犯罪心理学研究
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12 巻, 1 号
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原著
  • 松本 良枝, 白井 俊子, 鎌原 恵子, 片倉 栄子
    1976 年12 巻1 号 p. 1-12
    発行日: 1976年
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

    前回研究1として,集団心理療法の初期における受刑者の抵抗とその規定要因について考察したが,それに引き続いて,今回は,治療の進行につれて,治療に対する抵抗がどのような形で現れ,それが治療の進行にどのようにかかわってくるのかを明らかにすることを目的とした。

    そこで我々は「抵抗は治療過程が進むにつれて次第に質的に異った形で出現し,抵抗がこのような変化を示すに従って,抵抗以外の内容をもつ話題も次第に深まり,治療過程も進展するであろう。すなわち,治療の進行は“抵抗1→話題1→抵抗2→話題2→抵抗3→話題3”と進行する」という仮説を立てた。この場合数字が大とるほど抵抗や話題が深まるものとし,その判定基準を定めた。

    本研究では,治療の進行と抵抗との関係を明らかにするため,1) 上記仮説の検証 2) 各期における抵抗,話題の内容分析を行った。

    分析の対象は,2グループ,各58,57セッションであり,各グループは常時8~10人のメンバーから成っている。結果は次のとおりである。

    (1) 治療過程における抵抗と話題の出現状況(仮説の検証)

    2年間にわたる全治療期間の抵抗や話題の出現状況を分析した結果,全期間を第1期から第6期に大別できることがわかった。すなわち,第1期は,前回研究で明らかにした,いわゆる初期の抵抗が主流の時期で,この初期の抵抗とともに話題1へとテーマが進行している時期である。

    第2期は,抵抗2を経ながら話題2への発展期で,第1期の引き継ぎの時期である。

    第3期は,テーマが種々のレベルに動く時期で,動揺期とでもいう時期である。すなわち,高次の話題まで進んでも,すぐその後に低次の話題に移ったり,1段階飛び越えて話題が進んだり逆行したりする。

    第4期は,再出発期ともいうべき時期で,第3期の動揺期を経て,再び抵抗1→話題1→抵抗2→話題2,あるいは,抵抗3を飛び越えて話題3に発展し,おおむね話題2が中心となる時期である。

    第5期は,再び抵抗1,話題1に戻ることはあっても治療の再発展期であり,ここではじめて抵抗3が出現する。抵抗3出現期ともいえよう。

    第6期は,抵抗3を経過した話題3出現期で,われわれの尺度の最高段階でもある。

    これらの各期の期間は,第1期から第3期までは5~6セッションの周期で進行している。第4期~第6期は,グループによって差異があるが,いずれも,第1期~第3期よりその周期はかなり長くなる。

    このような抵抗,話題の出現状況は,必ずしも我々の仮説どおりではないが,おおむね低次の抵抗,話題から高次の抵抗,話題に治療の経過とともに進行していることが認められた。これをさらに細かく分析すると,抵抗1→話題1の方向は必ずしも一定せず,話題1→抵抗1,話題2→抵抗2の方向も出現する。

    (2) 各期における抵抗,話題の内容分析

    先にあげた第1期~第6期までに出現する抵抗,話題の内容について分析すると,同じ話題1でも初期に現れたものは,抵抗1を説明するための内容であり,それが後の期では,抵抗1とは関係のない,日常的な内容に変化している。話題2についても同様のことが云える。

    このように,同じレベルの話題に判定されたものでも治療過程における出現時期によってその内容は若干異っていることがわかった。

    次に話題3についてみると,我々の仮説に従わず,抵抗2,話題2,抵抗3を経過しないで比較的早期に出現した話題3の場合は,仮説どおり抵抗1,話題1,抵抗2,話題2,抵抗3を経過した後に生じた場合に比べてそれに対するメンバーの参加度,共惑度,共に低く,且つ,それによって自己洞察や改善の意欲を示した者も少い。

    以上のような結果から,受刑者の集団心理療法における治療の過程は,おおむね我々の設定した仮説どおりであることがわかったが,なお細かな点では必ずしも仮況どおりでなく,ある時期には治療の進行が逆方向になったり,あるいは我々の設定したレベルを1レベル飛び越えた上位段階に進行する場合があるし,抵抗3が少ないことも問題である。

    この点について,各セッションのメンバーの動きを詳細に検討したところ,治療の進行が我々の仮説とは逆方向になる場合は,ごく限定されたメンバーあるいは治療者が独走的に高いレベルの話題を持ち出し,それについて2,3人のメンバーの応答があり,テーマとなっても,他メンバーが同じレベルでその話し合いに参加できず,低い次元の話題に引き戻されていることがわかった。

    又,抵抗や話題が1段階飛び越えて上位のレベルに進行する場合は,飛び越えと見られるレべルの抵抗や話題が,実際には存在するのであるが,われわれの分析対象とされなかった抵抗であり,話題である。すなわち,抵抗2や抵抗3に該当する抵抗には,言語化されない沈黙なども考えられるし,話題1,話題2には,治療への抵抗を直接表現せずに,浅いレべルの話題について話し合うことで代用している場合もありうると云える。

    このように,治療過程は,行きつ戻りつしながら発展していくのであり,その過程は,治療への抵抗が1つ1つ取り除かれていく過程とも言える。そして,この抵抗の表現こそが,集団心理療法では重要なのである。これらの種々の抵抗がグループの中心的な問題として提案され,話し合われ,その抵抗が解決されることで,その治療過程は次の段階に進展すると考えられる。治療者は,その抵抗をメンバーが集団全体の問題としてとり上げ,解決してゆく方向に援助すべきである。そのためには,治療者と施設職員といった二重の役割について,治療者自身が自分の問題として受けとめ,解決する必要がある。

  • 菊池 武剋, 細江 達郎, 大江 篤志
    1976 年12 巻1 号 p. 13-20
    発行日: 1976年
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

    We have studied the problem of delinquency with special reference to socialization process. For delinquency cannot be ascribed only to the process of anti-socialty or criminality. From this stand point, focussing upon the school and the job as the basic socializing areas in adolescence and the incidental areas so as companionships and pleasure seekings, we intended that the adjustment (mal-adjustment, non-adjustment) of adolescent to these areas and the formation and development of delinquency are to be grasped simultaneously.

    In the first place of this project, we have studied (1) the problem of relation between the development of criminality and the socialization type of community and (2) the problem of the occupational adjustment and the occurrence of delinquency, phenomenally in main.

    109 male delinquent inmates of public reform schools in Tohoku district are studied from the point of view of socialpsychology with special respect to the relation between their occupations and delinquencies.

    Our subjects’ channels of occupational socialization are proved to be different from the standard one of youth in Japan, and it forms one factor to make them gain access to the delinquent situations. And we have found 5 patterns that each delinquent learns the concret delinquent acts in connection with his occupational situations.

  • 郷古 英男
    1976 年12 巻1 号 p. 21-29
    発行日: 1976年
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル 認証あり

    In this monograph the auther tried to scrutinize the criminological significance of the sentiment, “Urami” in cotext of the motives of a category of aggressive offenses, such as arson, assault and violent acts against school teachers by secondary high school students. According to Doctor Doi, “Urami” is ambivalent with “Amae”. The feeling, “Urami” is, in its passive nuance, “to tolerate and repress the discontentment caused by the inadmissible behavior of the other against one,” however, in its active nuance, “to resent and revenge,” according to the authorized Japanese dictionary. French, “ressentiment” seems to have the most similar meaning among foreign languages, but subtle passive and agressive nuance, which Japanese “Urami” keeps will never be fully expressed in other languages. The auther gave the important function as the motive of aggressive offenses to “Urami”, by studying three typical cases, which include aggression. The auther, also, testified the ambivalence between “Urami” and “Amae”, which lay under or behind the cases.

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