医療経済研究
Online ISSN : 2759-4017
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14 巻
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巻頭言
論文
  • -「国民生活基礎調査」の個票データを用いた実証分析-
    塚原 康博
    2004 年14 巻 p. 5-16
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2025/01/29
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    本研究は、1995年の「国民生活基礎調査」の個票データを使い、外来患者による大病院選択の規定要因を分析した。分析結果から、回答者が自営業者との比較において、不就労ほど、そして、男性ほど、大病院を選択するという結果が得られた。また、分析結果によると、健康状態が悪い場合や、癌、泌尿器科などの病気の場合は、大病院が選択され、健康状態がさほど悪くない場合や、皮膚科、歯科、耳・鼻などの病気の場合は、大病院以外の医療機関が選択されている。それゆえ、大病院とそれ以外の医療機関との間にある程度の役割分担が存在するといえる。経済力を示す変数は、大病院選択において有意でなかったが、この原因として、1992年の医療法の改正から始まった大病院における外来患者の紹介制の影響を指摘できる。大病院への紹介が、患者の経済的な要因ではなく、傷病の重症度や大病院での受療に適した傷病の観点からなされるならば、この現象は説明可能である。

  • -ローレンツ曲線と地域集中化ギニ係数による解析-
    小笠原 克彦, 南部 敏和, 桜井 恒太郎
    2004 年14 巻 p. 17-26
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2025/01/29
    ジャーナル オープンアクセス

    [目的]北海道における放射線診療の地域的な不均一性を評価するために、ローレンツ曲線とサンプル数(2次医療圏数)で補正された地域集中化Gini係数(以下、補正Gini係数)を用いて分析を行った。[方法]分析対象はCT、MRI、放射線治療装置などの放射線機器及び、医師、放射線科医、放射線技師など医療従事者とした。調査地域は北海道全域とし、分析は人口を基準としたもの及び、外来患者数を基準としたものの双方で推計を行った。[結果]分析の結果、医師数と放射線技師の人口を基準とした補正Gini係数はそれぞれ、0.130、0.112でありほぼ均一であったが、放射線科医は0.361であり不均一であった。同様に、人口を基準とした推計では、CTやMRIなど画像診断機器は北海道全域で均一に分布していたが、放射線治療機器は不均一であった。外来患者数を基準としたものでは、医療従事者および放射線機器の双方において、人口を基準にしたもの以上に補正Gini係数が大きくなった。[考察]医師・放射線技師および画像診断機器がほぼ均一に普及している理由として、医療機関間・医師間の不明確な役割分担、患者の大病院指向が考えられた。また、放射線治療機器および放射線治療医においては、その診療の特殊性によるものと考えられた。今回の分析の問題点として、放射線治療機器など導入が少ない機器ではローレンツ曲線が歪むこと、人口密度が考慮されず北海道の地域性が十分に反映されていないこと、などが挙げられた。

  • 藤澤 由和
    2004 年14 巻 p. 27-40
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2025/01/29
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    ニュージーランドにおいては深刻化する危機的経済状況に対処するための改革が80年代中盤より着手された。この改革は一般にニュージーランド型ニュー・パブリック・マネジメント(以下NPM)と呼ばれ、90年代以降本格化する医療分野における改革は、このニュージーランド型NPMの流れの中に位置づけられるものであり、特に医療制度改革の核心であった公立病院の独立企業体化すなわち企業化は医療分野におけるNPMの最も典型的な適応例であるといえる。いわばニュージーランドにおける医療制度改革は、ニュージーランド型NPMを公的医療システムの中に導入するといった側面を併せ持つものであったのである。本論ではまず70年代、80年代の深刻化する経済状態を概観し、次いでニュージーランド型NPMの中核を形成している三つの法律を検討する。そして最後に90年代の医療制度改革とNPMの関連性および医療制度改革の成果と課題を明らかにすることを通して、ニュージーランドにおける改革の試みから学びうる点を検討することとする。

  • Gregg L. Mayer, Hakugi Kiyono, 坂巻 弘之
    2004 年14 巻 p. 41-70
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2025/01/29
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    米国の医療費は、毎年10%近い伸びを示しており、2001年には約1兆3000億ドルが支出された。そのうちの薬剤費の割合は約10%であるが、処方薬の市場の伸びは15.7%であり、ここ数年、全体の医療費の伸びに比べ大きな数値を示している。一方、1990年代以降のマネジドケアの拡大は、さまざまな手段で医療費コントロールを行っている。マネジドケアにとどまらず、PBM、病院、医師グループは、フォーミュラリーへの新薬の収載、更新のためにP&T委員会を組織しており、近年、フォーミュラリーコントロールに薬剤経済学の利用が進んでいる。また、病院など医療現場では、薬剤師が自らの業務を経済的に評価するなどの形でも薬剤経済学の考え方が浸透しつつあり、マネジドケアに関連する学会や薬剤師団体では、薬剤経済学データの利用の標準化のためにガイドラインや関係者への教育プログラムを提供している。米国における薬剤経済学の利用方法は、日本においても医療の現場で薬剤経済学を用いる際の参考になると考えられる。

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