高齢妊婦の羊水穿刺を「受けるか否か」の意志決定を明らかにすることを目的に, 30名の高齢妊婦に半統制型の面接調査を行い, 以下の結果を得た。
1. 羊水穿刺を考えた動機は,「医師からの説明」,「妊娠前に得た知識」,「障害児の出産既往」,「ダウン症児との接触」,「羊水穿刺の体験」であった。
2.出生前診断としての羊水穿刺に対して, 以下のような「肯定的な考え」と「否定的な考え」があった。
肯定的な考えとしては,
1) 生まれてくる子どもや家族に幸福をもたらす。
2) 胎児治療の発展に必要である。
否定的な考えとしては,
1) 胎児治療ができないのであれば, 羊水穿刺を受ける意味がない。
2) 副作用・身体的浸襲を伴う。
3) 障害児を抹殺することである。
4) 胎内環境における親子の絆を形成する上での障害となる。
3.羊水穿刺を「受けるか否か」の意志決定をする際に, 羊水穿刺に対する「肯定的な考え」と「否定的な考え」のどちらか一方のみをもっている場合には「迷わず」意志決定ができ,「肯定的・否定的な考え」の両者の考えをもっている場合には「迷い」が認められた。
また, 夫および家族の羊水穿刺に対する考え方についても同様のことがみられ, 妊婦の意志決定に影響を与えていた。
4.羊水穿刺を「受けるか否か」の意志決定の際に「迷わず」意志決定ができた者は,「障害児の出産既往」,「ダウン症児との接触体験」,「羊水穿刺の体験」を動機として考えた者であった。
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