目的試行錯誤しながら, 母親が自分なりの授乳を子どもとのかかわりから見いだしていく体験を記述し, その意味を探求することを目的とした。
対象と方法研究協力を承諾した女性4名を対象に, 妊娠後期から出産3か月までの間に, (1) 出産前, (2) 出産後入院中3, 4日目, (3) 退院後1週間後, (4) 1か月検診時, (5) 3か月健診時の計5回のインタビューにより得られたデータを, Giorgiによる現象学的分析方法を参考に記述, 解釈した。
結果4名の母親たちの授乳の体験はそれぞれに, Aさんは「子どもにとっては精神安定剤の役割があり, パイパイ最終兵器だとわかる」, Bさんは「いつでもおっぱいに吸いついてきてくれる以上は, やっぱり与えたいと感じる」という体験であった。また, Cさんは「母子お互いがうまくいくためには, おっぱいが飲みたい, おっぱいをあげたいという二人のバランスが大切と気づく」, 最後にDさんは「子どもにとっては生きることであり, 自分の精神的なものを大きく占めると感じる」という体験であった。
そして, 4名の体験を類型化したところ, 1) 「子どもの反応の意図を探る」, 2) 「子どもの反応を受け取り試行錯誤する」, 3) 「子どもからのフィードバックに支えられる」というテーマを確認した。
結論母親たちは, それぞれに授乳の困難感を乗り越えようと試行錯誤する体験がみられたが, それを子どもとの日々のかかわりの中において乗り越える糸口を見つけ, 子どもからさまざまなフィードバックを得ながら, 自分なりの授乳を見いだしていくという体験をしていた。
助産師は母子のこのプロセスを支え, 見守っていくことが求められると考えられた。
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