昨今、医療財政の逼迫等を背景に医療制度改革論議が行われている。その中で混合診療の禁止の緩和や特定療養費の拡充、いわゆる「医療の階層化」についての検討が論じられている。
ところが、これまで「医療の階層化」に関しては①平等という理念に反する、②市民の社会意識に反する、③医療費高騰を招く、といった理由により、否定的な意見が多くみられている。本稿では、これらの否定的な意見の論拠の検討を行い、さらに、医療を階層化しないことによる問題、すなわち、「医療の普遍平等性」の逆機能について検討した。その結果、以下のことが明らかになった。
1)全国民に高度の医療を提供する必要があるという意昧での「平等」という考え方は重要であっても、全国民に同一レベルの医療を提供すべきという、医療の階層化を否定する論拠は必ずしも明らかではない
2)医療の階層化を否定することにより「医療費抑制」に貢献できている可能性もある。しかし、それは一般市民に無用な期待感を抱かせない、というパターナリスティックな政策運営によるものであり、医療サービスの質、制度の効率性、そしてエンパワーメン卜や市民参加という観点から種々の問題を有する可能性がある
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