日本外傷学会雑誌
Online ISSN : 2188-0190
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25 巻, 4 号
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原著
  • 伊藤 憲佐, 中山 恵美子, 梶川 奈津子, 清水 翔志, 野田 剛, 中村 隼人, 村中 清春, 林 真也, 伊藤 太一, 中井 智子, ...
    原稿種別: 原著
    2011 年 25 巻 4 号 p. 419-426
    発行日: 2011/10/20
    公開日: 2020/09/11
    ジャーナル フリー

     鈍的胸部外傷による肋骨骨折患者の入院日数と, 初診時に得られる臨床情報について重回帰分析を行い, 入院日数の推定式を構築することを目的とした後ろ向き研究である.

     肋骨骨折にて入院した患者92例を対象とし入院日数と, 性別, 年齢, HR, SBP, 血気胸の有無, 胸腔ドレーン挿入の有無, 硬膜外麻酔・神経根ブロックの有無, 肋骨骨折の本数を調査した. これらの項目に対し入院日数を目的変数として, 探索的に重回帰分析を行った.

     最終的に推定入院日数=4.9+肋骨骨折の本数×0.9日に, 年齢が60歳以上の場合, +3.3日, 胸腔ドレーン挿入が施行された場合, +3.6日が加算される, 単回帰推定式が得られ, 95%信頼限界は±15.6日であった.

     この推定式により鈍的胸部外傷による肋骨骨折患者の入院日数が, 初診時に得られる情報から推定可能と思われる.

     また入院期間を短縮するためには肺炎の予防が重要である事が暗示された.

症例報告
  • 近藤 豊, 久木田 一朗, 関 沙織, 安慶名 信也, 鈴木 幹男
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 25 巻 4 号 p. 427-430
    発行日: 2011/10/20
    公開日: 2020/09/11
    ジャーナル フリー

     鉄パイプによる頚部から口腔内に達する杙創で, 輪状甲状靭帯切開・右顎下腺全摘術を必要とした稀な1例を経験した. 症例は48歳, 男性. 建築作業中に足を滑らせ転倒. その際にコンクリートに埋め込んだ直径10mm程度の鉄パイプが右顎下部から刺入し受傷. 頭頚部CT撮影では下顎の血腫が気管を圧排しており, また上気道狭窄音も出現したため緊急に輪状甲状靭帯切開施行した. その後損傷部の検索を行ったところ, 創部は右顎下腺を貫いて軟口蓋から口腔底に達していたため, 損傷している右顎下腺を全摘出した. 頚部杙創では慎重に気道閉塞の有無, その他合併損傷の有無を検索し, 特に感染に注意しながら治療を進めて行く必要があると考えられた.

  • 土屋 洋之, 村尾 佳則, 下戸 学, 泉野 浩生, 齊藤 福樹, 平川 昭彦, 岩瀬 正顕, 中谷 壽男
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 25 巻 4 号 p. 431-435
    発行日: 2011/10/20
    公開日: 2020/09/11
    ジャーナル フリー

     鈍的外傷による総胆管断裂, 十二指腸全層性損傷合併は稀であり, 再建法は損傷に応じた対応を迫られる. 本症例では, 総胆管断裂, 十二指腸2部前側壁に広範な全層性損傷を認めたが, 膵実質, Vater乳頭に損傷を認めなかった. 胆管空腸吻合に用いた空腸と十二指腸を側々吻合してdouble tractを形成する事で, 広範囲の十二指腸破裂にも適応し吻合部の減圧を容易にする再建法を行い, 良好な結果を得た.

  • 喜多村 泰輔, 田中 潤一, 梅村 武寛, 紙谷 孝則, 西田 武司, 大田 大樹, 川野 恭雅, 村井 映, 石倉 宏恭
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 25 巻 4 号 p. 436-441
    発行日: 2011/10/20
    公開日: 2020/09/11
    ジャーナル フリー

     背景 : 鈍的頭部外傷による重度意識障害症例では初期診療時に十分な神経学的所見が観察できず, 頸髄損傷の的確な診断は困難である.

     対象 : 2003年から2008年の6年間に搬送された鈍的外傷患者1,313例のうち, Glasgow Coma Scaleが8点以下の重度意識障害に頸髄損傷を合併した5例について検討した.

     結果 : 搬入時の収縮期血圧は4例が100mmHg以下で低血圧を呈したが, 頻脈は認めなかった. 頸椎損傷の診断は3例が頸椎単純X線で, 残る2例は各々CTとMRIを必要とした. 3例に呼吸筋麻痺を伴う四肢麻痺を認め, その損傷高位はC1/2とC2/3であった.

     考察 : 鈍的頭部外傷による重度意識障害患者の麻痺の確認は極めて困難であり, 頸椎単純X線やCT所見より頸髄損傷を強く疑う必要がある. 頻脈でない収縮期血圧100mmHg以下の症例は, 神経原性ショックとして捉えることが重要である. また, 重度意識障害と頸髄損傷が合併した場合は高位頸髄損傷による呼吸筋麻痺を伴う四肢麻痺を念頭に置く必要がある.

  • 今村 清隆, 岡田 尚也, 嶋口 万友, 南野 佳英, 井上 玲, 北田 智弘, 橋本 陽平, 野路 武寛, 中村 透, 加藤 弘明, 鈴木 ...
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 25 巻 4 号 p. 442-446
    発行日: 2011/10/20
    公開日: 2020/09/11
    ジャーナル フリー

     生来健康な49歳, 男性. 工事中に1.5tの鉄板に挟まれ受傷. ドクターヘリにて搬送となり, 不安定型骨盤骨折と腹膜外遠位直腸断裂と診断した. 大量輸血・TAE・創外固定後に後腹膜へ広がる汚染に対して直腸離断・肛門側直腸洗浄・仙骨前面ドレナージ術を施行した. 人工肛門造設術を翌日に施行. ICUでの全身管理と局所の洗浄にて20日目に敗血症から離脱した. 骨盤周囲軟部組織の重篤な感染のために創外固定の維持が困難であったが, 積極的な疼痛緩和下での創洗浄を継続し4ヵ月目に骨盤の安定化を得て, 10ヵ月目に独歩での自宅退院が可能となった. 骨盤周囲軟部組織の重篤な感染を合併した不安定型骨盤骨折における骨盤安定性の保持について文献的考察を加え報告した.

総説(日本の外傷外科の夜明け)
  • 葛西 猛, 中山 恵美子, 伊藤 太一, 中井 智子, 田中 研三, 伊藤 憲佐, 大橋 正樹
    原稿種別: 総説 (日本の外傷外科の夜明け)
    2011 年 25 巻 4 号 p. 447-454
    発行日: 2011/10/20
    公開日: 2020/09/11
    ジャーナル フリー

     過去29年にわたり, 重症型肝損傷の治療成績を向上させるため, 度々治療戦略を変更してきた. 前期 (1979-1984) は専ら肝切除を行ったが, その手術成績は死亡率64.3%と不良であった. 中期 (1985-1994) は肝切除の適応条件の設定と補助手段の適切な運用を重視した. その結果肝切除の手術成績は向上したが, damage control surgery (以下DCSと略す) と重症型肝損傷に旁肝静脈損傷合併例 (以下IIIb+JHVと略す) の治療成績に向上はみられなかった. 後期 (1995-2007) は損傷形態より循環動態を重視し, 治療法としては肝切除, DCSに加えてNOMのいずれかを選択することにした. その結果, 死亡率を11.4%まで低下させることができた. 今後の課題はDCSとIIIb+JHVの死亡率を低下させることに尽きる. 前者に対してはdeadly triadの閾値を下げ, 可及的早期にDCSを行うことと後出血に対して積極的に径カテーテル動脈塞栓術 (transcatheter arterial embolization, 以下TAEと略す) を適応すること, 後者に対しては, perihepatic packing後種々の補助手段を適切に追加することが重要と考えている.

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