日本外傷学会雑誌
Online ISSN : 2188-0190
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38 巻, 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
臨床検討
  • 山川 泰明, 福田 真紀, 小松原 将, 鍵本 奈緒, 奥田 龍一郎, 宇川 諒, 松本 俊之
    原稿種別: 臨床検討
    2024 年 38 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2023/10/25
    ジャーナル フリー

     【目的】両側椎骨動脈損傷を伴う頚椎損傷に対して, 頚椎損傷の整復・手術操作前に新規脳梗塞を防止するため椎骨動脈損傷に積極的な血管内治療を行うことが妥当か検証した. 【対象・方法】両側椎骨動脈損傷を伴う頚椎損傷手術症例を対象とし, 頚椎損傷・椎骨動脈損傷の部位, 分類, 治療法, 有害事象, 予後を調査した. 【結果】対象は5例で, 頚椎損傷部位は全例C5-7で, 全例に頚椎後方固定が行われた. 椎骨動脈損傷 gradeは両側grade IVが3例, 2例はgrade IVとIもしくはIIの合併だった. 4例のgrade IV損傷部にコイル塞栓が行われたが, 1例は行われなかった. コイル塞栓を行った4例のうち1例のみ小さな新規脳梗塞が発生したが, 行われなかった1例は脳幹・小脳梗塞から死亡退院した. 【結語】側副血行路が保たれていると判断されれば両側椎骨動脈損傷を伴う頚椎損傷にも積極的な血管内治療の適応があると考えられた.

症例報告
  • 松岡 信子, 村尾 佳則, 服部 彬, 大田 修平, 垣本 佳士, 豊田 亮, 遠藤 幸丈, 村上 修, 藤田 安彦, 木村 拓也
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 38 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー

     外傷性気管損傷は気道緊急を来し得る重篤な病態で, 診断・治療の遅れや判断の誤りは致命的結果を招く. 症例は31歳, 男性. 医療過疎地である離島で経験した闘牛による気管損傷症例で, 気管正中に刺創孔と皮下気腫の増大を認めた. 手術適応とされる皮下気腫が増大傾向にある気管損傷症例でも, 鎮静・鎮痛剤と適切な抗菌薬の使用によって慎重に管理することで, 高次医療機関に搬送することなく離島で保存的治療をし得たため, 考察を加え報告する.

  • 小島 将裕, 吉川 吉暁, 石田 健一郎, 下野 圭一郎, 上尾 光弘, 大西 光雄
    専門分野: 症例報告
    2024 年 38 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2023/11/10
    ジャーナル フリー

     鈍的外傷で肝損傷を認めず, 固有肝動脈に遅発性の仮性動脈瘤の形成を認めたまれな一例を経験した. 症例は42歳男性. 高所から墜落して受傷した. 初診時の腹部造影CT (Computed Tomography) で肝損傷は認めなかったが, 固有肝動脈起始部から左肝動脈にかけて壁不整を認め, 肝十二指腸靭帯内に少量の血腫を認めた. 受傷後3日目に腹部造影CTを行ったが, 仮性動脈瘤の形成を認めなかった. 受傷後2ヵ月の腹部造影CTで固有肝動脈起始部に仮性動脈瘤が偶発的に確認された. コイル塞栓を行い, 仮性動脈瘤は消失した. 術後合併症なく経過した. 初診時の腹部造影CTで肝十二指腸靭帯内の血腫および動脈口径の不整を認めた場合は, 肝外の血管損傷の可能性があり, 仮性動脈瘤の形成に注意が必要である.

  • 杉井 将崇, 柄澤 智史, 大戸 弘人, 福田 伸樹, 藤森 大輔, 伊藤 史生, 小山 知秀, 高橋 功
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 38 巻 1 号 p. 20-26
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

     甲状腺腫瘍の既往がある85歳男性が高所墜落後に救急搬送された. 来院時吸気性喘鳴と頚部腫脹を認め呼吸困難を訴えたため, 気道確保目的に緊急気管挿管を行った. CT所見と病歴から甲状腺腫瘍破裂と診断した. 気道狭窄を伴う血腫拡大のため手術適応と判断し, 血腫除去後に甲状腺左葉摘出術・気管切開術を施行した. 第2病日に人工呼吸管理を離脱, 第28病日に独歩退院した. 鈍的外傷による甲状腺損傷は稀だが, 気道閉塞の場合に致死的となる. 手術は止血だけでなく血腫除去も行えるが, 腫瘍出血に対しては甲状腺摘出を要する場合がある. 手術後も気道狭窄が残存する場合, 気管切開を行うことで早期人工呼吸離脱やリハビリテーションが可能となる.

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