医療経済研究
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25 巻, 1 号
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巻頭言
特別寄稿
研究論文
  • 縄田 和満, 川渕 孝一
    2014 年25 巻1 号 p. 18-32
    発行日: 2014/01/20
    公開日: 2025/01/29
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文では、2006年度の診療報酬改定に伴うDPC見直しの白内障手術(DPCカテゴリーコード020110)における在院日数への影響の分析を行った。分析には、(Box-Cox変換モデル(BCモデル)の変換パラメータ0の場合を除く)べき乗変換モデルを用いた。BCモデルは、在院日数の分析など各種分野において幅広く使われているモデルである。モデルの推定には、誤差項の分布に正規分布を仮定した最尤推定量(BC MLE)が用いられる。しかしながら、BCモデルでは、変換パラメータが0以外の場合、誤差項の分布は正規分布となることが出来ないため、BC MLEは一致推定量とはならない。ここでは、べき乗変換モデルの新たな推定量およびBC MLEを使ってもよいかどうかの検定方法を提案した。次に、提案された方法を用いて、白内障手術の在院日数の分析を行った。分析では、片眼に白内障手術+眼内レンズ挿入術を行い、手術・措置2等がなかった患者(2006年度見直し以降のDPCコードは02011Oxx97x0x0)を対象とした。2006年のDPC見直し前後の両方の期間において手術の報告があった20病院に入院した4,374名の患者を分析対象とし、在院日数に影響する要因の分析を新たに提案されたモデルを使って行った。この結果、患者の属性に関しては性別、年齢、主傷病名H260、H268が在院日数に影響することが認められた。病院ごとの平均在院日数は、患者の属性等の違いを考慮しても、大きく異なった。2006-7年度ダミー推定値は負の値で1%の水準であり、制度の見直しが在院日数の短縮につながったことが認められた。

  • ―国民健康保険レセプトデータに基づく実証分析―
    大津 唯, 山田 篤裕, 泉田 信行
    2014 年25 巻1 号 p. 33-49
    発行日: 2014/01/20
    公開日: 2025/01/29
    ジャーナル オープンアクセス

    国民健康保険料(税)の滞納が続く被保険者に対し、通常の保険証に代え、有効期間1年未満の「短期被保険者証」(以下、短期証)が、また1年以上も特別な事情なく保険料滞納を続ける被保険者に対しては、「被保険者資格証明書」(以下、資格証)が交付されている。短期証は医療機関受診の際、通常の保険証と同じように利用できるが、自治体の窓口に留め置かれて本人の手元に届いていない場合がある。また、資格証の交付を受けると通常の保険給付が差し止められ、少なくともいったん医療費全額を自己負担しなければならない。そのため、短期証・資格証交付が受診抑制を招いていると懸念されてきたが、これまで個票データに基づく、所得水準や年齢によって異なる疾病確率の影響を統御した定量的研究は十分行われてこなかった。

    本稿では、短期証・資格証交付による医療アクセスヘの影響を定量的に評価するための第一歩として、X市の個票データに基づき、所得水準、年齢などの影響を考慮した上で、短期証・資格証保持者の受診確率を分析した。本稿の知見は主に4つ挙げられる。

    第一に、年齢や世帯所得などを統御した受診確率は、短期証保持者で23-28%ポイント、資格証保持者で52-53%ポイント低下している。第二に、短期証・資格証交付の前段階である保険料滞納段階で既に受診確率は低くなっており、その点を考慮すると、短期証保持者の場合には受診確率の低下は認められず、資格証保持者の場合の低下幅も、より小さくなり27-28%ポイントであった。第三に、前年に高額な医療給付を受けている短期証保持者には資格証は交付されておらず、重篤な疾患を有している場合に行政上配慮されていることがデータからも確認された。第四に短期証交付に至った場合、前年所得が1%低いと、資格証交付確率は0.6-0.7%ポイント上昇する。つまり低所得にあることで、資格証交付につながっていることが明らかになった。

    以上の知見から若干の政策含意を述べれば、受診確率の低下は短期証・資格証交付以前の段階、すなわち保険料滞納段階で起こっている。さらに、短期証交付に至った場合、所得が低いほど資格証が交付される確率は高くなる。したがって、流動性制約が保険料滞納を引き起こしているなら、短期証・資格証交付以前に、低所得層に対する国民健康保険料の設定について一層の政策的配慮が求められる。

  • 瀧本 太郎, 阪田 和哉, 中嶌 一憲, 生川 雅紀, 坂本 直樹, 阿部 雅浩
    2014 年25 巻1 号 p. 50-69
    発行日: 2014/01/20
    公開日: 2025/01/29
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文では、2008年度のウツタイン統計データを用いて、救急活動の時間(具体的には、覚知(119番入電時刻)から病院収容(医療機関に到着し、医師に傷病者を引き継いだ時刻))が心肺停止傷病者の1ヵ月以内死亡確率に与える影響を分析するために、2方程式プロビット・モデルを用いて救命曲線の推定を行った。収容時間と救命率の関係を分析した先行研究として、橋本ら(2002)、Mashiko et al.(2002)、鮎川ら(2009)、Nishiuchi et al.(2008)、Kitamura et al.(2010)、坂本ら(2011)))などがあるが、坂本ら(2011)を除いて、地域を限定していたり、あるケースに対象を絞っていたり、また、回帰式が単純化されすぎていたりする。坂本ら(2011)では、11万件の全国規模のデータを用いて説明変数と1ヵ月生存確率の間に統計的に有意な関係を得ているが、1ヵ月生存したサンプルの再現性が非常に低いという問題がある。このため得られた救命曲線を前提として救急全体の施策を考えていくことには問題があると言わざるを得ない。1ヵ月生存確率の予測の向上を目的の1つとして、本論文では、病院収容前の心拍再開の有無が1ヵ月生存確率に影響を与えているということを明示的にモデルに組み込み、1ヵ月生存確率と心拍再開確率を被説明変数とする2方程式プロビット・モデルを構築した。本論文の目的は、年齢、性別、疾患などの状態をコントロールしたうえで、病院収容時間と救命率の関係を推定することにより救命曲線を導出し、また救急活動における除細動の実施が救命率に与える効果を推定することである。分析結果として、心肺停止傷病者に対する病院収容前の心拍再開の有無が1ヵ月以内死亡確率に与える影響が大きいことを定量的に明らかにし、心拍再開の有無、心停止の推定原因別、除細動実施の有無を考慮した救命曲線を導出した。心拍再開がない場合では、接触から病院収容までの時間が10分を超えると1ヵ月以内死亡確率は80%を超えること、心拍再開があった場合では病院収容までに30分かかったとしても1ヵ月以内死亡確率は30%程度であることを明らかにした。また、救急活動の際に、除細動が実施されたケースでどの程度リスク削減効果があったのかを推定し、市民による除細動の実施によるリスク削減効果が大きいことを示した。市民による除細動実施の期待限界効果は、心肺停止時の目撃の有無に関わらず救急救命士による除細動の約2倍であることがわかった。

  • 橋本 英樹
    2014 年25 巻1 号 p. 70-72
    発行日: 2014/01/20
    公開日: 2025/01/29
    ジャーナル オープンアクセス
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