目的
東京都多摩地区に位置する一救命救急センターの外傷診療状況の変遷を調査し, 当該地域における外傷診療の課題を検討する.
方法
単施設後方視的研究. 2010年から2021年まで集中治療室へ入院した外傷患者を対象に, 患者背景, 外傷重症度および侵襲的治療 (手術および動脈塞栓術) の推移ならびに診療成績を調査した.
結果
集中治療室入院外傷は7,264例であった. 期間中に高齢患者 (65歳以上) 割合は増加していた一方, 重症外傷患者 (Injury Severity Score 16以上) 数とその割合は減少を認めた. 侵襲的治療数は全2,257手技で期間中に減少を認めた. 予測生存率 (probability of survival : Ps) ≧0.5の死亡は2.4%, Ps <0.5の生存は0.6%であり, 期間中に変化は認めなかった.
結論
重症患者数と侵襲的治療数は減少を認めていたが, 診療成績の悪化は認めなかった. 一方, 重症外傷診療の縮小が続いており, 外傷診療の質の維持には重症外傷集約化等を含めた地域包括的外傷診療体制確立が急務であると思われる.
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