医療経済研究
Online ISSN : 2759-4017
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4 巻
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巻頭言
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  • 田村 誠
    1997 年4 巻 p. 35-50
    発行日: 1997/12/30
    公開日: 2025/01/29
    ジャーナル フリー

    昨今、医療財政の逼迫等を背景に医療制度改革論議が行われている。その中で混合診療の禁止の緩和や特定療養費の拡充、いわゆる「医療の階層化」についての検討が論じられている。

    ところが、これまで「医療の階層化」に関しては①平等という理念に反する、②市民の社会意識に反する、③医療費高騰を招く、といった理由により、否定的な意見が多くみられている。本稿では、これらの否定的な意見の論拠の検討を行い、さらに、医療を階層化しないことによる問題、すなわち、「医療の普遍平等性」の逆機能について検討した。その結果、以下のことが明らかになった。

    1)全国民に高度の医療を提供する必要があるという意昧での「平等」という考え方は重要であっても、全国民に同一レベルの医療を提供すべきという、医療の階層化を否定する論拠は必ずしも明らかではない

    2)医療の階層化を否定することにより「医療費抑制」に貢献できている可能性もある。しかし、それは一般市民に無用な期待感を抱かせない、というパターナリスティックな政策運営によるものであり、医療サービスの質、制度の効率性、そしてエンパワーメン卜や市民参加という観点から種々の問題を有する可能性がある

  • 松田 晋哉, 村田 洋, 舟谷 文男
    1997 年4 巻 p. 51-70
    発行日: 1997/12/30
    公開日: 2025/01/29
    ジャーナル フリー

    著者らは本研究において1990年の北九州市の産業連関32部門表を用いて医療・保健・社会保障部門への投資の経済波及効果について、消費誘発効果も考慮して分析を行った。これまでの公共投資の主たる対象であった建設部門への投資と比較して、医療・保健・社会保障部門への投資は生産誘発効果と消費誘発効果では同等の、そして所得誘発効果においてはより大きな効果を認めた。本分析では誘発された雇用者所得による消費誘発額の推定に当たって、平均消費性向を一律に適用していること、企業の資本形成に基づく経済波及効果を無視していることなど種々の問題がある。したがって、その結果は試論の枠組みを出ないが、他の先行研究と同様、医療・保健・社会保障部門への投資がわが国の経済活動において大きな経済波及効果を持ちうることが示唆された。

  • ―ホームヘルプサービスに対する需要分析―
    大日 康史
    1997 年4 巻 p. 71-88
    発行日: 1997/12/30
    公開日: 2025/01/29
    ジャーナル オープンアクセス

    国民生活基礎調査基本調査('86、'89、'92)の個票に基づいて在宅における要介護者の介護者を親族が行うか、ホームヘルパーが行うかという分析を通じて、そのホームヘルパーの利用は通常の財・サービスと同じ意昧での需要要因に基づいており、行政による福祉サービスの割り当てとしてのホームヘルプサービスではないことが明らかにされた。また、マージナル効果でその影響を測ると、所得水準が1%上がると0.03~1.4%ホームヘルパーの利用率は高まる。また、公的介護保険がこうしたホームヘルプサービスもカバーし、自己負担が1割のケースではホームヘルパー需要が2.8~1.2倍に、自己負担が5割のケースでも1.95~1.14倍増加することが明らかになった。

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