目 的
35歳以上の高齢妊婦の妊娠中の骨密度と骨代謝の変化を明らかにすることである。
対象と方法
対象は妊娠23週未満の健康な単胎妊婦42名であり,35歳以上を高齢妊婦群(19名),35歳未満を非高齢妊婦群(23名)とし,比較検討を行った。調査方法は縦断的研究であり,妊娠24週未満を第1期,24週以上36週未満を第2期,36週以降を第3期に分け,骨密度は妊婦健診毎に超音波伝導速度(SOS)を測定,骨代謝マーカーは第1期と第3期にデオキシピリジノリン(DPD)と尿中カルシウム(Ca),クレアチニン(Cre)を測定した。分析は群内の変化はone-way repeated ANOVA,群間の比較はt検定を用いた。本研究はA大学倫理委員会の審査を経て実施した。
結 果
骨密度変化は,第1期から第3期にかけて両群とも低下する傾向がみられた(高齢妊婦群の第1期から第3期にかけての変化量−7.88±12.94,p=0.06,非高齢妊婦群の第1期から第3期にかけての変化量−5.10±10.43,p=0.09)。高齢妊婦群は非高齢妊婦群に比べ変化量が大きかった。
DPDは第1期では,高齢妊婦群は6.66±5.94(nmol/mmol·Cr)で,非高齢妊婦群の12.84±15.67より低値を示した。第3期では,高齢妊婦群は3.54±3.07で,非高齢妊婦群の9.36±8.05より有意に低値を示した(p=0.02)。Ca/Creは第1期において高齢妊婦群は非高齢妊婦群に比べ有意に高値を示した(p=0.04)。
結 論
①高齢妊婦群の骨密度は低下する傾向にあり,非高齢妊婦群に比べ変化量が大きい傾向がある。②高齢妊婦群は非高齢妊婦群よりDPDは第1期において低い傾向がみられ,第3期においては有意に低かった。Ca/Creは第1期において有意に高かった。
高齢妊婦群は非高齢妊婦群に比べ,妊娠中の骨密度は大きく低下する傾向がある上に,骨吸収が少なくCaの排出が多いことから,産後の骨量回復が期待出来ず,骨密度低下を招きやすい状態にある。
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