流産後の女性49名に対して文章完成法を用い, 妻の目から見た夫 (パートナー) の反応, それが妻に与えた影響, 妊娠への思い, 性生活への思いについて, 直後, 3か月後, 6か月後の縦断的調査を行い, 次の結果を得た。
1.多くの夫が驚き, ショックを受け, 悲しんでいる様子が妻によって記述された。
2.半数以上の妻が, 夫が自分と悲しみを共有してくれた, 思いやってくれた, 支えてくれた, と記述した。一方で, 夫への怒りや反感, 気持ちのずれ, 申し訳なさや無力感, 寂しさ, 妻のほうが落ち込む夫を思いやり慰める例もみられた。
3.夫が自分と悲しみを共有してくれる, 思いやり, 支えてくれると感じられると妻の悲しみは軽減し, 癒されていた。反面, 夫は思いやりがないと感じた妻は夫への怒りや反感, 気持ちのずれを感じていた。
4.1~3の結果から, 夫の反応は妻の悲嘆を進める方向へも滞らせる方向へも影響すると考えられた。
5.流産を機により良い関係, より親密な関係を創りあげたカップルがあった。
6.妊娠を肯定的にとらえている妻が多かった。同時に, 人知を超える難しい出来事, 肯定と否定の混在, 妊娠や流産への不安を記述した人も多かった。これらは時間経過とともに, 妊娠しないことへの焦りや落胆, 無事出産した人への羨望などに変化していた。
7.性生活の再開について喜びや幸福感を記述した人は少なく, 身体回復への不安, 次の妊娠や流産への不安を抱きながら性生活を再開している人が多かった。これらの結果から, 医療者は, 妻単独でなく, カップル双方が当事者であるという認識をもち, 夫婦両方の流産後の心理や相互関係を理解し, 流産後1~3か月後に心理面のチェックを行い, 性生活への不安, 次の妊娠や妊孕性喪失への不安の除去を含めたカウンセリングや指導教育が必要であることが示唆された。
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