日本外傷学会雑誌
Online ISSN : 2188-0190
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37 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
臨床検討
  • 長尾 剛至, 角山 泰一朗, 鈴木 卓, 伊藤 香, 石井 桂輔, 黒住 健人, 藤田 尚, 三宅 康史, 坂本 哲也, 森村 尚登
    原稿種別: 臨床検討
    2023 年 37 巻 4 号 p. 355-362
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    [早期公開] 公開日: 2023/10/10
    ジャーナル フリー

     【目的】骨盤開放骨折症例を集積し臨床的特徴と急性期治療戦略を示すこと. 【方法】単一施設研究. 対象は2015-2019年に当院で診療した骨盤開放骨折7例で, 後向き診療録調査を行った. 【結果】全例が不安定型骨盤骨折 (abbreviated injury scale (AIS, version 90-98) は中央値で5 (4.5-5)) で, Faringer分類Zone Iに開放創を認めJones-Powell分類Class 3であった. 6例で大量輸血療法を要し, 7例全例で経カテーテル動脈塞栓術と骨盤簡易固定が実施され, 3例で開放創内ガーゼパッキング, 6例で骨盤創外固定が併用された. 7例全例で人工肛門が造設され, 肛門直腸損傷合併の4例では緊急に, 合併のない3例では創汚染が危惧された時点で実施された. 入院死亡は2例で死因は開放創の深部感染による敗血症と多臓器不全であり, 急性期の出血死はなかった. 【結語】骨盤開放骨折症例には, 迅速な止血と適時の人工肛門造設による感染制御が重要である.

症例報告
  • 石田 健一郎, 松村 洋輔, 岡本 雄太郎, 小島 将裕, 吉川 吉暁, 小川 晴香, 木村 裕, 中尾 弘, 上尾 光弘, 大西 光雄
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 37 巻 4 号 p. 363-370
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    [早期公開] 公開日: 2023/07/28
    ジャーナル フリー

     37歳男性が交通事故で受傷した. 骨盤骨折に伴う出血性ショックに対しresuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta (REBOA) で出血を制御した. 造影CTで腹腔内と後腹膜に出血を認め, 緊急開腹ではS状結腸間膜根部および深部の後腹膜からの出血をガーゼ圧迫で一時的に出血制御した. 治療戦略を切り替え, 開腹術を中断しtranscatheter arterial embolization (TAE) による両側の内腸骨動脈の本幹塞栓後に手術を再開した. 三度の開腹術とTAEを経て止血し得た. 腹腔内と後腹膜に出血を認めた本例の腹部・骨盤外傷で, REBOA, damage control surgery, damage control interventional radiologyによるダメージコントロール戦略が救命に有効であった.

  • 稲垣 直哉, 松岡 竜輝, 笹本 翔平, 小武海 信之, 羽尾 元史, 西沢 剛, 斎藤 充
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 37 巻 4 号 p. 371-375
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    [早期公開] 公開日: 2023/08/25
    ジャーナル フリー

     高齢者の骨盤輪骨折に対する低侵襲手術としてtrans iliac trans sacral screw (TITS) 固定が行われているが, 合併症としての血管損傷は稀でその診断や治療, 予防について広く認識されていない. 症例は70歳, 男性. Rommens分類type IIcの脆弱性骨盤輪骨折に対して経皮的にTITS固定を行った. 術後, TITS刺入部と近接する上殿動脈深枝に仮性動脈瘤を認め, コイル塞栓術を施行した. 塞栓後, 貧血の進行はなく, 骨癒合を認めた. 本症例でのTITSの刺入点と上殿動脈深枝との距離は近接しており, TITSの挿入で動脈損傷を引き起こす可能性の高い症例であった. TITSを挿入する際には, 術前に造影CTで上殿動脈枝の走行を確認し, 適切に周囲組織の保護を行ったうえで, 安全に手術を施行することが重要である.

  • 石井 友美, 加藤 貴大, 井上 史也, 笹田 将吾, 安氏 正和, 田原 直樹, 世良 昭彦
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 37 巻 4 号 p. 376-379
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    [早期公開] 公開日: 2023/09/07
    ジャーナル フリー

     神経学的後遺症なく経過した外傷性環椎後頭骨脱臼の1例を報告する. 20歳代男性, 頭部右側から重機が直撃し受傷した. 右側頭部痛と頚部痛の訴え及び右外耳道出血があったが, 神経学的異常所見はなかった. 環椎後頭骨脱臼と診断し, ハローベスト装着の後, 自発呼吸温存下に気管挿管した. 後頭骨-C2/3固定術の後, 神経学的後遺症なく転院した. 外傷性環椎後頭骨脱臼は診断遅延により神経学的な予後が悪化する. CTで軟部組織の腫脹や頭蓋頚椎移行部のくも膜下出血があれば環椎後頭骨脱臼を疑う. 本症例は, 早期診断と適切な外固定及び気道確保が神経学的良好な転機に寄与したと考える.

  • 荒木 貴代, 佐藤 敏, 川上 哲史, 岡本 果南, 小幡 弓真, 近藤 剛規, 高島 幹展, 真田 祥太朗, 村上 弘城, 出口 智宙, ...
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 37 巻 4 号 p. 380-385
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    [早期公開] 公開日: 2023/10/05
    ジャーナル フリー

     肋骨骨折端によって遅発性に気胸を繰り返した胸部外傷の1手術例を経験したので報告する. 症例は38歳男性. 転落事故による右第7-11肋骨骨折で安静入院した. 肝損傷, 右副腎損傷は保存的に軽快したが, 第9病日, 遅発性に右気胸を生じ胸腔ドレナージを要した. 気胸は改善し外来通院していたが, 第75病日, 第97病日と右気胸を繰り返した. 右第9肋骨骨折端による肺損傷・気胸と判断し, 第111病日に胸腔鏡補助下肋骨骨折端摘除術を行った. 下位・浮肋骨骨折では, 肋骨骨折端が(1)鋭利な形状, (2)胸腔内臓器と接する, (3)胸壁接線に対する鋭角が25度以上である場合は, 予防的摘除を含めた積極的治療を考慮してもよい.

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