一方、本数密度が高いと直径成長が抑制されると同時に、樹高成長も抑制される、あるいは逆に樹高成長が促進されるという報告もみられる。その説明として、個体内の資源配分の問題や、間伐による疎開が林地の水分条件を悪化させること、などが挙げられている。もしこのような現象が事例ではなく普遍的にみられるならば、収穫表や成長モデルの構築の仕方にも見直しが必要となるであろう。ここでは長期にわたって継続調査が行われているスギ、ヒノキ、カラマツの人工林固定試験地を対象として、間伐の有無や密度の違いが、樹高および直径成長に及ぼす影響を改めて検討したので報告する。

  • 井上 昭夫, 佐藤 太裕, 島 弘幸
    セッションID: D3
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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     十分に混み合った樹林における林分密度は,樹種や立地条件の違いとは無関係に,平均直径の-1.6乗に比例して変化する(Reineke式)。一方,竹林におけるReineke式のべき指数は-2になる。また,樹木の場合,樹幹内部での心材化のため,辺材面積は胸高直径の2乗ではなく1.6乗に比例して増加する。これに対し,竹における木質部の断面積は,胸高直径の2乗に比例する。これらの関係より,樹林と竹林のいずれにおいても,十分に混み合った林分では,単位土地面積あたり辺材面積合計(あるいは木質部断面積合計)について保存則が成り立つ。この保存則は一種の動的平衡としてみられるべきであるが,そのメカニズムは樹林と竹林との間で異なる。

  • 西園 朋広, 図子 光太郎, 広嶋 卓也, 當山 啓介, 北原 文章, 寺田 文子, 高木 正博, 齊藤 哲
    セッションID: D4
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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     日本列島の緯度の異なる地域に生育する16のスギ林分において,肥大成長を観測し、肥大成長フェノロジー(成長の開始時点・停止時点・成長期間)の地理的な差異を調べた。観測には、市販もしくは自作のデンドロメータを用いた。肥大成長の開始時点は明瞭な緯度傾度を示し,低緯度に生育するスギと比べて,高緯度に生育するスギの成長開始時点は遅かった。肥大成長の成長停止時点は緯度に依存した違いを示さなかった。これらの結果として,肥大成長の成長期間は緯度傾度を示し、低緯度に生育するスギと比べて,高緯度に生育するスギの成長期間は短かった。 また、肥大成長フェノロジーに対する気温・降水の影響を調べた。成長開始時点と成長期間は気温に影響を受けており、その影響は成長開始時点で強く、成長期間で弱かった。一方、停止時点は,気温・降水量の影響が認められなかった。 成長期間の緯度傾度の存在は,成長フェノロジーの地域差が長期成長の地域差を生み出す要因の一つであることを示唆している。 本研究の一部ではJSPS科研費90353797の助成を受けた。

  • 田中 邦宏, 齋藤 和彦, 田中 真哉, 近口 貞介, 楢山 真司
    セッションID: D5
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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     スギ一斉人工林を対象に、下層間伐と上層間伐の林分成長について比較検討した。 調査地は兵庫県宍粟市に位置し、植栽時の立木本数密度は10,000本/haであった。37年生時に下層間伐区(下層区)(0.63ha)と上層間伐区(上層区)(0.76ha)を設定した。以後、約5年ごとに112年生まで合計12回、胸高直径の毎木調査を行った。 37年生時と112年生時の林分統計量は以下の通りである。立木本数密度は下層区で1,000→380本/ha、上層区で1,000→500本/haであった。平均胸高直径は下層区で19→42cm、上層区で18→30cmであった。胸高断面積合計は下層区で33→58m2/ha、上層区で29→38m2/haであった。胸高直径成長率は、37年生時と103年生時とでは下層区で1.56→0.59%、上層区で3.34→1.40%と全体的に上層区の成長率が下層区を上回っていた。しかし、胸高断面積合計では双方の差は小さかった。総成長量は下層区で33→89m2/ha、上層区で28→71m2/haであった。調査期間を通じた総成長量の推移を比較すると、上層区は下層区の約90%となっていた。これらの結果をもとに、双方の間伐の得失について考察した。

  • 山増 成久
    セッションID: D6
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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    索道架設の前段階においては、架線下の樹木の伐採と主索を架設するためのリードロープの運搬が必要となる。マルチコプターでリードロープを運搬できれば架線下の伐採と人力によるリードロープ運搬が省略でき、索道架設の効率化と労働強度の軽減が期待できる。今回は安全、低コストを目標にリードロープ運搬が可能なマルチコプターとロープ落下装置の試作を行い、実際の索道架設現場においてリードロープ運搬の実証試験を行った。試作した機体とロープ落下装置については試験により明らかになった問題点を改修し、ほぼ期待どおりの性能を確保することができた。現段階では支間長400m程度までであれば運用可能である。

  • 鹿又 秀聡, 中島 徹, 岡 勝
    セッションID: D7
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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    我が国は、戦後植林した人工林資源が成熟し収穫可能な段階に入った。近年、国産材需要も木質バイオマスや輸出等の増加に伴い、急速に高まっている。そのため、これまで間伐による素材生産が中心だった森林組合においても、より生産性の高い皆伐に移行する組合が増えている。組合への聞き取り調査では、皆伐に至らない場合も含め、森林所有者から立木見積もりの依頼をされるケースは年々増加しているが、人手不足から十分な対応ができていない、と言う意見も多い。これまでに筆者らは、計算機上で伐出コストや生産性、出材量等を予測するシステム(伐出見積もりシステム)の開発を行ってきた。しかしながら、予測に使用するデータの多くは現地調査に基づいたものであるため、時間と労力が必要であった。今回は、入力データを森林GISやリモートセンシング技術により得られるであろう情報(平均樹高、本数密度、材積、面積、搬出距離、労賃)による簡便な伐出(間伐、皆伐)コストの推定式の作成を行った結果について、報告する。

  • 光田 靖, 北原 文章, 田中 真哉
    セッションID: D8
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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    四国の人工林域を対象として、スギとヒノキのどちらが植栽に適しているのかを比較した。スギおよびヒノキそれぞれの地位指数予測モデルとプロセスベース林分成長モデルを結合し、任意の場所で地位に応じた成長を予測できるシステムを開発した。林分成長モデルは炭素収支を基礎としており、日射、気温および降水量による成長の違いを反映できる。また、林冠構造の違いによって生産効率が変化するモデルとなっており、間伐の強度だけでなく、間伐種の影響を考慮することができる。さらに、チェーンソー伐採、スイングヤーダ集材、およびプロセッサ造材を想定した伐出コスト予測モデルを統合した。このシステムを用いて林分の間伐および主伐の最適化を動的計画法(MA-PATHアルゴリズム)により行い、50 m解像度でスギおよびヒノキそれぞれの最大土地期望価を求めた。この最大土地期望価を比較することで、スギとヒノキのどちらを植栽するのが適しているのかを判定した。土地生産力のポテンシャルを示す地位指数と異なり、最大土地期望価はより直接的な土地の林業適性の指標であるが、設定する経済条件によって数値が変化するという欠点もある。

  • 山田 祐亮
    セッションID: D9
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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     持続可能な森林経営の実践に対しては、地域レベルに適応した基準・指標が有効である。我が国においても、数値目標という形で指標を設定する先進的な市町村が出てきている。このような指標やその形成過程等を精査し、策定・運用時の課題を整理することは、今後の指標活用を推し進めるうえで重要な基礎資料となる。本研究では、先進的な市町村の計画策定・運用プロセスを通して、指標策定・運用に関する課題を明らかにし、その解決方法を考察する。 各自治体が策定する指標は地域の特色や事情を色濃く反映していた。指標の策定に際して、トップダウン型とボトムアップ型、アウトプットとアウトカム、計画指標とモニタリング指標、需要型と現状型の各アプローチが見られる。また、指標の網羅性、計画や指標間の整合性、周知方法、妥当性の検証といった課題を抱えている。 今後、意欲のある市町村が計画に指標を取り入れ、その効果を高めていくことが期待される。そのためには、客観的かつ簡易に評価可能な網羅性のある指標群、指標を用いた具体的な計画手法、指標の意義・効果を周知する方法、意欲のある市町村をバックアップする制度の整備が求められる。

  • 河瀬 麻里
    セッションID: D10
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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    四手井ら(1981)に始まる森林観の国際比較研究は、学生を含む様々な人々の意識を、国内外で検討してきた。本調査の目的は、こうした森林観に関する研究の一環として、これまで研究の見られない北米の大学生の意識の一端を明らかにすることである。調査方法は次の通りである。調査票は、今永ら(1997)の調査票を英訳し部分的に使用した他、独自の質問も設けた。米国アリゾナ州の大学生を対象とし、2015年1月に、7つの講義の受講生に対し、教室にて無記名のアンケート150枚を配布した。結果は次の通りである。146枚を回収し、無効票を除いた133枚(男性93名、女性40名)を有効回答とした。森林について学んでいる学生の方が、そうでない学生より、森林を美しく維持するためには人手を加えるべきだとする傾向が見られた。本調査は、JSPS科研費13J02417の助成を受けたものである。文献: 四手井綱英ら(1981)「森林環境に対する住民意識の国際比較に関する研究」『トヨタ財団助成研究報告書』I-007/ 今永正明ら(1997)「ペルー人の森林意識」科研費07041062

  • 松岡 真如, 川上 利次, 高野 一隆, 上津原 太一, 木村 穣
    セッションID: D11
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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    GNSS (Global Navigation Satellite System) で取得した位置には常に誤差が含まれる。では、位置から計算した面積にはどれくらいの誤差が含まれるだろうか。この研究では、位置座標から計算された面積について、位置誤差と面積誤差との関係を確率論と数値実験によって解析した。確率論的解析では、座標から面積を算出するための座標法に、測量で用いられる誤差伝播の法則を適用することで、座標とその標準偏差から面積の標準偏差を計算する式を導出した。数値実験では、様々な形状や大きさを持つ多角形を用いて、位置誤差を与えた座標からの面積計算を繰り返し、面積の標準偏差の実測値と理論値とを比較した。また、真の座標の代わりに、誤差を含む座標を使って求めた面積の標準偏差について、実測値との比較によって近似のあてはまりの良さを評価した。その結果、実測値と理論値との差は、誤差率で−1.5〜+1.0%程度、実測値と近似値との差は、誤差率で−3.5〜+4.5%程度であった。これらの解析を通じて、GNSSで取得した面積の精度評価の指標として、座標と位置誤差から計算した面積の標準偏差の近似値を使用することを提案したい。

  • 米 康充, 下分 淳矢, 青木 千咲
    セッションID: D12
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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     UAVを用いて測量を行うためには、対空標識を設置してGCPとする必要があるが、森林計測においては対空標識を置くことが困難であり、このことが作業効率や精度低下の原因となっている。その解決のためには、UAVのカメラ座標や姿勢といった、外部標定要素を正確に取得できれば、対空標識を省略することができる。しかし、正確な計測のためには精度の良いGPS/IMUが必要となり、一般的な民生用UAVを使う様な用途では本体より高価であるなど、その導入が困難である。そこで本研究では、安価なRTK/GNSSキットを民生用UAVへ導入することで、対空標識無しでのUAV測量精度向上の方法を検討し、その精度を明かにすることを目的とした。 RTK/GNSSキットは2個一組で使用し、1個はUAVに固定、もう一個は地上基準点に設置した。地上基準点はあらかじめGNSSを用いて静止測量にて座標を計測した。地上には既知点を設置し、UAVにて上空から撮影を行った。撮影画像に、RTK/GNSSによって計測した座標を付与し、SfM処理することで、3Dモデルを作成し、既知点の計測を行いその精度検証を行った。

  • 青木 千咲, 下分 淳矢, 米 康充
    セッションID: D13
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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    森林作業において、作業道測量や造林地の周囲測量は必須であるが、その測量には多大な時間・経費・労力が生じる。これらを削減し、快適に作業を行える環境を整えることは、持続的に森林管理を行うためにも必要不可欠である。そこで本研究では今後の測量の簡略化を図ることを目的に、UAVを用いた作業道測量や造林地の周囲測量を行い、その精度検証を行った。さらに、森林測量という用途において許容される誤差の考察を行う。精度を検証するために、まずは条件の良い皆伐跡の造林地においてUAVで上空から撮影した写真を基に、SfMを用いて3DモデルおよびDSMを作成した。また、地上ではコンパスやトータルステーションを用いて作業道の路線上および造林地の周囲の杭位置の測量を行った。GIS上で測量座標とDSMを重ね合わせ、その誤差を測定した。次に、作業道開設後の測量を想定し、伐採前の林地において作業道の路線測量についても同様の計測を行った。一方、現状の森林行政における測量検査業務での許容精度を検証し、UAVによる計測が検査に耐えうるものかどうかについて考察を行う。

  • 蝦名 益仁
    セッションID: D14
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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    近年、UAS(Unmanned Aerial System)の一般化により、空撮した連続写真をSfM処理することで三次元データを作成し、三次元データから森林情報の詳細かつ広域な把握をすることが試みられている。また、地形学の分野では、過去の航空写真をSfM処理することで、地形の時系列変化を定量的に捉えることが試みられている。本研究では、過去に航空機によって撮影された連続写真をSfM処理することにより三次元データを作成し、三次元データからDCMを作成した。また、DCMの時系列変化から樹高(冠)成長量を求めた。特に、人工林において樹高は地位を表すといわれている。そのため、高解像度で樹高生長量を定量化することで、高解像度の地位を求めるための、基礎データとして利用することが可能である。 本研究は、北海道上川南部ペーパン地区の道有林を対象に行った。過去の航空写真は北海道上川総合振興局南部森林室より1962年から1997年までに撮影されたものを借用し、大判スキャナーで電子化した。電子化したデータは書き込みや外枠をマスク処理した後、SfM処理により三次元化を行った。また、DCMは南部森林室の固定成測地データを使用し精度検証を行った。

  • 張 桂安, 加藤 正人
    セッションID: D15
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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    ドローンレーザによる森林資源の把握は近年提案されたが、値段が高いため、普及するには難しい。そこで、筆者はドローンレーザの代わりに、普及型ドローンを用いた森林資源の把握を提案する。普及型ドローンは画像しか撮らないので、森林内の地形データが取れないため、他の地形データが必要となる。本研究は航空レーザデータを使用した。解析手順として先ず航空レーザデータのDEMとドローンデータのDSMを作成し、差分でDCHMを作成する。次に、DCHMデータを元に樹頂点を抽出し、樹頂点を中心にWatershed法で樹冠を抽出し、樹冠内の一番高い点から樹高を計算する。画像データなので、立木のDBHを実測できないため、樹高からの推定となる。本研究は樹高解析済みのデータから、一番高い立木、平均的な樹高を持つ立木、一番低い立木を、それぞれ10本選択し、GNSSのナビゲーションで現地に立木を特定し、DBHを測定した。実証地でTLS解析結果と比較すると、本研究の本数抽出率が100%となり、林分の平均DBH推定値は誤差2cm以内に抑えられた。なお、間伐後の林分で再度ドローン撮影を行えば、本数間伐率も材積間伐率も簡単に計算できる。

  • DENG SONGQIU, Katoh Masato, Takenaka Yuki, Cheung Kwai on, Horisawa Ma ...
    セッションID: D16
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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    Smart precision forestry has been paid increasing attention in recent years. Precision forestry is mainly composed of accurate individual tree delineation, harvest tree selection and cut tree detection. This research shows a case study including the above three steps using the UAV laser scanning. The test site was located at a Karamatsu (Larix kaempferi) plantation of 50 years old. The UAV laser data were collected on May 30, 2017 before harvest. Then, the individual trees were extracted from the point cloud data using the ITD (individual tree detection) method. Next, the thinning trees were selected based on the distance of the trees, terrain slope and stem diameter. Tree harvest was conducted in September, 2017. And the forest was scanned again on October 11, 2017 after thinning. The reserved trees were extracted using the same method. Finally, the harvested trees were detected by comparing the two datasets before and after thinning.

  • 音無 亮太, 髙橋 絵里奈, 米 康充
    セッションID: D17
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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    近年、日本ではスギの人工林の多くが50年生以降の壮齢林となっており、伐期が延長されている。今後は間伐不足で高齢となるスギ人工林が増加することが考えられる。例えば吉野林業などの長伐期施業を行っている地域などでは陽樹冠量を基準として単木的な間伐が可能であるとされている(高橋2007)。伐期が延長され高齢になったスギ人工林においては、有用な間伐の指針は明確となっていない。杉谷(2015)は陽樹冠底面積はDBHや年平均DBH成長量との相関が高いということを明らかにしており、陽樹冠底面積が密度管理に有用な指標となる可能性が高いとしている。さらに米・高橋(2017)はUAVを用いた陽樹冠計測手法の開発を行い、UAVによる抽出陽樹冠底面積と成長量には相関があることを明らかにし、間伐選木の指標となる可能性があるとしている。これらのことからUAVによる空撮画像を利用し、GIS上に陽樹冠を表示することで選木を行うことが可能ではないかと考えた。そこで本研究では、陽樹冠の自動抽出を行い、抽出した陽樹冠による選木について検討する。

  • 塩田 廣美, 田中 和博, 長島 啓子, 美濃羽 靖
    セッションID: D18
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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    京都府京丹波町では、2014年10月に取得したALSデータを森林資源管理に利用している。京丹波森林組合では、この森林資源管理データを活用し、森林の現状と将来のあるべき姿を可視化して森林所有者に提供し、より良い森林への誘導活動に役立てている。本研究では、京丹波町全域についてALSデータから25mメッシュのDTMを作成し、DTMから得られる標高・傾斜角・斜面方位・斜面形状・集水域積算と地質図を結合して、エコトープを作成しコードを割り当てた。また、京丹波町内のスギ人工林を対象としたDCHMより、局所最大値フィルター法を用いた樹木の自動抽出ならびに同時に自動計測される樹高から平均樹高を求め、エコトープコードと平均樹高との間の関係性について解析した。また、出現頻度が多いエコトープコードについて、林齢から平均樹高の推定が可能かどうかの検討も行った。この場合、近畿・中国地方のスギ長伐期林分の実態解析で求められたミッチャーリッヒの樹高成長曲線式のパラメータを参考にして、エコトープ毎に樹高成長曲線のパラメータを推定し、その適否について検討した。

  • 粟屋 善雄, 日置 欽昭, 川口 晋平
    セッションID: D19
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
    会議録・要旨集 フリー

    近年、人工林が成熟して伐期に達したことや森林簿情報の信頼性が低いことから、広域で材積を正確に把握することが求められている。航空レーザ測量のデータは位置座標の測定精度が高く、林木の樹冠の情報を正確に描写し、そのデータから高精度で材積を推定できる。一方、植栽密度や施業履歴によって林分の構造に違いが生じるため、樹冠高と林分材積の関係が変化して広域では材積の推定モデルに互換性がないことが危惧される。そこで岐阜県郡上市の森林を対象に、スギとヒノキの樹種別に航空レーザデータによる林分材積の推定モデルを作成して、岐阜県高山市の森林に適用した。その結果、高山市での材積の推定結果は両樹種とも良好であることを確認した。回帰分析によって材積推定モデルを調整するにあたり、メッシュの樹冠高データを利用してレーザデータの点密度の違いの影響を軽減することを意図した。また、樹種別にモデルを作成したことと樹冠率を考慮したことによって、材積推定モデルは林相の違いの影響を軽減して林分材積を推定することができ、他地域への適用が可能になったと考えられた。

  • 薗部 礼, 王 権
    セッションID: D20
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
    会議録・要旨集 フリー

     葉の生化学特性の計測には,従来,可視・紫外分光法や高速液体クロマトグラフィーが用いられてきた。しかし,これらの手法は計測時に破壊を伴うため,同一の個葉を対象とした連続観測には使用できない。一方,ハイパースペクトルリモートセンシングは,同一個葉を対象とした生化学特性の時系列変化を捉えるうえで有効な手法を提供しており,生態学分野への応用が期待されている。 リーフケールにおける分光反射特性を表現する代表的な放射伝達モデルとして,PROSPECTモデルがあり,特に,最新バージョンであるPROSPECT-Dはカロテノイド含量の推定能力が向上した。本研究では,オンラインで公開されている2種類のデータセット(LOPEX及びANGERS)に,我々が新潟県苗場山及び静岡大学農学部南アルプスフィールド(中川根)にて計測したデータセットを加え,落葉広葉樹を対象に本モデルによる生化学特性の推定能力を評価した。 本モデルのinversionによる推定結果を,モデルのキャリブレーションに使用していないtest dataを用いて評価すると,RMS誤差はクロロフィル含量,カロテノイド含量それぞれに対して,15.3 g/m2,5.1 g/m2であった。

  • 村上 拓彦, 折笠 航, 望月 翔太
    セッションID: D21
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
    会議録・要旨集 フリー

    現在,マツ枯れ被害が深刻な海岸林において,常緑広葉樹の存在が注目されている。シロダモ,タブノキなどの高木性常緑広葉樹に対し,クロマツに代わり防風・防砂の機能が期待されている。今後の海岸林管理を考えた場合,常緑広葉樹に関する情報を収集することは大変有意義といえる。本研究の目的は,UAV空中写真とSfMソフトを利用した海岸林の現況の把握である。今回,UAV空中写真から出力した点群データを利用して単木ベースの樹高推定を行った。さらに,オルソフォトを使用しオブジェクトベース画像分類による樹種分類を試みた。プラットフォームはαUAV(アミューズワンセルフ社)であり,搭載カメラにはPanasonic 社のDMC-GX7を用いた。2017年4月5日に対地高度100mで撮影した合計1151枚の空中写真を解析に使用した。今回,落葉樹が開葉する前に撮影することによって常緑樹のみの情報を取得した点が特徴的である。Pix4Dmapperを用いて,ステレオペア画像から点群を生成し,DSM,DTM,オルソフォトに加工した。DSM,DTMを用いてシロダモ,タブノキ,ネズミモチ,クロマツを対象に樹高推定を試みた。また,オブジェクトベース画像分類から単木レベルの樹種分類を試みた。

  • 星川 健史, 加藤 徹, 猿田 けい, 山本 一清
    セッションID: D22
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
    会議録・要旨集 フリー

    静岡県浜松市南区米津町のクロマツ海岸林0.9 haにおいて小型無人航空機に搭載したマルチスペクトルカメラで得られた空中写真を写真測量ソフトによりオルソ画像を得た。RGBカラー画像からはクロマツの樹冠の形状がほぼ個体単位で確認できた。また、針葉が褐色に変色して枯死した個体は確認できたが、針葉が退色した衰弱個体は確認しづらかった。そこで、マルチスペクトル画像から植生指標を計算しRGBカラー画像と合成して枯死・衰弱木の目視判読を行った。判読した枯死・衰弱個体を現地調査で確認したところ、全ての枯死・衰弱個体を漏れなく確認できていた一方、黄葉したツタ類が絡まった個体を衰弱個体と誤って判読していた。

  • 齋藤 英樹, 細田 和男, 高橋 正義
    セッションID: D23
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
    会議録・要旨集 フリー

    森林被害地の調査では、道路状況により調査可能な範囲が制限され、またヘリコプターでの調査は大規模な被害が発生したときに限られるなどの制限がある。一方で近年ランドサット衛星画像は無償で提供されるようになり、またデータ処理レベルも大気補正済み反射率データや雲マスクなどが同時に提供されるなど利便性が高まっている。本研究では、時系列のランドサットデータから変化点を検出する手法を開発し、鹿児島県において発生した台風被害地検出に適用した。その結果、他の変化との誤認もあるが森林被害地を検出可能であることが明らかとなった。

  • Khatancharoen Chulabush, TSUYUKI Satoshi, WADA Naoya, SUGIURA Konosuke ...
    セッションID: D24
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
    会議録・要旨集 フリー

    Frequent wildfire, logging, and other human-induced disturbances have been found continuously throughout decades in the Russian Far East. However, the impacts of environmental factors, such as, topography or distances from human infrastructure around nature reserve have not been well studied. Our goal is to study the relationship between distance from roads, distance from water flow paths, and elevation and their impacts on the patterns of forest cover change at Zeya State Nature Reserve. We used classified maps of 1988, 1999, 2010, and 2016 from object-based supervised classification. The correlation between forest cover change patterns and environmental factors were then analysed using TNTmips 2017 software. Our results show that distance from roads and water flow paths and elevation has strong linkage to forest cover change patterns inside, buffer zone, and outside Zeya State Nature Reserve.

  • 石井 孝, 中屋 耕, 池田 英史
    セッションID: D25
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
    会議録・要旨集 フリー

    太陽光や風力等の再生可能エネルギー導入に伴う森林環境への影響検知を目指し次世代計測技術について検討している。従来、立木位置図の作成には多大な時間と労力を要していたが、迅速に計測可能なレーザー計測機器が登場している。本研究では、(株)アドイン研究所、筑波大学、森林総合研究所、および(株)森林再生システムが共同で開発した「森林3次元計測システム(OWL)」を使用した。これは、林業に特化したレーザー計測器であり、樹木位置や胸高直径を非接触で迅速に計測できるが、地上計測であるため樹頂部の計測に課題があった。そこで、樹冠を上空から計測する小型無人航空機(UAV)による低高度リモートセンシングと組み合わせることで、立体的な3次元計測が行えるか検討した。対象は、針葉樹人工林(スギ・ヒノキ・カラマツ・シラベ)と渓畔林等の広葉樹林である。複数の対空標識上を含むようにOWL計測が可能であれば、簡便にUAV計測値と結合できることを確認した。なお、本研究は公益社団法人国土緑化推進機構の助成研究として実施したものであり、関係者の皆様に深く感謝いたします。

  • 加藤 顕, 若林 裕之
    セッションID: D26
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
    会議録・要旨集 フリー

    地球温暖化の影響による異常気象で、これまでとは異なる場所で森林災害が生じ始めている。特に、森林火災や風倒害に関し、その被害度を正確に把握することは困難であった。本研究は3次元データを用いて、森林災害を評価する手法を確立した。Google Earth Engineによるランドサット衛星画像解析とALOS2 PALSAR衛星レーダー画像による経年的データ解析を行い、森林災害が生じやすい場所を特定した。無人航空機の空撮画像から3次元データも作成し、衛星データによる解析結果の妥当性を検証した。森林災害のあった場所で、地上レーザーによる3次元データを取得し、現地検証用データとして3次元データから森林災害評価を行った。森林火災が高頻度で生じるカナダの国立公園、風倒害が頻繁に生じるオーストラリアの政府実験林にてデータ収集を行い、森林災害で失った量を効率良く算出する手法を確立した。本研究による地上レーザーを活用した森林災害評価法は、森林保険など森林災害に関わる業務において、大変有効な手法である。これまでの目視判断や毎木調査の代わりとして3次元レーザーを活用することで、容易で正確な森林災害評価が行えるようになった。

  • 黒宮 健佑, 加藤 顕, 江口 則和, 石田 朗
    セッションID: D27
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
    会議録・要旨集 フリー

    多くのスギ人工林が伐期を迎えており、効率的な伐採を行うには立木を単位とした森林管理が重要である。そこで本研究では、簡易型地上レーザーを用いてより効率的な調査手法について検討した。調査地は愛知県新城市にある樹齢約60年生の無間伐林と強度間伐林である。三角形の調査区を設定し、地上レーザーを用いて各頂点からデータを取得した。効率よくデータを収集する手法を確立するために、胸高直径を1箇所だけから推定する手法を検討した。1箇所だけのデータと3箇所から取得したデータを結合したデータ。1箇所だけのデータから、スギの幹を円形とし、弧長と弦長から胸高直径を推定した。3方向からのデータはデータを結合し、胸高直径を推定した。その結果を毎木調査の結果と比較し、推定精度を考察した。1箇所だけから取得するデータについては、センサーからの距離や胸高直径、周囲長に対する弧長の割合が推定精度に及ぼす影響を考察した。その結果、推定した周囲長に対する弧長の割合を高めることが、推定精度の向上につながり、レーザーで取得できる距離は6m以内が有効であることが分かった。

  • 溝口 知広, 石井 彰, 中村 裕幸
    セッションID: D28
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
    会議録・要旨集 フリー

    森林資源調査の分野において,地上型レーザスキャナが広く使用されるようになった.取得した点群からは,樹高,胸高直径,材積等が高精度に算出できることが示されている.これに伴い,点群からの樹種判別の要求も高まってきた.申請者らはこれまでに,樹幹部の点群に対する3次曲面当てはめに基づき,樹皮形状を明確に表す距離画像を作成し,これを深層学習に利用することで樹種を自動判別する手法を提案してきた.しかしながらこの手法では,枝が多い樹木では距離画像の作成に失敗する場合があり,判別率が低下しやすいといった問題があった.この問題に対し本研究では,反射強度と曲率を利用した新たな手法を提案する.提案手法では,樹幹部の各点に対し,局所的な2次曲面当てはめにより主曲率を計算し,これを利用して樹皮形状を表す画像を作成する.計算は局所的に行えるため,枝が多い場合でも安定に樹皮形状を評価できるといった利点がある.この主曲率を点群に付属する反射強度と合わせ,深層学習とサポートベクターマシンを組み合わせた手法により総合的に評価することで,高精度な樹種判別を実現した.

  • 齋藤 和人, 平岡 裕一郎, 松下 通也, 高橋 誠, 増田 宏
    セッションID: D29
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
    会議録・要旨集 フリー

    地上LiDARの登場によって、森林における高密度な点群データを大量かつ容易に取得することができるようになった。これらのデータを活用することで、これまで詳細な計測が難しかった林木育種における表現型の取得に活用しようという研究が進められている。 一方でこれらの点群は高密度であるために容量が非常に膨大であり、人手を用いた煩雑なデータ編集が必要となることが多かった。そこで,我々はこれまでの研究で、大規模点群から幹の断面を検出することによって、幹の検出とモデル化、さらに一次枝の詳細なモデル化を自動かつ詳細に行う手法を開発した。本報告では、既存の研究で得られた幹と一次枝のモデルを活用し、樹冠部における葉群を樹木ごとに正確に分類する手法の紹介と評価を行う。また、既存研究において設定が煩雑であったパラメータの数を減らすような改良について評価を行う。さらに現場で活用可能なGUIアプリケーションとして提案手法の実装を行なったので,それについても報告する。

  • 平田 泰雅, 古家 直行, 尾張 敏章, 坂上 大翼, 鎌田 直人
    セッションID: D30
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
    会議録・要旨集 フリー

    天然林は、生物多様性保全機能や水源涵養機能など多面的な機能を発揮することが期待されている。一方で、持続的管理に必要となる天然林資源の正確な情報が人工林に比べて大きく不足している。天然林を持続的に管理するためには、林分・景観レベルでの林相や資源量、成長量などの情報の把握が重要である。本研究は、航空機レーザースキャナー計測で得られるデータから林分の樹高、レーザーの林分透過率から天然林の林分特性を把握する手法を開発することを目的とする。本研究の研究対象地は東京大学北海道演習林の天然林である。まず、航空機レーザースキャナーデータからDSM(林冠標高モデル)とDEM(デジタル地盤高モデル)を作成し、それらの差分からDCM(林冠高モデル)を作成した。また、航空機から照射されたレーザー光の林冠透過率を5m×5mのグリッドを設定して算出した。これらのデータを説明変数とし、胸高断面積合計や林分材積を目的変数として、林分特性を把握するためのモデルを作成した。航空機レーザースキャナーデータを用いた林分特性把握においては、レーザー光の林冠透過率の情報も重要であることが明らかになった。

  • イサミディン カリビヌル, 塚原 正之, 三瀬 友美子
    セッションID: D31
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
    会議録・要旨集 フリー

     持続可能な森林経営のためには、成長量に応じた適正な伐採量の算出と維持が必要であるが、広大な森林の資源量を把握することは困難であり、また、現在整備されている森林簿ではその精度が課題となっている。岡山県西粟倉村では、村の実施する【百年の森林構想】の中で長期施業管理を受託した人工林を適正に管理するため、航空LPデータを整備した。本研究では西粟倉村の航空LPデータから得た単木の樹高および森林簿の林齢情報を用いて、スギ、ヒノキ別に地位曲線を作成し、単木単位での林地生産力を示す地位指数を算出した。そして、地形状況を考慮した上で、地籍単位でのゾーニングを実施し、木材生産の不適地に植栽された人工林について検討した。更に、将来にわたり継続的に木材生産量を把握するため、今後50年間の成長量の予測を行い、林齢構成、径級を考慮した齢級平準化に向けた伐採シミュレーションを実施した。これらを基にスギ、ヒノキの単木毎の成長に基づく優劣を判定したほか、伐採量の違いによる林分全体の成長量の変動を推計し、齢級平準化に向けた検討を行った。

  • 加藤 正人, Juha Hyyppa
    セッションID: D32
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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    世界的にICTによるスマート精密林業が注目されており、先端的なレーザ計測から効率的な森林の在庫管理と収穫情報をもとに、GISによる森林管理、衛星情報を活用したナビゲーション、IoT機能を持つハーベスタ、クラウドサービスによる川上・川中・川下の連携による木材サプライチェーンである。北欧では、航空レーザ計測を国家森林資源データベースや森林調査、収穫調査に省力化技術として導入されている。高精度で機動性のあるドローン、車両、バックパックなどのレーザ計測も技術開発が進んでいる。 日本の森林は1千万haの人工林が木材利用期を迎えており、資源の有効利用と林業の成長産業化が期待されている。川上の林業は山を守り・育てる人が減少する中で、森林調査や収穫調査は人手によるサンプル調査で行っており、省力化と正確な森林資源情報が求められている。平成28年度より産学官連携のスマート精密林業コンソーシアムを立ち上げて、航空機・ドローン・バックパックのレーザ計測による木材生産性向上のICTスマート精密林業「長野モデル」を開発している。国内初のスマート精密林業の実証事例について紹介する。

  • 榎木 勉, 高木 正博, 鵜川 信, 鍋嶋 絵里
    セッションID: E1
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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    九州大学宮崎演習林(椎葉),九州大学福岡演習林(粕屋),宮崎大学田野フィールド(田野),鹿児島大学高隈演習林(高隈),愛媛大学米野々森林研究センター(米野々)に1968-70年に設定されたスギ品種試験地において,2015年に毎木調査を実施し,クモトオシ,ヤイチ,オビアカ,ヤブクグリ,メアサ,アヤスギ6品種の地上部成長様式を比較した。各試験地は等高線に沿って6つのプロットが設置され,各品種が30(5×6)本ずつ植栽されている。このプロットの列は斜面方向に5つ繰り返され,各列で品種はランダムに配置されている。樹高と胸高周囲長は早生型のクモトオシ,ヤイチで大きく,晩成型のメアサ,アヤスギで小さい傾向があった。いずれの地域においても斜面下部で樹高が高くなる傾向が見られたが,斜面位置による樹高の差異は品種や地域により異なった。成長の良い品種はサイズの地域間差や地形による違いが大きく,環境の変化に対する可塑性が高いと考えられた。形状比や樹冠長率も品種により異なり,樹高成長の大きなヤイチは形状比が小さく,樹冠長率が大きい傾向があった。樹形の地形による違いは顕著ではなかった。

  • 高橋 絵里奈, 岡田 真一郎, 古賀 良梧, 米 康充
    セッションID: E2
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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    近年長伐期施業と称されつつ、長期間間伐が行われない伐期延長林が増加している。本研究では、智頭林業地における伐期延長林である123年生のスギ人工林を調査し、その特徴を明らかにすることによって、伐期延長林の施業について考察することを目的とした。智頭林業では、植栽本数が3,000本/ha、間伐代わりに強度な枝打ちが行われ、20~35年生に2~3回間伐を行うのが理想的であり(河島1970)、伐期は榑材で80年内外、樽丸材で約50年であった(金谷,1979)。数十年間密度の調整となる間伐を行っていなかったスギ林分内に、50m×50mの調査区を設定して毎木調査を行った。その結果、林分密度は284本/ha、林分幹材積は1,542m3/ha、平均胸高直径は64.0cm、平均樹高は40.8m、平均陽樹冠長は10.1mであった。当該林分は林分収穫表に示された智頭林業地の管理を延長した場合より収量比数が高く、本数密度が吉野林業地の同年代の林分の2倍以上と過密であった。伐根の年輪調査より、近年直径成長が低迷している個体が多数残存している可能性が示され、高齢になっても間伐が必要であることが示唆された。

  • 酒井 敦, 大谷 達也, 米田 令仁, 内山 憲太郎, 木村 恵
    セッションID: E3
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
    会議録・要旨集 フリー

    高知県馬路村魚梁瀬地域の天然スギは古くから持続的に利用されてきたが、資源が枯渇してきたことから平成29年9月の伐採を最後に、事業としての伐採は休止された。魚梁瀬「天然」スギ林は天然林に人の営みが加味されたものであるが、どのような施業によって維持されてきたのか不明な点が多い。著者らは「天然」スギ林の伐根の年輪解析や遺伝構造解析から、新しい個体群が30年~70年の周期で加入してきたことや、個体群が実生由来である可能性が高いことを明らかにしてきた。今回の発表では、スギ林の間伐後の成長について報告する。平成24年12月に安芸森林管理署大戸山国有林においてDBH 90cm以上のスギ68本が伐採された。ここに1.4 haの調査区を設定し、DBH 10cm以上の立木の胸高直径測定を行い、3成長期経過後再度測定した。最初の調査では37樹種749本ha-1の立木が確認され、スギの立木密度は153本ha-1だった。スギの胸高断面積合計(BA)は56.0 m2ha-1で、調査区全体の73%を占めていた。伐採後スギは11本が枯死したが、BAは56.0から56.9 m2ha-1に増加し、年平均成長率は0.5%だった。このことから、魚梁瀬スギ「天然」林は間伐後も旺盛な成長をしているといえる。

  • 千葉 幸弘
    セッションID: E4
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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     人工林の施業管理で用いられる林分密度管理図は、林冠閉鎖、自然枯死が前提である。つまり弱度の劣勢木間伐に適用するのが適切である。だが実際は強度間伐、列状間伐、長伐期施業でも使われる。密度管理図が世に出て既に50年。森林施業に使える適当な指標がないために、林分密度管理図が万能な指標となったのは致し方ないこと。しかも林分密度管理図は、その根拠が、植物成長のロジスチック理論をベースにした「密度理論」というある種、高潔な理論を拝借してしまったために、逆に融通の利かない隘路に入り込んでしまった感がある。 そこで森林の施業管理に使えそうな簡便な手法として、Hozumi(1968)が提案したMNY法により森林動態の解析法を検討し、万能な森林管理法を目指した。その方法は、サイズの大きい順に林木を並べ替え、大きい順に1,2,3・・と番号(N)を付け、Nまで順にサイズ(個体重や材積)の積算値Y(N)を計算すればよい。Y(N)とNの関係はY(N) = Ymax (1 – exp(-a/Ymax N))で近似できる。 天然生林、人工林、混交林などでこのY-N関係が確認できた。しかも最大個体の材積から林分材積が推定可能であるなど、新たな解析法として使えそうである。

  • 斎藤 真己
    セッションID: E5
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
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    富山県ではスギ花粉症対策の一環として、優良無花粉スギ「立山 森の輝き」を積極的に植林しているが、苗木生産者が不足しているため、今後の増産計画への対応が困難になる恐れがある。そこで、本研究では農業(稲作)と連携し、休耕田を活用したコンテナ苗の水耕栽培を考案した。約150m2の休耕田にブルーシートをひいて、水深5cm程度のプールを造成し、そこにコンテナ苗3480個体をつけて育苗した。5月下旬から10月中旬まで用水をかけ流しにするのみで、水やりは一度も行わなかったが、その生存率は約98%と高く、さらに、成長量は従来のガラス室で育苗した苗を上回った。これらの結果から、本手法は休耕田に造成した簡易プールにコンテナ苗をつけるだけで簡便であり、ハウスなどの設備も特に必要としないため、省力的かつ低コストな育苗法であると考えられた。また、コンテナ苗は田植えが終了した5月下旬に休耕田の簡易プールに入れて、稲刈り終了後の10月に回収することから、稲作とのタイアップは可能で、休耕田の有効活用と新たな生産者の確保に繋がる技術になると期待された。

  • 徳川 浩一, 勝木 俊雄
    セッションID: E6
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
    会議録・要旨集 フリー

    キルギス共和国イシククル州の2,000~3,000mの標高帯には、テンザントウヒ林が広がっている。発表者は、国際協力機構(JICA)「共同森林管理実施能力向上プロジェクト」において、住民の便益を考慮しつつテンザントウヒ林の連続性を高めることを目指して、同州ジュティオグスのテンザントウヒ林にモザイク状に介在する放牧地での植林に環境保全森林庁(SAEPF)とともに取り組んだ。当該地域はテンザントウヒの天然分布域であり、家畜防護柵を設置し植栽地を保護しているが、北緯42度にあたり植林には高標高であり、厳しい自然環境にある。今後当該地域で植林を継続展開するためには、当該地域でのテンザントウヒの植栽地の経過観察データが重要と考えられることから、2013~2016年の植栽地に4箇所の調査プロットを設定し、成長状況を継続調査することにした。2017年に調査した結果、活着率は2014年植栽地のみ57%であったが他は82~100%と高かった。また、伸長成長においては、一つの調査地を除き7~14cm/年の成長が見られた。このため、2,700mの高標高地であっても、家畜からの保護や初期の灌水等適切な管理により成林可能な活着率と成長が期待できると考えられた。

  • 内村 慶彦
    セッションID: E7
    発行日: 2018/05/28
    公開日: 2018/05/28
    会議録・要旨集 フリー

     造林地における下刈り作業は通常夏季に行う過酷な作業であり,伐採跡地での再造林を推進するうえでも下刈り作業の労働力の負担軽減が必要である。スギ造林地における下刈りの適期は6月中旬から7月下旬とされており,この時期に作業が集中し9月中旬位まで実施されることが多い。しかし,本当に下刈り作業は夏季に行わなければならないのだろうか?鹿児島県でのスギ樹高成長量の季節変化を調べた事例では,成長は5月位から開始しており,春季下刈りでも一定の効果が得られる可能性が指摘されている。そこで,本研究では春季下刈りの適用可能性を探るために,スギ植栽木の初期樹高成長は春季下刈りと夏季下刈りで異なるのかを明らかにすることを目的とした。鹿児島県姶良市のスギ再造林地に5月下刈り区(春季下刈り),7月下刈り区(夏季下刈り),9月下刈り区(夏季下刈り)を設置し,初期樹高成長量を比較するとともに,雑草木との競合状況とスギ樹高成長量との関係を解析したのでその結果を報告する。

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