迅速かつ途切れのないrescue, resuscitation, repair, rehabilitationは外傷診療の成功に不可欠である. 迅速性が必要な因子として, rescueではright patient in the right place to the right laceを実現させるためのトリアージと病院前診療, resuscitation では輸液, 輸血漿, 薬剤投与による循環, 凝固異常の是正, 生体の重症度判定のための血液生化学検査と損傷部位診断の画像診断, 神経損傷に対する脳保護, damage control surgeryの適応決定と手術手技, rehabilitationでは急性期リハビリテーションの施行と外傷後ストレス障害の治療があげられる. 外傷診療でrescue~resuscitation~repair~rehabilitationを途切れなく行うためには, 病院前~病院診療のリアルタイムな情報交換を用いた途切れのなさ, repairでは合併症を防ぎ早期にrehabilitationが可能な修復, rehabilitationでは急性期から回復期へのスムーズな移行が重要である. 更に, 外傷診療の成功に移植医療と再生医療の現在の貢献と将来の寄与への展望についても言及した.
ショックを伴う重症外傷患者に対する蘇生の考え方は世界的に近年大きく変化してきている. すなわち, 出血性ショックに対する大量輸液から最小限の輸液と早期からの新鮮凍結血漿や血小板の比率を高めた大量輸血プロトコールの導入へ, また正常血圧を目指した循環管理から重篤な臓器障害をきたさない範囲での低血圧の許容へ, 凝固因子枯渇が明らかになった時点での補充から受傷早期より生じる凝固・線溶異常に対する介入へ, 初回よりの決定的手術から蘇生を目的とした初回簡略化手術やIVRの導入と2回目の決定的手術を柱とした初期治療への変化である. このような外傷蘇生の実践には, 各専門医などの人材を含めた医療資源の集約化が必須であり, 本邦でも欧米並みの外傷センター・外傷診療システムの構築が期待されるところである.