(1) 運転事故者の心理学的特徴を調べるために,追突事故少年,スピード違反少年,一般高校生を対象として,新制田中B式知能検査と内田クレペリンテストを実施した。
(2) 両テストから,できるだけ多数の項目をとりあげ,それらの相関関係から,サーストンのセントロイド法で因子を抽出し,精神機能の構造的な特徴を知ろうとした。
(3) その結果,違反群は一般群とほぼ共通した困子構造をしめしたが,追突事故群だけは特異な因子構造をしめした。そして,事故群を特徴づける因子として,「精神活動失調因子」と「見通しの欠けた粗雑な課題解決様式の因子」の2つが明らかになった。さらに,因子寄与率からみて,「精神活動失調の因子」がより重要な因子であった。
(4) 事故傾向をもった人を鑑別するのに有効な変数の組合わせは,精神活動失調因子をふくんでいる変数群のうち,変異数―誤謬数,最大差―誤謬数の2つの組合わせであった。
(5) 因子評点にもとづいて,両因子を代表する2,3の事例を分析したところ,共通する性格特性がうかがわれた。したがって,両因子は性格特性と関係のある可能性が生じてきた。今後,検討を要する点である。
少年鑑別所へ入所してきた少年を非行少年として定義し,112名にBGTを個別に施行し,PS法によって評価した。うち,精神障害があると診断された少年,頭部外傷既往歴のあるもの,女子を除外し,91名が本研究の対象者である。
(1) 非行少年のPS粗点の平均は29で,その分布は,コントロールとの間に有意差がない。つまり,BGTによって非行少年を群として正常少年から区別することは困難であり,また一定の分割スコアーを設けようとする試みも,それが非行少年の定義と質によって規定されるので,意味をもたない。
(2) 精神障害のある非行少年をない非行少年から区別することにも失敗した。これは,本研究の精神障害のある非行少年が比較的軽症であったことにもよるが,BGTの歪みの少ない精神障害があることを示唆しているように思われる。
(3) 非行少年の年令,知能,非行,入所回数とBGTとの関連は,統計的に有意な程ではなかった。ただし,PS粗点45以上を示すもののなかには,限界級以下の知能低格者が多いといえる。
(4) デザインの歪みは,知能の低い少年では,「非対象」,「波状線」,「くり返し」,「順序の乱れ」にみられる。その他のPS粗点の高い少年については,個別的に検討しなければ,正しく予診することは難かしい。
(5) 所要時間は,平均6分程度で,4分から8分以内に約50パーセントが入る。
(6) 非行少年にBGTを用いる場合,群としてより個別的な分析が,発達的側面よりも臨床的な側面を重視した方がよいと思われる。簡易なテストであるので,あまり過信することは避けたいが,スクリーニング・テストとして,その長所を活用すべきで,その意味でも,今回はあいまいであった精神・神経障害が認められないのに大きなBGTの崩れを示す少年について,個別的に追求してみたい。