日本外傷学会雑誌
Online ISSN : 2188-0190
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35 巻, 4 号
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総説
  • 木下 学, 萩沢 康介, 石田 治, 齋藤 大蔵, 酒井 宏水, 武岡 真司
    原稿種別: 総説
    2021 年 35 巻 4 号 p. 275-282
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/20
    [早期公開] 公開日: 2021/10/07
    ジャーナル フリー

     私たちは止血能と酸素運搬能を有し, 血液型に関係なく投与できる人工血液を研究開発している. 人工血液は人工血小板と人工赤血球から成り, 室温静置で長期保存可能で, 備蓄や病院前治療に適していると考える. 人工血小板はリポソームに血小板活性化因子であるアデノシン二リン酸 (ADP) を内包し, 表面に人工的に合成したフィブリノーゲンの活性部位を付着させている. 出血部位に集積し, 血小板血栓形成を促進することで, 血小板減少性の易出血病態でも血小板と同様の止血能を発揮する. 人工赤血球は使用期限の切れた輸血用赤血球からヘモグロビンを精製し, 同様にリポソームに内包したもので, 優れた酸素運搬能を有している. 人工血液は血小板減少による凝固障害を呈した家兎の致死性出血モデルにおいて, 通常の血小板と赤血球の輸血に匹敵する顕著な止血救命効果が認められ, 外傷治療における有用性が期待される.

症例報告
  • 潮 真也, 嶋村 文彦
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 35 巻 4 号 p. 283-288
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/20
    [早期公開] 公開日: 2021/07/28
    ジャーナル フリー

     症例は46歳男性. 横断歩道歩行中にバイクと衝突した. 搬入後, 左フレイルチェスト, 両側多発肋骨骨折, 両側血気胸を伴う多発外傷と診断し, 両側胸腔ドレナージ, 人工呼吸器管理とし, 第7病日に左肋骨固定術を行い, 第8病日に人工呼吸器から離脱した. 第9病日の胸部レントゲンで左横隔膜損傷が顕在化し, 第10病日に横隔膜修復術を行った. 以前から外傷性横隔膜損傷は, 陽圧換気中の診断は困難とされ, 本症例でも人工呼吸器離脱後に診断した. 陽圧換気中の重症胸部外傷においては横隔膜損傷の合併を念頭におき, 画像などでの慎重な精査と, 胸部手術時に横隔膜損傷の確認が困難な場合には, 胸腔鏡での確認が重要である.

  • 川村 祐介, 土井 智喜, 松本 匡洋, 加藤 真, 高橋 耕平, 岩下 眞之, 竹内 一郎
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 35 巻 4 号 p. 289-293
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/20
    [早期公開] 公開日: 2021/09/07
    ジャーナル フリー

     上腕骨近位部骨折に伴う血管損傷は報告が少なく治療は定まっていない. バイアバーン®は外傷または医原性血管損傷へ適応がある. 症例は87歳男性で体動困難で受診した. 患者は3ヵ月前に左上腕骨近位部骨折を受傷していた. Hb6.0g/dLと貧血があり, 出血源検査目的の造影CT検査で左腋窩動脈に仮性動脈瘤を診断した. 左前胸部にペースメーカーが留置されており外科手術を避けてバイアバーン®による血管内治療を選択した. 左橈骨動脈から逆行性にアプローチしステントグラフト圧着で仮性動脈瘤消失を確認した. 術後もエンドリークや位置異常はなく転医した. 腋窩動脈損傷へのバイアバーン®による治療は低侵襲であり, 外科的修復が困難な場合にも有効な治療手段となる可能性がある.

  • 箕輪 啓太, 今 明秀, 野田頭 達也, 後村 朋美
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 35 巻 4 号 p. 294-298
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/20
    [早期公開] 公開日: 2021/09/07
    ジャーナル フリー

     63歳の中国人女性. 奥入瀬渓流を自動車で走行中に道路から遊歩道へ転落し, ドクターヘリが出動した. ショック状態でフレイルチェスト, FAST陽性を認め, ヘリ内で蘇生的開胸術を施行した. 病着前にPEAに移行し, 救急外来でdamage control surgeryの方針として脾臓摘出術を施行した. 精査で脳挫傷, 胸郭損傷 III b, 左肺損傷 I b, 脾損傷 III b, 骨盤損傷 I a, 第7頸椎横突起骨折, 右上腕骨骨折と診断. 第4病日に閉腹術とフレイルチェストに対して肋骨固定術を行った. 術後に創感染や膵液漏を認めたが, いずれも保存的加療で軽快し, 第97病日に独歩退院した. 病院前において生命徴候が消失する可能性のある重症出血性ショックは蘇生的開胸術を考慮すべきである.

  • 伊藤 弘, 村尾 修平, 中村 洋平, 小倉 裕司
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 35 巻 4 号 p. 299-302
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/20
    [早期公開] 公開日: 2021/09/07
    ジャーナル フリー

     症例は21歳, 男性. バイク走行中に乗用車と接触事故を起こし, 当院高度救命救急センターに搬送された. 搬入時, 身体所見では陰茎に打撲痕と持続する勃起症状がみられた. 造影CT検査では内陰部動脈からの造影剤漏出と海綿体洞瘻が確認され, 動脈流入過剰型持続勃起症と診断した. 緊急で血管造影検査を行い, 選択的に内陰部動脈塞栓術を施行した. 造影剤漏出と海綿体洞瘻は消失し, 術直後から勃起症状も消失した. また受傷2ヵ月後には勃起可能となり, 機能障害を伴うことなく経過した. 今回, 比較的稀とされる外傷に伴う動脈流入過剰型持続勃起症に対して受傷当日に造影CT検査で診断し, 血管内治療により治癒した症例を経験したので報告する.

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