目的
本研究の目的は, 分娩時に会陰切開術を受けた褥婦と会陰切開術を行った場合と同等の会陰損傷である第二度会陰裂傷となった褥婦の後遺症 (創部痛や排尿トラブルの有無, 日常生活上の支障) の程度には差があるのかどうかを明らかにすることである。
方法
首都圏3病院において, 正期産で経膣分娩し, 対象の条件を満たした初産婦165名 (切開群, 第一度裂傷群, 第二度裂傷群の3群に分類) を対象に, 自記式質問紙を用いて産褥4, 5日目に調査を行い, 有効回答が得られた147名 (89.1%) の結果を統計的に分析した。
結果
1.分娩当日, 産褥1, 3日目の会陰の痛み (違和感) の程度をビジュアルアナログスケールに示してもらった結果では, 3群間に差は認められなかった。また, 裂傷2群は分娩当日から産褥1日目にかけて, 痛みが有意に軽減したが, 切開群に有意な軽減はみられなかった。
2.産褥早期の排尿困難や尿意の低下については, どの群も半数以上が自覚しており, 3群間に差はなかった。
3.生活上の支障の程度の比較では, 切開群は第一度裂傷群と比較して, 立った姿勢から座る動作の支障, 睡眠しにくさを有意に強く感じていた。第二度裂傷群と切開群, 第二度裂傷群と第一度裂傷群との間には, 有意差は認められなかった。
結論
会陰切開術を受けた褥婦と第二度会陰裂傷となった褥婦の産後の後遺症に, 大きな差はなかった。少なくとも第二度裂傷群の産後の後遺症が切開群よりひどいということはないと言える。
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