日本外傷学会雑誌
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25 巻 , 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総説
  • 布施 明, 奥村 徹, 徳野 慎一, 齋藤 大蔵, 横田 裕行
    原稿種別: 総説
    2011 年 25 巻 3 号 p. 333-347
    発行日: 2011/07/20
    公開日: 2020/09/23
    ジャーナル フリー

     イラク, アフガニスタン戦争において, 米国帰還兵の負傷の受傷機転として, 爆破/爆発が最も多く, その医療対応が注目されている. 市民生活の中でも, テロリズムの脅威が高まるなか, その手段として最も多いのはImprovised explosive devices (IEDs) による爆破である.

     爆傷は鈍的, 鋭的外傷に1次爆傷としての爆圧による損傷が加わる病態のため, 爆傷の損傷メカニズムとそれによって引き起こされる病態を理解し, 診療を行う必要がある. 特に, 爆傷肺 (blast lung injury ; BLI), 及び爆傷による頭部外傷 (blast-induced traumatic brain injury ; bTBI) の理解が必要である. また, 現場では安全の確保に最大限の注意を払う必要がある.

     本稿で, 欧米を参考に, 日本版「ファーストレスポンダーのための爆傷サバイバルカード」, 「爆傷サバイバルカード」, 及び「爆傷診療録」を試案した. 今後も, 爆傷医療に対する啓発, 爆傷診療指針の確立, 訓練による事前準備が必要である.

原著
  • 大森 貴夫, 村田 厚夫, 金丸 明博, 斎坂 雄一, 田中 公章, 石原 潤子, 杉本 和彦
    原稿種別: 原著
    2011 年 25 巻 3 号 p. 348-352
    発行日: 2011/07/20
    公開日: 2020/09/23
    ジャーナル フリー

     近年, 大量輸血の必要性を早期に予測するスコアが報告されている. 今回, 多発外傷症例を調査し, そのスコアの有効性を検討した. 大量輸血を必要とした32例と, 大量輸血を必要としなかった101例を対象とした. Trauma associated severe hemorrhage (TASH) scoreとassessment of blood consumption (ABC) scoreに対するROC曲線において, それぞれのarea under ROC (AUROC) は0.819, 0.711となりある程度有効であった. また, TASHにおける若年者と高齢者のROC曲線では, AUROCは若年者で0.976と非常に有効であったが, 高齢者では0.753で若年者に比べ有効なものとはならなかった. TASH, ABCscoreはある程度有効なスコアであったが, 若年者に比べ高齢者においては有効なものとはいえなかった.

症例報告
  • 町田 浩志, 中野 実, 高橋 栄治, 中村 光伸, 鈴木 大輔, 鈴木 裕之, 蓮池 俊和, 仲村 佳彦, 馬場 慎司, 畠山 淳司, 針 ...
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 25 巻 3 号 p. 353-356
    発行日: 2011/07/20
    公開日: 2020/09/23
    ジャーナル フリー

     小児の非骨傷性頚髄損傷を経験したので報告する. 症例は11歳, 男児. 運動中に頚部が一時的に強い後屈状態となり, 外表上明らかな外傷はないものの徐々に後頚部痛, 両上肢・右下肢の筋力低下が生じたため近医受診. 頚髄MRIで明らかな異常所見なく, 精査加療目的で当院搬送.

     入院2日目に左下肢筋力低下と下肢腱反射亢進が出現し頚髄MRIを再検. 明らかな骨傷を伴わないC3~C7の頚髄髄内病変を認めたため非骨傷性頚髄損傷の診断がついた.

     神経学的異常所見があるにもかかわらず, 受傷直後の画像所見で有意所見を認めない頚髄損傷があるため, 小児の外傷でも受傷機転より頚髄損傷の可能性が否定できない場合は, 高齢者と同様に注意深い経過観察が必要である.

  • 粟国 克己, 上原 英且
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 25 巻 3 号 p. 357-360
    発行日: 2011/07/20
    公開日: 2020/09/23
    ジャーナル フリー

     交通事故による喉頭損傷の1例を経験した. 64歳, 男性, 交通事故にて当院へ搬送. CTで甲状軟骨骨折, 骨折部周囲の血腫形成あり. 呼吸苦や嗄声などの症状はなかったが, 約4時間後に再度CTを施行. 気道の狭小化が認められたため気道閉塞が予想され経口気管挿管による気道確保を行った. 後日, 気管切開, 甲状軟骨形成術施行し経過良好にて転院となった. 本症例は気道閉塞を疑わせる症状に乏しかったが, 経時的に行ったCT所見より予防的に気道確保を行い, 良好な結果を得ることができた. 喉頭損傷は自覚症状が乏しくても気道の評価, 管理を最優先事項として念頭に置き, 身体所見だけではなく画像検査での経時的なフォローが必要である.

  • 中尾 彰太, 石川 和男, 井戸口 孝二, 水島 靖明, 松岡 哲也
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 25 巻 3 号 p. 361-365
    発行日: 2011/07/20
    公開日: 2020/09/23
    ジャーナル フリー

     肝損傷の保存的加療中に仮性動脈瘤破裂を来した1例を経験した. 症例は12歳, 男児. 自転車走行中に転倒して受傷し, 当院に搬送された. 来院時の腹部造影CTで深在性肝損傷を認めたが, 明らかな血管損傷を認めず, 循環動態も安定していたため保存的加療を行い, 無症状で経過した. しかし, 第8病日の腹部造影CTで仮性動脈瘤を認め, 同日血管造影および塞栓術の準備中に破裂してショック状態となった. 緊急で肝動脈塞栓術を施行し, 第20病日に退院した. その後, 来院時のCTを再確認して初めて血管損傷を疑わせる軽微な所見を得た. 深在性肝損傷においては, 軽微な血管損傷の有無も含め, 来院時画像所見の入念な確認が必要である.

  • 上田 健太郎, 山添 真志, 川副 友, 岩﨑 安博, 川嶋 秀治, 山上 裕機, 篠﨑 正博, 中 敏夫
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 25 巻 3 号 p. 366-370
    発行日: 2011/07/20
    公開日: 2020/09/23
    ジャーナル フリー

     症例は41歳, 男性. 山間部での交通事故を覚知し, 28分後救急隊が現場到着した. ショックバイタルのためドクターヘリが要請され, その25分後現地付近に着陸した (当院まで救急車で約100分の場所). Primary surveyと初期輸液を施行した後離陸し, バイタルサインが安定した状態で当院ERに搬入された (救急隊到着からER入室まで58分). その後FASTは陽性となり血圧が低下したため緊急輸血を施行した. 安定後CTで消化管穿孔, 肝損傷と診断し緊急手術となった (ER滞在時間62分). 胃十二指腸動脈の断裂に対し結紮止血し, 肝損傷部位は縫合術を施行し, また十二指腸球部に穿孔を認め単純閉鎖した. 術後16日目に軽快転院となった. ドクターヘリで救命できた腹部多臓器損傷の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

  • 善家 雄吉, 杜 元坤, 新庄 貴文, 中村 利孝
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 25 巻 3 号 p. 371-375
    発行日: 2011/07/20
    公開日: 2020/09/23
    ジャーナル フリー

     30代女性, 交通事故による多発外傷で近隣の救急病院に搬送され, 胸腹部損傷・右大腿骨骨幹部開放骨折にてICU管理となり, 術後2週後退院となった. 以後, 徐々に右大腿部の疼痛が増強し歩行困難となり, 受傷より6ヵ月経過後に当科を初診した.

     初診時, 右膝関節の著明な拘縮および脚長差を認めた. 単純Xpにて, 右大腿骨骨幹部中央で広範囲骨欠損を生じていた. 複数回にわたる手術 (血管柄付き遊離腓骨移植術含む) により, 幸い骨癒合は得られ, 治療に難渋する骨髄炎・骨欠損を治癒せしめたが, 問題は外傷初期治療において, 避けられる機能障害をも回避すべく治療戦略を立てることである. 本症例の問題点につき考察を行った.

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