流産後の日本女性の心理を明らかにする目的で, 流産 (後) 処置を受けた49名に, 文章完成法と, 欧米文献を参考にして作成した流産後心理尺度, 日本版STAIを用いた6か月間の追跡調査を行った。
文章完成法から流産によって影響を受けた心理状態, 驚き, ショック, 悲しみ, 孤立・孤独感, 疲労, 虚脱, 諦め, 自責感 (申し訳なさ), 後悔, 罪悪感, 失敗感, 流産の事実に対する受容と否認の相反する感情, 空虚感, 役割不全感, 嫉妬, 流産の繰り返しへの不安, 妊孕性喪失への不安などが得られた。同時に直後, 3か月後, 6か月後の流産の受け止めの変化が得られた。
流産後心理尺度からもショックや驚き, 悲しみ, 失望感, 脱力感, 寂しさなどがあることが確認され, 文章完成法による記述内容と一致していた。文章完成法と流産後心理尺度の双方から流産後の女性は, 普段と違う心理状態にあり, それは欧米文献で流産後の悲嘆, 周産期死亡後の悲嘆として報告されているものと, 内容的にはほぼ同様であるが, 表現のしかたが違うもの, 文献に見られないものとして日本女性に特有の表現と思われる内に向かう自責感 (児, 夫, 家族に申し訳ない) や後悔がみられた。得られた悲嘆反応をKellner悲嘆の4段階でみると, さまざまな段階の表現が入り混じっていた。
STAIからは, 流産後の女性は統計的に有意に状態不安が高いこと, その不安は時間経過とともに減少し, 3か月前後で成人女性平均に近づくことが確認された。
本研究によって流産後の日本女性には欧米文献同様の悲嘆反応が見られることと, その悲嘆反応の内容実態が明らかになった。
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